思わぬ大反響に県教育長が直接応対
2013/02/15
体罰報道で揺れる愛知県立豊川工業高校陸上部、顧問(監督)の、同校同部での継続指導を求める署名が3万7808人にも上り、活動を続けてきた同校元PTA会長の荻野滋夫さんら発起人を含む5人は14日、署名簿などを持参して愛知県教育委員会(名古屋市)を訪れ、野村道朗教育長に手渡した。半月間で4万近い署名が集まっただけに、事態を重くみて、野村教育長自らが直接受け取り、地元選出の小林功県議会議長、野中泰志県議らも立ち会った。
署名の主旨はずばり、その情熱・意欲・指導力・実績に照らし、教諭が継続して豊川工業高校で教鞭(べん)をとり、また継続して同校の陸上部顧問として活動・指導できるよう嘆願・要望するというもの。
発起人代表である荻野さんは「県教委はまだノージャッジなのに、体罰ばかりが強調して報道され、もう学校にとどまれないなど、報道が先行する事態に陥っている。仮に、百歩譲って体罰があったとしても、先生は報道されているような人ではない。3万7800人の署名は、豊川工業高校陸上部の20年間にわたる活動について、地域の方々がどう見てくれていたのか、そのものずばりであり、正しさの証明だ」と話す。
署名簿3万7808人の内訳は、主に愛知県内で三河部2万6456人、FAX署名4708人、その他2750人、同FAX658人▽県外2013人、同FAX1233人▽署名反対にFAX1人。
小林議長らが立ち会ったこともあり、野村教育長は終始慎重な姿勢で聞いてくれたという。懇談の中で、「体罰に頼らない指導が大事だ」といった県教委の方針が示され、逆境に強い子どもづくりなどが話題に上った。
署名簿とあわせ、元選手が書いた約30冊の生活日誌や手紙10通も添えて提出した。
「今後も署名簿は届くと思うが、きちっと整理して、生活日誌などを取りに行くときに持参したい」と荻野代表。「県教委のジャッジとともに、マスコミ報道にも注目していきたい」と話す。
教諭は20年間、陸上部員と日誌の交換を行い子どもの心の成長を見てまいりましたが、教え子から「自分の日誌を関係者に見てもらいたいです」とか「先生は、報道されているような人ではありません。日誌を見たらわかります」などの声が寄せられました。
今般、その一部を持参しましたので、ご高覧いただきたく存じます。
また、手紙の一部も添えておりますので、ご高覧くださいますようよろしくお願いいたします。
◇
教育問題に関しましては、昨今報道が先行する嫌いがあり憂慮するものです。さまざまなご議論があろうかと存じますが、愛知県教育委員会様をはじめ報道機関には以下の観点を含めよくご考察いただき、また適切な検証をもって総合的に対応のご判断をいただきたく、お願い申し上げます。
①まず第1に、「教育は愛である」という原点に立った議論
②愛は見えませんが、子どもの「心」という見えないものと教師や教育現場に向き合っているという視点を忘れないこと
③身体接触すべてが体罰であるという「0か100か」という議論ではなく、教師の愛情による身体接触はありうることへの現実の直視(決して暴力を容認するものではありません)
④子どもの真の成長には、精神的・身体的困難を乗り越える必要があること。また、それはとりもなおさず、将来の糧になること、つまり、教育の効果は、学校内の現象だけにとどまらず、むしろ、卒業後の実生活の中で自覚され発揮されるものであること
⑤子どもの身体的、精神的苦痛や受傷という、いわば「被害現象」(報道ベースであえて記します)は、身体接触だけによって引き起こされるものではなく、身体接触がなくとも起こりうるものであり、身体接触が抜き取られ、第1義的にことさら論じられるべきものではないこと
⑥そうした前提の中で、身体接触の過程や結果を論じ、反省すべき点は反省し、教師や保護者・地域とともに在り方について検証し、論じ、また研修を受けるなど、教師と地域社会が一緒になって取り組む必要があること
⑦何より、今般の問題や議論のゆくえが、子どもたちに、社会への深い不信を招き、また夢を奪うような事態をもたらしてはならないこと
以上を願い、深いご理解をお願い申し上げる次第です。
◇
教諭は、子どもの真の成長を願い、「やればできる」「人のためにがんばる」という指導理念を伝えるため、多大な時間と労力と、また費用さえも注ぎ込んで参りました。
強豪と言われるまでに成長させましたが、誰でも入れる部活動である、また、先輩が後輩のお手本となっております。勝利至上主義などとは無縁で、むしろ、そうした考え方の反証の象徴でさえあったといえます。
そして、その姿は、学校自体を変え、地域からは「あいさつのできる学校」「元気のいい生徒」という評価につながっております。
教諭は、「たすきを渡すとき、どんなに苦しくとも笑顔で渡せ。たすきを受け取った選手がすぐに加速できるよう、励ましの気持ちでたすきを託せ」と指導しております。また、養護学校の生徒さんや合宿で一緒になった運動嫌いの子どもたちには、実に優しく接し、一緒になってランニングするなど温かな心の持ち主です。
どうか、長く同教諭の活動を見、また応援し、それによって励まされてきた者がほんとうにたくさんいることをご理解いただき、署名者一人ひとりの意思をおくみくださいますよう切に嘆願・希望いたします。
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