その一月後。 星置薫は、深夜の自室で一人、手淫にふけっていた。 「んっ……くっ……」 椅子に腰掛けた股間に両手の指が潜り、下着の上から丹念に愛撫している。いつもなら生理前のストレス発散に月に1回程度のオナニーが、ここのところ毎晩になっていた。 机に置かれた黒い革の表紙が、新しい教科書だ。そして学校の校則でもあり、思想であり、自慰のネタでもあった。 学校も、表向きはあくまでもこれまでどおりの普通の女子校という体裁を保っている。しかし中身はすでに「×××教」の付属である。梅垣千歳は、生徒も教師も全て信者に洗脳を終えていた。 学校のカリキュラムも一変している。先日、新しい講師という妙齢の女性が数名赴任し、セックスについての実践的な授業を始めた。 生徒は経験者と未経験者に分けられ、それぞれの知識と体に合ったやり方で、具体的なテクニックと奉仕の精神を指導されている。来週には、教祖様がデザインを決めたという新しい制服も届く予定だ。 学校は変わっていく。そして薫は、その変化にも柔軟についていった。 「んっ、んっ、んんっ……んっ!」 顔を机に擦りつけるようして、指は敏感な秘肉をこねるように繊細に蠢き、小さな楽器を奏でているようだった。下着の上から撫で、最も敏感な場所をあえて避けるのは、講師にそう習ったからではなく、彼女が自分の肉体を大事に扱っているせいだ。 薫は処女だった。 興味がなかったわけではない。ただ、男との交際やセックスを知るのは高校を卒業してからでよいと考え、クラスメートのように積極的な好奇心を示したことはなかった。予備知識といえるようなものも詳しくはない。 この分野において自分が劣等生であることを彼女は知っている。それは性の授業においても痛感した。 だが、そのことについて焦りはない。 教典によって自分の肉体が一人の男のものであると教えられたときも、その男とのセックスを求めて肉体が焦げる思いをしている今も、彼女は冷静だった。 まだ会ったことはないが、教祖が聖職者であることを梅垣から聞いている。梅垣が前より通っていた教会の元牧師様だと。 ならば一般の男性よりも、処女に肯定的であってもおかしくない。彼が女子高校生の体を求めているのなら、処女性はなおさら重要だ。 梅垣にはすぐに自分たちを差し出すつもりはなく、教祖のための理想の学園を作り上げてから献上すると言っている。 それも薫には好都合だった。知識や技術はいくらでも身につけることができる。時間がまだあるというなら、自分は処女のまま完璧な娼婦になれるだろう。 薫は、教典に洗脳された後もその強烈な野心とプライドを残していた。教典の支配下にありながら、何よりもその支配力に強く惹かれていた。 そこが他の信徒と少し違っていることも自覚している。 彼女は相変わらず野心家で計算高い女だった。神の前に全てを投げ出すような、無心な下僕にはなりきれていない。 だが、自分はそれでいいと思っている。それこそが神が求める薫の個性だと。 (神様は、きっとこんな私を愛してくださる) 確信に近いものがあった。×××教の世界を広げるのは自分だと。 神、教祖、幾万の信徒。 まだ見ぬ教祖の姿もさることながら、彼が統べる世界の姿に、何より薫は興奮していた。 「お慕いしております、教祖様ぁ……」 蕩けきった目を緩ませ、薫は舌をぺろりと伸ばし、革の表紙にそれを這わせた。 樋口珠梨が家出を決行してから、3ヶ月が経過している。 あの両親とはもう暮らせない。二人揃っておかしな宗教にはまっていたことを知ったときには、珠梨もあきれた。 しかも娘まで巻き込もうとしているらしく、ひどく監視や口出しが厳しくなったと思ったら、無理やり教会にも連れて行かれそうにもなった。 変な革の表紙の本もどうしても読ませたいようで、しつこいまで迫ってくる。最初は笑って誤魔化してた珠梨も、何度も同じやりとりしているうちにそんな親にキレて、家を飛び出してきてしまった。 宗教は嫌いだ。自由がない。決まり事も面倒だ。座禅も礼拝も断食もごめんだ。 珠梨は以前から、高校を卒業したらあの陰鬱な家を出ようと考えていた。計画が少し早まっただけだと、彼女は自分に言い聞かせる。これは家出ではなく、自立だと。 当然、金もなければ住む場所もない。しかしそのことも珠梨は早くから考えていた。 彼女は自力で生活するつもりはない。適当な男を選んで、厄介になるつもりだった。いずれ稼ぎもあって見た目もよくて家事の出来る男が見つかれば結婚くらいしてやってもいいと思っている。 そして、数ある心当たりの中から、とりあえず一人暮らしの道楽息子を選んだ。 特別好きにもなれそうもないが、金もあって、しばらく居候しても迷惑にならなさそうな男。他に理由はなかった。 「宗教なんてのに騙されるのはバカだけだ。あんなの、からくりさえ知ってれば誰でも教祖様だって」 ただ一緒に暮らしてみると、その無神経さには苛立った。珠梨もその宗教がイヤで家出したのだが、それでも人の親をバカ呼ばわりする権利はこの男にもないと思った。 でも自分が居候の身なのも理解しているので、彼の他人を見下した口調にも気の利かないセックスにも、しばらくは我慢の子に徹している。 「ジジイババアはテレビと新聞しか知らない情弱ばっかりだから、今の政権だのおかしな宗教だのに簡単に洗脳されちまうんだよ。マスゴミはとっくに東アジアの連中に侵略されてんだ。情報の真偽ってのを考える知能がないやつは、左寄りのマスゴミのいいなりさ」 「へー」 何が言いたいのか珠梨にはよくわからないが、彼は先日、「ネトウヨのトンデモ理論はいつ見ても笑える。こいつら自分が負け組だっての認めたくないんだよ。九条を国防の盾にして自衛隊を無くせばアジアは永久に平和なのに、なんでわかんねーんだよ。古くせぇ軍事主義に洗脳されたおっさんどもは、米軍と一緒に日本から出て行け」などと、モニターの前で熱くなっていたばかりだ。 「だけど珠梨、心配するな。お前のことは俺がずっと守ってやるから」 「ウィーッス」 ようするに、彼も一日中眺めているインターネットに洗脳されているんだろうと珠梨は思う。 仕事にも学校にも行ってないくせに、よくもまあ、こんなに堂々とうそぶいていられるものだと逆に感心した。 だけど、自分も人のことを言える身分ではない。出席日数はそろそろ限界で退学間近だし、タンポンですらこの男に無心しないと買えないくらいのビンボーだ。 ケータイ代も親の振り込みなので、いつまで契約が続いているのか保証もない。着信拒否をしているから、いつ切られても文句も言えなかった。 先のことを考えると少しは不安にもなったりする。それでもいざとなったらフーゾクにでも入るか、それともこの男の子供でも作って金取って別れるか、どうにかできるだろうと珠梨は考えていた。 つけっぱなしのテレビから、見たことのないCMが流れる。 最初は化粧品のCMかと思って目がとまった。若手の人気女優のアップから始まったからだ。 イメージビデオのように美しい光景と、手を取り合う子供と、和気藹々と微笑む老若男女と、女優の愛くるしい笑顔がくるくる回る。 そして最後にテロップが大きく打ち出された。 『新しいあなたへ―――、×××教推進会』 珠梨は盛大にため息をついて、床に顔を伏せた。 男はフフンとせせら笑い、「ゴールデンに宗教のCM流すなんて、マスゴミはマジ終わってんな」と、タバコに火を付けた。 「さて、そろそろ俺らの力でぶっつぶしてやりますかね」 誰とどう手を結んで何をぶっつぶすのか不明だが、男はいつものようにネットで遊び始めたようなので、珠梨はゴロゴロと床を転がって適当な雑誌を開き、ヤンキー漫画を読みながら眠ってしまっていた。 「おい、珠梨。起きろ。話がある」 「……あー?」 いつの間にか深夜になってたらしく、珠梨はのっそりとマンガ雑誌から顔を上げる。