無題・シスター悪魔化
- ――シスター。悪魔がはびこるこの大陸では彼女達は重要かつ異質な存在だ。
彼女達は神への信仰心をエネルギーとして変換し奇跡の力に変える。
エネルギー体を武器上に形成する者や、魔法のように扱う者、体に宿し身体能力を上げる者など
本人の性格、素質に関わるところが多い。
魔力とは違うその不思議なエネルギーを操る様は神々しくまさに神の使いのようであり、人々の期待を一身に背負わさせられていた。
ここエルドアにはそんな彼女達シスターが奇跡の業を鍛えるべくして集まる教会兼修練所がある。
都市が集中する大陸北部からかなり南下した位置にあり、町というよりは村という表現の方が近いだろうか。
エルドアより南は悪魔の巣窟となっている深い霧に満ちた森があり、教会は見張りも兼任されている。
森に住まう悪魔の脅威度は低く、修練を積む未熟なシスターたちを育てるにはうってつけの土地であった。
「それではリリィ、留守は任せましたよ。」
教会の入り口にいるのは教会兼修練所責任者であるマザーシスターとその教え子のリリィ。
リリィは真面目で清楚な少女。10代中頃と幼いながらにして修練所卒業を間近に控え、実力ともに一人前と呼ぶにふさわしいシスターである。
マザーシスターが教会本部からの呼び出しを受けたため、彼女が留守の間リリィが未熟なシスター達や村の人々を守る任を与えられた。
本来責任者が教会を留守にする際には本部から代理を務めるシスターが派遣されるのだが、
危険の少ない土地であり、リリィの実力を信頼しているマザーシスターは派遣の申し出を断り、リリィに任せることにしたのである。
- マザーシスターが本部へと旅立った夜、一通りの責務を終えたリリィは一人自室で身を休めていた。
修練所で自習をするシスターたちの見回りはもちろんのこと、近くにある孤児院の子供たちの世話もあり、いつも以上の疲労が彼女を襲っていた。
壁にかかるランプの明かりをぼうっと眺めながらうつらうつらしているとコンコン、とノックが聞こえる。
「夜も遅いのにどうしたのかしら。」
リリィは体を起こすとドアを開ける。ドアの向こうには見知ったシスター見習いの少女がいた。
「リリィさん森の様子がちょっと変なんです。」
彼女はおびえる表情を見せながら話す。
「見たこともないくらい深い霧で――」
彼女が言いかけたその時、派手な爆発音があたりを包み込む。
教会裏、森の方向からだ。
「みんなを修練所に避難させて!私が様子を見てくるからあなたたちは外に出てはだめよ!」
そう少女に命令するとリリィは森の入口へと駆け出した。
森の入口が見えてくる。話の通り深い霧に包まれていた。1メートル先も見えない。
「確かに変ね。一体どうしたのかしら・・・?」
リリィが考えを巡らしていると今度は教会内から爆音が聞こえた。
「っ!!」
彼女は駆け出し扉を開けると中へと入りあたりを見回す。
そこには砕かれた女神像の上に佇む悪魔の姿があった。
- なんという大きさだろうか。それは訓練で相手にする低級な悪魔の3倍以上――
見上げるような大きさの悪魔だった。低級でないことは誰でもわかる。
そしてそれは入ってきたリリィを一瞥すると口から言葉を発した。
「マザーシスターはどこだ」
威圧するかのような低い声にリリィはたじろぐ。
「俺は10年前あの女によって森に封印された。相変わらずこんなところでシスター共を育てているようだが今日で終わりだ。
全員皆殺しにしてくれる。」
皆殺しという言葉を聞いてリリィは我に返る。マザーシスターのいない今、ここを任されているのは私だ。
「消えてなくなれ悪魔!お前は私が相手をしてやる。」
恐怖を振り払うかのように、そして自分に言い聞かせるかのように悪魔に言い放つとリリィは首元の十字架を胸に、
エネルギーを右手へと集中させて剣の形を構成する。
エネルギー体からなるその剣は伸縮自在で槍のようにもなり
その意外性を持つレンジの長さはリリィの切り札であった。
「死に急ぐな小娘。お前などでは相手にならん。マザーを――」
馬鹿にするかのように彼女に背を向けた悪魔をエネルギー体の槍が貫く。
「グォッ・・・!」
悪魔は声を上げるがすぐに悲鳴は笑い声に変わった。
「ハッハッハ、気に入ったぞ小娘。その容赦のなさ、あの女からしっかり継いでいるようだ。」
効いていない・・・。急に機嫌のよくなる悪魔に反してリリィの気持ちは恐怖に駆られる。
命中し貫かれれば下級の悪魔たちは皆飛び散って消滅する威力だ。
だがその槍が悪魔の体にあけた穴は今目の前で瞬く間にふさがっていく。
これより上の技術は一人前になって任務をこなしながら磨いていくものであり、リリィはまだ持ち合わせていなかった。
- 「ほら、どうした?それで終わりか小娘よ。」
悪魔は両手を広げ、馬鹿にしたような格好をする。刺してくれと言わんばかりのポーズだ。
リリィはキッとした表情を悪魔に向け、剣を構え突っ込む。だが飛びかかろうと踏みこむ手前、首裏に強い衝撃を受けた。
