源内語録バーナー



冒険か? それとも売れ線か?
リーフにとって「こみパ」とは何だったのか?

こみっくパーティー批評 完全版




リーフの99年5月末に発売された「こみっくパーティー」は、概ねにして好評だったものの、ホワイトアルバムとは、また違った意味で、ファンの評価が分かれたゲームであった。制作スタッフが従来のチームではなく、新設された東京開発室であり、そのメンバーがF&Cという極めてポピュラーで、グラフィックには定評のあるソフトハウスからの移籍ということも、評価が分かれることになった原因のひとつだろう。しかし新たな開発室がそれまでとは違うテイストのゲームをリリースするのは、当然といえば当然。むしろ。今後、この新開発室がどのようにリーフファンの裾野を広げていくのか、興味深いところである。そんな注目作品であったコミックパーティーの評価を源内流に試みてみる
それでは、
  1 不具合とサポートに関して
  2 ゲームシステムに関して
  3 ストーリー、キャラクターに関して
  4 音楽、グラフィック、音声 そして総合的評価


の順を追って、評価していこう。

■1■ 不具合とサポートに関して

●源内のこみパ不具合奮闘記として・・・

 
まず、今回は残念なことに、ストレートにゲームの評価に入れない事態となってしまった。ご存じのようにゲームを始める前に、大きなトラブルが生じたためである。ユーザーによって、その症状の種類も度合いもまちまちだったようだが、私の場合は、初めは、インストールすらできなかった。スタートアップフォルダーに登録されている常駐ソフトをはずしてみたものの、中にはレジストリに直接書き込まれているものもあるようで、すべてをはずすことはできない。それでもなんとか知識を屈指してインストールだけは、完了させた。
 ところが、いざゲームをスタートさせてみると、オープニングの曲が終了したところでフリーズするという事態が起きた。たかがゲームである、windowsの内部に関してまで詳しくない人も大勢いるだろう。いくら、マシンの環境が千差万別だからといって、ここまで初動が不安定なゲームを私は知らない。ましてすでに、エルフ、アリスと並んでもこの業界では日本を代表するメーカーである以上、このトラブルは許されるべきものではないだろう。なぜこのような事態になったのかは、内部の事情を正確に把握しているわけではないので語らないが、今後のゲームの販売体制に活かされるものと是非とも信じたい。少なくとも次にこのような事態になるようであれば、わたしのリーフへの評価は、かなり落ちることになるだろう。
 ちなみに私のマシンは、ハードディスクが5インチのフロントベイにマウントされているので、HDDを抜き、空いているハードディスクにプレーン(ほとんどインストールしたばかりの状態)なwindows98を作り、それをマウントして、そこにゲームをインストールすることで、なんとか動作するようになった。我ながら、なんとも情熱的な行動だと思う。(^_^;)
 だが、残念なことに、ゲーム進行中、BGMがチェンジするたびにフリーズしてしまう。この対処法に関しては、インターネット上のオフィシャルページのサポートである程度フォローされていた
(※1)、私の場合は、画面をフル画面から640×480に切り換える。次にフリーズしたら、その逆に切り換えるという行動を繰り返すことで、ゲームを続けることが出来た。ショートカットキーも設定されているので、苦にはならないのだが、それでもひとつのシナリオでエンディングを迎えるまでにこの動作の回数は100回を越えたと思う。うんざりしたのも事実だ。この現象は、MITSUMI製のドライブに現れるらしい。事実私もMITSUMI製のドライブである。私は、プログラム的なことにはまったくの素人だが、今回のこういったトラブルの大半は、CD−ROMのマスタリングやプレスに関係があるような気がしている。インストールのファイル読み込みが異様に時間がかかったのも、その性ではないかと想像している。
 またエンディングを迎え、背景グラフィックがセピアに変色し一年間の同人誌の発行部数が表示されると、そこでフリーズし、エンディングテーマやエンドタイトル、エピローグが見られない現象もすべてのシナリオで生じた。これはIRCでの情報交換
(※2)の結果、設定で、「音楽を鳴らす」のチェックをはずしておくことで回避でき、しかも、そうすることによって実際には、エンディングやエピローグの音楽が鳴るという、冗談のような方法があることを知った。そのため、エンディングが近づくと、セピアに反転するギリギリのところで、チェックをはずすという技が必要になる。せっかくの音楽である、ギリギリまでは聞いていたいのだ。おかげで、シナリオとは別にまったくスリリングなゲームになってしまった。このエンディングの見極めに失敗すると、またSAVEしたところからのやり直しになってしまう。事実、9本のシナリオの内、4本はこの見極めに失敗した。(^_^;)
 以上が、わたしの体験した不具合である。これらはプログラムのバグというのとは、多少ニュアンスが違うかも知れない。一部で報告されているような無限ループなど、あきらかなバグには遭遇しなかった。

●リーフよ! しっかりしなさい!

