憂楽帳:発達障害と投薬
毎日新聞 2013年02月13日 西部夕刊
いつもぼーっとしたような感じで、視線が合わない。小3の息子が向精神薬を飲み始めて3カ月。「気分が落ち着くからと処方されたけど、やめました。生まれつきの障害を薬でどうにかするのも変だと思って……」。自閉症の子をもつある母親は話した。
発達障害の子供に向精神薬を処方する流れが強まっている。多動だと「衝動が抑えられる」、不登校だと「生活をただすため」などと、統合失調症の薬や睡眠薬が出る。親は「お医者さんが言うなら」と受け入れがちだ。
昨秋、不幸な事故が起きた。日本脳炎のワクチンを接種された10歳男児が心肺停止で亡くなり、調べると、発達障害で3剤の向精神薬を処方されていた。うち2剤は、心臓に悪影響を及ぼす恐れから併用禁止になっていた。調査した厚生科学審議会は死因を特定しなかったものの、2剤の相互作用による心停止を疑う声も出た。
向精神薬は中枢神経に作用するが、成長期にある子供の脳に及ぼす影響は検証されていない。発達障害の子供たちを取材した経験から、発達障害を診る児童精神科医は常に、慎重な診察を心がけてほしいと思う。【山本紀子】