強行規定と任意規定



1.強行規定と任意規定

契約をはじめとする私人間の法律関係については、、民法等の法律が適用されます。
しかし、一方で、私人間の法律行為については、その当事者である個人の意思、合意が最大限尊重されることが望ましいともいえます。
これは、法律用語で「私的自治の原則」もしくは「契約自由の原則」などといわれていますが、要は、個人は、自由にその契約内容を決定することができるとするものです。

しかし、一方では、強者が弱者に対して一方的に自己に有利な契約を押し付けたり、また、契約の内容が社会一般の常識からして不適当と思われるものについても、当事者が合意したから有効であるとしたのでは、人は、安心して法律行為ができなくなってしまいますし、社会秩序も保たれません。

そこで、民法は、原則として当事者の意思を尊重しつつも、特定の法律行為などについては、それに反する合意の効力を認めないという定めをおいています。この規定が「強行規定」といわれるものです。これに抵触する合意等は、いくら当事者が合意したとしても、その効力が認められません。

一方、それ以外の行為については、当事者の意思を優先して、当事者が法律行為の内容を自由に合意できるとされています。ただ、一方で、当事者がそれについて特に定めていなかった場合にはどうするのかという問題が生じます。そこで、民法は、当事者が特別に合意をしていれば、その合意が優先するが、それらの合意をしていなかった場合に適用される規定を設けています。これが「任意規定」といわれるものです。


2.強行規定

強行規定とは、その字のとおり、その適用が強制される規定であり、当事者の意思によって、その規定の適用を排除することができないものを言います。
その結果、仮に、当事者が強行規定に反する合意をしていたとしても、その合意は無効とされるか、強行規定に従う形に修正されることになります。

強行規定の代表といえるのが、民法90条(公序良俗違反)です。

民法90条(公序良俗違反)
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とす。

この規定は、個別の行為の効力を定めているものではありませんが、当事者間で合意してなされた法律行為であっても、それが「公の秩序」または「善良の風俗」に反することを目的とする場合には、無効とされ、その合意の効力が認められない、とするものです。

この規定が適用される典型的な例としては、覚せい剤の売買契約、殺人の委託契約、といったものが考えられるでしょう。これらは、売買契約、委託契約という形で合意がなされていても、公序良俗違反の行為として無効とされるわけです。


3.任意規定

任意規定とは、当事者が法律行為の詳細についてまで細かく合意していなかったような場合に、適用される規定です。契約に関してトラブルが生じた場合に、当事者間で予めその場合の取り扱いについて合意がなされていれば、その合意が優先的に適用されますが、そのような合意がなされていなかった場合に限り、適用されるわけです。

従って、民法等の規定と異なる取扱をしたい場合には、その旨を予め合意して、契約書などで定めておく必要が生じるわけです。

以上