 さて、これらの不具合は、すべて修正パッチをあてていない状況でのレポートである。すでにコンプリートしてしまったので、パッチをあててどう改善されたかは、確かめていないのが現状だ。ただ発売から、二週間で、修正パッチを用意できたスタッフには敬意を表したい(むろん、修正度合いにもよるが・・・)。
 ただインターネットにつないでないユーザーのことを考えるといろいろな問題を含んでいるようにも思える。はがきで不具合を報告し、修正CD−ROMが送られてくるのを待つという場合には、どのくらいの時間がかかったのだろう。先にもいったが、このようなトラブルは、許されるものではない。「バグのないプログラムはない」「誤植のない本はない(^_^;)」ということとは、別問題である。バグのあるなしではなく、そのことによってゲームができるか、できないかというところまで、深刻な現象が起きているのだから。これが、二流、三流のメーカーであれば、潰れていてもおかしくない。リーフの場合、それでも許されてしまうのは、これまでの商品で培われてきたメーカーとユーザーとの信頼関係に救われているからである。ただこれは新規ユーザーにはまったく無関係なこ とでもあるのだ。今回のことを教訓に、より高いクオリティのゲームを作って欲しい。

■2■ ゲームのシステムについて

●僕らがシステムに求めるモノって何だろう?


 さて、前置きが長くなったが(前置きだったのか!)、ゲーム本来のレビューに移ろう。
 恋愛アドベンチャー(以下、恋愛ADV)と同人誌制作シミュレーション(以下、同人SLG)の構成というリーフとしては、新しい手法ということだったが、「ホワイトアルバム」
(※3)(以下、WA)と、それほど違うという印象は受けなかった。WAの場合も、一週間の予定を先に決定する手法であり、今回はその結果が同人誌制作のスキルとしてパラメーターがカウントされ、それを見ることが出来るという点が進化したと理解している。これは、後で述べるが、結構、好きな(共感できる)、システムだった。ただ多くの人が、「Piaキャロットへようこそ!」(※4)というゲームのシステムと同じという反応で、それを否定的に捉える向きもあるようだ。私は、ゲームのシステムが同じということで、否定するのは間違えだろう、という立場をとる。「Piaキャロ」を私はやっていないので、正確な論評は避けたいところだが、それを言ったら、ロールプレイングゲームはすべて同じシステムであり、シナリオの違いがあるだけである、ということもできる。要は、ゲームの中でこなれてきて、評判のいいシステムをリーフも採用したということだろう。
 もちろん、システムをもっと応用して進化させたり(ロールプレイングゲームからアクションロールプレイングゲームへ、とかシミュレーションゲームから、リアルタイムストラテジーへとか)、まったく新機軸のシステムを開発しそれをプレイできることは、ゲーマーにとっての喜びだし、感動でもある。ただ同時にそれがいかに難しく、そんなにしょっちゅうあることではないことも、我々は知っている。評価が高くて安定したシステムに、鮮な切り口のストーリーを加味した新作でも十分楽しめるはずである。「Piaキャロ」と似ているというのであれば、舞台がファミレスであるところまで同じとか、ストーリーの展開までもが似ているとか、そう言った場合に適応されて、非難されるべきだろう。ただ、それであるなら、高校を舞台として、幼なじみと先輩と、めがねっこと、後輩と男友達と・・・・、っていうゲームはひとつしか認められないということになってしまうが・・・(^_^;)
 ただ当然、同じシステムを利用していることで、その作品のストーリーの質であるとか、どちらがこなれているかといった内容面でPiaキャロと比較するということは可能だろう。源内的には、実は、その比較は余裕があればやってみたいことではある。
(※5)

●同人SLGと恋愛ADVはうまくリンクしていたのだろうか?