バランスを崩し転倒する。打撃は的確に急所を捉えたようで、体に力が入らない。
昏倒に耐えるリリィの周りをいつ現れたのか、低級の悪魔たちが飛びまわる。上級の悪魔たちは使い魔として低級の悪魔を召喚することがある。
修練所で習った知識が頭に浮かぶが、いかんせん遅すぎた。自分が学んできたことは何だったのか、自分のふがいなさをリリィは悔やむ。
目の前に巨大な手が迫る。リリィは抵抗もできずにあっさりとあの巨大な悪魔の手に掴まれた。
「どうした?お前たちお得意の奇跡とやらで何とかして見せるがいい。それともお前たちの神は助けてもくれないのか?」
リリィが不快感を顔に出し、悪魔がにやつく。完全に楽しんでいるようだ。そして悪魔は使い魔たちに合図を出す。
使い魔たちは下卑た顔をしながらリリィに近づいてくる。口からは先端に針のついた触手のようなものが姿をのぞかせていた。
リリィは得体のしれないそれに恐怖する。そして悪魔の一言がリリィを絶望の底に叩き落とした。
「助けてもくれない神に仕えるよりは――私に仕えたほうが幸せだろう?」
その言葉が合図だったのか、使い魔たちの口から触手が一斉に伸びてリリィの体をまさぐり服を脱がせる。
リリィは抵抗しようとするが体が動くことはなく、使い魔たちは握られているリリィから器用に衣類を取り除いた。
少女のまだ成熟しきっていない、形良く膨らんだ胸があらわになりリリィは目をそむけ赤らめる。
「ククク、恥ずかしがることもあるまい。お前は悪魔、私の眷属になるのだ。服などはいらん。」
その言葉に首を振ろうとするが体はやはり動かない。その様子を見て悪魔の機嫌はよくなるばかりだ。
- 「そろそろいいだろう。――やれ。」
その言葉を合図に再び使い魔たちが近づいてくる。口から針のある触手を出しリリィの体を再びまさぐると得体のしれない針を刺し始めた。
三本のうち一つは肩へ、もう一つは秘所へ、そして最後の一本は頭、脳へと刺された。
頭に刺された瞬間、全身を強い痺れが襲い視界がぼうっとする。体は徐々に痙攣をはじめ、針から体に注入された何かが
全身に回っていくのを感じた。意識がだんだんと薄れていく。全身に回る感覚は次第に快感となり、リリィは心地よさを感じるとともに
もう嫌がっていない自分の心の変化に気付く。だがいくら打ち消そうとしても胸には喜びが浮き上がってくる。
自分はこの悪魔の下僕となる・・・そう思うと不思議と気分は高揚し嬉しくなった。
やがてリリィの感情は支配され、シスターとして誠実さにあふれていた自我は下僕として支配されることを望む悪魔のそれへと変わってしまった。
「もうそろそろだな」
次第にリリィの肌の色が変わり始める。幼さをのこしたきれいなピンクがかった肌は次第に青ざめていくと、薄くも禍々しい青色へと変色した。
口からは牙が生え、まるで生き血をほしがっているかのように薄明かりの中で光る。
悪魔は体の変化を邪魔せぬよう、彼女を手から解放する。
するとタイミングを見計らったかのように爪は鋭利な凶器と化し、頭からは禍々しく歪んだ角が、そして彼女の腰からは尻尾が生え出す。
黒光りした禍々しいそれをうねらせる姿はまさに悪魔そのものだ。やがて人間にあってはならないものが生え揃うと痙攣はおさまり、
そこには身も心も支配され悪魔の下僕となり果てた元シスター、リリィの姿があった。
- 「小娘、どうだ?我々の仲間となった気分は。下らない人間などとは比べ物になるまい。」
悪魔の問いかけに彼女は洸惚とした表情を浮かべ答える。
「最高ですわご主人さま。私はあなた様の下僕、何なりとご命令ください。」
悪魔はその言葉に満足そうに頷くと最初の命令を与える。
「この教会で育てているシスター達を皆殺しにしろ。俺は本部へ行きマザーを始末する。」
そう言うとリリィにこの場を任せ飛び立った。
主人の姿を見送り終えると彼女は修練所へ向かう。自分に頂いた命令の通り、シスターたちを始末するためだ。
修練所の扉の前に立ち手を前に出す。すると濁ったエネルギー体が手に集中し扉を木っ端みじんに吹き飛ばした。
威力は強化されており、その禍々しい濁り方はシスターの時に使った澄んだエネルギーとはまるで正反対のものであった。
爆音を聞きつけた上級生達が駆け付ける。そして悪魔となったリリィを目の当たりにし悲鳴をあげた。
「リ、リリィさん――」
リリィが横に手を振ると彼女達の体が爆ぜた。血煙が舞い臭いが鼻を突く。だがその臭いは悪魔となった彼女の心をさらに高ぶらせた。
我慢できなくなった彼女は奥に進み残っているシスターたちを次々と手に掛ける。
――数分後、そこにはかつての同僚たちの肉片が散らばる中で洸惚としながら快感に悶え尻尾を揺らす悪魔の姿があった。
-
「あら、随分お早いお帰りですね。」
すぐに戻ってきた悪魔を見てリリィが不思議そうに言う。
「マザーにはすぐそこで会った。封印のほつれを感知し、引き返していたようだ。手間が省けたな。」