よだれがべっとりとページに残って波をうっていたが、男はそれどころじゃないとばかりに焦った顔をしていた。 「×××教、やべぇぞ」 「あ? 何が?」 モニターにはいくつもタブが開いていて、それが全て×××教関連のページらしかった。よくそんな面倒くさいもの夜中に読む気になるなと感心しながら、何がやばいのと、寝ぼけ眼で珠梨は男に尋ねる。 「現れてわずか半年ばかりなのに、信者数が信じられない速度で増えてる。今じゃ数千と数万とも言われている。財力もとんでもないらしい。なにしろゴールデンでもCM打てるくらいだしな。あれでまたかなり信者増やすぞ。なにしろ看板があの人気女優だ。あと一年もすれば日本の最大宗教になるのは間違いないらしい」 〜と言われている。〜らしい。 いかにもこの男らしい話だと珠梨は思った。 「これを宗教じゃなく、企業と考えてみてくれ。信者は多額の貢献を保証する顧客であり社員だ。教祖は絶対的な権力を持つ創業者で、役員になれば金だけじゃなくていろんな権力まで手に入る。なにしろいろんな権力を実際に持っているやつらを、自分たちの下に置いて操れるんだからな。つまりこれ、えっと、ソーシャルパワーだったかがすごい。政治家とかも信者にしちゃえば行政にも口を出せるんだよ。そんだけの勢い。とにかく、やべぇもんが日本に生まれようとしている。俺としたことが、危うくスルーするとこだったぜ」 企業に例えた意味は何だったの? と、珠梨は聞こうと思ったがやめた。 「こういうチャンスを俺は待ってたんだ。乗るしかない、このビッグウェーブに。珠梨の父ちゃん母ちゃん、結構早くからやってんだろ? もう幹部くらいになってるよな? 俺らも下っ端信者なんかぶっ飛ばして役員にでもなってやろうぜ。お前の親に連絡しとけ。俺らの席も用意しろってな」 朝イチで電話しろよ、と男は言って再びモニターに向かってマウスをカチカチ鳴らし始める。 丸くなった背中は若いわりに枯れて見えた。急に珠梨は、その体つきを気持ち悪く感じて、吐き気がした。 「いつから役員手当が出るのか、いくらもらえるのか、部下は何人つくのか、そういうことは最初に聞いておけ。トラブルの元だからな」 「んー」 熱っぽく語り始める男に生返事をしながら、珠梨はケータイに登録されてる他の男たちの名前を、ゆっくりとスクロールさせる。 中原美咲は、急速に大きくなっていく組織の仕事に日々追われていた。 信徒名簿の確認。各地で行われるセミナー。教祖がどこからか持ってくる教典の管理。予算の振り分け。 慣れないことばかりで美咲は戸惑うばかりだ。専業主婦しか経験のない彼女に、PCシステムのことなどまで聞かれてもわかるはずがない。 美咲には、「大天使」という教団の中でも最も高い役職が与えられているが、それは最初に教祖に仕えた信徒という名誉職のようなもので、巨大化する組織の中で実務まで割り当てられると、彼女自身の限界をすぐに超えた。 彼女の他にも多くの役員と事務員はいるが、美しい女性を優先的に重用する教祖の方針で、決して能力の高い者ばかりではない。 その面では美咲も他人のことは言えないが、この先を案じる不安は日に日に膨らんでいく。 教祖のために身を尽くす思いに変わりはない。だが、教団はどこまで大きくなろうとしているのか。 娘一人の面倒もようやくだった自分が、何万という組織の頂点にまがりなりにも立っていると考えると、足元がぐらつくような怖さを感じた。 「……教祖様、失礼いたします」 最近では、教祖の部屋に訪れるのも遠慮している。 誰よりも教祖の近くで仕えていることに誇りを持っていたが、仕事が増えるにつれ美咲の時間も減り、そして教祖も次から次へ増えていく女性信徒への目移りに忙しく、前のように彼女の体に執着しなくなっていた。 そうなると、今の自分の立場が本当のものかどうかも怪しく思う。体も愛してもらえないなら、たいして仕事のできるわけでもない自分が、いつまでも「大天使」などという大役に就いているのが良いことなのかどうか。 悩みと大量の決裁書類を抱えて教祖の部屋を開けると、むせかえるような性の匂いで充満していた。 「おぉ。どうした、美咲?」 教祖は、十代と思わしき少女を膝の上に乗せ、揺すっていた。 ソファの下にはさらに複数の女性がいて、教祖の太ももや少女との結合部、さらには足の指にまで舌を這わせ、恍惚の笑みを浮かべていた。 美咲は、ゴクリと喉を鳴らす。教典によってこの上ない性の深みを知った彼女には、教祖に抱かれて奉仕する女性たちは目の毒だった。 自分も今すぐ服を脱いですがりつきたいのを堪えて、美咲は事務的な口を開く。 「し……仕事のことで、ご相談したいことが」 「んんー?」 だが、その唇は震えている。上気していく頬は何を望んでいるか明らかだが、教祖は知らないふりでニタリと笑う。 「我が教の信徒は、先月末で10万人を超えました。今後は、支部の機能をもっと強化して……」 「あっ、あん! 教祖様! いいっ! いいです!」 教祖に抱かれている少女は、テレビにも出ているアイドルグループの一員だ。美咲は、愛菜の部屋に貼られているポスターで見覚えがあった。若くて引き締まった体が、教祖の黒々した陰茎を飲み込み、大胆に跳ねていた。 美咲は、口の中に溜まっていく唾液を飲み込む。それでも溢れてくる欲情を押さえ込むことはできなかった。 「どうした? 先を続けろ」 「は、はい。それで、その、役員が足りなくなりますので、新たな、その……」 「あぁぁっ、教祖様のおちんちんが、まみみのアソコ、グリグリしてます! 気持ちいいよぉ! 気持ちいいよぉ!」 教祖は若いアイドルの股間を思うさま抉り、傅く女たちに奉仕をさせている。 美咲は、今すぐ自分も服を脱いで尻を向けたい気持ちを必死に押さえつける。もう何日抱いてもらっていないのか。子供みたいな女が、教祖の陰茎を咥えてよがっているのが、とてつもなく羨ましい。 かつては、教祖も思春期の少年のように自分の体を貪り、甘えてくれたのに。 「美咲、この娘を知っているか? あの、なんとか48とかいうグループの4位の女だ」 「は、はい。あの、私も顔は存じております」 「この子も、我が信者だ。他にもあのグループには5、6人の信者がいる。いずれ全員を我が信徒にする予定だ」 「素晴らしきことだと思います、教祖様」 「せっかくだから、記念写真でも撮っておこうか。男信者どもに高く売れるぞ。美咲、そこのカメラで私たちを撮れ」 「は、はい」 「おい、お前もアイドルらしくポーズくらいとれ」 「は、はい! まみみ、がんばります! 可愛く撮ってください!」 美咲の構えるカメラの前で、教祖に抱かれる娘は様々なポーズを取った。 顔の横にピースを立ててウィンクしたり、キス顔で胸を寄せてみたり、アイドルにはあるまじきアヘ顔で舌を出してみたり。 自分の愛嬌と可愛さの使い方をよく知っているだけあって、どんな表情をしても魅力があった。美咲も撮影しながら、嫉妬と羨望の混じった気持ちをますます強くしていった。 自分には望んでも手に入らないものを、当たり前のように持っている少女が、教祖に愛されている。 それでも体は、欲せざるをえない。 「き、教祖様……」 下着は濡れて、膝にも力が入らない。セックスのことで頭がいっぱいだった。 「おぉ。そういえば美咲は役員を増やして欲しいんだったな。いいぞ。ここにいる女をみんな『天使』にしてやろう。たっぷり手当をはずんでやれ」 そこにいるのは全員、教祖のお気に入りの女だ。特別な計らいを受けて、嬌声と感謝の言葉を揃って教祖に捧げる。 彼女たちも、美咲と同じく教祖と教団に絶対の忠誠を捧げている。だが、それはあくまで教祖個人に向けられたものだ。 教祖の評価が、セックスと献金と女の数だということも彼女たちはよく知っている。