 さて、それを踏まえた上で、システムについて検討してみよう。まあ、いろいろな形ですでに語っていることではあるが、今回、このシステムはゲーム性を高めるという点で、有効に機能していたかどうか、というのが問題である。これは残念ながら破綻していると言えるのではないか? 本来ならこの同人SLG部分が恋愛ADV部分に影響を与え、そのことが、ストーリーやエンディングに影響していくと考えるのが普通だと思うだが、いかがだろう。結果的には、同人SLGの部分はそれで楽しみ、恋愛ADVの部分はそれはそれで楽しむ。といった印象が強かった。確かに同人のパラメーターやスキルが、ストーリーのフラグ立てに関連していることはある。ジャンルの選び方で、つきあえる女の子が変わってきたり、そういった部分がないわけではない。ただひとりの女の子に絞って攻略を進めていけば、その時点で、もう同人のそのパラメーターやスキルが、重要なポイントになるというケースは瑞希シナリオ以外にはなかった。その瑞希シナリオにしたってただ総合評価として高いパラメーターを持っていなければならないというだけで、シナリオとの密接な関係があるとは言い難いものだ。要 はプロも認める売れっ子になっているかどうか、それだけである。せっかくジャンルを選び、印刷部数、売値設定、パラメーターとしての画力、構成力など、細かいものを用意し、修羅場モードもまで用意しているわりには、そのパラメーターがストーリーに影響してこないというのは、もったいないし、期待はずれと言わざるを得ない。

本来のシミュレーションの役割

 ちょっと趣味に走るが(^_^;)、例えば鬼畜調教系であれば、その調教される女の子に主人公が何をするかで、その子の性奴としてのパラメーターが細かく変化し、被虐系になったり、羞恥系になったりと、エンディングに影響も出てくる。そういった連携やダイナミズムがこみパには感じられないのだ(例が鬼畜系だからって、言わんとするところを誤解しないでね(^_^;)。
 しかし、なによりも違和感を覚えたのは、詠美シナリオの部数勝負である。シナリオも後半になれば、2000部を完売するレベルに持っていくのは容易なはず。まして、何本かシナリオをこなしていれば、10月ごろには、完売する。そのスキル、パラメーターをもってしても、そのことに無関係に、ストーリー部分で勝敗が決定しているとすれば、シミュレーションの意味は無くなってしまう。しかも、その結果が大円団に向かっていくというのだから、私にとっては、とても感動を覚えるというものではなく、陳腐であり、ゲーム性を活かせないシナリオライターの力量のなさすら感じてしまう。すでにゲーム性を放棄しているとしか思えない。この時点で私にとってのこみパの評価は決してしまった感がある。

●ちょっとフォロー(^_^;)

 さて、きついことを言ってしまったので、ちょっとフォローに入る。それでも尚、この同人SLG部分の価値を上げるとするなら、その雰囲気を楽しむということだろう。例えば、ジャンルを選んだりする行為、それが、実際の売り上げにどう関わるか、とか、実際にゲームとはほとんど無関係だったようだが、名の知れた作家に原稿を依頼できたりすることは、実際に同人誌を制作している人や、その事に興味がある人には楽しいのだろう。まあサービスというか、お遊びとして位置づけるなら、その価値は合ったのかも知れない。なまじ、恋愛ADVと同人SLGが密接な関係にあると考えてしまうから、違和感を覚えるのであって、別物として楽しめばいいのかも知れない。また、恋愛ADVと同人SLGを密接に関連させていくことによって、同人誌の制作が複雑になってしまうと、九人のシナリオをコンプリートしていくのが、しんどくなったり、1年という長い期間でさくさくゲームが進んでいくということも難しくなるのだろう。逆にあまり同人誌制作が単純でも飽きてしまう。このゲームバランスは確かに難しかったのかもしれない。

●アドベンチャー部分を振り返って

 アドベンチャー部分のシステムとしての作り方としては、WAのやり方を踏襲しており、ある程度、ランダムにイベントが起こる。そこに問題は特に感じない。
ただイベントはストーリーに大きく関わってくるものを除いて、週末などのものは、単純に、遊園地であそぶとか、ゲームセンターに行く、食事を作ってもらうというような他愛ないモノが多く、それが、どの娘のシナリオでもほぼ代わり映えしないという印象だ。もうすこしバリエーションと各キャラクターの個性を反映させたものにしてほしいところだ。
 概ねにして、恋愛ADV部分と同人SLG部分のバランスを意識することで、結果的にどちらにも中途半端なシステムになってしまっているという印象を受けた。

