【甘口辛口】“人類最古のスポーツ”除外 祭神ゼウスもびっくりだ
2013.2.14 13:45更新
国際オリンピック委員会(IOC)は12日にスイスのローザンヌで開かれた理事会で、日本のお家芸であるレスリングを2020年夏季五輪で実施する「中核競技」から外れる1競技に選定した。理由の説明が全くなく関係者も怒りをどこにぶつけたらいいのか、わからないのではないか。
古代ギリシャで開かれた古代オリンピックで、レスリングは短距離走やボクシングとともに実施され、走り幅跳び、円盤投げなどの五種競技の1種目でもあった。“人類最古のスポーツ”が、わけもわからずに除外され復帰はきわめて難しいとは、古代オリンピックの祭神ゼウスもさぞびっくり仰天だろう。
「(同じ除外候補の)近代五種とテコンドーは効果的なロビー活動を行った一方、レスリングは自分は安全と考えていたのだろう」とIOC関係者が言ったとか。とりようによっては「お前のところは危ないぞ」と競技団体を揺さぶって、恭順の意を示さないなら突き放す、という感じもする。
1970年代の五輪で種目を削減された国際陸連は「陸上は古代からある五輪の基本。まだ削減するなら五輪から引き揚げる」と明言した。陸上なしで五輪は成り立たない。このけんかはIOCの負けだった。しかし、同じ古代組でもレスリングは五輪に代わる大舞台がない。「五輪がなんぼのもんじゃい」と、たんかを切れないのが辛いところだ。
かつてIOCでは、レスリングなど室内競技の冬季五輪移行が真剣に討議された。「われわれにとっての五輪は太陽の下での夏の祭典」とその時は反対したそうだが、夏の陽光がなくても室内競技は戦える。この際、冬で生き残りを探る手もあるのではないか。 (今村忠)