ロシア隕石落下:正教会の「聖なる湖」に 周辺は警戒態勢
毎日新聞 2013年02月16日 20時17分(最終更新 02月16日 20時55分)
【チェリャビンスク(ロシア中部)田中洋之】ロシア・ウラル地方で15日に観測された隕石(いんせき)は、チェリャビンスク州の州都チェリャビンスクから西方約80キロのチェバルクリ市にある湖に落下した可能性が高いとみられている。普段は風光明媚(めいび)な湖だが、現場周辺は16日、厳重な警戒態勢が敷かれ、物々しい雰囲気に包まれていた。
南北5キロ、東西4キロほどあるチェバルクリ湖のそばに建つロシア正教会の聖堂では15日朝、祭日の祈りが行われている最中だった。「大きな音がして空を見ると巨大な煙が猛スピードで飛んでいった。その後、爆発音とともに破片が散らばった」。司祭を補佐するセルゲイさん(52)は16日、携帯電話で撮影した当時の映像を見せてくれた。聖堂内は約180人の信者が集まっており、「飛行機事故ではないか」などと騒ぎになったという。
この湖では毎年1月に信者が表面の氷を割って冷水で体を清める儀式があり、正教会信者が多い地元で「聖なる湖」と呼ばれている。隕石は聖堂から3キロほど離れた湖に落下したとみられ、直径8メートルの氷の穴が確認されている。セルゲイさんは「民家に落ちなくて幸いでした。神が守ってくれたのでしょう」と話した。
「落下地点」の300メートルほど手前で3人の警察官に「だれも通さない」と制止された。15日には現場写真が報道されたが、隕石の破片が持ち去られるなど科学的調査の妨げになることを懸念した当局が16日から立ち入り禁止にしたようだ。現場ではダイバーが水中に沈んだとみられる隕石の破片などの捜索作業を行っていた。
湖周辺では1センチほどの黒い破片が複数見つかっており、州内務当局は、隕石かどうか鑑定すると発表した。プチコフ非常事態相は「隕石の破片が発見されたとの報告はない」と述べるにとどまっている。