マザーの血だろうか?悪魔の腕には大量の血が付いている。
「マザーは死に際に私の意志はリリィ達が継いでくれる、と言っていたからお前を悪魔に変えて服従させたことを話したよ。あの絶望する顔は滑稽だったぞ。」
どんな答えを期待しているのか、にやついた表情をしながらリリィに教える。
「うふふ・・・私はご主人さまの下僕になったのですもの。そんな女の言うことなんかどうでもいいですわ」
リリィはただ笑顔で返した。
「とりあえずこの大陸からは移動することにする。わざわざシスターが住まうこの大陸にいること自体ナンセンスだ。まずは――港町だな。
そこを制圧して船で外海へ出よう。大陸間ほどの超長距離を飛ぶのはしんどいし、お前をつれていけない。」
悪魔がこの先の計画を話す。
「そう言えば、ご主人さま・・・」
リリィが急にもじもじしだし上目づかいで見上げる。
「お名前はどうお呼びすればよろしいでしょうか?ご主人様、のままで?」
悪魔にはなぜ名前などで、こうも態度を変えているのか疑問だったが昔呼ばれていた名前を思い出す。。
「ベイウェルだ。名前でもご主人様でも好きな方で呼ぶがいい。」
仕えさせるだの言っていたあの悪魔らしくない返答であった。ベイウェルにとって初めての直属の下僕であるため扱いに戸惑っているのだろうか。
その言葉を聞いてリリィはにっこりとほほ笑む。ベイウェルはどきっとした。悪魔になり、力を得たとはいえまだ少女。
シスターの使命に押さえつけられていた可憐で明るいな性格は、皮肉にも悪魔となったことで解放されたようだ。
ベイウェルは胸に湧き上がる妙な気持ちを振り払う。この娘は下僕なのだ。俺は何人も下僕に心奪われ身を滅ぼした友を見てきた。
ベイウェルは強く自分に言い聞かせる。ではなぜいまさら下僕などを作ったのか?次なる疑問が浮かぶがそれを打ち消すために彼は言葉を発する。
「もういいだろう、それでは東の港町サントへ向かい制圧する。皆殺しにしてもいいがお前が手に入れた力をもっと知っておきたくないか?」
「力?あのエネルギー体のことですか?」
修練所でシスターたちを肉片に変えたあの濁ったエネルギーのことを思い出す。
「それもあるが、エネルギー体は中級以上の悪魔なら大体使える。お前は力主体の俺と違って魔牙や魔道具を使いこなすタイプだ。」
「魔道具?」
リリィが首をかしげる。
「順を追って説明しよう。まずお前の牙についてだ。」
ベイウェルがリリィの口元からちょこっとのぞかせる牙を指さす。
- 「我々原生デーモンの直属の下僕となった者にはその牙が与えられる。人間に刺すことによりその者の体を望むとおりの異形に変えて
使役することができるのだ。もちろん体そのままに洗脳することもできる。」
「すごい・・・。」
牙には毒が含まれており、主の思い通りの毒を作りだし対象の体を自在に変えて魔物にすることができるのだ。リリィは力を早く試したくて、わくわくする。
「そして次に魔道具についてだが、これはしばらく私が作成したものを渡そう。経験がいるのですぐには作れない。」
そういうとベイウェルはリリィに針を渡す。何か干からびた物の中から鋭い針が飛び出している。リリィは首を傾け疑問の意を示した。
「これは感染魔蜂の毒針だ。針の毒には強力なウィルスが仕込まれていて刺されて侵された人間を魔蜂の姿に変える。魔蜂になったその者も
同じく別の人間を襲い、針で魔蜂に変えてしまう。いわゆる感染連鎖型さ。大規模の町などで使うと効果的だ。」
リリィは興味深げに眺める。今後シスターたちの追撃をかわし、町を制圧していくにはこういった道具がカギを握ることになる。
リリィはしっかりと針をしまった。
「それではいくか――ん?リリィ、シスターはすべて始末したのではなかったのか?」
ベイウェルが顔をしかめる。視線の先から一人のシスターがこちらに向かってくる。
「おかしいですわね・・・修練所に集めて全員殺したはずですが。」
リリィも怪訝そうな顔をした。
「リリィ!!」
そのシスターは叫び、近づこうとするがベイウェルの巨体を見て歩みを止める。
「リリィ、あなた一体その姿・・・。それに隣にいるのは悪魔じゃないの!?」
リリィのその一糸まとわぬ姿、そして何よりも人間にあってはならない物――角とうねる尻尾をみて女は驚愕する。
「――サキ・・・?」
リリィが洩らす。サキとはリリィと同じく卒業を控える3歳上のシスターであり、今日は村の見回りを担当していた。
そのためリリィの虐殺を逃れ、こうして戻ってきたというわけだ。リリィとは歳が離れながらもともに苦難を乗り越えた親友同士であった。
「リリィ!これはいったいどういうことなの!!説明して!!」
サキはパニックに陥っているようだ。それも当然か。彼女の眼の前には異形の姿となった親友とその横にいるのは見たこともない巨体の悪魔。
「うるさいわね・・・私は、ベイウェル様の下僕になったのよ。素晴らしい悪魔の体も与えていただいたし、身も心も一生この方にささげると誓ったの。
