担任とクラスの反応
「よし、着替え終わった」
何の問題もなく目覚めた私は、ベットを整え歯を磨き制服に着替えた。髪は寝ていると基本的に動かないので寝癖もないしそのままにしている。ちなみに私が腕を通しているブレザーは何故か白に黒のラインが入ったもの。どうやら成績優良者は制服も違うみたいだ。普通の制服と色が白黒が反対になっている。
こういうのって本当にあるんだなあ、妙に感心していると
ピンポーン
チャイムが鳴った。
「おっはよー、ゆったん!」
「おはよう、準備できてる?」
「おはよう……」
上から、りり、律、優紀。突然の編入だったので、教科書などを授業前に取りにいかなくてはいけないと話すと「じゃあ、案内しようか?」と律が提案してくれたのであり難く甘える事にしたのだけど……
「何故、二人まで?」
「りっくん狡いから!りりもゆったん案内するー」
「……」
ほほを膨らませるりりとぼやっとしながらも頷く優紀。
そんなに編入生の案内したかったのだろうか?珍しいからなあ。
「レッツゴーー!!」
遠足に行く小学生みたいだね、りり。
「遠いね……」
「そうだね、この学校広いし」
相変わらず無駄なくらい広い。職員室は第三棟にあるらしく結構歩く。(第一棟が寮棟、第二が一般の教室、第三が職員室や特別教室、第四が部活棟)前の学校はこんなに広くなかったから、慣れない。
「着いたよー」
りりの方を向くと、確かに職員室と書かれたプレートが下がっている扉の前に立っていた。
「1ーS担任の黎ちゃーーーーん!!ゆったん連れて来たよーー!!」
「その呼び方、やめろっていってるだろう」
頭を掻きながらやってきたその人物は、黒髪黒目の顔が整っている事を除けば普通そうな人だった。いや、長髪だから普通ではないか。長い髪を首の所で一つにまとめているのに、女性っぽくはない。けれど、見た目が若い。とにかく若い。教師だから少なくとも24歳……見えない。せいぜい20歳、高校生でも十分通じると思う。
「いいじゃん、別にー」
「あのなっと、編入生だよな。オレは結城 黎。あんたのクラスの担任だ」
自己紹介した結城先生は、私の顔を見た瞬間僅かに瞳を揺らした。紫野や律、蒼哉と同じ懐かしそうな顔。彼まで知り合いなのか、私は。
「だってさー、黎ちゃんの名字優紀とかぶってるんだもん!」
「あー、聞こえない。耳の調子が悪いのかなー」
「ひーどいー!」
完璧にりりを無視した結城先生は、手で机の一角を指し示した。
「律、そこ教科書あるから運んでやれ」
「わかった」
「あ、私が運ぶ」
「いいよ、任せて」
しかし、結構な数だぞ。全教科なわけもあって十数冊はある、申し訳ないよ。
「本当にいい?」
「まかせて」
「じゃあ、よろしく」
どうやら、律には引くつもりはなかったようだ。ありがたくお願いしよう。
「じゃ、優菜はオレが名前呼んだら入ってこいよ」
「わかった」
あの後、教室に着くまでに何故か結城せんせじゃなかった黎からは「優菜」と呼ばれるようになり、私は「結城先生」と呼ぶのを禁止にされた。なんだか背筋が寒くなるらしい「結城先生」呼びは。それから、敬語も禁止らしい。同じ理由で。
「きゃー!!」
「!」
黎と律、優紀が入った途端に悲鳴が聞こえてきた。恐怖の悲鳴ではなく歓喜の悲鳴が。……皆顔立ちは整っていたからな。というか黄色い悲鳴って初めて聞いたな。自分の悲鳴は……あげた事がないがこんな高い声は出ないだろうし、ここまで騒がれるような容姿の人間はいなかったからな、中学には。
「あー黙れ、黙れ。今日は編入生を紹介する。御言神 優菜入れー」
「失礼します」
……何か視線を感じるんだが……。
私はそんな変な格好をしていただろうか。思わず首を傾げると、女の子のため息が聞こえた。
ため息を吐きたくなるほど、変か?若干沈んでいると
「おい、あいさつしようぜ」
というやる気のない声が聞こえた。
「編入してきました御言神 優菜です」
笑みを浮かべつつ、挨拶すると女の子達に思いっきり顔をそらされた。
それ、少し悲しくなるのだけど……。
「じゃあ御言神の席は…あーあの教科書めっちゃ乗ってる所だな」
隣が律で前が優紀、その隣がりりの窓際の一番端の席、うん、いい所だ。
「これからよろしくお願いしますね」
席に移動する前に続きの挨拶をすればまた顔をそらされた……何故?
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