このような女をいくら増やしたところで、地味な事務仕事など真面目に取り組まないし、できる能力もないのだ。 美咲は、そのことを身にしみて知っている。そして自分の能力の無さも。 「き、教祖様…あの…」 「なんだ? まだ不服なのか?」 「……いえ、教祖様のお取り計らいに感謝します……」 「おぉ、構わぬ。困ったことがあれば、いつでも私に相談しろ」 教祖は絶対であり、彼の言葉は神の言葉だ。 それ以上、口を挟む権利は大天使である美咲にはなかった。 「次は、あのなんとかいう尻ふり5人組を抱きたいな。彼女らを信者にした者には位を授けろ。あぁ、そうだ。どうせなら懸賞をかけようか。5人揃って連れてきた者には、3つ昇格させてやると信徒に告げるんだ。きっと、どんな手を使っても連れてくるぞ。ふひひ」 「……はい」 「どれ、そろそろ出してやるぞ。おっ、おっ、おっ……ほぅら、もっと締めろ!」 「あっ、あんっ、出てる!? 教祖様の子種ちゃんたちが、まみみの子宮にかじりついてる〜ッ!」 美咲は、唇を噛んで、濡れた股間を擦り合わせた。 教祖が学園に招かれたのは、梅垣千歳が彼の前に現れてから、半年後のことだった。 「少女の園を捧げたいと存じます」 梅垣がそう言って再び顔を出したとき、教祖はついに来たかと心を躍らせた。 自動的に増えていく美女や美少女たちを次々に抱き、飽きてきたとは言わないまでも、そろそろ違ったこともやりたいと思っていた頃だった。 学園は昼の休憩時間らしく、生徒たちが往来する庭は賑やかだった。梅垣は、あえて生徒たちを並べて待たせるようなことはせず、普段のままの彼女たちを教祖に見せるという方法を選んだ。 そして、それは教祖の目を十分に楽しませることに成功した。 「おお…これは…ッ!?」 改造された制服に身を包んだ女子生徒たちが、昼下がりの陽気の下を、笑顔で歩いている。 ベンチでの語らい。中庭の散策。バレーボールに興じる生徒も、楽しげなおしゃべりをする生徒も、誰も彼もが美しい容姿をしていた。 その制服も素敵だった。 一見するとワンピースタイプの大人しいデザインに見えるが、スカートが非常に短い。膝上どころか太ももがほとんど露わになっており、下着とほぼ同じラインで丈が揃っていた。 歩いているだけで、わずかに下着と尻の膨らみが見えてしまう。そのギリギリのラインが教祖の好みだった。 背中に太いリボンが結ばれており、歩くとそれが左右に揺れ、その隙間から尻と下着がチラチラ覗けるのだ。 思わず目で追ってしまう。しかも、生徒たちは「教祖がいても普段どおりに」と仕込まれているのだろうか、あくまで彼のことは意識しないように振る舞っているようだが、どうしてもその視線が気になるらしく、手で尻を隠す仕草をしきりにし、チラリと彼を見ては恥ずかしそうに目を伏せるのだ。 瑞々しい肢体と、恥じらいの表情。 女子校生はこうでなくては、と教祖は思った。清純さと、相反する猥褻を兼ね備えてこそ彼の理想とする女子の園だった。 梅垣は、他の天使たちより教祖の嗜好を調べ上げて、いかに彼を喜ばせるかを考えて学園を改造している。 そして完成したのが、かつての地味なブレザーを修正したこの制服だ。 派手にし過ぎてもダメ。猥褻さを出し過ぎてもダメ。教祖は助平な中年のわりに、処女に対する崇拝をも抱いていることを梅垣は知っている。 控えめな清楚さと、男の手で簡単に剥ぎ取れる脆さをコンセプトにデザインした少女服は、確実に教祖の趣味を捉えていた。 それは、彼のだらしない表情を見れば一目瞭然だ。 「いかがでしょうか、教祖様。近くで制服を確かめてみては?」 「う、うむ」 鼻息を荒くして、教祖は血走った目をあちこちに泳がせる。どこから手をつけようか、興奮しすぎて頭が回らない様子の教祖に、梅垣はニタリとほく笑んだ。 「では、そこのあなた。ちょっといらっしゃい」 「は、はい!」 ベンチで文庫本を読んでいた、おとなしそうな少女を梅垣は呼び寄せる。 ふわりとした緩い髪。丸っこい童顔。短いスカートの下まであるソックスと、その隙間に覗く白くて細い太ももは、未成熟な可憐さで眩しいほどだった。 少女は、教祖のそばまで来るとペコリと頭を下げ、恥ずかしそうにスカートの裾を伸ばした。その仕草が、余計に教祖の欲情を刺激した。 「怖がらなくていいのよ。教祖さまが、あなたたちの制服をお確かめになるだけだから、じっとしてらっしゃい」 「は、はい……」 「どうぞ、教祖様。じっくりとお確かめください」 「う、うむ」 黒いワンピースに、白い襟。色の違うラインがいくつも全身を走っていて、決してうるさくはないのだが、執拗な感じも受けた。 だが、近くで見るとそれはただのラインではなかった。 全てファスナーだ。 パズルを繋ぎ合わせたかのように、全身のあちこちにファスナーが張り巡らされている。まるで蜘蛛の巣に囚われた少女のようだった。 「これは……?」 「はい。こちらがわたくしの用意した、学園の制服でございます。どうぞ教祖様の手でお試しくださいませ〜」 梅垣がニコニコと手を揉み合わせる。教祖は、目の前に恥ずかしげに立つ少女にゴクリと喉を鳴らした。 本当に、あちこちに開け口が付いていた。全部開けばバラバラになってしまうだろう。それは想像するだけでも彼を興奮させた。 だが、この男を知らなさそうな少女を一気に裸にしてしまうよりは、じっくりと脱がせることを想像した方が教祖は興奮できた。 彼は、まず少女の腕を取った。 ピクン、と少女は体を震わせる。だが抵抗らしいことは一切しない。真っ赤な顔で教祖の手に腕を委ねる。 その指先まで届く長い袖口にあるファスナーを、教祖は開いた。おかしなピンの付いたファスナーだ。締めた先で固定して外せないように出来るらしいが、今はそれを留めていない。しかも通常と向きが異なり、肘を頂点にして袖口が留め具になっている、使いづらそうなデザインだ。 しかしそれは、少女にとっては使いづらいだろうというだけで、他人の手によって外されるときは好都合だった。 少女の腕が肘のあたりまで露わになる。 頼りないほど細い。そして、白い。肌を外で晒すのは初めてなのかと思うほど。 両方の手を外すと、ほう、と少女はため息をついて、ますます顔を赤くした。 憧れの教祖を間近にして、彼に制服のファスナーを外されることに彼女も上気していた。 この学園の生徒にとって、それは夢のような出来事だ。彼女たちはそう教育されてきた。教典には全て同じように書かれている。 生徒は教祖の生け贄で、彼に捧げられるのは幸福なのだと。 「こんなところにも付いてるのか」 「あっ」 教祖に腕を持ち上げられ、脇のファスナーを見つけられたとき、少女は身震いした。 教祖の生け贄とはいえ、羞恥心はそのままに持っている。憧れの男性に脇を開いて覗かれるのは、とても恥ずかしいことだった。 「あっ…恥ずかしい、です」 「いいではないか。うむ。白くてすべすべして、良い肌だ」 「あっ、あっ」 指でススっと脇をくすぐられる。腕を下ろしそうになったら、梅垣に「そのままにしていなさい」と叱咤された。 少女は唇を噛んで教祖のイタズラを堪える。顔を近くで寄せられ、鼻息がとてもくすぐったかった。 次に教祖は、少女の腕を下ろして肩のファスナーを下ろしていった。 「あぁ……」 恥ずかしそうに身をよじる少女の、二の腕から鎖骨に沿って伸びる長いライン。制服の黒と、肌の白さのコントラストが本当に美しいと教祖には思えた。少女の鎖骨はとても細く、肌には大きな窪みが出来ていて、そこにブラジャーのヒモが橋を架けていた。 その清らかなラインに、教祖は思わず喉を鳴らす。 性欲を直接ぶつけるようなセックスに溺れてきた彼にとって、それは新鮮な喜びと発見だ。 彼女たちの制服にフェチ的な快楽を見いだし、教祖はますます興奮する。 