2020年夏季五輪の競技からレスリングが除外される可能性が強まっていることに対して記者会見する(左から)日本レスリング協会・高田専務理事、同・福田会長、ロンドン五輪金・米満、ロンドン五輪銅・湯元=13日午後、東京都渋谷区の岸記念体育会館(撮影・矢島康弘)【拡大】
あまりにも唐突な“五輪競技落選”から一夜明けて行われた日本レスリング協会の会見。米満は茫然(ぼうぜん)自失の表情だった。
午前中に練習を終えて駆けつけた米満は「モチベーションが落ちて練習に集中できなかった」。米国、ロシア、イランなど日本以外の金メダル獲得国を挙げ「世界中で行われている競技なのに。アマチュア選手が輝ける場所。唯一のモチベーションを奪われる」。落選理由に見当がつかず、心の叫びがほとばしった。
「見せるための五輪なのか? 面白ければ何でもいいのか? 商業的なものしかないとしたら残念。すごく悔しいです」
1984年ロサンゼルス大会以来、大きくかじを切ったとされる五輪の商業主義は加速の一途。IOCは今回、ロンドン五輪で行われた26競技をテレビ放送、観客数、競技人口など39項目で検討し、14人の理事による投票を行った。レスリングはかつて、試合の見栄えの悪さやルールの複雑さなどの問題点を指摘されていた。この日判明したIOCの評価報告でも、ロンドン五輪でのレスリングの人気度は10段階の5を下回り、テレビ視聴者数やインターネットのアクセス数、メディア報道も少なかったと判定された。テレビ視聴者やスポンサーへの訴求力で、“現代五輪”にふさわしくないとみられたのか。
「本当の強さや実力を競うと、どうしても見栄えが悪くなる。プロレスのように受け身を磨き合えば技は面白くなるが、五輪はそういうものではないと思っていた」
“本当の強さ”を磨いて頂点に立った米満に、やり場のない怒りが渦巻いた。
国際レスリング連盟(FILA)副会長でもある福田会長は「明確な理由を示していない。数字(評価のデータ)も果たして正しいのか」とIOCの調査に疑問も呈した。16、17日にタイ・プーケットで行われるFILA理事会に出席。「日本だけでなく、各国が相当エネルギーを使い、働きかけなければ取り戻せない」と、厳しい現状からの逆転策を模索する。(櫃間訓)
(紙面から)