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日本女子、10年ぶりの表彰台独占。フィギュア四大陸の奮闘を追った!

Number Web 2月13日(水)18時29分配信

 日の丸が三旗揚がり、「君が代」が流れた。表彰台の上には、3人の日本女子、浅田真央、鈴木明子、村上佳菜子が誇らしげに微笑みを浮かべて立っていた。

 2月8日から大阪で開かれていたフィギュアスケート四大陸選手権。日本女子がこの大会の表彰台を独占したのは、2003年北京大会(優勝・村主章枝、2位・荒川静香、3位・中野友加里)以来、実に10年ぶりのことである。

 ことさら浅田真央にとっては、今シーズン初めて3アクセル解禁となった記念すべき大会だった。

■浅田真央、2年ぶりの3アクセルで今シーズン世界最高点。

 SPでは、村上、鈴木ともにほぼパーフェクトの素晴らしい演技が続き、会場の雰囲気も熱く盛り上がっていった。そんなプレッシャーの中で、最終滑走の浅田が登場。「アイ・ガット・リズム」でガーシュウィンの早いテンポに合わせて大きく踏み切り、きれいに3アクセルを回りきった。

 最後までノーミスで滑り終えた浅田は、嬉しそうにガッツポーズをきめた。今シーズン出場したすべての試合で勝ち続けてきたものの、トレードマークの3アクセルを封印してきたことに対して、「(優勝しても)嬉しさは半分くらい」と言い続けてきた。その浅田が2年ぶりに試合で3アクセルを成功させて、全身で喜びを表現した。

 観客たちは採点が出るまで手拍子を続け、74.49という今シーズン世界最高点が出ると、会場は大歓声に包まれた。

■「今の私にできる最高レベルの演技でした」

「今の私にできる最高レベルの演技でした。ジャンプも表現もよくできたと思う」

 普段は反省ばかりを口にする浅田が、珍しく会見ではそう言い切った。

「他のジャンプは(佐藤)信夫先生と修正してきたけれど、3アクセルは長い時間練習してこなかったため、以前の悪い癖が取れたのだと思う」

 フリー「白鳥の湖」では、3アクセルも、そして久しぶりに挑戦した3フリップ+3ループの2つ目のジャンプも、回転不足の判定を受けたものの、着氷の乱れは最小限で全体の流れはこわれなかった。得手ではなかったサルコウが2回転になったのが、唯一ミスらしいミスだった。フリー130.96、総合205.45と今季の自己ベストスコアを更新した。

■女子選手で唯一、6種類の3回転が入ったプログラム。

 バンクーバー五輪で彼女が出した205.50とほぼ同じスコアだが、その演技の内容はまったく違う。当時はプログラムに入れてなかったルッツ、サルコウなども今の構成には入っている。現在の女子の中で唯一、6種類の3回転ジャンプが組み入れられたプログラムなのである。

「バンクーバー五輪の頃はジャンプに苦しめられていました。それから信夫先生と基礎からジャンプの修正をしてきて、当時は入れていなかったジャンプも全種類入れられるようになった。ここで3アクセルと3+3にも挑戦して、目標にしてきたものに近づいたと思います」

 佐藤信夫コーチと再スタートをきって以来、およそ3年。自らの弱点から目をそらすことなく積み重ねてきた努力の成果が、ソチ五輪の1年前にようやくこうして形になってきた。子供のころから天才と呼ばれてきた浅田だが、この彼女のひたむきさ、粘り強さが今のスケーター浅田真央を築いたのである。

■鈴木、村上ともに自己ベストで、強さを世界に示した日本女子。

 鈴木はアクセルの失敗があったものの、立ち直って残りをノーミスで滑りきった。「このところ不調が続いていたので、ほっとしています。世界選手権では自分の演技の完成形をみんなに見てもらいたい」と語った。

 村上も、いくつかジャンプの回転不足はあったものの、最後まで演技全体をよくまとめた。鈴木、村上ともに、自己ベストスコアを更新して、日本女子の実力を世界に見せつけてくれた。

■優勝候補の高橋が7位……まさかの結果の日本男子勢。

 女子が表彰台独占という快挙を遂げた一方で、男子シングルは驚くような結果だった。

 優勝したのは、ほぼノーマークだったカナダのケヴィン・レイノルズ。以前から4回転が得意な選手ではあったが、フリーでは4回転を3度きめてSP6位から逆転優勝を果たした。羽生結弦が2位となり、3位は中国の若手のハン・ヤン。

 優勝候補だった高橋大輔は、SP、フリーともにジャンプミスが続いてなんと総合7位という結果になったのである。

■「自分でもまだ信じられない気持ち」(高橋)

「練習でもこれほど悪いということはない。自分でもまだ信じられない気持ち。全日本の後に、気が緩んでいたのかもしれないです」と、演技後に戸惑いを隠しきれないままにコメントした。SPを以前のロックンロールから、ベートーベンの「月光」に変えたものの、そのための時間のロスなどは関係ない、と断言した。

 長光歌子コーチは、「全日本選手権の後に、少し休ませなくてはと思って休ませた。いったん緩んでしまって、試合に向けて調整しきれなかったのだと思う」とコメント。

 高橋ほどの選手でも、調子が悪ければ世界トップの半分しか出ていない四大陸選手権で7位になってしまうというこの過酷な現実に、改めてこのスポーツの恐ろしさを感じた。

■本物の勝負はカナダの世界選手権で!

 一方羽生は、SPではコンビネーション、フリーでは4回転サルコウなどを失敗して、2位に終わった。だがコーチのブライアン・オーサーは、「ピークを迎えなくてはならないのはこの大会ではなく、1カ月先の世界選手権。ここでSP、フリーともにノーミスに滑っていたら、かえって心配していただろう」とコメントした。

 オーサーの言う通り、本当の勝負は3月にカナダ、オンタリオ州のロンドンで行われる世界選手権、そして1年後にソチで行われる五輪である。その意味では、高橋、羽生ともにここで一度悔しさを味わうことが、きっと次へのモチベーションへとつながっていくに違いない。

(「フィギュアスケート、氷上の華」田村明子 = 文)

最終更新:2月13日(水)18時29分

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