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宮城 仮設住宅へ入居希望相次ぐ
2月17日 19時17分

宮城 仮設住宅へ入居希望相次ぐ
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東日本大震災からまもなく2年になりますが、宮城県内の自治体では、今になって仮設住宅への入居を希望する人が相次ぎ、280世帯程度が入居を待っていることが分かりました。
背景には、被災した住宅の解体を迫られた人が、再建までの住居を求めているなどの事情があるとみられています。

NHKが仮設住宅を建設した宮城県内の15の市と町に取材したところ、今年度になって、分かっているだけで763世帯が、新たにプレハブ造りの仮設住宅に入居し、現在も280世帯程度が入居を待っていることが分かりました。
入居待ちの世帯数を自治体ごとに見ますと、▽石巻市が126世帯と最も多く、次いで▽女川町が67世帯、▽気仙沼市が62世帯、▽東松島市が18世帯などとなっています。
入居希望者は特に去年の年末に相次いでいて、背景には、住宅を公費で解体する制度の申請期限を去年12月までとした自治体が多かったため、解体の申請をした人が、住宅再建までの間の住居として入居を申し込んだケースが多いということです。
このほかにも、「避難先で家族から暴力を受けるようになった」、「親戚の家に身を寄せていたが、居づらくなった」、「避難生活で体調を崩して、高台のアパートへの上り下りができなくなった」など、震災発生からまもなく2年がたとうとするなかで顕在化した問題によって、入居を希望する人もいるということです。

背景に住宅再建を巡る問題

仮設住宅の入居の申し込みが相次いでいる大きな理由の一つが、被災した住宅の再建を巡る問題です。今回の震災で被害を受け、「全壊」や「大規模半壊」「半壊」と判定された住宅などについては、国が費用を全額負担して解体する制度が設けられています。
制度を利用するには、それぞれの自治体が設定した期限内に申請する必要があり、大半の自治体が去年12月末までに申請を締め切りました。
自治体は、申請に基づいて業者に解体を依頼し、今年度末の3月までに解体を終えることにしています。
こうした状況のなか、被災した住宅の一部を修理して住み続けていた住民は、さらに改修して住み続けるか、それとも解体して別の場所に移り住むか、決断を迫られていました。
ただ、解体してもすぐには住宅を再建できないうえ、県内では災害公営住宅が一つも完成しておらず、解体に踏み切ったあとの一時的な住居を求めて、仮設住宅に入居しようとする動きが各地で相次いでいるのです。

申請期限に追われて

石巻市の日野貴博さん(33)は、15日の夜、妻と娘2人の4人で市内の仮設住宅に引っ越しました。
日野さんの一家は、これまで同居する祖母が建てた築40年以上の住宅で暮らしてきましたが、おととしの地震で柱が傾くなどの被害を受け、「大規模半壊」と判定されました。
住宅を解体して再建することを検討しましたが、祖母にとって愛着が深い家だったため、なかなか解体を決断できず、壊れたままの状態で生活を続けていました。
しかし、石巻市が住宅を公費で解体できる制度の申請期限を去年の12月末としたことや、子どもたちの安全を考慮して、解体して建て直すことを決めたということです。
日野さんの祖母は、ぎりぎりまで自宅に残り、解体の準備が始まる今月下旬以降に、4人の入居した仮設住宅に移ることになっています。
日野さん一家の新たな住宅が完成するのはことし11月の予定で、それまでは仮設住宅での暮らしが続くことになります。
日野貴博さんは、「周りにどんな人が住んでいるのかも分からず、不安でいっぱいです。震災からもうすぐ2年になりますが、まだまだ生活が落ち着かないのが現状です」と話していました。
また、妻の享子さんは、「生活環境が変わるので、子どもたちへの影響が一番心配です」と話していました。

希望の住宅が埋まってしまった

東松島市の片倉慶晃さん(53)は、地震で壊れ、大規模半壊と判定された住宅の一部を修理して、家族4人で暮らしてきました。
住宅は今も基礎から傾いたままで、補修して住み続けるには少なくとも数百万円はかかりますが、解体して建て直すと、より高い費用がかかるため、どうすべきか迷ってきました。
しかし、東松島市が申し込みの期限とした去年の12月までに解体を決断し、現在は、庭に新しい住宅を建設しています。
片倉さんは給湯器などのメンテナンス会社を営んでいて、再建までの住居として、会社に最も近い仮設住宅への入居を申し込みましたが、同じような事情を抱えたほかの住民からも希望が相次ぎ、埋まってしまったということです。
市は、年度末の3月までに申請を受けた住宅の解体を終える予定ですが、新しい住宅が完成するのは早くても4月の下旬で、解体が始まれば、別に住居を探さなければならない状態です。
片倉さんは、「希望の仮設住宅は、当初は空いているということだったが、こんなに駆け込みがいっぱいあるとは思っていなかった。解体の期限が延長されなければ、離れた場所の仮設住宅を探すしかないので、できれば解体の期限を延長してほしい」と話しています。

みずから避難先を出る人も

新たに仮設住宅への入居を希望する人の中には、震災の発生からまもなく2年がたとうとするなかで、顕在化した問題を抱えている人もいます。
宮城県内に住む70代の女性は、去年の12月に仮設住宅に引っ越しました。
この女性は、津波で自宅が全壊したため、内陸にある息子夫婦の自宅に避難していました。
しかし、2年がたつなかで、次第に息子の妻との関係が悪化し、ストレスで体調を崩すほどになったことから、みずから家を出ることを切り出したということです。
ところが、県内には、まだ災害公営住宅が一つも完成しておらず、仮設住宅で暮らしたいと自治体に申し入れたということです。
女性は「震災で家族の絆が深まったと言われているが、私はそうではなかった。仮設住宅に入って気持ちが楽になったので、今の状態を維持していきたい」と話していました。

自治体の対応は

自治体は、仮設住宅の入居については、現在は特別な事情がある場合にだけ認めています。
当初から空き部屋となっている仮設住宅も残っていますが、そうした仮設住宅の多くは郊外にあり、通勤や通学などには不便なため、新たに入居を希望する人の大半は別の住宅を希望して、入居待ちになっているということです。
入居待ちの人が出ている仮設住宅については、今住んでいる人が自宅を再建するなどして出て行かなければ、部屋を提供できないため、すぐに希望には応じられない状態です。
東松島市の担当者は、「できるだけ希望する仮設住宅に入ってもらうのがいちばんだが、公共交通機関などの近くにあるものは人気が高いので、市としては空室のある郊外の仮設住宅も含めて情報を提供したうえで選択してもらっている」としています。
また、新たに仮設住宅に入居した人については、「仮設住宅ではトラブルも多いので、入居前に自治会長にあいさつに行くように促しているほか、社会福祉協議会などと協力して、できるかぎり見守りの態勢を整えていきたい」としています。

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