邪魔をするなら遠慮なく殺しちゃうから。」
興奮するサキをリリィはめんどくさそうにあしらう。悪魔になった彼女には人間の時の親友など障害でしかない。それがシスタ―ならなおさらだ。
呆然と立ち尽くすサキに対し、リリィは歪んだエネルギーを手に集め修練所のシスターたちと同じ末路を辿らせようとする。
「おい、リリィ。その牙の使いどころではないのか?通常の人間ならまだしも、鍛えられたシスタ―ならそれなりの魔物に変えることができるぞ。
どうせならここの村も消してしまおう。」
今まで沈黙を保っていたベイウェルが口を割る。
- 「わかりましたわベイウェル様。」
リリィは頷くと、鋭い跳躍で一瞬にしてサキの背後へと回り込み体を押さえた。
「!!?」
呆然としていたサキは当然ながら反応が遅れ、そしてそれが仇となった。
リリィの牙がサキの首元に深々と刺さる。体を押さえられている彼女は何もできずリリィの牙から毒を体内に次々と受け入れる。
「り、リリ・・・ガッ・・・」
次第に彼女の体は痙攣しだし、口元は大きく変形しワニの様に前に出っ張りだす。
牙は鋭く何本も生え、人の体などたやすく食いちぎれそうだ。
眼も爬虫類のように鋭く瞳も縦に長くなる。そして下半身は変形し尻尾となり、手や足は鋭い爪を伴い短く変形する。
「うふふ・・・サキィ〜、あなたは私のお人形さん・・・魔物になるのよ」
苦しむ先を目にしてリリィは嬉しそうに目を細めた。
「ガ、アァァァ」
サキの必死の抵抗も空しく、やがて彼女は自我を失ってワニの様に体を引きずり動きはじめる・・・魔物の完成である。
「ゴシュジサマゴエイエイヲ」
シスタ―服を着る、サキであったその魔物は這いずりリリィに近づくと言葉とも鳴き声ともつかぬ声で命をせがみだす。
「エルドアの村人を一人残らず食い殺しなさい。あなたは魔物なんだからできるでしょう?それが終わったら魔物として野生に帰っていいわよ。
オスに種づけでもしてもらいなさい。」
「ハイゴシヒンサマ」
リリィから命を受けた魔物はエルドアの村へと向かった。
「よくできたなリリィ。これでシスタ―もいないあの村は終わりだろう。しかし港町はそうはいかないぞ、あの毒針を使いこなして見せてくれ。」
こうしてリリィとベイウェルは海を渡るために次なる目的地、東の港町サントへと向かうのであった。
-
ベイウェルはリリィに自分の手のひらに乗って座るよう促す。
彼は翼で飛ぶことができるがリリィにはそれがない。
長距離における移動は運んでもらう必要があるのだ。
リリィは頷くとぴょんと手に乗り座った。
ベイウェルが翼を開き轟音を立てながら羽ばたく。
羽ばたく力がすごいのか、はたまた構造が優れているのか巨大な体はひらりと浮かび上がり方角を東にとらえ滑空する。
しばらくして深い山々を超えると森があたりを埋め尽くす景色が広がった。
「山を抜けたな、ん?リリィ――」
彼女は彼の腕の中で眠っていた。通常悪魔が睡眠をとることは少ないのだがまだ体が馴染んでいないのだろうか、リリィはかなり疲れている様子だ。
ベイウェルは羽ばたきを止め森の中へ降り立つと、彼女を木陰に寝かせる。空には三日月が光り、辺りをやわらかく照らしていた。
「まだ馴染んでいない体であの牙の効果、そして人間を一瞬で肉塊に変える威力のエネルギー体を放つのか。
見込み通りいい女悪魔になりそうだ・・・今はまだ小悪魔だがな。」
そうつぶやくとベイウェルの巨体は人間の体――ちょうど10歳いくかいかないかくらいの子供になった。とはいえ目は赤く、白髪のいかにもな姿だ。
「だっさ。力も戻りきるには程遠いしこんなもんだな。
いくらまだ港町から離れているとはいえこんな巨体でいたら目立ってしまう。」
嫌そうに洩らすと彼もまた木陰で身を休めた。
- 枝の隙間から日が差し込みベイウェルの顔を照らす。
「あぁ・・・もう・・・」
眩しさにたまらず彼は子供の姿のまま飛び起きる。横にはすでに目を覚ましたのか、リリィが付き添っていた。
「ベイウェル様・・ですか?」
人間の子供にしか見えない彼の顔を覗き込みリリィは尋ねる。物騒にも後ろに伏せている右腕からは高エネルギー体を感じた。
「ああそうだ、これだけ封印されていると力がもどるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
俺たち原生デーモンは人間の姿にもなれるが、身なりは力に依存していてな・・・」
体を広げうっとおしそうに眺める。リリィは顔を明るくすると安心したような表情を見せ、エネルギー体の気配も消え失せていく。
「とりあえず街へ入るぞ。酒場なりで時間を潰し行動開始は夜中からだ。」
ベイウェルは作戦の説明を始める。
「狙うのは夜中以降に町に立ち寄る人間の女。
まず俺とリリィは人間の姿で街に侵入、時間を潰し夜中に街の入口で待ち伏せる。そして獲物を見つけたら裏路地へ連れ込み