■3■ ストーリー、キャラクターに関して

  さて、ストーリーだが、恋愛シミュレーションゲームにおける恋愛の描かれ方、女性の描かれ方、男の描かれ方については、思うところがあるので、別項を設けてそこで詳細に展開する予定である。
(※6)本来なら、それを先に読んでもらうことで、この評論のスタンスについて理解してもらい、その上で読んで欲しいのだが、どうもいまのところ、その予定が立っていない(^_^;)。また、各シナリオの質を問い、そこに描かれている恋愛の意味するところを探るというのが、源内の考察の仕方なのであるが、今回は、その恋愛の意味するところを探るという部分はやらない予定である。というか、こみパの中にはそれほどのものが描かれているわけではないということが、もっとも大きい理由である。もちろんこれは、否定的な見方ではなく、こみパがライトでポップなラブコメディという位置にあるからである。むしろ、その割に、こみパに描かれている恋愛にマジで感動したりしている人が多いということの方が、実際には源内的には気持ちが悪い。人の感想の持ち方というのは、もちろん自由なのだが、「あの程度で感動できるキミたちって、いったい・・・」という印象だ。私が汚れてしまっているのだろう か(^_^;)?(※7)

●コメディとはかくも難しいモノ・・・

 さて、そういうわけで、ストーリーに関しては、このライトでポップなラブコメディということ、あるいは、そこまでいかなくてもそれほどシリアスな話ではないということを前提に、その質を問うてみたい。
 実際問題として、シリアスだったり、泣きの入る話とコメディを比べた場合、どちらが作るのが難しいかと言えば、コメディだったりする(これは以前、マクラのすけさんも指摘している
(※8))。人を泣かせるより、笑わせる方がずっと難しいものだ。人を泣かせる話は、そこそこ泥臭くても話のツボさえ間違えなければ、比較的簡単に作ることが出きる。しかしコメディは、時代的なセンス、世代感覚というようなさまざまなセンスが重要になってくるからである。
 今回、リーフは、WAから一転して、そのセンスの要求されるポップな話にチャレンジしている。登場人物の紹介をかねて展開されるオープニングでは、その方向性が垣間見られるが、ストーリーが展開して行くにしたがって、その勢いが急速に廃れていく。コメディタッチを際だたせるための九品仏大志がひとり気を吐くが、実際にこういうやつっているだろう(っていうか、ある人種の典型、あるいはデフォルメとして描かれている)だけで、そこに個性が発揮されているとは思えない。各キャラクターの娘たちも、ストーリーに必要だから登場しているのではなく、そのキャラを立たせる為だけの行動(話)が多く、ストーリーの広がりには協力していない。キャラ萌えゲー
(※9)を目指してでもいるのだろうか。だが、それならば、そのキャラは個性的な魅力が感じられるかといえば、これもやはりある種の類型(典型的な性格)の域を出ず個性が感じられない。
 類型が悪いのではない、ただ類型プラスアルファ、マイナスベータといったキャラづくりが得意のはずのリーフにしては今回はベタなキャラが多く感じるのも事実だ。性格づけは、しっかりとされているが、それに膨らみをもたせるための個性付 けとそれを活かせる逸話が足りないのだ。例えば端的な言い方だが、あさひシナリオのゲームセンターでの出来事みたいな部分がもっとあれば良かったと思う。単に意外性ということではなく、為された性格付けに基づいて、主人公とは無関係に、彼女が普段どういった生活を送り、どんな行動をしているのかといった膨らみを感じさせる、そういったキャラづくり、ストーリー作り
(※10)が果たして、今回しっかりとできていたのかとということを疑問に感じるのだ。ようは同人誌を作るオタクという以上の個性が見られないのだ。

●中盤からのテイストの変化は成功しているのだろうか?

