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だれでも速く走れるポン・ピュン・ラン
2008年06月23日 橘 悠紀(科学ライター)
運動会などの短距離走(たんきょりそう)で、「もっと速く走りたい」「一等賞になりたい」と思う人は多いでしょう。女子400m走の日本記録を持つ丹野麻美(たんのあさみ)選手をはじめ、たくさんの選手を指導してきた福島大学教授で陸上競技部監督の川本和久先生は、「正しい走り方を身につければ、だれでも速く走れます」と言います。そんな夢のような走り方があるのでしょうか。
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| 図:速く走るためのコツ。地面からできるだけ大きな反発エネルギーをもらい、そのエネルギーをできるだけむだにしないことが基本 |
地面からの反発エネルギーをむだにしないで走る
川本先生は、自分自身も大学で陸上競技の選手でした。その後、コーチ学を勉強し、さらにアメリカやカナダでも速く走る方法を学びました。そして、速く走るための独自の理論をうち立てました。川本先生の勧(すす)める「正しい走り方」は、「ポン・ピュン・ラン」という言葉
で表されます。「ラン」というのは、英語で「走る」という意味です。「ポン・ピュン・ラン」は、「ポン」「ピュン」の動作を入れて「ラン」(走る)ということです。
ポン・ピュン・ラン3つのポイント(図と対応しています)
◆1.「体をまっすぐにして走る」ということです。これは、地面に対して垂直(すいちょく)にということではなく、背中(せなか)と骨
盤(こつばん)を曲げないで一本の棒のようにするということです。こうすることで、地面に大きな力
を加えることができ、また、地面からの反発するエネルギー
をむだにしないですみます。
◆2.脚(あし=もものつけ根
からつま先までをさす)を上からまっすぐ下に降ろし、「ポン」とはずませるということです。脚が地面に着くとき、脚は地面から反発するエネルギー
を受けますが、このエネルギー
をできるだけむだにしないためです。
◆3.片方の脚が地面に着いたときに、もう一方の脚が後ろから前に出て、前の脚のひざを「ピュン」と勢いよく追いぬくことです。これは、前脚が地面をけるエネルギー
と後ろ脚をふるエネルギー
を合わせて地面に加え、地面からできるだけ大きな反発エネルギー
をもらうためです。そうすれば、大きな力
で体を移動できる、つまり、前に進めるのです。
ポン・ピュン・ランは科学的に見ても理にかなっている
「ポン・ピュン・ラン」でめざす、「地面からできるだけ大きな反発エネルギー をもらい、そのエネルギー をできるだけむだにしない」という考えは、科学的に見ても理にかなっています。脚で地面に力 を加えれば、同じ大きさの力 の反発力 が脚にもどってきます。これは、力 学でいう「作用・反作用」です。川本先生が指導した選手の中には、「ポン・ピュン・ラン」で、400m走で2秒以上も記録を縮め、日本新記録を出した選手もいます。もちろん、この走り方を体にしっかり覚えさせるにはトレーニングが必要ですが、この走り方を意識するだけでもちがうといいます。川本先生が2時間ほど講習をしただけで、自己記録を大きく縮(ちぢ)めた人も多いそうです。
ポン・ピュン・ラン+全力をつくすことが大切
川本先生は、「人間が持っている走るための能力
は同じです。走り方のコツをつかめば速く走れます」と言います。ただ、「『自分は速く走れるはずはない』などという気持ちはもってはいけません。『絶対速く走れる』と信じて、あきらめずに全力
をつくすことが何より大切」なのだそうです。
さあ、あなたも、「ポン・ピュン・ラン」を意識して走ってみませんか。
*「ポン・ピュン・ラン」をれんしゅうする時の注意
1.まわりに人がいない広い場所でれんしゅうしましょう。
2.れんしゅうする前には、じゅんび運動をしましょう。
もっと知りたい人へ:川本和久研究室(スポーツ実習・スプリン
ト)
http://www.futc.org/KAZZ/kawamoto.html