肩まで開いてしまっても、襟の位置で制服は固定されているため、ずれ落ちたりはしなかった。白い襟は、アタッチメントで制服に留められており、どれだけファスナーを開いて制服を乱しても、脱ぎ落ちない仕様だった。 つまり、ファスナー遊びは好きなだけ楽しめる。細かい心遣いに感動しつつ、教祖はいよいよ胸のファスナーを開いた。 胸にかかった円形のラインは、あからさまに少女の乳房を取り囲んでおり、それがこの制服の唯一の卑猥な形になっていた。 ジジジと丸を描いて、そして手を離すと、はらりと丸い布が開いて、ピンク色のブラジャーのカップを露わにした。 それを見て、梅垣は「まあまあ」と大仰な声を上げた。 「あなた、ブラジャーなんてしているの? せっかくの制服が台無しじゃない。教祖様がいらっしゃる日はノーブラだと言ったじゃない!」 「す、すみません。つい、その……恥ずかしくて……」 肩をすくめる少女に、教祖はニタニタと笑って梅垣を宥める。 「よいじゃないか。叱ることはない。こうすればいいだけだからな」 「きゃっ!?」 ひょい、と制服越しに少女のブラを持ち上げる。ピンク色の布地の下から、似た色をした乳首が出てきて、ぷるんと小ぶりな乳房も揺れた。 「隠してはダメよ! ちゃんと教祖様にお見せしなさい。後ろに手を組んで!」 思わず胸を手でかばった少女は、梅垣に叱責されておずおずと体を開く。 頼りなげにプクンとくっついた乳首の可憐さに、「おお…」と教祖は嘆息を漏らした。 「……これは、とても良い制服だな。褒めてやるぞ」 「光栄にございますー!」 梅垣が恭しく頭を下げる横で、教祖はさらに体のファスナーを開いていく。 上半身からスカートにかけて、前後左右に4本のラインがかかっている。しかも、前と左右のファスナーは、上からではなく下から開くものだ。 よく考えたものだと教祖は感心する。前から脱がすときは下から、背中から脱がすときは上から少女の肌が露わになっていくのだ。 それでは、いちいち悩みながら脱がさなければならないなと、口に溜まったヨダレをすすりながら教祖は笑った。 まずは右のファスナーを上げていく。少女は太ももを擦り合わせ、恥ずかしそうに身をよじった。 ブラジャーと同じ色の下着が小さな尻を締め付けているのを、教祖はじっくりと目で楽しんだ後、左側も開いた。 ひらひらと、頼りなげな布きれとなった制服が、少女の体に中途半端にまとわりつき、風になびく。ボロ布をまとったような有様なのに、それでも少女は可憐で可愛らしかった。 教祖は、しゃがみ込んで少女の前のファスナーを上げていく。 「や、やぁん……」 少女は後ろに手を組んだまま、さらに少女は体をくねらせるが、もはや隠しようのない素肌は男の手で無残に暴かれていく。 幅の狭いピンク色の布地が、突き出た骨盤の下をくぐるように、少女の腰をかろうじて隠しているだけだった。 毛の薄い体質なのか、そのギリギリのラインからはハミ出すものもなく、つるりとした肌が窮屈そうにしている。ほんの少し指でもひっかければ、彼女の割れ目もすぐ見えるだろう。 顔に似合わず大胆な下着選びだと教祖は思った。案の定、それは梅垣の指示だった。 「生徒たちの下着も、全て教典による校則で定められております。布地の大きな物は生理日以外は禁止です。いつ教祖様に見られても恥ずかしくないものを身につけるよう、風紀委員が毎朝校門チェックしておりますので」 次は是非とも、朝イチで来て校門チェックを手伝おうと教祖は思った。 少女の下着に指をかけ、梅垣の顔を見上げる。 どうぞご随意に、と梅垣はニッタリ笑う。 「あっ、あ……教祖、様……」 思ったとおり、その少女の肌は無毛だった。 それが剃毛によるものではないことは、肌の白さで明らかだ。 「……処女か?」 教祖は思わず尋ねていた。 少女は、顔中を真っ赤にして頷いた。 股間のモノが苦しいほどに猛り、教祖は乱れ打つ心臓に息を乱した。 「教祖様、彼女に罰を」 「なに?」 梅垣の言葉に、教祖は顔を上げる。貧者のような笑顔を歪ませ、梅垣は目を光らせる。 「この者は、わたくしどもの指示に逆らいブラジャーを付けて参りました。教祖様がお許しになったとはいえ、学園では校則違反は罰せられなければなりません。どうぞ、教祖様自ら罰をお与えください」 「……罰とは、どのような?」 「それは、教祖様がご自由にお決めくだされば良いのです」 自由にと言われても、教祖には目の前の少女とセックスすることしか頭にない。罰や褒美など、もはや区別をつける余裕はなかった。 梅垣もそれを察して、少女に四つんばいになるように命じた。 校庭で、他の生徒たちも見ている前でそんな格好を命じられ、少女は気を失いそうなほどの羞恥を感じたが、教祖や梅垣の命令に逆らうことなど出来るはずもなかった。 ベンチで座っている生徒も、バレーボールに興じる生徒も、こちらを意識していないそぶりをしながら、チラチラと見ている。 教祖もそれを知っていながら、少女の尻の前に腰を落とした。 ジジジ、と教祖ののファスナーを下ろす音に、少女の尻はビクリと震えた。 「今から、お前に罰を与える。いや、これは褒美でもある。素晴らしい制服を見せてくれたな。お前を私の女にしてやろう」 「は、はい……ありがとう、ございます……」 今にも消え入りそうな声で、少女は固く目を瞑った。 ひやりとした空気に晒され、冷たくなった尻に教祖の手の平が触れた。暖かいと思ったら、次に熱いものが自分の股間に触れた。 その正体を思って、少女はますます恥ずかしさと感動に戸惑い、小さな尻を引き締める。 いつか教祖に抱かれるのが彼女の夢だった。だが、まさかこんな衆人環視の中で、しかも犬のように外で行われるとは想像だにしていない。この状況が彼女をますます緊張させた。 「力を抜きなさい」 上から低い男の声で命令される。 観念したように少女の尻から力が抜けた。教祖の言葉には、少女の感情を超える支配力があった。 めり、と小さな股間が教祖のもので広げられる。人前で裸にされる恥ずかしさと、教祖の手でそれが行われる感動で彼女はすでに濡れていたが、処女の固い秘部を開くにはまだ不十分だった。 それを知っていても、教祖は容赦しない。これは校則違反の罰として行われる行為でもあった。 そして、今から行われることに怯えて震える少女を、奇妙な制服で犬のような格好をした少女を、強引に犯すことに滾る思いを堪えることなど彼には不可能だった。 「ひっ…んっ、ぐっ…あっ、ひぃあっ、あッ…!?」 ぐっ、ぐっと段階をつけて送り込んでいく。徐々に入ってくる感触に少女は肌を泡立て、教祖は厳しい締め付けに歯を食いしばる。 (生意気なマンコだ…ッ!) 下品な言葉を内心に飲み込み、腰に力を入れて一気に押し込む。 教祖の陰茎が、ブチブチと少女の壁を切り裂く。男には開拓の喜びを、女には脱皮の痛みを教える感触。達成感に教祖は震え、少女は苦痛と感動に声を張り上げた。 「あぁぁぁーッ!」 小さな尻を鷲づかみにし、教祖はさらに深くねじ込んだ。少女は草を掴み、目を大きく見開いてまた悲鳴を上げた。 強引に、乱暴に教祖は腰を揺する。処女の体にその衝撃は耐え難く、自然と尻は逃げていく。 引き寄せて、押さえ付ける。小さな肉体に圧しかかるようにして、腰を叩きつける。 「あぁッ、あぁッ、あぁーッ!」 教祖と少女が綱引きのようなセックスをしている横で、梅垣が見計らったように微笑む。 「教祖様。その制服の正しい使い方を説明させていただいてもよろしいでございますでしょうか?」 「あぁ? なんだと?」 盛り上がってきた気分に水を差す醜い顔と慇懃な軽口に、教祖は眉をひそめる。それにも気づかない様子で、梅垣は得意げに少女の腕を後ろに取る。 仕掛けは、教祖の開いた袖のファスナーだ。 梅垣は後ろに彼女の両手を合わせると、左右の袖のファスナーを互いに組み合わせてジリジリと締めていった。