 またストーリーが平板でも、そこで交わされる会話が、充分にユニークだったり、センスのいいものであれば、それはそれで評価することが出きる。だが残念ながら、会話にそういった生き生きとした部分が感じられないのだ。そのためにどうしてもそういった不備を補うために、ストーリーの展開が、コメディではなく、泣かせ的な要素を持つ話にシフトしてしまう。瑞希しかり、彩しかり、あさひしかり、玲子しかり、・・・・由宇を除くほとんどのシナリオが、結局はそれぞれの娘が何かしらのトラブルを抱え、それを主人公の力(あるいは協力)で解決していって大円団という黄金パターンに落ち着かせてしまっている。これは、それらしいカタルシスとはちょっと異なる。まして、それは同人SLGとはほぼ無関係に進んでいく。
 コメディから泣かせへの展開ということでは、1998年のタクティクスの『ONE』
(※11)が思い出されるが、あのドラマでは、会話や行動に見られるコメディのセンスは抜群であったと思う。せめてあのくらい生き生きとした会話や行動が描かれていれば、たとえ、ストーリーが平板であっても、あるいは泣かせ話にシフトしても、これほど辛い評価にはしなかったと思う。

●シナリオ各論  瑞希と由宇の場合

 さて、通常なら、それぞれのキャラのシナリオの各論になるところだが、今回は見送ろうと思う。例として、由宇シナリオと瑞希シナリオに関してだけ、コメントを残しておこう。
 まず、ヒロインらしい瑞希だが、どうしても違和感を覚えてしまう部分がある。それは以前も言ったが、瑞希という女性のアイデンティティの問題だ。つまりどうして、あそこまで、主人公に依存した思考と行動を取るのだろうということ。瑞希は、オタクではない一般人として登場したはずだ。主人公のやろうとしていることに、理解がなく、それが理解しようという気持ちに変化していく。それは解る。それがエスカレートして、コスプレをしてしまうというのも、かわいい(結構、好き!)。が、こみパ会場でのトラブルを受けて、一気に主人公の邪魔になるとか、負い目になるとか、言い出して身を引こうとする様は、なんかアナクロ(前時代的)な印象をどうしても拭えなかった。こみパに登場する他の女性達が、オタク的であるにしても、それなりに自分というモノをもって行動しているのに対して、彼女には何もない。この手のゲームの中での女性の描かれ方については、先にも言ったように、別項に譲るが、ひとつの恋愛、あるいは青春ドラマと考えれば、瑞希にもっと主体的な行動を求めたかった。無論、これは感想である(ここからは評価であり批評となる)。ただ、逆に言えば、瑞希以外の女性達が、それなりに自分というものをもって、行動をしているという描かれ方は、評価できるとも言える。男性にとって都合のよい描かれ方をしすぎていることが多い18禁ゲームの中で、完全ではないにしろ、この点は評価してもいいように思う。それだけに瑞希の行動の正当性、つまり、それでも主人公の生き方についていく(サポートする)ということを選ぶなら、そのあたりの瑞希の葛藤であるとか、ジレンマ、女性観をもう少し掘り下げて描いて欲しいと思う。そうでなければ、説得力が乏しくなってしまう。このあたり女性のプレイヤーはどう考えているのか、知りたいところだ。
 さて、反対に由宇のストーリーは、逆に私にはすんなりと楽しめるものであった。それほど意外性のあったり、膨らみのあるキャラクターとは言えないが、コメディらしい展開が最後まで続き、そのキャラクターと相まって、由宇の情熱がストーリーを引っ張っている感じがする。エンディングも決して、とってつけたようなものではなく、由宇の行動からすれば当然の展開であり、おかしみとほろ苦さを合わせ持っており、爽やかな感じすらした。ある意味、同人誌活動をする人間の理想とする部分、というか等身大の人間像が反映されているような気がする(実際のリアリティとは、それが無縁だとしても、理想を語ることは大切である)。

