優等生らしからぬ危険な一面を見せた。うなりを上げ、体の近くに迫った。暴れる球も、藤浪にとっては打者に恐怖を与える武器だった。
「もともと制球が良くなくて(球が)抜けるタイプなので『打者はそういう(恐いという)気持ちを持ってくれるかな』と思っています」
捕手を座らせ3度目のブルペン。変化球がまだバラついた。33球目から投げ始めたツーシームはワンバウンド。同じ球種を続けたが、右打者の内角や高めに外れた。
この日から打者を想定し、投げていた。乱れた投球時には打席にいなかったが、37球目からまた打席に戻った横川ブルペン捕手は戦慄していた。「恐いよ。近い感じがするし、(直前に)ツーシームが抜けていたのも見ていたから」と身の毛総立ちだ。してやったり? ドラフト1位右腕は「そういうバラつきも一つ、あっても良いかなと思います」と平然としていた。
「これまでの2回よりは全然、良かったと思います。打者が立ったら感覚は戻ってきやすい。また、しっかり投げられるようにしたいです」
暴れ馬でも、間違いなく名馬だ。剛速球も強く低く集まってきている。たまに抜ける-。それだけで、誰も藤浪の領域に踏み込めなくなる。(長友 孝輔)
★杉下氏が熱視線
フォークの神様、杉下茂氏(87)=元阪神監督=が宜野座キャンプの視察に訪れた。藤浪のブルペン投球を、捕手の真後ろから食い入るように見つめたが、接触はなかった。杉下氏は「誰か一人の投手のことをどうこう言うのは好きじゃないんだよ」と笑って首を振っていたが、藤浪は「フォークボールがすごい投手ということは知っています」と60歳近く年上の大投手の存在を知っていた。話を聞いてみたかった?
(紙面から)