学園KING −日出彦 学校をつくる− アリスソフト

1996年6月7日発売(DOS版)
1998年11月26日発売(Windows95版;『アリスCD Ver.1.0』所収)
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 学園ものRPGと最初に目にしたとき「何だそれ?」という程度の興味はおぼえたものの、その時はその程度で済んでしまい、しばらくして再度目に掛かったのが、この『学園KING』でした。私がプレイしたのは『ぱすてるチャイム』同梱の「アリスCD」に収録されていたものです。もっとも、学園RPGとはいっても、雰囲気もストーリーもシステムもまるっきり違うので、『ぱすチャ』が気に入った人がこのゲームをどの程度支持されたかは私はわかりません(^_^; だいたい、このゲームのコピー、「学園青春バトルらぶらぶミステリアスうきうきフィールドタイプRPG」だったそうで………何ソレ?

シナリオ

 主人公・天津神日出彦(変更不可)は、その財力で世界を動かす天津神財閥当主の孫である。彼は、当主候補としての試練の一環として、「崑崙島」にある5つの学園が所有する「白紙委任状」を奪い、彼らから自治権を剥奪し、新しい学校を築き一元的な支配を行うことを命じられた。彼は、島に入ると同時に、出入学管理局長・香月小夜子に一目惚れして押し倒してしまう。他爆装置をつけられ身動きがとれなくなった小夜子を従え、日出彦の傍若無人な活動が始まる。

 

 シナリオ担当は「ふみゃ」氏。パロディを多用した独特のノリが、異様な世界における異様な連中によって、強烈な雰囲気を醸し出すことに成功しています。細かいところに、いい意味での遊び心が溢れていますね。

 

 まず、主人公のキャラクターが特異である点が指摘できます。一般的にゲームの主人公は、「自分の判断や嗜好に基づいて、ある程度自由に行動する」あるいは「無目的にただ活動し、犬も歩けば棒に当たる式に動く」かのいずれかに分けられると見て良いのでしょうが、この日出彦の場合、行動の根本に「試練」というものがあり、その目的遂行が第一であるため、彼の「自由」さを見て楽しむことはあまりありません。プレイヤーとはかけ離れた判断基準に基づく行動を取るため、トンチンカンな対応なども多く、見ている分には笑えるのですが、当人は大まじめかつ誠実に、そしてまた目的遂行のために(彼なりに)合理的な行動を取っているため、プレイヤーが同調することは少ないでしょう。

 しかし、言うなればマキアヴェリズムを徹底して体現している彼の冷徹さは、むしろ清々しさと恐ろしさとを同時に見せてくれる気がします。彼が「感情」を露わにして行動を取った数少ない例として「地底人皆殺し」がありますが、こういった蛮行(少なくとも反倫理的ではあります)に対しても嫌悪感を覚えさせずに「怖さ」を先に見せつけるというのは、彼ならではといっていいのでは。感情の抑揚を通常はまったく感じさせないキャラクターであるがゆえに見せられた芸、ともいえましょう。

 その反面、各キャラクターについては、アクが強くてポイントごとでの存在感が非常に強い反面、プレイを続けていくと次第に忘れてしまうようなケースが少なくありませんでした。結局、日出彦一人がつくりあげた世界の物語、と見るべきなのでしょう。もっとも、サブタイトルは「学校をつくる」ではなく「学校を潰す」の方がピンとくる感じですけれど(^^;

 

 ただ、トータルで見たストーリーのバランスは、お世辞にもまとまっているとは言えません。序盤での展開の強引さはなかなかにおもしろいのですが、話が進むにしたがってだんだんとおもしろさが弱くなっていた気がします。

 これは、学校を併呑することで各ストーリーが区切られている一方で、その際に取り込んだキャラクターが、以後はあまり関わってこないことがありそうです。神田や爆破などはそれでも見せ場があるものの、なぜか女性陣については次の学校では単なる兵隊に過ぎない、というのは何とももったいないところです。

 また、終盤でも、いきなり学園という枠から外れるのは、かなり疑問が残ります。小夜子というヒロインがほかのキャラに比べて特殊な存在であることを強力に示すために、あえて別枠の舞台を用意したのでしょうが、それでも取って付けた観は否めません。天帝学園という、ゲーム進行ではほとんど使われていない格好の場所があったのですから、ここを活用してほしかったところ。

 

 Hシーンの扱い方にしても、無理に入れたという感じが否めません。古いゲームに対してこの注文は酷に過ぎるのかも知れませんが、訳わからん展開に振り回されつつ、それでも日出彦についていく羽目になっている女性陣の面々の役割は、Hシーンを入れることで逆に「中途半端な存在」となってしまったように思えます。メインである小夜子を例外として、主人公に対する「視線」が曖昧なまま、なし崩しにHシーンへなだれこんでいるように見えます。もちろん、Hした後に心境が変化していく、というのもアリですが、そもそもアフターフォローは小夜子以外に対しては皆無ですし。結果として、Hシーンの存在しない男性陣の方が、むしろ存在感を強く残してしまうことになったようにも思えます。