●恒例! 主人公について

 最後に主人公について、そして同人誌をめぐる世界という設定について、書いておく。
 主人公に関しては、もうひとつ性格がはっきりしなかったが、これはゲームプレイヤーと重なるということ
(※12)で、まあ許容範囲だろう。ただゲームスタート時に初心者であった主人公が、1年の間に、神様にまで登り詰めるわりには、同人誌や漫画に対する考えが変化もしなかったし、もうひとつ同人誌活動を続けることで、彼が何をしようとしていたのか、という視点が見えないのが残念だ。さらにシナリオによって、最終的な方向性がすでに決定している。つまり同人SLG部分の結果とは無関係に、選ぶ(攻略する)女性との組み合わせでプロになったり、同人を続けたり、すべてをやめたりという結末が決定し、主人公の意思、或いはプレイヤーの意志とは無関係ということに疑問が残るということ。それでは、いったい何をシミュレートさせていたのだろう? プレイヤーは結局、同人誌制作においては、その経過を楽しむだけであり、いい同人誌を作り上げることで、主人公が何を目指して成長していくのか、或いはプレイヤーがなにを目標に頑張ればいいのかが、しっかりと語られていないような気がする。ライトでポップなコメディだとしても、このあたりは、ゲームの動機づけに関わるところな ので、もうすこしはっきりさせるべきだったろう。

●同人誌の世界という舞台設定

 同人誌をめぐる舞台ということに関しては、現実に活動をしているからより楽しめたと言う意見と、現実に活動しているから、嘘っぽくてなじめないという両方の意見があるらしい。ただ知らなくても楽しめたという人も多いのは事実で、私もその類
(※13)。すでに同人誌のいうものが、現実世界で、それほどディープでマニアックなモノでなくなりつつあり、キャッチでタイムリーな設定として、受け入れられ見事成功したといっていいのではないだろうか。また実際の同人誌の世界はもっとドロドロして醜いところだ、といった感想もあった。それこそ、恋愛表現と同じで、ライトでポップな話なのだから、別にそこまで描く必要はないだろうということか。ただそのドロドロとした醜い部分をパロッたり、コメディにするのもラジカルで楽しいと個人的には思ったりもするが、実際のところ、どういった醜さがあるのか解らないので、これについては論評のしようがない。(^_^;)

■4■ 細かな要素と総合的な評価

  ふう、やっとラストです。読み返してみるとかなり辛口な評になってるようです。ただ、ここまで辛口になってしまうのは、この作品がリーフだからで、それだけ期待も大きいということ。なんて結んで、当たり障りの内容にするつもりはない(^_^;)。でも本当に事実そう思って入るんですけど・・・。
 そういったわけで(何が?(^_^;))、それでもやっぱり評価すべきところはいっぱいある。そのことを最後にまとめておきたい。

●リーフの音楽について語らねばなるまい


 まず音楽、オープニングもエンディングも、このゲームのテイストであるとんこつな感じ
(※14)、じゃなくてライトでポップな感じで非常にいいと思う。それだけに中途半端なメロドラマにしてしまったシナリオとエンディングテーマがシンクロしないところもあったが。ゲーム中のBGMは、可もなく不可もないかんじ。無論これはリーフの中でということで、ゲーム全体から言えばもちろんトップクラスのクオリティだろう。

●グラフィックのもうひとつの評価の仕方

 次にグラフィックだが、以前、WAの絵に関して、『昭和40年代のショウワノートの塗り絵のよう』
(※15)といって顰蹙をかったことがある源内だが(といっても、その例えが多くの人には未だに理解できていないようだ)、今回は、それこそ一般的には評判のいい、F&Cライクなグラフィックだそうだ。(^_^;) というか、私には正直言って絵のことは客観的にはわからない。ただ、個性的な絵ではないと思う。当たり障りのない印象を受けた。いろいろなホームページで見ることのできる素人の絵よりは、断然いいんじゃないかといった印象(※16)だ。絵に関しては、それぞれの好みもあるだろうし、もっと評論するのに適切な人がいるだろうから、その人に譲りたい。むしろ、このようなADVゲームでキメ絵はなんのためにあるのか、というとこが本来ならもっと語られるべきだと思う。つまり、ストーリーを盛り上げるための効果としてのキメ絵の出し方ができているか? といった問題である。これに関しては、詳しくは別項で取り上げる予定(※17)だが、未だにゲームは、このキメ絵の収集のためにあると考えるユーザーも多いようで、それこそプロマイド的な要素が強い。効果としてのキメ絵という視点でグラ フィックをいろいろなゲームで再検討してみるのも面白いと思う。そういった視点から見ると、私は、ゲームセンターでのあさひ(正式タイトルはわからん)が印象深かった。ゲームの筐体から顔を覗かせている絵である。

●音声について語ることは少ない

 次に、キャラクターボイスである。PS版トゥ・ハートをプレイしていない私にとっては、リーフ初のボイスつきゲームであった。フルボイスでないということに違和感はなかったものの、声を出す出さないの基準がもうひとつ解らないかった。ただ、どの声優も、かなり上手な方達のようで、キャラクターの個性を補うことに役立っていると思う。

●最後に、こみパとは何だったのか?

