終末の過ごし方

(製作アボガドパワーズ

 

序論

本作は99年に発売されたCD-ROM版が発端であるが、その特異な設定と独特の雰囲気を持つCGなどが話題を呼び続けて、2003年に画像・音楽の高品質化を図ったDVD-ROM版が発売されたリバイバル作品である。
ちょうど世紀末に発売された、当初は非常に世相とマッチしていたと思われるが、本作の登場人物が全て眼鏡とかけているという点で、本来のウリである雰囲気以上に注目されている。
本作はその雰囲気を楽しむゲームだと言える。何らかの目的があってというのではなく、ただその世界を楽しむ。そんなゲームに思えて仕方がないのであるが。

 

シナリオ・・・17点/20点

本作は終末を一週間前に控えた世界を舞台とするラブストーリーである。当然、シナリオを単純に量で見てみるとするならば、あまりボリュームは多くない。ただ、舞台の雰囲気という観点で見るならば、本作は非常に高い次元の完成度を誇っている。
終末を控えている世界と言う事で、刹那的な愛情も肯定されているし、あらゆるタブー、(例えば近親相姦など)がここでは他のゲームなどでよく見る事ができる安易な倫理観の崩壊を通さずに描かれている。いや、舞台は崩壊しているのかもしれないが、主人公はその点では傍観者の立場を取っているように思える。
ただ残念なのは、非常に期間が短いが為に本作での愛情というのが逃避の一手段にしか見えないという点であろう。それすらも本作が作り上げたものだとすればこの点はむしろプラスにするべきなのであろうが。

 

CG・・・17点/20点

本作の持つ雰囲気に決定的な影響を与えているのが、CGであるという事には疑問の余地が無いだろう。水彩画のような印象は、滅びを目前に控えている世界にはとても見えない。しかしながら、どこかしらに何かしらの寂しさ、あるいは諦念のようなものが漂っていると言う事もまた確かな事実なのである。どこか消えてしまいそうな儚さ、それは確かに本作のCGには存在しているのだ。
問題点であるが、シナリオと同じもの、つまり量を絶対的な不足というのは大きな原点材料にせざるを得ないだろう。特にHCGは終盤に集中している為に数はますます少ないのが難点だ。
通常の純愛ゲーであるならば、HCGが後半に集中しているとなかなか見る事ができないという難点を抱えているが、本作はその点シナリオのボリュームも少ない為に、その方面でのストレスが溜まる事は少ない、まさにケガの功名といった所であろうか?

 

その他・・・7点/10点

本作は基本的なシステム部分は99年に発売されたものと変わっていないと思われる。なので様々な部分で細かい不満が残るのは仕方が無い事なのだろう。特に過去の履歴を見るのにいちいち専用のツールを起動する必要があるというのは、非常にストレスが溜まると思われるのだがどうだろうか?
音楽はリメイクする際に高品質にマスタリングされたようであるが、残念ながら特筆するほどの名曲には恵まれていないように感じた。しかしながらゲームの雰囲気には非常にマッチしている。世界が終わるという設定上、あまり目立つ音楽は投入する事が出来なかった、という事であろう。
本作は残念ながら音声が入っていない。フルボイスが当たり前になりつつある最近の作品と比べてしまうと、やはりこれも減点対象にせざると得ないと思われる。

 

総論・・・41点/50点

本作をプレイする上で、まず理解しておく必要があるのは、本作が99年に発売された作品だと言う事である。システム面については前項で触れたが、やはり色々な面で古臭さが感じられるのは仕方の無い事だと言える。
それさえ乗り越える事が出来たならば、魅惑的な雰囲気を存分に味わえる事と思う。つまり本作にはマイナス面が多いが、それを上回るプラス面があると言う事だ。
本作の隠れた魅力のひとつとなっているが、本作に登場するキャラクターはみんな眼鏡をかけている。眼鏡属性だと自認するユーザーには是非、プレイしていただきたい作品のひとつだと言えよう。
本作には設定資料集が付属しているが、コレクターズアイテムとしては非常に良く出来ているので、気になる方はCD-ROM版を持っているという場合でも買ってしまって良いのではないだろうか?
余談になるが、本作は
MSXへの移植が有志によって進められているようだ。興味のある方は一読をオススメする。

 

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