05 船での生活を紹介するのです!パート3
今日も平和に終わり……ませんでした。他の海賊さんの襲撃が来たのです。
戦闘だと丸っきり役に立たない私は船の中の扉から皆さんの様子を見ているのです。皆さんは凄く強いのです!扉を守ってるのはラウラさんなのですが、扉に近づこうとしてもその前に他の船員さんに攻撃されて近づけないみたいなのです。あ、ゆー君発見なのです!ゆー君が愛用しているのは細身の剣で繊細な細工がしてある品のいい物なのです。やっぱり幹部の皆さんの強さは別格らしく、ルイさん辺りは笑顔で敵さんの相手しているのです。そんなにストレスたまってるのですか?ルイさん。今度ギルさんに頼んで調理場を使わせてもらいましょう。お菓子かなにかをプレゼントしましょう。我ながら名案なのです。
「何か少ねぇな」
こんもりと山を作った宝物を見ながら、船長さんは言うのです。あれでも、少ないのですか……。海賊さんは危険と隣り合わせなのを考えなければ他の職業よりもずっとお金持ちさんなのですね。
「大体の物は売った後だったみたいだね。でも、そのお金の方も拝借してきたから」
「じゃ、別にいいか」
凄くキラキラしているのですよ。宝石さんとか細工が細かい物もあって綺麗なのです。触ってみてもいいのでしょうか?
「船長」
「ん?どうした、ラウラ」
「しーちゃんが、襲撃中ドアに張り付いてるんだけど、危ないからもっと奥に行くように言ってもらえませんか?」
「隠れてねえのかよ」
「はい、全く」
「はぁ、おい紫苑!」
「ふにゃ!?」
いきなり首根っこを持って持ち上げられたのです。ちらりと視線を向けるとちょっと怖い顔をした船長さんが居ました。
「何なのですか……?」
「お前。襲撃のときはもっと奥にいろ!危ねえだろうが!」
「だって、もし扉以外の所で隠れてて私が見つかったら抵抗できませんし、助けも呼べないのですよ」
それに、扉の前は皆さんが守ってくれているので安心なのです!そういうと近くに居たゆー君に呆れた顔されてしまったのです、何でなのですか?
「紫苑、襲撃だったら武器使うだろう。血とか怖くないのか?」
「怖くないのです?だって世界は弱肉強食なのです!働かざるもの食うべからずなのです!だから、役に立たない私は皆さんの邪魔にならないかつ敵さんの手の出しにくい場所に居るのは当たり前なのです!」
だって皆さんのすぐ近くで扉という障害物がある場所は手を出しにくいのです!役に立たない私はせめて荷物にはなりたくないのです。養ってもらってる分際で文句なんてあるわけないのですよ。
「血はお魚さんの解体で見慣れてるので大丈夫なのです!」
「いや、それは流石に結構違うと思うよ、しーちゃん」
ラウラさんの突っ込みが聞こえましたが知りません。
「そっか、じゃあ、危ないと思ってらすぐに呼べよ」
「はいなのです!」
そう言ってゆー君は頭を撫でてくれました。さっきから船長さんは爆笑しているのです、あ、要さんに「煩い」って手刀を入れられたのです。甲板に皆さんの笑い声が響きました。
その後は、荒れてしまった甲板のお掃除や皆さんかすり傷でしたが怪我の治療をしているうちにあっという間にご飯の時間になったのです。今日は思わぬ収穫があったということで宴が行われる事になったのです。皆さん、楽しそうに騒いでいるのです。
「あ、そうだ。紫苑ちゃん」
私の角を挟んで隣に座っている要さんがふと声をかけてきました。
「はい。何ですか?」
「もう1日2日で陸に着くから、そしたら紫苑ちゃんの物買おうね」
「お気を使わなくていいのですよ?この服でも十分なのです」
今着ている服はゆー君のシャツを要さんがワンピースに直してくれたもので動きやすくて気に入っているのです。
「だめ。私が買いたいのだから、ね?」
笑顔なのですが、何か逆らってはいけない物を感じるのです。
「わかったのです、ではお願いするのです!」
「はい、任せて」
今度はにっこり笑顔な要さんだったのです。
「今日も1日おつかれさまだったのです!」
宴も皆さんが大分酔っぱらって寝てしまったので、お開きとなりゆー君と一緒にお部屋に戻ってきたのです。
「ああ、お疲れさま」
ゆったりとした服に着替えたゆー君が、ベットにやってきます。最初ゆー君はソファで寝ると言ったのですが、私がお願いして同じベットに寝ているのです。ゆー君のベットは大きいので私とゆー君が寝てもまだゆとりがあるのです。
「おやすみなさいなのです、ゆー君」
「ああ、お休み」
その声と一緒に灯りが消えました。
「ゆー君、寝ましたか?」
暫くした後、ふとゆー君に声をかけました。
「いや、まだ起きてるよ」
「あのですね」
少し戸惑っているとゆー君は手を握ってくれました。温かいその手に落ち着いた私は、ゆー君と目を合わせて言うのです。
「ゆー君は今幸せですか?」
唐突な問いだと言うのにゆー君はたいして気にした様子もなく「どうだろうな」と答えました。
でも、その目には優しい……本当に穏やかで優しい光が浮かんでいました。その瞳は私から見ると凄く幸せそうでした。
「私はとても幸せなのですよ」
じんわりと温かさを感じる手を握っていると、そこから体温の温かさが全身に広がっていくような気がしたのです。その温かさに少しだけ泣きそうになりました。
たとえ、この手が何かを奪ったって嫌いになる事はないのです。それこそ、たくさんの人の命を奪ったってどんな悪事をしたって絶対に。皆さんを嫌うなんて出来ないのです。この手は私をあの檻から出してくれました、何度も私を助けてくれました。
だって、ゆー君は皆さんは笑うのです。海賊だとかそんな事、関係なく子供のように無邪気に楽しそうに。
「私はここに来れて、よかったのです。海賊でもいいのです。皆さんにたくさん優しくしてもらったのです。色々な事を教えてもらったのです。きっとあの村にいたらずっと分からなかったような事もいっぱい。だから、私を買ってくれたのがゆー君でよかったのです。ありがとうございます。……私は今、幸せなのです」
この温かい気持ちが手を通して、伝わればいいのに。
「すぅ……」
その言葉を言って満足したのか、紫苑は寝てしまっていた。聞こえるのは、規則正しい寝息。手のひらに感じるのは確かな温もり。
「ありがとう、か」
ふ、と自分の顔に穏やかな笑みが浮かんでいるのが分かる。
紫苑を起こさないように近づきその綺麗な髪を空いている手で梳く。さらりとしたその髪は途中で絡まる事なく、手を流れる。
「お礼を言いたいのは、オレの方だよ」
そう、ただあの檻の中に居た紫苑を最初は可哀想だと思った。だから、助けた。
でも、彼女は思ったよりずっと強かった。海賊だからといって脅える事もなかったし、信頼もしてくれた。
色々な事を教えてもらったのは、オレの方だ。紫苑の感情を映すその鮮やかな心にどうしようもなく惹かれる。その強さに、纏う空気に、毎日毎日惹かれていっている。
「まだ、想いを伝えるには早い」
まだ、オレの周りには煩わしい物が多いから。自分なりのけじめがついたら、伝えよう。
「だから、今は。ありがとう、紫苑」
その言葉と共に紫苑の額にゆっくりと唇を押し当てた。
こうして、彼らの1日は終わっていった。
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