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China Report 中国は今
【第119回】 2013年2月15日
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姫田小夏 [ジャーナリスト]

反日デモでイトーヨーカ堂が
ほとんど無傷だった理由

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「中国に染まれ」と言うは易し

 当時、認可を受けるために国務院から要請されたのは、以下の3点だった。

 1つは「POSシステムによる単品管理の導入」、2つめが「中流階級のニーズに合った品揃えとサービスの提供」。そして3つめが「先進国の社会習慣によるイベントを導入した活気ある店づくり」というものだった。

 「要は『中国の小売業改革』を任されたわけだが、ただシステムを持っていけばいいというものではなかった」と、麦倉さんは振り返る。

 赴任に際して麦倉さんは、当時の成都イトーヨーカ堂の董事長だった塙昭彦さんが飛ばした檄を心に刻んだ。それは、「中国に染まれ、だが染まりすぎるな」というものだった。

 いくら日本の商品はすばらしい、日本の技術が優れている、といっても、中国事情を知らなければ受け入れてはもらえない。この言葉には「全体を知った上で個を論じろ」という意味が含まれていた。

 麦倉さんはその後、徹底して「中国人目線」を貫いた。中国人目線に合わせるには、同じ釜の飯を食べる、そんなところから始めなければならなかった。だが、言うは易し、だ。

 口から火を吹くほどに辛い四川料理は日本人の体には酷で、中には体重を減らした者もいたそうだ。街に出ればトイレはどこも汚く、ドアもない。「中国に染まれと言われても、そう簡単にできることではなかった」と語る。

 当初、従業員の麦倉さんに対する評価は「怖そうな日本人」だった。麦倉さんの細かい要求に「そんなことまで私の責任?」と、思わず泣き出す女性従業員もいた。しかし、ほどなくして「怖そうな日本人」という見方は「声を掛けてくれ、自分に教えてくれる人」に変わった。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国ビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。現在、中国で修士課程に在籍する傍ら、「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)。


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ビジネス・流行・社会問題など、日本人にとって無関心ではいられない中国の最新動向を追う。長年、上海において現地の日本人社会、日本人のビジネスに警鐘を鳴らし続けてきたジャーナリストによるレポート。

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