魔蜂の毒針をさして魔蜂に変えてやる。なぜ女かというとこの魔物はメスのみで構成されるからだ。ウィルス感染による連鎖も女のみで
雄に刺した場合は体が腐敗して死に至る。」
うんうんとリリィは頷くが、はっとひらめいたような顔をする。
「そういえば私は人間に化けることができないのですが・・・」
「お前は原生ではないとはいえ素質の良さからいずれ上級クラスの悪魔に成長する。
そうすれば濁ったエネルギー体は漆黒色のものとなりそれを体にまとわらせることによって化けることが可能だ。
最も、今はまだ未発達だから深いフードでもかぶるしかないな。」
そういうとベイウェルは漆黒のエネルギー体を変化させ服を創りだした。
「うぅ〜やっぱりそれしかないですよね・・・ちくちくするから服は嫌いです・・・」
リリィはあきらめ顔でふてくされる。その様子を見て彼は笑いながらリリィに服を着せた。リリィの頭をすっぽりとフードで覆う。
「それではいくぞ。お前は俺の姉ということにしておけ。あと決して俺の名前は呼ぶな。適当な名前で呼べ。」
彼女は頷く。こうして彼らは人目につかない場所まで空を飛んで移動すると人間に化け、街道を得て港町サントにたどり着いた。
サントは大変栄えた港町であり、多くの冒険者や船が行きかっていた。
二人は酒場を見つけると中に入り込む。昼間だというのに酒場は開き冒険者たちであふれかえっていた。
カウンターに二人が腰掛けると、ガタイのいいバーテンダーが目を丸くする。
「おいおい、酒場にガキかよ。」
ベイウェルはいらっとした顔をするがすぐにリリィになだめられる。顔も見えず角で妙にゆがんだフード姿の付添人に、これまたバーテンダーは不思議そうな顔をした。
「ジュース」
ベイウェルはそう言うと二人分の果実飲料を注文する。それならばと、バーテンダーも二人に差し出した。
「まだ昼間か・・・」
日はまだ高く、時間は十分にあった。魔道具の使い方や悪魔についてここでリリィに説くわけにもいかずベイウェルは頬杖を突き暇そうに隣のリリィを見る。
リリィはそんなことお構いなしにジュースを飲み、味に感激しているようだった。
「はぁ・・・こんな姿じゃ俺も威厳がないなぁ・・・」
だらだら過ごしているうちに日は落ち、酒場もさらに賑わってきた。頃を見計らって二人は酒場を後にする。
「あのジュースおいしかったですわ。」
リリィがのんきにしゃべる。
「とりあえず、張り込む場所と使えそうな裏路地を探すぞ。」
彼はそう言うと彼女を連れ街を歩き始めた。
- 夜も大分更けてくる。よさそうなポイントを見つけたた二人は裏路地に身を隠し入口を凝視。
リリィはそろそろ耐えかねてきたのかもじもじとフードを脱ぎたそうにし、目配せをしてくるようになった。
ベイウェルは諦め顔で頷くと、彼女は嬉しそうに服を脱ぎ捨てる。悪魔になった彼女にはこの姿が一番なのだ。
こうしてみはりをつづけて少しすると、二人の人間の姿が見えてくる。男女のペアだ。腰には剣を刺し、その容姿はいかにもな冒険者風だった。
ベイウェルは目配せをするとこうささやく。
「男の方はおれが殺る。お前は女の口を塞ぎ、悲鳴を押さえた上で裏路地に引き込め。」
リリィも頷き――そして二人は躍り出た。
ベイウェルは子供の姿のまま疾走、次第に姿を元に戻すと一瞬で男に近寄り剣の様に伸びた爪で切り刻む。男はあっという間にみじん切りにされ
悪趣味なオブジェの山と化した。その様子を見て女が叫ぼうとするがその口をリリィが手でふさぐ。
そして手刀を加え昏倒させると裏路地へ引き込んだ。女は気を失ったようだ。子供の姿に戻ったベイウェルもすぐに裏路地へと戻ってくる。
「いいかリリィ、これからこの女を魔物へ変えるがお前の牙と違って魔道具を使う際には注意する点が一つある。」
ベイウェルは急に真剣そうな顔をする。
「魔物は俺たち悪魔とは違う。生態を持ち、巣を作り、獲物を狩って生活する。奴らには上級下級などと言う区別も何もない。
自分の生態を荒らそうとするやつには容赦なく襲いかかる、ただそれだけだ。つまり、魔道具で魔物にしたとしても
必ずしも俺達悪魔の味方だとは限らない。だから魔道具を人間に使う前には必ず催眠か催眠を施し、
忠誠を誓わせてから魔物に変える。」
リリィが口を開こうとするがそれを読み取った彼は手で制し言葉を続ける。
「それらはまだお前にはできない。技術自体は中級クラスだな。いずれにせよエネルギー体が漆黒色に落ち着くまでは無理だ。
牙もまだ慣れていないため洗脳だけできるか怪しい。だから今回は俺がかける。」
そう言うといつ目が覚めたのか、腰を抜かし震えながらこちらを見ている女剣士に向き直り指先にエネルギーを集中させた。
漆黒のそれは渦を巻いて集まると一気に解き放たれ、女の頭を貫く。女はびくっとのけぞると目は精気を失い、力なく壁に寄り掛かった。
「洗脳された奴隷人間の完成だ。これで魔道具で魔物にしても俺たちを襲う心配はない。」
リリィは頷くとベイウェルから渡された魔蜂の毒針を取り出し、女の服を引きちぎる。上下一体型の女の服はたやすく裂かれ、
