辞任表明が遅すぎた日銀総裁 最後まで無為無策続けるのか

2013.02.14


日銀の白川方明総裁【拡大】

 白川方明日銀総裁は5日、任期終了前の3月19日をもって辞任すると述べた。官邸での経済財政諮問会議が終了した5日午後6時過ぎにこのニュースが伝わると、為替は1円近くも円安に振れた。翌日の株価は416円も上がり、4年4カ月ぶり高値となった。

 辞任がマーケットにこれだけ評価された日銀総裁も珍しいが、安倍晋三首相は大胆な金融政策の実施を掲げて政権を取ったのであるから、それと正反対の政策をかたくなに守ろうとする白川総裁は、衆院選終了後、もっと早く辞任すべきであった。

 この辞任は白川総裁が追い込まれた結果という感じがする。政府は当初から、日銀人事について総裁と副総裁2人の計3人を同時に提示する意向だったという。これは日銀執行部である総裁・副総裁をチームとして一体化するためには当然の話。5年前にも同時提示であったが、国会同意人事のゴタゴタで総裁人事だけがずれたので、今回はその正常化を図るわけだ。

 となると、白川総裁だけが1カ月間、新副総裁2人にはさまれて仕事をすることになるが、どう考えても不自然。政府の3人同時提示の意向を知った白川総裁が自ら副総裁と同時に辞めると言ったと見るほうが自然だろう。

 そのチャンスは5日の経済財政諮問会議だった。首相が同席するし、会議の前後数分なら、アポイントメントを取ることもできるし、場合によってはアポイントメントなしでも首相と2人きりで話すことはできる。その間に何が話されたかは不明であるが、5日の首相動静によれば、午後6時12分から21分まで9分間、安倍首相と白川総裁は話している。

 白川総裁の何らかの要請が安倍首相に伝えられた可能性はなくはないが、おそらく安倍首相の日銀人事に関する胸の内はもう決まっているだろう。

 今後、3月19日までの日銀の政策決定会合は、2月13、14日、3月6、7日に開かれる予定。ただ、よほど経済環境が突発的に急変しない限り、1月22日の決定内容は変わらないだろう。

 1月22日の政府・日銀の共同声明、日銀の政策決定会合については、1月23日の本コラムで指摘したように、筆者は共同声明の方向性は評価するものの、決定会合の内容は評価していない。

 共同声明ではインフレ目標2%と言いながら、政策決定会合では、今年は従来通りで来年から「資産買入等の基金」をわずか10兆円増やすというのでは、インフレ2%達成にはほど遠い、ほぼゼロ回答だった。共同声明を出しておきながら面従腹背になっている。今の執行部はやる気がないのを白状したわけだ。だから、あと2回の政策決定会合で変わるはずない。

 どうも今の執行部の行動はわかりにくい。日銀執行部は任期を全うすることを義務と感じているのかもしれない。しかし、国民は、無為な任期の全うを求めているのではなく、デフレ脱却に向けてきちんと仕事をしてもらいたいはずだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

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