そしてファスナーの先に付いているピンを肘の位置に付いているフックにかけると、少女の制服の袖は両手を合体されたまま固定された。 「おお……なるほど」 少女がどれだけもがいても、自力では外しようがない。 暴いて遊ぶためだと思われていたファスナーは、じつは着ている者を拘束するための道具でもあった。 「それだけではございません」 次に、梅垣は背中の大きなリボンを解いた。制服よりも伸縮性のある素材で出来ているリボンにも、先端に大きなファスナーが備えられていた。 「これを、こういたしまして……さらに、ここで固定いたしますと」 梅垣はリボンを少女の細い腰に巻くと、さらにそれを教祖の腰に巻いて後ろでファスナーを閉じた。 しっかりと少女の腰と教祖の腰が結ばれて、どんなに少女が足掻いても教祖からは逃げられなくなった。 「これは……面白いな」 教祖が腰をドンと押すと、少女は「ひぐっ」と悲鳴を上げて腰を跳ねる。しかし伸縮性のあるリボンで結ばれた二人の腰は、その反動でさらに細かな動きを返して結合部に刺激を加え、さらに快楽を変化させた。 「ふははっ、これは良い!」 「あっ、あうっ、ひっ、教祖、様っ、教祖様ぁ! お許しを! お許しをーッ!」 べちべちと教祖の腰が少女の尻を叩き、濡れた音を立てる。密着性のある窮屈な運動が少女と繋がっている感動をさらに深いものとした。 少女はもう自分から逃げられない。カギのように二人を繋げている陰茎から精液を放出し、萎えるまで互いの腰は離れることはない。 夢中になって、教祖は少女の体を貪った。 「この制服を、名付けて『少女拘束』と申します。いつでもお気に召した生徒を、教祖様が捕まえ、自由に縛って犯していただくための制服です。リボンは、このように体を結びつける他、彼女たちの足を縛ったり、口を塞いだり、様々に使っていただける仕様となっております」 「おぉ、おぉ! 少女拘束か! 気に入ったぞ、梅垣。じつに良い趣向ではないか!」 「我が校の生徒は、教祖様の思いのままにしていただくためにご用意した生け贄どもでございます。どうぞ、存分に可愛がってやってくださいませ」 「うむ、うむ!」 勢いづいた教祖が、ますます腰の動きを速くする。少女は、自分の感覚が痛みから快楽に変わっていくのを感じた。 教典によって開発された脳と肉体は、教祖の肉体を受け入れることによって急速にセックスを覚えていく。 パニックに近い精神状態で、さらに肉体が快楽の絶頂を迎えようとしていることで、彼女はますます混乱し、声を張り上げた。 自ら尻を振っていることも気づいていない。飛び散っていく寸前の意識で、彼女は光を見たような気がした。 「出すぞ! 出すぞ、出すぞ!」 「あぁ、教祖様! きて、きてくださいませ! 私は、もう、限界です! 死んでしまいます! 天国が……天国が、見えてまいりましたぁ!」 少女の開ききった肛門を見下ろしながら、彼女の子宮めがけて放出する。 絶叫とともに緊張する尻肉を握りしめ、深く、大量に注ぎ込んだ。 「ぅああぁぁぁーッ!?」 ドク、ドク。少女の絶叫に耳を楽しませながら、教祖はありったけの精液を吐き出した。 全部出し切ってから、ゆっくりとリボンを外して陰茎を離す。尻を突き上げたまま失神したらしい少女の中からは、逆流してくる精液が泡を吹いていた。 数多くの女の膣内に射精してきたが、今まで妊娠した女は一人もいない。 自分が種なしなのか、あるいはそれも教典のもたらす作用なのかは知らないが、彼としては都合が良かった。 女を孕ませることには興味があるが、後継ぎを無闇に増やすつもりはない。今はまだ、どれだけ多くの女を抱けるかということにしか興味はない教祖にとって、気兼ねなく中出しできるのは有り難いことだった。 「おつかれさまでございます。彼女の尻はお気に召していただけましたでしょうか?」 「おぉ、よかったぞ。なかなかの尻だった」 「では、こちらの尻たちはいかがでしょうか?」 「む?」 教祖が梅垣の指す方に目をやると、すでにそこには少女たちが芝生の上で横たわっている。 それぞれが思い思いの休憩時間を過ごしているように見えていた彼女たちは、じつのところ梅垣の「仕込み」だ。 見た目がよく、成績のよい者たちの中から、まず初めの接待役として選ばれた者たちが校庭に待機していた。 たった今、教祖の犯した少女もその一人だ。 「ごらんください。『少女拘束』にはこのような使い方もございます」 「おぉ……」 二枚貝のように抱き合う形で、少女が2人、芝生の上に転がっている。 腕は互いのファスナーを噛み合わせて拘束し、体の両脇のファスナーも繋いで、全身でぴったりと抱き合っている。 お互いが拘束し合うような格好だ。 そして、短いスカートでは下着を隠すことも出来ず、しかもMの字に組み合わせた太ももをリボンで拘束し、むっちりした尻と股間を教祖に向かって突き出している。2人とも恥ずかしがって身をよじっているが、その大胆で淫らな姿のまま、逃げることも叶わないようだった。 教祖は、出したばかりだというのに、股間が疼くのを感じた。 「それとも、こちらはいかがでしょうか?」 「お、これは…ッ?」 今度は、10人を超える生徒が繋がれている。 さっき犯した少女のように、四つんばいで丸い尻が突き出されていた。しかも彼女たちは両隣の背中に伸ばした腕を交差してファスナーで繋がれており、密着した太ももをリボンでぐるぐるに縛れていた。 尻を犯されるための少女並列。そして、彼女たちは何をされても身動き一つ取れないのだ。 壮観な眺めだった。 教祖は、自分がこの学園で支配者であることを、その光景で実感した。 「おぉ…おぉ……」 だらしなく開かれた口から唾液があふれ、うずうずと股間が盛り上がっていく。 どの尻から犯してやろうか。教祖の目は血走っていた。 「ですが、教祖様もずっとお外におられてお体も冷えたことでしょう。まずはうちの生徒たちの体で、暖を取られてはいかがでしょうか?」 「む?」 梅垣の合図で、ずらりと少女が数名並ぶ。さきほどまでバレーボールで遊んでいた生徒たちだ。 揃って制服の前を開き、ブラのないパンツ一枚の体を晒している。スタイルの良い娘たちばかりだった。高校生にしては豊満な乳房に、教祖も眩しそうに目を細めた。 「そぉれ、あなたたち。今度はあなたち生徒が教祖様を拘束して差し上げる番だよ」 「はーい!」 「お、おい?」 黄色い声を上げて、少女たちが教祖の周りを取り囲む。 何事かと戸惑う教祖に、彼女たちは「失礼しまーす!」と朗らかに包囲を輪を縮め、彼の体に抱きついた。 そして、制服の両脇のファスナーでお互いを繋ぎ合い、教祖をすっぽり包み込んでしまった。 「ほ、ほう! これは…ッ!」 「少女布団でございます。運動して暖まった少女たちの肉体で、たっぷりと温まってくださいませ。お気に召した娘がいらっしゃいましたら、どうぞそのまま、犯してくださって結構でございます」 「た、たまらん! この温もり、このフワフワした感触、そしてこの汗の匂いはまさしく少女布団だ! 温かい、温かいぞ!」 密着する少女の素肌と、制服の内にこもった匂い。サウナのような熱と湿度に教祖は目も眩む思いだった。 全身に触れる柔らかさと降り注ぐ吐息の甘さは、天国としか言いようがなかった。 「でかした、梅垣! かつて信長の草履を懐で温めたという秀吉も敵わぬ心遣いよ! お前を、『第3級天使』に任ぜよう!」 「ははー!」 在家の役職である『外天使』から、本部付けの役員へと異例の昇級だ。 少女の体にデレデレと相好を崩す教祖に、梅垣は自分の出世の道が拓けていくのを感じた。 まだまだ、この先いくらでも昇っていける。疎外感と孤独に満ちた人生に、ようやく輝かしい未来が見えてきた。 梅垣は感動に震える自分を抑え込むように深呼吸をして、静かに目を開ける。 