成都の店舗は開店当時、まったく鳴かず飛ばずだった。2年も続いたこの苦戦時代を、自ら店頭に立って奮闘する。開店と閉店の1日2回、必ず店頭に立って「いらっしゃいませ」と頭を下げるその姿に「総経理自らそんなことするのかね?」と中国人客は驚いた。中国人の総経理といえば「仕事をしない」のがステレオタイプだからだ。
「顧客目線の、中国人目線の総経理」――そんな噂が噂を呼び、成都の副市長が直々に麦倉さんに会いに来たことも。「あなたの会社を応援しましょう」というお墨付きを与えられることにもなった。
2012年、中国イトーヨーカ堂全体の売上げは80億元(日本円にして960億円)に達した。中国小売業界では16位にランキングされる勢いだ。中でも成都2号店は、日本の店舗を含めた全店のなかでダントツの売上220億円を誇る。
そんな好業績と、麦倉さんはじめ現地に張り付いて頑張った日本人がいたことは、決して無関係ではない。
リスク承知でやり続けるのか
中国で反日デモは、過去に3回発生したが、尖閣諸島国有化を発端にした直近の反日デモは、史上最悪の日中関係にまで陥り、ついに「一触即発」という可能性まで取り沙汰されるようになった。少なからずこうした機運は、中国の日系企業に深刻な影を落としている。
いつまた「反日」が再燃し、抗議デモに火が点きかねないビジネス環境の中で、日本企業は事業を継続する意味があるのだろうか。
筆者のそんな問いに麦倉さんは次のように答えた。