フランスの怖い童話「青髭(あおひげ)」に、秘密の小部屋が出てくる。夫の留守中、禁を犯して入った新妻が見たのは、先妻たちの死体だった。「開かずの間」にはえてして、宝ではなく家主の弱みが隠されている▼1年前、福島の原発に乗り込もうとした国会の事故調査委員会は、家主の東京電力に「今は真っ暗」と制された。実は1号機の覆いは光を通し、照明もあった。この状況で4カ月が過ぎた後の説明だ。勘違いとは思えない▼東電は同行を拒んで抵抗した。「恐ろしい高線量地域に出くわす」「転落が怖い」「がれきが散乱」と、「開かず」の理由を並べて立ち入りを断念させている▼事故調の関心は、建屋4階の非常用復水器にあった。電源が落ちても使える冷却の切り札はなぜ、肝心な時にしっかり働かなかったのか。地震の揺れで早々と壊れたのなら、事故は東電の言う「想定外の津波」だけが原因ではなくなる。原発の耐震性が問われ、再稼働は全国で滞るはずだ▼「説明者が暗いと思い込んでいた」。東電の社長は国会で、調査妨害を否定した。現地も知らぬ社員に任せていたのが事実なら、国政調査権もなめられたものだ。まず議員が怒るべきだろう▼原子力ムラは原発より政権の「復旧」で一息ついたようだが、最悪の災害は消しようもない。原因と対策を世界に報告するのが東電と日本の使命であり、臭い物にフタでは二重の背信だ。皆が、歴史に裁かれて恥じない言動を求められている。無論メディアも同じである。