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成長が賃金増やす流れをつくろう

2013/2/17付
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 デフレ脱却の目的は賃金が伸びることと雇用の安定だ。成長が働く人の所得の増加につながり、新しい雇用を生みだす。それが経済を良くしていく。そうした好循環をつくっていくような手立てを多面的に講じるときだ。

 安倍晋三首相は経団連など経済3団体に賃金の引き上げを求めた。金融緩和などで消費者物価を前年比2%上げていく目標を掲げており、実質的な賃金の目減りを抑えるためだ。経済界は最近の円高修正を踏まえ、「業績改善分を賞与に反映する」などと応じた。

企業活動を妨げるな

 大切なのは円安の恩恵に頼らず、競争力のある製品やサービスを生みだすことで企業が持続的に成長し、賃金の原資を安定的に増やしていくことだ。

 収益力が高まれば正社員だけでなく、パート、契約社員など非正規社員の収入も底上げしやすくなる。非正規労働者は働く人の35%を占めており、処遇改善は消費の活性化につながる。

 グローバル競争の激化や資源価格の上昇などで、企業の1人あたり付加価値額は1990年代から低迷している。1人あたりの労働生産性も日本は先進諸国のなかで低い。雇用者報酬が90年代後半から横ばいになっているのはこうした背景がある。

 生産性や付加価値を高めるために、企業が活動しやすい環境をつくらなくてはならない。賃金引き上げを経済界に促すのもいいが政府自身がやるべきことは多い。

 世界を舞台に企業が利益をあげていくには、貿易自由化に乗り遅れるわけにはいかない。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に一日も早く加わるべきだ。

 規制改革では電力事業への新規参入を促し、エネルギーコストを抑える電力市場改革が待ったなしだ。30日以内の短期派遣を原則禁止としている労働者派遣法など労働規制も見直すべき課題が多い。

 企業に重い保険料負担を強いている現行の医療・年金制度も問題だ。社会保障制度改革も急がなければならない。

 電機業界のように、競争激化で企業が人員調整に追い込まれるリスクは増大している。削減する人員数も大規模だ。やむを得ず退職した人が再就職しやすくし、収入の安定をはかることも重要だ。

 別の会社や仕事に柔軟に人が移れる労働市場づくりを急ぐ必要がある。非正規社員がより待遇の良い職に就く機会も増やせる。

 成熟産業から医療・介護、環境、エネルギーなどの成長分野へ人材が移りやすくなる利点もある。女性や高齢者の就労も促せ、将来の労働力不足を和らげられる。

 労働市場を育てるには人の能力を客観的に評価する仕組みをつくり、企業が採用活動に使えるようにする必要がある。政府は介護や省エネなどの実践的な知識や技能を測る「キャリア段位」という資格制度を整備中だ。対象の職種を順次広げてほしい。

 人材サービス会社が就労支援をしやすくする規制改革も要る。たとえば求職者本人から手数料を取る民間の職業紹介事業は対象が部長以上の「経営管理者」などに限られているが、見直すべきだ。

 個人が自らの能力を高めることも必要だ。多くの企業が仕事の成果を賃金に反映させており、生産性を上げなければ収入は増えない。労働市場が育ち、働き口を見つけやすくなっても、求められる技能がなければ就職は難しい。

経営力が問われる

 公共職業訓練の民間事業者への開放を進め、訓練メニューづくりを民に競わせて質を高めるなど、能力開発支援を見直すべきだ。ソフトウエア開発者など需要の旺盛な情報やサービス分野の人材養成に力を入れたい。

 企業の経営者は価値創造力を一段と問われる。上場企業は前期末で約60兆円も手元資金を積み上げている。資金を有効活用して付加価値を増大させる経営者本来の役割を、今こそ果たすときだ。

 M&A(合併・買収)や設備・研究開発投資、人材の教育投資などお金の使い方は多様だ。競争力のある事業戦略や投資計画を組み立てる力がますます求められる。

 投資家に成長戦略を明確に語る力も欠かせない。独自のビジネスモデルが株式市場から資金を呼び込み、それをまた活用して成長につなげる好循環をつくりたい。

 経済を元気にし、家計を潤わせるけん引役は民間だ。企業は新しい製品やサービスの創造を競い、政府は企業活動が活発になるよう政策面で支援する。その両輪が回転することが持続的な賃金の増加につながっていく。

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