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“隕石”落下 国立天文台・渡部副台長に聞く
2月15日 21時47分

“隕石”落下 国立天文台・渡部副台長に聞く
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ロシア中部で、隕石(いんせき)とみられる物体が落下し、その際の衝撃で、広い範囲にわたって建物のガラス窓が割れるなどして、多数の人がけがをしました。

国立天文台の渡部潤一副台長の解説を動画で掲載します。

原因は“隕石”か?

Q)最新の情報で6mほどのクレーター状のものが見つかったということだが、これは隕石の跡なのですか?

(渡部潤一副台長)
これだけ大きな被害を及ぼすような天体衝突ではそれぐらいのクレーターができて当然だと思うので、可能性は高いと思います。
いわゆる「流れ星」の非常に大型のものと思っていいですが、映像を見ると、非常に明るく光ったあとに、消えゆく破片が最後に残っていて、だんだん消えていっています。
これが隕石となって燃え残って落ちた可能性が高い。

Q)これだけの大きさの隕石が落ちることは珍しい?

隕石の落下そのものは地球上でかなりの頻度で落ちています。
しかしこれだけ大きなものが人口密集地の近くであるのは珍しいです。

Q)これは「流れ星」なんですか?

一種の流れ星です。普通の流れ星は大きさが数センチから数ミリ程度で、すぐに燃え尽きてしまいます。
これが数十cmから1mを超えると、こういう大きな流れ星になって、燃え尽きずに最後まで残ってしまいます。

なぜ大きな被害に?

Q)映像で辺りが明るくなるのは爆発?

一種の爆発と呼ぶことが多いですが、流れ星の本体が大気中で突入するときには、バラバラに壊れる、あるいは表面がはげたり分裂したりします。
そうすると表面積が一時的に大きくなるので、流れ星としての発光が一時的に強くなる現象だと思われます。

Q)窓ガラスが割れた被害はどうして?

天体というのは超音速で突っ込んでくるので、いわば超音速旅客機みたいなものが近くを飛んだときと同じで、衝撃波が発生し、それが地上に到達するとドーンという音がする。それが一般の人には爆発音に聞こえてしまうのです。

Q)衝撃波はどんなインパクトが?

一瞬にエネルギーが凝縮して来るので、地震の最初のドーンという揺れのようなもの、何かの爆発と聞き違えてもおかしくないような音が聞こえます。

Q)こうした事例、今まで見聞きしたことは?

無いですね。
隕石の衝撃波は、日本でも1996年の筑波隕石などでは関東一円でドーンという音が聞こえましたがそのときもガラス窓が割れてけがということは無かったと思うので、これだけ大きな被害は記憶にある限り珍しいと思います。

Q)ロシアの建物の構造も影響したんでしょうか?

やはり地震の少ないところですと振動に弱い構造にしている可能性もあるので、そういうところが少しマイナスに作用した可能性もありますが、これは調べてみないと分かりません。

Q)隕石はどの程度の大きさだったと?
このレベルですと1mを超え、数トンクラスの隕石が落ちてきたと考えられます。
かなり大きかったと予想できます。

Q)ロシアでは1908年にも「ツングースカの大爆発」と呼ばれる、小惑星の衝突による大被害が出て、被害は2000平方キロメートルにも及びました。

このときと今回のものとはレベルが違います。
このときの天体は40~50mぐらいの非常に大きなものだと言われています。
それぐらいだと、最後の段階で衝撃波以外に本体が本当に爆発するんです。
そうすると爆風が地上に降りて被害を及ぼしたと考えられています。
このときはシベリアの山林など幸い人のいない場所でした。

隕石に備えられる?

Q)隕石の衝突にどう備えれば?

ツングースカのレベル以上で、甚大な被害を及ぼす天体、50mから100m、数キロというサイズのものは、天文学者たちが世界的にそうした危険な小惑星や天体を探して、衝突するかどうか判定する観測を始めているんです。
大きな天体は太陽の光を反射して明るく見えるので分かります。
今のところわれわれが見ている36万個ぐらいの小惑星の中には、近い将来、地球に衝突するものはありません。
しかし、今回のように数m~50mぐらいの小さなものだと、ぶつかってくるまで分からないと言うことが多いんです。そういう意味では、こういうことは今後も起こりうると思います。

Q)ちょうど明日(16日)、直径45mの小惑星が地球に再接近することになっていますが、それとの関係は?

軌道も飛んだ方向も違うので、関係は無いと思われます。
あすはツングースカレベルの、40mから50mあると言われていますが、そういった小惑星が地球に2万キロちょっとまで近づく、この程度の距離は静止衛星軌道の内側なので、宇宙的に言えば「ニアミス」と言えます。
しかし軌道はしっかり決まっているので、今回は天体が地球にぶつからないことが分かっています。


Q)天文の世界は、予想しがたいですね

まだまだ分からない天体もたくさんあるし、まだ分からないこともたくさんあるということが、宇宙の謎の深いところだと言えます。

Q)それでもあえて教訓とすることは?

これだけの威力を持つことが起こりうるということは、どこかで心に留めておかなければいけません。地震などと同じでいつ起こるか分からない。まあ備えることは難しいですが、心構えは持つ必要があるかもしれません。

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