教皇ベネディクト16世(85)=写真・CNS=は2月11日、8年間続けてきた普遍教会を導く教皇職を続ける体力はもはやないとして、2月28日で辞任することを自ら発表した。
「私は繰り返し、神のみ前で自身の良心の究明をした結果、高齢のために、もはや教皇職を適正に遂行するために必要な体力が残っていないという確信に至りました」と教皇はバチカンで、3人の列聖を承認するために招集した枢機卿会議の席上、語った。
2005年4月に78歳で教皇に選出されたベネディクト16世は、ほぼ600年ぶりに、自ら退任する教皇となる。
教皇は枢機卿たちに次のように語った。「今日の世界は、あまりにも多くの急速な変化にさらされ、信仰生活にとっても深く関わる問題に揺るがされており、そうした中で、聖ペトロの船を治め、福音を告げ知らせていくためには、心身ともに力が必要なのですが、その体力がこの数カ月の間に、私の中で衰えてきてしまい、託されている職務を適正に遂行する能力がないことを自ら認めざるを得ないほどになってしまいました」
教皇庁広報局長のフェデリコ・ロンバルディ神父(イエズス会)は急きょ開いた会見で、記者団に、教皇の決断は内科的疾患により促されたものではなく、高齢による自然な「体力の衰え」に起因していた、と語った。
今回の突然の発表は世界中を驚かせたが、即断ではなく「過去数カ月を通して慎重に検討されてきた」ものだった、とロンバルディ神父は説明した。
教皇はこの1年、歩行に支障を来すようになり、しばしばつえを使い、階段の上り下りには付き添いが必要になっていた。それでもバチカンは、高齢による関節痛以外の健康状態についての情報を開示することはなかった。
現役の教皇が自ら退任したのは、1415年の教皇グレゴリオ12世以来。
教皇が任意で退任できることは、新教会法典に明記されている。その条項によると、教皇は辞任できるが、その決定は自由意思で行われ、「正しく表明されなければならない」ものと規定されている。
教皇ベネディクト16世は、教会法の規定に従って、枢機卿たちを前に荘厳にラテン語で宣言した。「こうした職務の重要性を十分に承知した上で、完全な自由意思によって、2005年4月19日に枢機卿方から託された聖ペトロの後継者としてのローマの司教職を辞任することを宣言します。これによって、ペトロの使徒座は、2013年2月28日20時をもって空位となり、新たな教皇を選出するコンクラーベが、しかるべき方々によって開かれることになります」
枢機卿団で首席を務めるアンジェロ・ソダーノ枢機卿が、新教皇を選出するコンクラーベの準備を指揮することになる。
退任後は「祈りと省察」に
ロンバルディ神父は、教皇は退任後、ローマ郊外のカステルガンドルフォの教皇別荘に移ることを明らかにした。教皇は、バチカン庭園内に前教皇福者ヨハネ・パウロ2世が建てた修道院の改修が終わるまでカステルガンドルフォに滞在するという。
教皇はその後、この「マーテル・エクレジエ」(教会の母)修道院に住み、自らの時を祈りと省察にささげる、と同神父は語った。
教皇は退任を宣言したあいさつの最後に、枢機卿たちに向かって、「私は心から、私の職務を遂行するに当たって支えていただいたあなたがたの愛と働きに感謝しています。そして、私の至らなかったところ全てについておわびします。そして今、私たちは聖なる教会を私たちの至高の牧者である私たちの主イエス・キリストのみ心に委ねましょう。さらに、主の聖なる御母マリアに、新しい教皇を選ぶ上で、枢機卿方を母なる心遣いで支えてくださるように願いましょう」と語り掛けた。
教皇は、「私も神の聖なる教会に、将来の祈りにささげる生活を通して、献身的に奉仕していきたいと願っています」と語った。

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