グアムで２１歳男が無差別殺傷　日本人女性２人死亡

　米領グアムの繁華街タモンで１２日午後１０時（日本時間同９時）すぎ、若い男が車で通行人６人をはねた後、ナイフで多数の人々を無差別に襲い、日本人女性２人を刺殺した。地元警察は、殺人や傷害などの容疑でチャド・ライアン・デソト容疑者（２１）を逮捕。日本外務省によると、死亡した２人のほか、負傷者には日本人１１人が含まれている。常夏の身近なリゾート地での惨劇に、日本人観光客らは声を震わせた。

　外務省によると、亡くなったのは上原和子さん（８１）と、上原さんの孫娘で栃木県栃木市の杉山利恵さん（２８）。旅行会社関係者によると、２人は親族の挙式のためにグアム入りしていた。上原さんは新郎の祖母、杉山さんは新郎の姉にあたる。結婚式を１４日に控えていた新郎新婦には、けがはなかったという。

　旅行会社関係者によると、上原さんは、デソト容疑者にナイフで襲撃され首を刺され、血まみれになっていたという。その後、杉山さんが襲撃された。デソト容疑者は捜査当局の調べに「できるだけ多くの人を車やナイフで負傷させたかった」と供述している。

　外務省は幼児２人を含む日本人観光客計１５人が病院に搬送されたと説明。死亡した２人のほか、１１人が負傷、２人にけがはなかったとしている。現地当局者の発表によると、ナイフで襲撃された３歳と８か月の幼児２人の容体は安定している。１人が重体で、集中治療室に入っているという。

　事件は１２日午後１０時ごろ発生。デソト容疑者は乗用車を歩道に乗り上げて通行人をなぎ倒すように次々とはねながら、約１００メートル暴走。コンビニがあるビルに突っ込んだ。車の左フロント部は外壁にぶつかって大破したが、同容疑者は車を降りると、今度はナイフを手に通行人を次々と襲った。

　事件直後の現場を見た複数の日本人によると、血だらけで倒れている女性や、心臓マッサージを受けている人がおり、赤ちゃんと小さな子どもを抱いた男性がぼうぜんとしていた。コンビニの階段には履物が散乱、商品の土産物はぐちゃぐちゃにつぶれていたという。

　別の証言によると、複数の通行人がデソト容疑者の周辺を取り囲み、同容疑者を蹴り続け、近くのバーで酒を飲んでいた米兵がねじ伏せたという。警察官に背中を踏み付けられ、現場で取り押さえられたデソト容疑者は、小柄で長袖の上着にズボン姿。抵抗する様子はなく無表情で、もうろうとした様子だった。

　地元警察は通報を受け、周辺道路を封鎖。８台の救急車がけが人の救助にあたった。薬物やアルコール成分などが検出されたかどうかは、明らかにしていない。

　グアムのカルボ知事は日本人へメッセージを出し「グアムは安全な場所であり、大きなショックを受けている。容疑者は法律に従って処罰する」と述べた。捜査当局は、被害者の大半が日本人だが、不特定多数を狙った犯行で、日本人を標的にした可能性は低いとみて裏付け捜査している。同容疑者が殺人罪で訴追された場合、最高で終身刑となる。

（2013年2月14日06時05分スポーツ報知）