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  明日への導 作者:散葉
07 初めての街パート2
はい……皆さんこんにちは、紫苑なのです。
って、私は誰に話しているのでしょうか……?
ちょっと疲れているのかもしれません。もうお洋服屋さんに入ってから結構な時間が経っているのですし、何よりお人形さん扱いは疲れたのですよ!
「うんうん、やっぱりピンクも良いけど水色も良いよね」
「そーですね、というかこの子肌綺麗だしー、色白いから何でも似合うと思うんですよねー」
「そうだね、オレもそう思う」
ラウラさんが指差したのは、可愛らしい服がたくさん並んでいるお店でした。おとぎの国のような雰囲気のお店なのです。店員さんはシンプルなシャツに黒のスカートと薄緑色のエプロンという姿だったのですが、置いてある服はお店の雰囲気に合った通りにパステルカラーの可愛らしいお洋服で一杯でした。
「次はこれとかどうですかー?」
「あ、それも可愛い」
そう言って店員さんが持って来たのは、白い丸襟シャツと淡い紫色のスカートがセットになっているものなのです。シャツは綺麗なレースが至る所にあしらわれていて、袖はチューリップみたいに膨らんでいるのです。何と言うのでしょう?きっと名前があるですよね。スカートは、フワッとした段になっていて同色のフリルが付いています。こちらもとってもキュートなのです。

私は特にお洋服にこだわりがないですので、選んでもらえるのはすごく嬉しいのです。だけど、さっきから高いのです!私なんか殆ど役に立ってないのに、こんな高いお洋服買って貰う権利ないのですよ!
「ゆー君……」
ラウラさんは絶対聞いてくれないので、ゆー君に助けの視線を送ってみるのです。
特に何も言わないで、こちらを見ていたゆー君は私の視線に気がついてくれたみたいなのです。
「あー二人とも、紫苑が戸惑ってるから。取り敢えずあれみたいな落ち着いたのにすれば?」
ゆー君が指差したのは、シンプルなワンピース。胸元の小さなリボンが可愛らしいのです。

「何言ってるの!?」
「何言ってるんですか!?」
見事な程息がピッタリなのです、店員さんとラウラさん。
「しーちゃんにあんな地味なの着せないし!あの船の癒し着飾らなくてどうすんの!?」
「そーですよ!あの子あんなに可愛いんだから着飾らないとか有り得ないんですけどー!」
ずいっとゆー君迫る二人。ゆー君の顔が若干引き攣っているのです……。
「ラウラ、お前そんなキャラだったか……?」
「今関係ないだろ!」
「あ、うん……」
ゆー君が負けてます。ラウラさんの勢いにびっくりなのです。

「あのです!」
でも、買って貰うわけにはいかないのです。高すぎるのです。私はゆー君達のお下がりで充分なのですー!!
「どうしたの?しーちゃん、その服気に入らなかった?」
「違うのです。このお洋服はとっても可愛いのです」
「じゃあ、これも追加で」
「はーい、畏まりましたー」
「ってダメなのです!」
きょとんとした顔をするラウラさんと店員さん。
「何で?」
「似合ってましたよー?」
「だって、高いのですよ……。私、皆さんの役に全然立ててないのに貰えないのです……」
思わず、しゅんとなってしまいました。よく考えると私は何もしてないのです。お掃除もお料理も何にも出来てないのです。
「私、皆さんのお荷物なのです……」


ぽんと頭を軽く叩かれました。顔を上げると、ちょっと怒った顔をしたゆー君がいました。
「自分を卑下するのは、止めろ」
「ゆー君……」
「誰も紫苑がお荷物だなんて思ってない」
「そうそう、しーちゃん来てから船の雰囲気が明るくなったし、皆しーちゃんがいるから無茶しなくなったし、しーちゃんちゃんと皆の役に立ってるよ」
ラウラさんも軽く私の頭を叩くようにしてから、目を見て言いました。
「お荷物だなんて思ってるのは紫苑だけだ」
「しーちゃんはちゃんと仲間だよ」
「私、本当に皆さんの役に立ててますのですか?」
「ああ」
「うん」
う、嬉しいのです。ゆー君とラウラさんの目に嘘は見えません。……ちゃんと役に立ててるのですね。
「あの〜」
困った様に声をかけて来たのは店員さんだったのです。は、ここはお店の中だったのです。迷惑だったのです……。
「私は店員ですので、ちょっと差し出がましいですけど……貴女は充分大切にされてると思いますよ、服選んでる時すごく楽しそうでしたし、そこのお兄さん方」
ちょいとゆー君達を指差す店員さん。お姉さんから見ても分かるくらいだったのですか……。ちょっとショックなのです。お兄ちゃんに鈍いとは言われてましたけど、その通りなのです。勝手に落ち込んで申し訳ないのです。


「何だー、しーちゃんが気にしてたのそんなことだったんだー」
「てっきり服の趣味が合わなかったんだと思ってた」
ニコニコと笑いながら言うゆー君とラウラさん。そんな簡単に言えるほど当たり前だったのですね。それにしても何か忘れてる様な気がするのです。
「あ!でも、やっぱり高いのです!もっと安くていいのです!」
「何で?しーちゃんは仲間だよ」
「私の良心が痛いのです〜!」
仲間だって言われても、やっぱりそれとこれは別なのです!もっと安くていいのです〜!


その後、ゆー君を味方につけたラウラさんに私が勝てるわけもなく、ラウラさんの気が済むまでたくさんお洋服を買うことになってしまいました……。
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