体は何もまとわぬ状態となった。リリィは女の豊かに実った胸の上あたりに毒針を突き刺す。
すると女の体は大きく脈打ち苦痛に床を転げ回った。
「まぁ体を変えるほどの威力だからな。激痛なのは言うまでもない。」
彼は淡々と言葉を放つ。
女は上向きになり大きく体をのけぞりながら何度も痙攣を繰り返す。眼は見開かれ顔は苦痛にゆがんでいた。
次第に彼女の体の変化は表面に現れてくる。
頭部からは触覚のようなものが伸び始め、肌の色は褐色を帯び甲殻の様に硬化し始めて不要な足は腐り始めた。
そして脇腹からは甲殻をまとった新たな足が突き破って生え始め、下半身はまさに蜂の様に長く大きく膨れ上がり始めた。
次第に目の色も変わり始め、背中からは羽が生え出す。
やがてそこには足が腐り落ち、羽も生えそろった魔蜂の姿があった。
「ほ・・しゅ・・ひん・・・さま・・・」
牙で言葉を喋りずらいのだろう、魔蜂が言葉にならないことはを放ちその内容は服従を示していた。
「よし、お前にこの街の制圧を命じる。魔蜂の女王としてこの街を仲間であふれかえらせ支配しろ。船は壊すなよ。」
魔蜂は命令を与えられると近くの民家の窓を割り侵入する。
- 「だれっ!?」
窓の割れる音で飛び起きた幼い少女が叫ぶ。窓には昆虫の様に触覚と牙を動かし獲物の姿を目にとらえる魔蜂の姿。
少女は突然現れた不気味な魔物の姿に恐怖し腰を抜かす。
「な、なんでこんなところに魔物が・・・いやぁっ!こないで!!!」
少女は叫ぶが何の意味もなさない。魔蜂はにたりと笑うと羽音をたて少女に迫る。
彼女は何とか体を起こしドアから逃げようとするがグサリと毒針で背中からくし刺しにされてしまった。
体は宙に浮き手足は力なく垂れ下がる。体の小さい子供だということもあってか毒の回りは早く、少女の目からは精気が消え失せた。
変形をする体は繰り返し大きくはね――数分もかからず彼女も魔蜂の仲間になってしまった。そして嬉しそうに鳴き声を上げると
別室で眠る唯一の肉親である姉を襲い仲間に変えるべくその体に針を突きたてたのである。
こうして感染連鎖が広がりこの家の住人である姉妹はあっという間に魔蜂に変えられてしまった。
家々から沸き出る魔蜂の姿を見て、ベイウェルとリリィは作戦の成功を確信する。
本来魔蜂は巣を脅かす外敵にのみその針を使うのだが、魔道具として使われる事よってこのように恐ろしい効力をもたらした。
魔道具でリーダーを作り野生本来の統率力や生き抜くために身につけた力を悪用するのだ、その脅威さは言うまでもない。
一夜にして街人や冒険者たちは肉塊もしくは魔物と化し、町はたやすく制圧されてしまった。
朝日が昇り海面をたらしだす。どうやら制圧完了を知らせるためにあの女王魔蜂が二人の元に帰って来たようだ。
「カン・・・リョ・・ウ・・シマシ・・タ」
「ごくろうだった。この街はお前に与える。この街に来るものも好きにするがよい。――リリィ、船へ乗り込むぞ」
女王魔蜂は頷く。街では魔蜂が飛び交いその様子はさながら巣のようであった。
街という巣を手に入れた彼女はこれからも大陸中に脅威をまき散らすのであろう。
こうして二人は港町サントを制圧し、船を得て次なる大陸を目指すのであった。
-
「それではお元気で。村の物たちにもよろしくお伝えください。」
「シスター様には本当にお世話になりました。船旅、どうぞお気をつけて。」
「大陸から漏れ出た悪魔を退治するのも我々シスターの務めです。お気にせずに。」
ここはシスターたちの住まう大陸より東に位置する大陸の港町フローレンス。
北部の教会修練所を卒業したばかりのローザとアイリスは最初の任として命じられた、
この討伐派遣を終えて帰還するところであった。
深々と頭を下げる街長や街びとたちに見送られて二人は船に乗り込むと帆を張る。
十字架が描かれた帆は風に煽られ強く張ると船はゆっくりと進みだした。
二人は手を振り、フローレンスを後にする。
派遣に出されるシスターたちは航海学も教えられるため二人の手つきは手慣れたものだ。
「それにしても最近は派遣の依頼が急に増えたよね。依頼管理官が愚痴を言ってた。」
「噂では南部エルドアに封印された原生悪魔が復活したとか・・・あの退治した悪魔たちの姿は南部に生息する者の特徴と類似していましたし・・・。」
ローザは緑の髪と気の強い性格が特徴の娘であり、それに対しアイリスはピンク色のふわりとした長髪と
お嬢様のような気品に満ちた性格が特徴の娘。それぞれにないものを持ち合わせる二人は大の親友同士であった。
「やはりあそこが原因なのかもしれないわ。一応本部はエルドアのマザーを呼んだらしいが行方がつかめなくなってしまったそうなの。」
「たぶん・・・大規模な調査隊が派遣されるでしょうね。このタイミングだと私たちも入ることになるかも。」
二人は船の動きを管理しながら会話を続けた。
- 「すごーい!!」
