寮に到着!
あの後、結局紫野と蒼哉が誰なのか思い出せないまま二人と別れた。「後で絶対遊びにいくから!」と最後に紫野は叫んでいた。
そしてただいま寮管室前。
息を整え、ドアをノックする。
「はーあーいっ」
中から可愛らしい声が聞こえる。
中から出てきたのは、声の予想を裏切らない女の子。
癖のある髪を後ろで一つにまとめた可愛らしい子、小さいせいか若干見下ろすようになっている。
「今年から編入する御言神 優菜ですが」
「あー!噂の編入生ですか!?」
「噂?」
「はい!この難関校の中でも難しい問題を集めた編入試験にほぼ全教科満点で合格したということですよ!」
「あ、そうなんですか」
胸の前で手を組んで力説する女の子。小動物みたいだなあ。
「あ、こんなところで話しちゃダメですね。どうぞ」
そう言われて入った寮管室は例に漏れず豪華だ。
監視カメラの画面や最新型のパソコンなどで埋め尽くされた部屋に小動物みたいな女の子。……似合わない。
「えーと、取り敢えず学生証と生徒手帳渡しますね。学生証は学食とか購買部とかで財布代わりですから無くさないでくださいね?」
「分かりました」
渡されたのは小さな本とカード。カードには私の顔写真と名前がかいてあり、金色の線が入っていた。クレジットカードみたいだな、これ。
「次に寮の説明ですね。四階から女子1年、2年、3年、男子1年、2年、3年で成績優良者です」
「成績優良者?」
「はい、要は学年の主席、次席の人達ですね。御言神さんは成績優良者の階です」
「へえ」
「あんまり嬉しそうじゃありませんね。基本的に自分の部屋以外の階には行けません。監視カメラで常に認識されますし、まずエレベーターが学生証を通さないと動きません。……皆さん、あんまり守ってくれないですけど。例外は理事長と生徒会、そして私です。ここまでいいですか?」
「はい」
「一階はこの寮管室とロビー、購買部です。何かあったら来てくださいね。二階に食堂、三階は大浴場と自習室とトレーニングルームです。十二階は理事長室です。あと、十階から十二階までの直通のエレベーターがこの部屋を出た正面にあるので使ってくださいね。あと、異性の階への侵入または生徒会への侵入などの違反行為は慎んでくださいね。あまりにも目に余る場合は理事長を通して保護者へと連絡され、それ相応の罰が与えられます。……これくらいですかね。何か質問はありますか?」
「いや、ないですね」
感想を言うなら、長かった。あと、貴女可愛いですね仕草とか。
「どうもありがとうございました。分かりやすかったです」
「へ、いや?私の仕事ですし、別にいいですよ?」
「それでも、ありがとうございました」
きっちりと頭を下げてから、顔を上げると何故か女の子は涙目だった。
「礼儀正しいんですね!私、そういう人大好きです。また遊びにきてくださいね!」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「あ!私自己紹介してませんでしたね、三年の北条 由良です」
あ、先輩だろうとは思いましたけど、三年生だったんですね。全然見えないです。
「優菜ちゃんの部屋は1004室です。扉は指紋認証なので人差し指を当ててくださいね」
「はい、では」
気が付いたら、御言神さんから優菜ちゃんへ……そんなに気に入られたのか。
ちょっと嬉しかったかな。
「部屋、行こうか」
この時、私はまだ気が付いていなかった。
自分自身の変化に……。
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