「ありがたきお言葉にございます……が、わたくしどものおもてなしは、これで終わりではございません。ここにいる生徒は、まだ序の口。本命の娘たちは、まだ控えてございますゆえ」 「本命? なんと、まだ彼女たちを上回る少女たちがいるというのか!」 「はい。極上の中にも極上はございます。選び抜かれた、まさに天使のごとき少女たちをご紹介させていただきます。……もちろん、全員処女でございますよ」 「……おぉ……」 処女の美少女。 どんなに女に不自由しない立場になっても、それは魅力的な言葉だ。 ゴクリと喉を鳴らして、梅垣の案内に従い、校舎の中に入る。 ずらりと廊下に整列した少女たちに出迎えられ、その奥へと進んでいく。 制服のバリエーションを見せつけたいのか、並んでいる少女たちの中には、カチューシャとエプロンを身につけたメイド風の生徒もいれば、動物のような耳をつけた生徒も、白い少女拘束に天使の羽根をつけた生徒もいた。 色、形も微妙に異なる制服の品評会のようだ。 革で出来た少女拘束を纏っている子は、まるでSM少女だ。 クラゲのように、ファスナーとフックを備えた長い生地を幾本も体に垂らしただけ少女など、どのように拘束してやろうか想像するだけで楽しめた。 どれもこれも、目を奪われるに十分な魅力を備えている。今すぐこの場で一人ずつ押し倒してやりたいほどだった。 「教祖様がお飽きにならないよう、いろいろと制服を考えてございます。カタログ代わりに並べましたので、後ほど気に入った制服をお教えくださいませ」 「うむ! 全部気に入ったぞ! もっともっと種類を増やして、彼女たちに着せてやるといい!」 「はッ」 廊下をさらに進んでいくと、『天使組』と書かれた教室の前に出た。 梅垣はそこで止まると、教祖に向かったまたニタリと笑った。 「ここが、その極上少女たちの教室でございます。勝手ながら『天使組』と名付けさせていただきました。容姿も抜群で、処女でありながら性技の授業でも優秀な成績を修めた娘ばかりを取りそろえてございます」 「うむうむ。よいから早くその少女たちを!」 「ははぁッ。では、どうぞ思う存分、ご賞味くださいませぇ!」 がらりと梅垣が扉を開ける。 教室の中では、少女たちが張り子のペニスを擦って性技の自習を行っているところだった。 その中から、1人の少女が立ち上がって、教祖に向かって礼をする。それに合わせて他の生徒も立ち上がり、彼女に続いて頭を下げた。 最初に立った少女が顔を上げる。他の少女は礼の姿勢を保ったままだ。 ぴんと張り詰めた空気は、それまでの教祖と梅垣の浮かれた気分を凍らせ、緊張させた。 完璧に統率された教室。 そのリーダーと思わしき少女は、教祖も息を呑むほど美しかった。 整った顔も、ゆるやかに流れる長い髪も、慈愛に満ちた眼差しも、まさに『天使』と呼ぶに相応しい少女だった。 「ようこそいらっしゃいました。私たちの教祖様」 少女は、そう言って微笑みを浮かべる。 なんと美しいのかと教祖は思った。 この娘は、生まれながらの天使に違いないと確信した。 そして、少女は胸に手を当て、祈るように目を閉じて自らの名を口にする。 「私は、教祖様の敬虔な下僕。天使組の委員長、星置薫と申します」 「……薫」 教祖は、その少女と出会えた喜びと感動に、再び股間を滾らせた。 星置薫は、今日という日に備えて準備を重ねてきた。 セックスについて知識の乏しかった彼女は、性について熱心に学んできた。そのためのカリキュラムも学園では用意されていた。 講師は、一流のソープ嬢やクラブのホステス、ベテランのAV女優など、×××教に洗脳された性の熟練者たちだ。 男を喜ばせるための猥褻な行為を、男心を刺激する媚びた仕草を、彼女は次々に自分のモノにしてきた。 薫は、学校がどのように変わっても真面目な生徒だった。 そして梅垣千歳は、そんな彼女を教育者として目をかけてきた。 梅垣は、自分が不十分な人間であることを自覚している。かつて休職したこともあったし、職員室でも教室でも孤立していることもよくわかっている。 その原因は、自分の真面目さにあると彼女は思っていた。 小さい頃から魔女のような顔立ちのせいで、同級生たちにはイジメやからかいを受けてきた。だが、彼女は「人は見た目でなく中身だ」という親の言葉を信じ、将来は官僚や政治家となって国を動かす立派な人間になることを目指してきた。 真面目にそのことを考えて取り組み続ければいつか叶うと信じて努力し、東大にも合格した。 しかし、唯一の取り柄と思っていた勉強で、大学で出会った本当に優秀な生徒たちとの間に、初めてどうにも出来ない差を感じた。 彼女は敗北と挫折を味わい、鬱屈していった。遊びを知らない彼女は友人も上手く作れず、やがて大学に行くことも辛くなり中退した。その後に親と同じ教育大を受験し直して、親のコネで教師になれた。 その頃からずっと彼女は自分を責めている。 上ばかり見て生きてきたせいで、たかが学生時代の挫折くらいで自信の全てを失った自分の脆さと、その後もコネで得た職にしがみつくことでしか生活出来ない自分の立場を、彼女は真面目に責め立て続けてきて、精神を病んでいった。 しかし、教祖が×××教を起こし、教典を梅垣に授けることによって彼女は変わる。 生き甲斐と夢を得た彼女は、初めて教育者としての自覚をもって生徒たちの指導にあたった。 彼女たちを教祖様の立派な生け贄に育てること。それが梅垣の役目であり、教団の中での評価だ。そして今の彼女にとっての全てだ。 星置薫のことは、前から目をかけてきたつもりだ。 彼女は、昔の自分に似ていると彼女は秘かに思っている。挫折を知る前の自分だ。 折れることを知らない真っ直ぐな目も、大人にも臆さない度胸も、それらを自信として支えているだろう血の出るような努力を、彼女は過去を見るような気持ちで見守ってきた。 いずれは、自分のようにどこかで挫折を味わうだろう。そのとき、自分のように全てをへし折ってしまうことなく立っていられるように願っていた。 だから、教典を彼女に与えた日から、特別に厳しく接してきたつもりだ。 「星置さん! ちゃんと先生の言うとおりになさい! その、ペ、ペニスをしっかり握って、擦るの、ちゃんと!」 プラスチックで出来たペニスは教祖の形を忠実に再現したもので、それを処女の生徒たちは各自に握って、まず手コキから指導される。 もちろん講師は熟練の風俗嬢だが、指導の場には梅垣も立ち会った。 「……はい」 薫は梅垣の言葉に従い、黙々と手コキの動きを繰り返す。 梅垣も処女だが、そのことは生徒たちには隠せているつもりだった。 手コキも、フェラも、何も知らない少女たちのクラスで薫は一から学んでいる。梅垣もそのクラスを担当した。 すでにセックスを知っている子たちは、別のクラスで上級の性技を学んでいる。最劣等のクラスに配属されたことで、薫が挫折をするのではないかと梅垣は案じていたが、そのような様子は見られなかった。 (……それでいいのよ) 梅垣は、おとなしく疑似ペニスを擦る薫に、内心で頷く。 こんなのはまだまだ挫折ではない。ここから這い上がっていけばいい。彼女は努力もできる頭の良い子だし、堅苦しい髪やメガネを外せばおそらく器量も悪くない。きっとセックスでも優秀な子になれる。 かつての自分が諦めてしまった壁を、薫が乗り越えるまで見守って、そして彼女を最高の生け贄に育ててやろうと梅垣は思っていた。 教師である自分に、初めて誇りを感じる。 優秀な生徒たちを生け贄に捧げ、さらに教団の内部で出世していく自分を描いて、梅垣は胸を踊らせずにはいられなかった。 「ダメ、星置さん! もっと、どうすれば教祖様が喜ぶか考えて、自分で工夫して擦りなさい。教祖様にいちいち指示を出させてはダメよ。指示待ち人形になってはダメ。