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  紅一片 作者:散葉
私の家(部屋)
直通エレベーターに乗って十階へ、今度は紫野達には遭遇しなかった。
1004号室を探し当て、指紋認証システムを解除。

中の部屋は、広い。下手なワンルームマンションよりも広い。
白と茶色を基調とした部屋で、家具家電つき冷暖房完備。ついでに家電もパソコンも最新のもの。流石、金持ち学校。
家具も一級品らしくソファーの触り心地もいい。風呂も充分な広さがあるし、システムキッチンも付いている。……食堂があるのに何故?
うん、文句が一つあるとすれば掃除が面倒だな。ここまで広いとさ。

「片付けよう」
取り敢えず目の前の段ボールの山を片付けよう。私が見た時よりも増えている気がするのは気のせいだと思いたい。



ピンポーン
インターホンの音に顔を上げる。どうやら作業に没頭していたようだ。外が暗い。
母からのプレゼントらしきものは見なかったことにした。私の手に余る。
そういう趣味の人がいたらあげよう。

ピンポーン
あ、誰か来ているんだった。待たせてしまった。
「はい」

「初めましてーこんばんわー」
ドアの向こうには美少女のアップ。
「!」
「いや、りり。離れようか、驚いてる」
「こんにちは!編入生ちゃん!名前はー?」
「ねえ、人の話し聞いてる?」
「りっくん、うるさーい」
「だから、顔近いって」
「いいのー」
勝手にポンポンとされる会話。
驚いている私は放置ですか、君たち。
状況が全く分からないんだが……。

「ねえ、名前は?」
横からくいっと袖が引っ張られて、見ると銀髪の美少年。いつの間に来たんだ。こてんと首を傾げながら聞いてくる。
「御言神 優菜」
「優菜、か」
そう呟くと、美少年に今度は腕を引かれた。
「僕は狐村 優紀。行こう」
「え、いや。放っておいていいの?」
「いい。自業自得」
後ろでは開けた時目の前にいた美少女がもう一人の青年に諭されていた。こちらに気が付く様子はない。
思ったよりも強い力で腕を引かれた私は逆らえずそのままエレベーターに乗り込んだ。


「狐村君、何処に行くつもり?」
「食堂、ご飯食べる」
「もうそんな時間か」
「優紀」
「?」
「優紀って呼んで優菜」
こちらを向いてふわりという効果音がつきそうな顔で笑う優紀。
いきなり自分の名前を言って何がしたいのかと思ったら、そういう事。
うん、やっぱり可愛い顔しているね、羨ましいくらいに。銀色のさらさらとした髪に深い藍色の瞳は大きくまつげも長い。女の子じゃないのがもったいない。
「わかった、優紀。ところで何故私を呼びに来たんだ?」
「編入生が来るって聞いて、クラス同じだから顔見に行こう。で一緒にご飯食べよう」
これは、歓迎してくれていると取っていいのかな?無表情だとわからないな、端から見ると私もこんな感じなのか……。絡みづらかっただろうな、私。反省しよう。

「着いた。行こう」
考え込んでいた私の手をごく普通に握って歩き出す優紀。その顔には無表情ながらも何処か嬉しそうだ。
懐かれた……?それとも食事が楽しみなのか……?

なんて疑問を持ちながら繋いだ手はそのままで私は一歩踏み出した。


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