港にずらりと止められた船を見てリリィは歓喜する。大陸有数の港町であるサントには
漁用の小さい漁船から蒸気で動く陸間移動船まであらゆる船が完備していた。
「とりあえず一番の上物を頂いていこう。」
ベイウェルは品定めすると、最上級の蒸気船を選ぶ。そして子供の姿に変わり船に乗り込むと動力源を起動させた。
「とりあえず船に気配を消す呪文をかけておく、それから防御壁だな」
「防御壁?」
興奮して船の中を走り回っていたリリィが立ち止まり聞き返す。
「あんまり知られていないのだがここから東へ進む海域は地底変動が多くてな、
気をつけないとすぐ岩場に船底を削られ沈んでしまうか、乗り上げて魔物たちの餌になってしまう。
やつら、動いている船には怖くて近づけないくせに止まると一気に沸き出てくるんだ。
まぁ、それはおいといて・・・地底が変動するタイミングは原生悪魔の我々なら大体予想をつけられるのだが
残念ながら時期が重なってしまってな。防御策を施さんとおそらく危ないだろう。」
そう言うと彼は漆黒のエネルギーを呼び出し船にまとわりつかせ、船を発進させる。
船は勢いよく蒸気を排出し速度を上げ始めた。
しばらくすると元の大陸も見えなくなり、あたりには一面の大海原が広がった。太陽が海面に反射しきらきらとひかる。
それを眺めて喜んでいるリリィをよそに、ベイウェルも腰をおろし休もうとした。
船で次の大陸までは大体5日から一週間ほどであろうか。この長い時間を無駄にしまいとベイウェルは休養に努めた。
「ベイウェル様・・・あれを」
港を出て3日ほどたったある朝、海面を眺めていたリリィが何かに気づいたように遠くを見つめる。その先には――座礁した移動船があった。
「ほらな、やっぱりこれだ。予想は当たっただろう?やはり封印されていたとはいえ俺の感もまだまだ捨てたもんじゃ――」
自慢げにうんちくを垂れるベイウェルを横切り
リリィがマストの上から興味津々に様子を見る。海面からは次々と魔物たちが昇り――どうやら船上では戦闘が起きているようだ。
うんちくを話し終えたのかベイウェルもマストの上に登ってくる。
「おお、やりあってんなぁ。海の魔物の中にも魔道具の素材になるやつらがいるし、一応見物していくか。」
そういうとリリィと自分の体に漆黒の霧をまとわりつかせる。
「気配を消す霧だ。これから見物に行くが攻撃に巻き込まれるなよ。」
そう言うと姿を戻した彼はリリィを抱え空へと羽ばたく。そして上空から座礁した船へと近づくと船上に降りたった。
「――シスターだ。」
観光気分だったベイウェルは表情を歪める。
船上ではシスターたちがエネルギーを武器に次々と襲い来る魔物たちを撃退していた。
人数は二人。一人は腕にエネルギー体で爪状の武器を構築している緑色の短髪、
そしてもう一人は桃色の長い髪をたなびかせながらエネルギー体を魔法の様に操り戦っている。両名とも女だ。
「くっ、こいつら次から次へと・・・きりがない!」
そう言いながら緑髪のシスターは高速で突き出される半漁人の銛を軽くかわしその身を爪で切り刻む。訓練されたいい動きだ。
もう一人のシスターもエネルギー体を次々と飛ばし、上がってきた魔物たちを返り討ちにした。
しかし多勢に無勢、魔物の切り裂かれた死体や体液が海面へと落ちて次なる魔物をおびき寄せる――これではまるできりがない。
シスターたちの抵抗も無限にわき出る魔物の数には及ばず次々と追い詰められていく。
「もうだめですわローザ!船の中へ!」
そう言うと二人は船内へと飛び込み扉を閉める。
海外への派遣に使われる対悪魔用の船なだけあって造りは頑丈で扉は簡単には開けられない。
しかし座礁してしまった船は動くはずもなく、疲労も激しい二人はすでに万策が尽きた状態であった。
- 「入っちゃいましたわ。」
「入ったな。」
そして一部始終を見ていた二人はつまらなさそうに、扉に群がる魔物たちを見つめる。
「あぁ、忘れていた。リリィ、魔道具だ。・・・とはいってもどの部位でどうやって人間を堕とすのかがわからんとしょうがなかったか。」
ベイウェルは頭を抱える。魔道具は魔物の持つ能力を流用するものに近い。
魔蜂の毒針の様に実際に影響を与える部位を素材として作成する必要があるのだ。
「暇つぶしにどうでもよさそうな奴らでも殺るか」
「そうですわね・・・」
そういうと二人は気配を消したまま能力を持たなそうな魔物たちを次々と屠っていった。
そして数分もすると魔物たちの攻撃が功を奏しガキッっと扉を支える工具がはじき飛ぶ音が聞こえた。どうやら扉が開くようだ。
「よし、いくぞ。攻撃には巻き込まれるなよ。」
そういうと二人は魔物たちの後を追い船内へと潜り込む。
ガキッ・・・彼女たちの最後の砦である扉が今破られようとしている。
もう疲労困憊――万策が尽きた二人のシスターは寄り添って震えるしかない。
そしてついに、扉が破られてしまった。
魔物たちが一斉に船内になだれ込み、二人はその勢いに吹き飛ばされて離れ離れになってしまった。
「ローザ!!」