人形化は、絶対にダメなのよ!」 「……はい」 口うるさいだけの梅垣の言葉を適当に聞き流し、薫は適当に疑似ペニスに擦りながら、本物のペニスとはどのようなものか考えていた。 人の体だからプラスチックほど固いわけもないし、体温も感じさせるだろう。勃起は血液の集合だから、おそらく他の部位より温度は高まっているはずだ。 冷静に彼女はシミュレーションして、教祖に仕える日のために学ぶべきことを学んでいく。そして、それ以上のパフォーマンスが出来るように、家でも自習しているし自分なりの工夫も考えてもいる。 だがそのことを、ことさら梅垣や他の教師にアピールしたことはなかった。 彼女は、今の状況に焦ったことなどないし、セックスを体験している子より劣っていると思ったこともない。 セックスのテクニックなど学べば誰でも出来る。大事なのは実際に肌を合わせた時、相手の気分や調子に自分を合わせて、共に喜ぶことが出来るかどうかだ。 未経験ながらも、彼女は「セックス」の肝に気づいていた。だから、いつまでも手コキなど似たような授業を続けても意味がないと思った。 むしろ梅垣の作った今の教育システムは、ずれていると感じている。 セックスが、教祖にとって重要なものであることは知っている。だから自分たち高校生が、その若さや清純さを武器にして教祖にご奉仕することも間違いではないだろう。 しかし、処女も若さも一過性の価値でしかないことは、処女である薫でも知っている。 信徒が10万人を超えた組織の中で、数百人の女子高校生が性を売りにしたところで、せいぜい数日のお楽しみでしかないだろう。 梅垣が考案した制服も、教祖が楽しんでくれるのなら喜んで身につけるが、それも単なる余興にすぎない。 梅垣が薫に対して、勝手に自己投影して感情移入をしていることも彼女は気づいていた。教祖の価値観に合わせたセックスの道具として、梅垣自身の代わりに捧げる生け贄なのだということも知っている。 だが薫は、もっと組織のために役立ちたいと思う。教団を大きくするような仕事がしたい。 一夜の楽しみがお望みならいくらでも教祖の慰みになるつもりだが、自分や他の少女たちの中にも、セックス以外の役に立つ人間がいる。 梅垣は、自分の出世のために生徒を駒にしたにすぎない。それは教団のために生徒のためにも、そして教祖のためにもしてはならない愚だと断じることもできる。 教団を未来を本気で想うのなら、自分たち若い世代をセックスだけの道具にするのではなく、教えによって世界を切り拓く強い戦士に育てるべきなのだ。 (―――私は、あなたたちとは違う) そして薫は、固く結んだ髪をほどいて、メガネを外して、少しきつい印象を与える目を二重に整形した。 教祖の関心を買うために容姿が必要ならば、そうすることに躊躇はない。セックスで喜ばせることを彼が望んでいるから、娼婦の技を学ぶのと同じように。 セックスの生け贄として用意された「処女の美少女」にとって、教祖の目に止まる機会は、「処女」を失うその一瞬しかない。 全ては夢のため。 結局、自分の夢は自分でどうにかするしかないのだ。 教祖への忠誠と信仰を胸に抱きながら、思い描くのはやがて×××教で統一された世界の姿だ。 そしてそのとき、教祖のそばにいるのは自分だと薫は思っている。それを信じて疑ったことは一度もない。 「ようこそいらっしゃいました。私たちの教祖様」 初めて会った教祖は、薫が思い描いていたよりも小柄で、顔つきも貧相だった。 自分たちを見てだらしなく伸びる目尻と鼻の下も、10万人を超える信徒の頂点に立つ男にしては、品性の欠片も感じさせなかった。 だが、そのことにわずかな失望もない。教典によって洗脳された薫にとって、教祖はやはり理想的な男性に映った。 (……なんて愛おしい御方) 感動と喜びで胸を詰まらせ、薫は目を閉じる。 待ちに待った日が、ようやく訪れたのだ。 「私は、教祖様の敬虔な下僕。天使組の委員長、星置薫と申します」 「……薫」 教祖の口から自分の名を聞くと、それだけでキュンと胸が高まった。 薫は初めて異性に対する恋を知った。そして、それがかつて味わったことのないほどの高揚感を生むものだということも。 今まで学んだ性の技術や作法など、やはり意味のないものだった。 すぐにでも這いつくばって、尻を持ち上げ、純潔も貞操も何もかも投げ出してペニスを乞いたくなのが恋なのだと、薫は思った。 心から、そうしたいのだ。 「さあ、お外でハッスルしてきた教祖様をみんなでお迎えして! あなたたちの『処女布団』で暖めて差し上げなさい!」 しかし、梅垣の言葉で薫は衝動を堪えることが出来た。 深呼吸をして、逸る心を静める。なんて下品な命令だ。そうやって彼女は、自分の生徒たちを道具のように扱って、教祖様を喜ばせてきたのだろう。 薫は動かなかった。そして、他の生徒たちも薫の動向を見守るだけで、誰一人、梅垣の指示には従わなかった。 梅垣も、そして処女の体で取り囲んでもらえると思っていた教祖も、じっと教祖の顔を見る薫に戸惑う。 薫は、つと席を離れると、教室の後ろにあるティーセットにお湯を注ぎ始めた。 「な……なにをしているのかしら、星置さん? 「教祖様のお体が冷えていらっしゃるなら、お紅茶をお淹れいたします。少々お待ちを」 コポコポと、お湯をカップからポットに移し替えながら薫は淡々と答えた。 梅垣は目の色を変える。 「ちょ……ちょっと待ちなさい、星置さん。先生は、『処女布団』をなさいと言っているんですよ! あなたたちも、何をボーッとしているの!」 薫は、優雅な仕草で平然と紅茶の用意を続ける。他の生徒たちも真っ直ぐ顔を上げて、梅垣の方など誰も向いていなかった。 教祖は、「ふむ」とアゴをさする。事情はわからないが、薫という女生徒は他とは違うらしい。 梅垣は、ただオロオロとうろたえるばかりだ。 「私たちは、人形ではありません。先生もそうおっしゃいましたね。私たちは人形ではないのです。自分たちで考えて、自分たちの出来ることで、教祖様に愛をお捧げしたいんです」 薫はティーカップを教祖の前まで運ぶと、机の上に置いた。 そして、「失礼します」と言って教祖の肩に手をかけると、そのまま生徒の席に彼を座らせた。 カップは、教祖に渡されるのではなく薫の口に含まれた。教祖の顔を両手で挟むと、薫は紅茶を含んだまま顔を近づけていた。 「ちょっと、星置さん…ッ!?」 梅垣も、教祖もあっけにとられる中で、薫の唇は教祖の口に重なり紅茶が注がれる。 シンと静まりかえる教室の中で、ときおり薫の漏らす吐息だけが艶めかしく響いた。 「はぁ……」 頬に手を添えたまま、薫がようやく唇を離す。 薫も、そして教祖までその頬を赤くしていた。 「な、ななな、なんて無礼を教祖様に、星置さん…ッ」 「教祖様」 梅垣のことなどすでに薫の眼中になく、教祖を真っ直ぐに見据えて真剣な面持ちを見せる。 「失礼をいたしました。今のは私の夢です。教室で、好きな人と初めてのキスをするのが、私の夢でした」 教祖の胸に甘酸っぱいものが溢れる。薫の言葉は彼の記憶をくすぐった。 頬に触れる柔らかい指先。美しい顔と、真っ赤に染まった頬。 薫は、その顔を少女らしいはにかみに変えて、ささやいた。 「――あなたが好きです」 その途端、教祖は自分がタイムスリップしたかのような錯覚に陥った。 ここは自分が学生時代を過ごした教室で、今の自分は詰め襟を着た学生で。 あの時、好きで好きで、でも自分に自信がなくて告白できなかった少女に、放課後の教室で愛を告げてキスをするが憧れだった。 胸が苦しくなるような恋など、あれが最初で最後だ。今の薫がそうしたように、誰もが初めての恋を経験してくることを久しく彼は忘れていた。 「教祖様。よろしければ、他の子たちのファーストキスも受け取っていただけませんか? 