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  紅一片 作者:散葉
麗人、鈴鹿。
「お久しぶりです」
鈴鹿さん。私の武道の師匠だ。私の母方の遠縁の親戚になる人。うちの母はいわゆる本家の血筋で、今現在母が一族の頭領だ。といっても母は自由人であるのでほぼ日本には居ないし何より分家の人たち(親戚)を「金と権力と自分の保身しか考えてない馬鹿ども」と称すくらい嫌っているため、実際は真樹叔父が代理として動いている。まあ、何となく想像がつくかもしれないけれど私の家は相当な資産家だ。コトハグループという名前で医療機器や薬品関係から今は食品業まで携えている。余談だが、本社は最新鋭の立派なビルだが家は母の趣味により古い日本家屋だ。

とにかく、母と他の親戚は仲が悪い。母はなんだかんだで正義感が強いので、不正を行った親戚を家族ごと絶縁にしグループ関連の所には再就職も出来ないようにしたり、仲の良い会社の人にはその事の情報を流したり、潰すときはとことんやる人だ。だから、親戚も母を恐れながらも嫌っている、つまり親戚の中は最悪というわけだ。そんな中で例外なのが、鈴鹿さん。フルネームは言葉ことは 鈴鹿すずかという。一言で彼を表すなら母に劣らない自由人。自分の家族すらどうでもいい、興味があるのは面白いと認定した人と武術の事だけ。そんな彼だからか、分家の人たちが腫れ物のように扱っていたのを母が文字通り引っ張ってきた。その後、一晩飲み明かした両親と鈴鹿さんは意気投合。母は鈴鹿さんに道場付きの家を用意して、定期的に家に呼んでいた。

そして、私の例外の一人。

「久しぶりだな、緋音。元気にしてたかの?」
「はい。でもどうしてここに?」
「ん?真樹から連絡を貰っての、緋音が居るならいいかと思って」
この人の話し方は独特で古めかしい言い方をするかと思えば、急に普通に話す。私も初めは驚いたっけ。というか、また真樹叔父ですか……。
「そうなんですか、ご苦労様です」
「ふふ、そうでもないぞ。最近、緋音は来なくなっておったからな、会えて嬉しい」
「私もですよ」
「おお、そうだった。緋音、せっかくじゃからいつものをやらないか?」
いつもの……。
「いいですよ、久しぶりですね」
「うむ」

「ではの、そこの坊。皆を下がらせてくれ」
「あ、はい」
うわ、黎が坊や扱いされてる。いや、でも違和感ないかな。見た目高校生だし……。

「もっとじゃ、危ないぞ」
「あ、はい」
「五メートルくらい離れよ、巻き込まれたら死いや怪我するぞ」
「何やるつもりなんですか……」
「気にするな、坊」
「はあ……」


なんて会話は集中していた私にはもう聞こえていなかった。
軽く柔軟をする。それから跳んで、うん、大丈夫。

よし。行こう!


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