民主党が野党共闘の主導権さえ握れないのは、民意を失ってしまったためだ。3年3カ月の政権運営を経て、昨年の衆院選での比例の得票は963万票。政権交代を果たした09年の2984万票のわずか3分の1にまで減ってしまった。「比例第2党」の立場も1226万票の維新に譲った。
落選議員の一人は「街頭演説をしていたら、わざわざ近寄ってきて『もう頑張らなくていいから』と声を掛けてくる人までいる。民主党は本当に嫌われてしまった」と肩を落とす。年明けの会合では年始回りでの反応の厳しさの愚痴を言い合い、ため息が続く場面が多かったという。今さらながら敗北の深刻さをより実感し、無気力状態に陥っているのが実情だ。
反転攻勢を担うべき執行部の動きも鈍い。海江田氏は慎重な物言いに終始することが多くメリハリがない。象徴的なのは1月11日の「党再生本部(仮称)」の初会合の冒頭あいさつだ。海江田氏は「仮称、としたのは、『再生』という言葉でいいんだろうかという思いがありまして……。選挙の総括の『総括』という言葉も少し違う」と、まるで言葉遊びをしているようで、再生に向けた決意が伝わらなかった。結局、名称が「党改革創生本部」と決まるまでに10日かかった。若手議員は「名前すら決められないのか」とあきれる。
与党を経験したことで、政権への対決姿勢も不鮮明だ。アルジェリアの人質事件では、みんなの渡辺喜美代表が「大使館の独自情報収集が不十分だった」と政権批判を展開したが、民主党幹部の政権批判はほぼ皆無。執行部の一人は「今、政府を批判すると、直前まで政権を握っていた我々への批判にもなる。天にツバするようなものだ」と解説する。
麻生太郎副総理が高齢者の終末期医療に関連して「さっさと死ねるようにしてもらわないと」と口を滑らせた際も、民主党内での批判の声は小さかった。与党時代に失言や問責決議などで厳しく追及されたことの反動で、「つまらないことで騒ぐのはよくない」との空気が広がっているためだ。細野豪志幹事長も記者会見で「揚げ足をとって何か言うことは控える。大騒ぎする気持ちにはなってない」と「大人の対応」を見せた。
執行部は党綱領の策定を反転の契機としたい考えだ。1月23日に党本部で開かれた「綱領検討委員会」の総会では、細野氏が「民主党はバラバラと言われてきたが、それを克服しない限り、国民の信頼を取り戻すことは難しい。綱領の議論を党がもう一度一つになるきっかけにしたい」と訴えた。綱領の素案は、「積極的な議論と結論の順守を旨とし、健全な党内統治に貢献する」ことを党員に求める内容だ。議員からは「決まったことは守りましょう、とは生徒会以下だ」との自嘲の声も漏れるが、党分裂の後遺症の深さはそれだけ大きい。
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