私たち、いつか教祖様とそういうキスが出来たらいいねって、みんなで話してたんです。どうか私たちの夢を叶えてやってくださいませ」 「か、勝手なことしてはいけません! 教祖様、では、処女の数珠つなぎなどいかがでしょうか? ここにいる全員の尻をひん剥きまして、ふひひ―――」 「よい。お前は黙っていろ。いいぞ、薫。皆の夢を叶えてやろう」 「ありがとうございます、教祖様」 「んがあああッ!?」 梅垣が髪をバラバラにして掻きむしるのをよそに、天使組の生徒たちは一列に並び、順に教祖とキスで触れていく。 「好きです」 「大好き!」 「愛してます」 思い思いの告白をして、唇を捧げていく少女たち。 嬉し涙を流す子もいれば、友人と手を取り合ってハシャぐ子もいる。 素顔の乙女たちの恋とキスを受け取っていることに、教祖は素直に感動した。 そして自分がこれまでしてきたセックスや乱交が、ひどく野蛮な行為に思えた。 『私たちは人形じゃありません』 薫の言葉が頭の中で蘇る。 信徒たちは、確かに人形などではなかったはずだ。しかしそれを性欲と金欲を満たすための道具にしたのは自分だ。 軽い後悔が彼の胸をよぎる。 「教祖様」 薫に呼ばれて、教祖はドキリと顔を上げた。 「私たちの気持ちを受け取ってくださって、ありがとうございます。次は、私たちが教祖様のお情けを受け取る番です。―――私たちの処女を、お散らしください」 少女たちが数人、マットを運び込んで教室の中にスペースを作る。そして純白のシーツを大きく広げて、数名が横になれるベッドを完成させた。 さらに少女が一人、真っ赤なバラの花束を持ってくる。 薫はそれを受け取ると、包装をビリビリと破き、花びらをわしと掴んで千切ってしまった。 自分への贈り物かと思っていた教祖は、薫がそれをシーツの上に撒き始めるのを見て、ますます意味がわからなくなった。 「……私たちは、処女ですので」 薫は、赤い花びらを撒きながらぽつりと告白する。 「きっと、教祖様がお使いになるシーツを、私たちの血で汚してしまうこともあると思います。でも、私たちにはどうしようもないことなんです。どうか、その血を汚らわしいとお思いにならないでください。お笑いにならないでください。この花びらの一つと思って、見逃して欲しいんです」 そう言って薫は、真っ赤になった顔を伏せ、頭を下げた。 「でないと……私たちは、恥ずかしくて死んでしまいますから」 教祖は、愛おしさで胸をいっぱいにした。 彼女たちの処女を奪う行為を乱暴なことと思い始めていたのを、逆にとても神聖な行為に薫は変えてくれたと思った。 だから立ち上がって、彼女たちに宣言する。 「あぁ、優しくしよう。決して乱暴にはしないから、安心して身を委ねるがいい」 少女たちは、安堵の笑みを浮かべ、教祖に感謝を述べた。 そして教祖も、約束どおりに優しく彼女たちを愛した。 2名ずつ横たえ、愛撫し、順番に処女を奪っていく。 挿入しても乱暴に揺すったりはしない。ゆったりと、なだめるように往復して少女が馴染んでいくのを待つ。 キスも愛撫も紳士的だった。少女の涙を、汗を、破瓜の血もすくい取るようなセックスをして、大人の女に変えていった。 これこそが「情け」だと教祖は思った。 惚れた女性と恋愛関係など持ったこともなく、風俗や、あるいは宗教の権力者として蹂躙するような行為しかしてこなかった教祖にとって、初めて情の通ったセックスを体験していた。 そして、少女たちを次々と抱いていって、残ったのは一人だけになった。 「……最後のお相手を務めさせていただきます」 全てを脱ぎ捨てた薫も美しいと教祖は思った。 白い肌に、控えめな胸が清楚だった。薄い陰毛は彼女の体にとても似合っていて、宗教画から抜け出した天使のようだった。 「お疲れでしょうから、どうぞ、楽にしてください。私が……上にならせていただきますから」 騎上位など、処女のくせに大胆な提案を真っ赤な顔で薫は言った。自分を気遣う彼女の気持ちに、教祖はさらに感動を深くする。 自分のたるんだ腹に跨る薫の腰は、頼りないほど細かった。微かに震える股間を、陰険にそっと照準を合わせて、薫の体が静かに沈んでいく。 「あああッ!?」 ぶちぶちと、薫の肉を破る感触が伝わる。それを惜しいと思うのも教祖は初めてだった。彼女の処女を尊ぶ気持ちすら彼は感じていた。 「うっ、うっ」 薫は、痛みに顔をしかめながら、さっそく腰を上下させる。無理などしなくてよいと、教祖は優しい言葉をかけていた。だが、薫は感謝すらしても動きを緩めようとはしなかった。 「私の体を、楽しんでくださいませ。たった一度の、んっ、処女を、教祖様に、捧げることができて、あっ、嬉しいですっ。嬉しいん、です…っ」 一筋の涙が薫の頬を伝う。それは感動というより、やはり痛みのせいだろうと教祖は思った。 それでも、この健気な献身。感動が胸に広がる。苦しそうな彼女の背中に、教祖は白い羽根を見たような気がした。 彼女は天使だ。 教祖はそう納得した。あの日、悪魔と出会った教団を築いた自分が、今日、天使と出会ったのは2度目の天啓なのだと、教祖は閃いた。 彼女と出会い、信徒への愛を知ることによって、自分は本物の教祖となったのだと。 「薫、望みを言えっ。お前は、天が私に遣わした使者なのだ! お前の望みを叶えることは、私にとっての幸いともなろう! 何でも言うがいい!」 腰を揺すりながら、薫は、痛みに顔を歪めたままで、ゆっくりと指を持ち上げた。 「……ここを」 そして、震える指は彼女の額の位置で止まった。 「ここを、教祖様に、貰っていただきたいのです。んっ、私は、ずっと、どうしたら教団を、もっともっと、大きく出来るか考えてきました。んっ、私に、それを使わせて、くださいっ。教祖様のために、私を、もっと使ってください…ッ」 星置薫を天啓と思ったことに、間違いはなかった。教祖は、彼女の頭上に天界の光を見た。 教祖もまた涙を流す。この出会いがあったことを、神と悪魔を並べて感謝したいと本気で思った。 「薫! お前を、『大天使』に命じる。存分にその能力を奮うがいい! お前に教団の未来を託す!」 「あぁ! 教祖様、ありがとうございます!」 ぐじゅ、ぐじゅ、勢いのついた二人の腰がぶつかり合う。処女の神聖さなど忘れてしまったかのように、教祖と薫はいやらしい声を出してセックスに没頭し始めた。 梅垣は、それを呆然と眺めた。 『大天使』は、教祖に続く教団の最も高い地位。先ほど自分の貰った『第3級天使』のはるか上だ。 あまりにも鮮やかに自分を飛び越えていった教え子に、混乱した頭がひしゃげてしまいそうだった。 「出すぞ、出すぞ、薫! お前に出すぞ!」 「あぁ、くださいませ、教祖様! 愛しております! 私は教祖様と教団を、心から愛しております!」 「私もお前を愛しているぞ、薫ぅぅ!」 「あぁぁぁ!?」 どく。最初の一撃が子宮に達した瞬間に、薫もエクスタシーを受け取った。 共に痙攣して喜びを分かち合う互いの性器が、混ざり合うほどの熱を持って快楽を燃焼させる。 これほど気持ちの良いセックスは、最初に美咲を抱いて以来だと教祖は思った。二度目の生まれ変わりを果たした気分だと、大きく息を吐き出した。 「一緒に本部へ帰ろう。お前の居場所は私のすぐそばだ」 「はい……教祖様……」 薫は教祖の胸から顔を上げる。 そして、梅垣と視線を合わせて、ニタリと笑った。 梅垣は、そのとき初めて薫の本性を知る。 彼女の目は、明らかにこう言っていた。 ―――私は、あなたとは違うのよ。 梅垣千歳は、その後入院し、学園にも教団にも二度と顔を出すことはなかった。 そして、×××教は星置薫を手に入れることによって、さらに進化を爆発させる。
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