アイリスは彼女の方に近づこうとするが行く手を魔物に阻まれる。
その魔物の姿はイソギンチャクのような外見に中からうねり出る多量の触手。
触手たちはアイリスの体を捕らえると服を手荒に破り捨て全身をまさぐりだした。
「いやっ!・・や、やめてっ・・・」
少女は抵抗をするが触手は次々と少女に絡みふっくらと盛り上がった乳房や秘所を愛撫し始める。
「あっ・・ぁぁ・・・、だれかたすけ・・あぐっ・・・」
彼女は悲鳴を上げるがすぐに触手が口の中へと突っ込まれ、触手の動きは激しさを増して次第に味わったことのない押し寄せる快感に体を悶えさせる。
そしてその快感の証拠として彼女の乳首は可愛らしくぷっくりとたち、下の口からはふとももを伝って愛液が垂れ始めた。触手も狙ったかのように
化の初の可愛らしいつ首を刺激する。
「あっ・・ああああああ」
化の初の秘所から雫がぽたぽたと垂れ落ちる。
頃を見計らった触手は彼女の秘所へと侵入し彼女を突き上げ出した。
「はっ・・・あぁぁぁぁ」
突然襲い来る強い快感にあえぎ声をあげる。
荒れ狂う快感に彼女は体を痙攣させ、頬は赤く眼もうつろにそしてだらしなく開いた口からは涎をたらしだした。
「もうだめぇ・・・・あっ・・はぁぁぁぁぁ・・・」
魔物はなおも彼女の膣と全身を激しく愛撫し彼女はついに一回目の絶頂を迎えてしまった。
体が激しく痙攣し、秘所からは何かが噴き出す。その姿は清楚なシスターとはほど遠いものであった。
そして彼女が絶頂を迎えると同時に中で蠢く触手は彼女の中に毒を吐き散らす。
興奮し血の回りが早くなった体はすぐにその毒を全身に廻らせ彼女を魔物の姿へと変え始めた。
突如指先は触手の様にやわらかく伸び始め、足も同様に折れ曲がって伸びる。
その手足はやがて触手へと変わっていき――やがて彼女は触手の魔物と化してしまった。
「あぁ・・・きもちいぃ・・・いいよぅ・・・」
彼女は触手を蠢かせ、よがり声をあげた。
- そしてその様子を始終見ていたベイウェルはその魔物から触手を採取、
毒を絞り出しその構成を分析すると記憶に刻みこんだ。これで彼はこれと同じ効果を持つ魔道具を作れるようになったのだ。
アイリスが魔物に犯されるのと時を同じして、
ローザは半漁人たちの群れに囲まれていた。
「やめて!こないで!」
その強気な性格も折れかけているのか目にはうっすらと涙がうかがえる。
「ゲェッヘッヘッヘ、カワイイムスメダァ。コイツハオラノヨメニスルベ。」
下品な笑いを浮かべ半漁人の一人が彼女へと近づく。抵抗する彼女の手足を他の仲間たちが押さえた。
「ひぃっ・・・お・・・おねがい・・・」
彼女の正面へ来た彼は背びれの骨を抜く。すると背びれの骨は鋭い針のような形へと変形した。
「コワガルコトハネェダ、スグニオレラノナカマニシテヤルベヨ」
そういうと彼は針を彼女の頭部へと刺し始める。
「いやぁっ!や、やめ――!?]
彼女の体はびくんと跳ね上がり、目は白目をむく。そして痙攣する手には水かきのようなものが生え出す。
半漁人はもう一本背ヒレの骨を引き抜くとまた彼女の頭部に深々と差し込む。
彼女は舌を出しながら痙攣をし始め、2本の足には鱗が――そしてその足を結び一本の尾ひれの姿へと形させた。
次第に彼女の目は魔物の様につりあがり、爪も鋭く伸びる。
「ア、アアアアア」
彼女が低いうなり声をあげ、胸元は横に裂けエラを形成し出した。
やがて彼女の体は半漁人の仲間入りを果たしてしまった。うなり声をあげ、尾ひれが揺らめく。
「ヨシ、キョウハモウヒキアゲルベ」
彼女を連れて引き上げる彼らからベイウェルは滑らかに背びれの骨を一本抜き取る。
「すごい効果だな。あの少女が一転して半漁人になってしまうとは。」
棘の構造、構成を分析し記憶に刻む。
「2つ覚えたし今日はもう無理かな。」
そう言うと向こうで触手の魔物となったシスターを眺めているリリィを呼び戻した。
- 「成果はどうでしたか?」
尋ねるリリィに対して彼は満足げに頷く。
「それはよかったですわ。」
その様子を見て彼女もほほ笑んだ。
「ところであの元シスターたちはどうするのです?」
「どうせだから次の街で使おう。空間のはざまにでもぶち込んで保存しておくか。」
「おもしろそうですわ!」
リリィは顔を明るくすると、海へ連れ込もうとする半漁人たちにエネルギー体をあたえて肉片をばら撒かせる。
そして船内から魔物となったアイリスを引きづってきた。
ベイウェルは空間を開き彼女たちを中へ放り込む。中では何もかもが制止しており生物も生きたまま劣化もせずに保存される便利な空間だ。
「それでは帰るぞ」
そう言うとベイウェルはリリィを抱えて空へと羽ばたいた。
こうして二人は魔道具の素材と手下を得て、また海路を進み続ける。
5日もすると次第に大陸の緑が見え始め、それは長い船旅の終わりを告げていた。
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