 以上が、源内にとっての「こみパ評」である。総合的に見て、リーフにとっては、新しいテイストに挑戦している感じで、そういう姿勢はすごく好きである。ただ、まだまだ練り込める部分が多くありそうだし、全体的にも中途半端な感じが否めない。新しいチャレンジをするのと同時にこのテイストのゲームの完成されたものを見てみたい。そのとき、この路線で成功している
エルフの一連の作品(※18)とどう違うか、検証してみたいものである。
 本稿のタイトルにあるように、この作品をどう捉えるかと考えてみれば、実はリーフという会社は、TH以降、常にその時代で一番ポピュラーな路線を選択し(つまり売れ線を確実にねらっている)、その中で、これまでにないワンランク上の作品を作り上げるという気概があるソフトハウスのような気がしている。学園恋愛SLGが人気であれば、これまでの路線とは全く違うTHを出し、シリアスなドラマという新しい側面としてWAをリリースする。今回も、F&Cなどが成功した路線でそれ以上のモノを目指した。つまり市場的に見れば、それほど目新しいテイストでなくても、リースの中ではいつでも新しい挑戦だったりする。そして常に成功を収めユーザーの高い評価を勝ち取ってきたのだ。これは賞賛に値する。だが、今回のこみパは、常にトップを勝ち取ってきたリーフにとっては、残念ながら、初の黒星なのかも知れない。もちろん、すべてのゲームと比較して高いレベルにあるのは間違いないが、トップを勝ち取ったと断言できるところまでは、仕上がっていないような印象を受けた。
 最後に、これは個人的なことだが、最も源内がこのゲームで評価していることについて、感想を交えて語ることで締めにしたい。

 20歳前後の季節の中で、僕たちはいつも3つのことで悩んでいる。やりたいこと、やらなければならないこと、そして異性とのこと。そのトライアングルの中で、バランスを保つことはとても難しかったりする。無限の可能性を持っていると言われても、それが実は可能性というだけで、現実にはなにも保障されたものでないことも知る。だから僕たちはその季節の中を、全力疾走の短距離を走り抜けるのではなくて、実は始まったばかりの長距離レースを走り始めたということに気づいて、愕然としたりもする。そこに挫折があったり、ドラマがあったり。こみパというゲームは、そんなトライアングルの中で、やりたいことと異性のことのバランスを取る難しさを少しだけだけど見せてくれた。一般的な恋愛シュミレーションゲームが、プレイヤーである主人公を実はただ女の尻を追っかけるナンパ野郎にしか表現できない中で、これは非常に意義深いし、すばらしいことだと思う。そんな視点でこのゲームを捉えてプレイしてみてもいいかもしれない。













































※1
リーフオフィシャルページのサーポート情報はこちら




















※2
日頃、というか毎日のように繰り返される無駄な時間の中で、ときより、キラリと光る会話が楽しめる。何か真剣に語り合うと言うよりは、暇人がなんとなく、いつもの喫茶店に集まっていると言った感じか。
興味のある人は
・MLのIRCの紹介ページへ

あるいは

リーフのインターネットチャットのススメへ
















































※3
源内が個人的には高い評価を与えているリーフ作品
過去、源内がアップしたWAに関する評論は、ここにまとめて採録し、随時、補完していく予定です。





※4
F&Cの中のカクテルソフトブランドとして1996.10.18にリリースされたソフト。また続編として1997.10.31に「Piaキャロットへようこそ!!2」がリリースされた。
     **********
私は未だ未プレイなので、詳しいことは解っていません。
ネタバレを含まないレビューとしては、私がもっとも信頼している
レビューページ。

USGさんの
SWEET LOLYPOP
内の
USG独断レビュー

を読んでみて下さい!

















