発信箱:廃炉ツアー=青野由利(論説室)

毎日新聞 2013年02月15日 01時14分

 直感的に「おもしろい」と思ったが、手放しで支援していいかちょっとためらった。批評家の東浩紀さんが立案した「福島第1原発観光地化計画」だ。

 事故から27年になるチェルノブイリ原発は、一昨年から観光ツアーが解禁されている。福島第1原発もやがては観光の対象となるだろう。そんな未来のために、どのような施設や伝え方が必要か。あらかじめ考えておこうという構想だ。

 たとえば、南相馬にビジターセンターを置き、クリーンエネルギーや除染技術をテーマとする。そこから「サイトゼロ」の廃炉見学にでかけ、スマートフォンをかざして当時の事故や爆発を疑似体験する。タイトルに劣らず、アイデアも刺激的だ。

 昨年、月1回の研究会をのぞいてみると、社会学者の開沼博さんや建築家、美術家ら中心メンバーが東さんと具体策を練っていた。観光学者や博物館の人も集い、熱気がある。「ダークツーリズム」という言葉もここで知った。人類の負の歴史について理解を深める。広島の原爆ドームを思うと、とっぴな話ではない。

 気にかかっていたのは被災者の気持ちだが、開沼さんに聞くと「想像以上に好意的」。考えてみれば、被災地をタブー視して、そっとしておくだけでは何も生まれない。計画の目的は「原発事故を人々の目から隠さず、正面から向き合うこと」。これに限らず、忘れないためにすべきことはたくさんある。

 休暇でチェルノブイリ観光ツアーに行ったという英国在住の友人も、こう語っていた。「誘われた時には気が進まなかったけど、行ってよかった」。被災した日本の気持ちや原発の怖さが少しだけどわかったからだという。

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