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  紅一片 作者:散葉
まだまだ話は進まない……
「無駄だ」
思わずそう呟いてしまった。

 目の前に広がるのは、終わりが見えないレンガ作りの塀と三、四メートルはある門。その遥か向こうに、西洋の城を思わせる校舎らしきものが見える。

それにしても、どうやって学園内に入ろうか。
門を飛び越えるか。これくらいなら簡単だな。

なんて考えていたらインターホンを発見。普通の学校にはあるものなのか。
押してからしばらくすると、聞き慣れた声がした。
「優菜か?」
「真樹叔父、久しぶり」
「良く来たな、取り敢えず理事長室来い。俺は待たされるのが嫌いだから速くしろよ」ぶち

流石、母の弟。相変わらず自由人だ。
音をたてながら、ゆっくりと開いていく門を見ながら理事長室は何処なんだ?と当たり前の疑問が浮かんだ。


意外にも私は迷うことはなかった。
門が開くとそこは庭だったらしく天使を象った像の噴水と学園の案内板があった。何故学校に噴水?と思いつつ、案内板を見るとどうやらこの学校は四つの校舎に分かれているようでそこから理事長室の文字を探し、頭に入れるとそのまま歩き出した。
授業中のせいか、廊下には人が居なくしんと静まり返っていた。途中でサボっているカップルを見かけたけれど、私には関係ないことなので無視した。
 理事長室は寮の上にあるらしいので、見つけたエレベーターで12階を押す。エレベーターも軽く20人程度が入れそうなもので、流石金持ち学校と密かに感心した。


エレベーターを降りると、広い廊下の先にドアが一つ。理事長室しかないんだ。
ノックを二回程して待っていると

ガチャ
「優菜〜!!」
「!」
ゴン

ドアが開いて、そのまま飛び出してきた真樹叔父。思わず受け流した結果、顔面を壁に強打したようだ。
「優菜……久しぶりの叔父さんの愛の抱擁を避けるのか…」
真樹叔父、黒いオーラが出てしまっているよ。母と同じで若々しい美形だから迫力も凄いね。
「すまない、条件反射で」
「……優菜がキスしたら許す」
…………。
ああ、そうだった。真樹叔父の面倒な所は、私にセクハラしてくる所だった。忘れてたな。

「面倒」
「してくれなきゃ学校の説明しねえ」
「職権乱用」
「うるせー」
「じゃあ、異性が気になるお年頃なので」
「嘘つけ、興味ないだろ」

うん、ないね。冗談だよ。仕方ない、諦めよう。話が進まないし。

「じゃあ、しゃがんで」
「やった!」
……子供か、貴方何歳だと思ってる。
私の身長は172cm。女子にしては大きい方。しかし真樹叔父は180cmは超えているので、普通なら届かない。
「ほれ」
顔差し出してくる真樹叔父に顔を近づけ…チュとキスをした。

「…………おいおい頬かよ」
「何か文句でも?」
「ちぇっ」

………もう一度言おう、貴方は子供か…。
というかただ学校の説明をするのにどれだけ回りくどいことやってるんだ。理事長が真樹叔父で大丈夫か?


「じゃ、まずこの学校についてな」
「ああ」
「知ってるとは思うが此処は良いとこの坊ちゃん、嬢ちゃんが通う学校だ。プライドの高いやつだの高飛車なやつだのがわんさかいるから、優菜なら大丈夫だと思うが友達は見極めろよ」
「わかった」
「まああとは………おいおい慣れてくとして、組織図とかは寮の部屋にある指南書でも読んでくれ」

はしょったね。

「重要なのは生徒会」
「生徒会?」
「ああ、取り敢えず気をつけろ」
「何故?」
「生徒会は実質俺の次くらいに権力のあるやつらだ。生徒会メンバー自体は全く問題ないんだけどよ。問題はその周りだ」

「生徒会は投票っていうか推薦で決まるんだが、どうせなら顔がいい方がいいだろ?」
「そういうものか?」
「そういうもんなんだよ。しかもここの坊ちゃん嬢ちゃんをまとめる必要がある。だから、生徒会メンバーは顔、カリスマ性、家柄、学力、人気があるやつらの集団になる」
「ふーん」
「ちなみに、俺も麗菜も生徒会長だったぞ」
「卒業生?」
「少しは驚けよ」
「興味ないし?」
「お前なあ、まあいいや。そんなんだからか、生徒会メンバーには親衛隊がついてんだ」
「女の子にも?」
「たまにいるな、親衛隊付きの女子。麗菜みたいなやつ。ああ、でも今の会長は女子だな、あいつは男子のファンクラブがあってその人気がすげえ」
「……ファンクラブと親衛隊、別物なんだ」

「で、そいつらは過激だ。近づくやつがいれば、制裁という名の下何でもして排除する」
だから、気をつけろと真剣な顔をした真樹叔父。
「わかった」
興味ないけど、気をつけよう。

「何かあったら、直ぐに言え。理事長権限でも何でも使って助けてやる」
「ふ、職権乱用だね」
真樹叔父らしい物言いに思わず笑ってしまった。
「いいんだよ、優菜の為なら」
そう言いながら、頭を撫でてくれる真樹叔父。そういう所は好きだよ。
「じゃあ、そろそろ行くね」
「ああ、いつでも来いよ」「ん、わかった」


理事長室を出て歩き出す。それにしても厄介な学校だな、ここ。


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