※5
約束ではありません(^_^;)
一応、いろいろ終わってから。


















































































































※6
一応、同時アップしました。
まだ、読んでない人は、
源内語録から、
このページの主旨に関してより
「評論・感想・考察のゆくえ」

さらに
「デフォルトとしてのロリ」
と読み進んでもらうとありがたいです。









※7
汚れています。すでに14歳のときから・・・・。












※8
ML 場外乱闘場
1998.6.11(金)02:18の
マクラのすけさんの発言
『ふみゅ〜ん(T_T)』を受けています。過去ログより探してくっださい。














※9
キャラ萌えゲー
【意味】
キャラ萌えゲームのこと
一般?に、ストーリーや展開で楽しませるのではなく、そのキャラクターにプレイヤーをハマらせる(萌えさせる)ことを目的として作られているような作品のこと。どちらかというと、その作品の評価が低いときに使われることが多い(らしい)。
【用法】
「アレはキャラ萌えゲーだから・・・」
【例】
ジャニスから1998.12.18リリースされた
「とらいあんぐるハート」
 ということらしい。
とらいあんぐるハートに関して詳しいことは、USGさんの
SWEET LOLYPOP
内のUSG独断レビュー
を読んでみて下さい!



※10
ストーリー作りがどのように行われているのかに関しては、以前
リーフオフィシャルHPのネタバレ談話室で、源内は発言をしている。過去ログを漁るのは大変だと思うので、源内語録の参考資料館の
「とりあえず後で探す」
を読んでみて下さい。












※11
1998.5.29にタクティクス
からリリースされたゲーム
正式タイトルは
『ONE  〜輝く季節へ〜』

何人かのリーフスタッフが、移籍し作られたノベル系のゲーム。
主人公の性格やセリフまわしに
コメディとしてのセンスが感じられる。ただタダのコメディではないらしい。
源内もプレイ終了後、なにかしらの文を書く予定ですが、まだコンプリートしていません。

詳しくは
USGさんの
SWEET LOLYPOP
内のUSG独断レビュー
を読んでみて下さい!



















































※12

これに関しては、やはり以前
リーフオフィシャルHPのネタバレ談話室で、源内は発言をしている。
主人公は、ストーリーの中の人物であると同時にプレイヤーのためのカメラであり、ゲームというシステムの中でカメラとしての役割を担っているツールである。

といった主旨だったと記憶している。詳しくは、

過去ログを漁るのは大変だと思うので、源内語録の参考資料館の
「とりあえず後で探す」
を読んでみて下さい。

















※13
私もコミケや同人誌事情に詳しい人間ではない。それなりの情報は持っているが・・・。ただこみパの中で描かれるその雰囲気はそれほど自分の想像を超えるモノではなかった。
強いて上げるなら、同人作家が、『先生』と呼ばれているという事実。これには驚きながらも、すこし呆れた(^_^;)。またスケッチブックを持ち歩いて、作家にその場で何かを書いてもらうという慣習があるらしいことも始めて知った。
でも略して『スケブ』というセンスにはまったく言葉が出ない(笑)。






















※14
ネタバレ談話室で、源内が発言したこみパ評「ラーメンの話」を受けているらしい。源内らしい、つまらないギャグである。

原典は、談話室過去ログページ
となるが、読みたい人は、
源内語録資料館より
「ラーメンの話」
に飛んで下さい。


※15
1998年6月頃、リーフオフィシャルHP内ネタバレ談話室で、グラフィックの話題になったとき、
WAの通常の立ち絵、特に理奈に関して、評した源内の言葉。
「源内さん、そりゃあないでしょう!」とファンの顰蹙を買った。しかし、そのイメージするところを理解するには、ジェネレーションギャップがどうやらあるようだ。(^_^;)

※16
一般論だよ! 一般論・・・。





※17
予定は未定で決定ではない。































※18
エルフ・・・西のアリスと並んで、18禁ゲームメーカーの東の勇。
ここ数年はダークな印象の作品が多いが、コメディのセンス、ゲームプレイ時のカタルシスどれをとってもトップクラス。リーフファンとは相容れない雰囲気もあるが、そのクオリティ、セールス文句無く業界NO.1といえるだろう。
恋愛SLG代表作は
「同級生」 「同級生2」

詳しくは、
USGさんの
SWEET LOLYPOP
内のUSG独断レビュー
を読んでみて下さい!

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