 

 多用されているパロディについては、かなりセンスの古さが感じられ、それがかえって「現実離れした雰囲気」を作っているように思えます。これも人によって受け止め方がかなり違うのでしょうが、元ネタがわからなくても「なんかバカバカしいけど楽しそうだな」と流せるような出し方が多かったように思います。もっとも、「なめんなよ!」なんて、今の20代でわかる人ってほとんどいないのではないかと思うけど(^^;

ゲームデザイン

 一見したところRPGにみえますが、実際には戦闘の重要性はキーポイントとなるところをのぞけば非常に低く、むしろイベントを発生させる方が重要となっています。

 1人のリーダーがパーティの先頭に立って部下(単純に人数で表示されます)を率いて戦闘を行います。ザコとの遭遇率は『闘神都市2』よりやや低いぐらいでしょうか。戦闘は一部隊同士で行いますが、味方は戦闘途中で別部隊と交替することが可能で、また逃げることもできます。また各リーダーは、使用回数に制限のある「必殺技」をそれぞれ持ち、部隊の規模が一定以上になると「陣形」を選択できます。もっともこの「陣形」は、他部隊に戦闘中交替すると使えなくなるうえ、「待避陣」以外はあまり役に立ちませんけれど。

 特異なシステムとして、通常の「経験値によるレベルアップ」ではなく、「アップちゃん」という特殊な敵キャラを倒すことでレベルアップする、というものがあります。しかし、このアップちゃんの出現タイミングはどうにも計りにくく、しかもアップちゃんを倒したリーダーのみがレベルアップするため、結局は先頭に立たせる回数の多いリーダーばかりがレベルアップしていき、思い入れのできそうなキャラは置いてきぼりになっていきます。もっとも、実際にはレベルアップの必要性は低く、特に必殺技への依存度の高いキャラは、レベルアップさせるだけむだです。このため、中盤以降はひたすら逃げまくっていても問題ありません(^_^;) 特に、早くから参加するキャラほど後半では使えなくなる、というのは、ちょっとね。

 また、意外と使えるのが「小林ダッシュ」。要はポイントへの瞬間移動を行うものです。部隊の状態がヤバくなればこれで移動し、回復する、これがキーとなります。もっとも、何度も繰り返すのはかなり面倒なものがありますが。

 あと、岩津先生姉妹といううざったいのがおりまして、不意打ちで出現しては「テスト」を行います。戦闘部隊のリーダーの「成績」が良ければそれでいいのですが、悪いと一気に部隊壊滅・戦闘不能にしてくれます。いい加減にしてくれ(-_-;

操作性など

 インストールに必要なHD容量は約17MBですので、空き容量はさほど気にする必要はありません。インストール先ディレクトリは任意に変更可能で、アリスソフトの汎用プログラム「SYSTEM3.6」で動作します。

 マップ内での移動は、キーボードのカーソルキーまたはマウスで行います(私はキーボード使用)が、移動速度は速くなく遅くなくといったちょうどよい加減でしょう(ファンクションキーを押すことで変更可能です)。移動画面で右クリックを押すと「SARCH」(周囲を調べる)「TOUCH」(他部隊と交替)「ITEM」(アイテムを見る・使う)「DASH」(小林ダッシュ;「ゲームデザイン」の項を参照)の各メニューが表示されます。

 グラフィックは、640×400ドット表示で、起動時にウィンドウ表示とフルスクリーン表示とを切り替えることができます。メッセージスキップも可能です(未読・既読の区別はなし)。

 セーブは、終盤をのぞき、天帝学園など数個所にいる「セーブちゃん」に話しかけることによって行えます。また、部隊の回復・再編などは、基本的に天帝学園でのみ行うようになっているので、マメに戻る必要がありますが、これが非常にめんどうくさかった。せめて、各学校の入り口でセーブおよび回復ができるようにしてほしかったのですが。セーブすると、セーブ時の実日時が記録されます。ロードはいつでも可能。

 CGモードは、各ヒロインごとに表示されます。またBGMモードもあり、曲名とともにコメントも表示されます。

 なお、アリスソフトのサイトに、オンラインマニュアルがアップロードされています。私がプレイしたバージョンではマニュアル類はいっさいなかったので、まずはこれに目を通してからプレイしましょう。

サウンド

 サウンド担当は、Shade氏。BGMは、FM音源をベースとしており、MIDIで演奏されます。『Only You』にも通じるポップなノリの曲がイイです。個人的には「SAD EYES」が好みですが、これ以外にも「GOING,GOING,GOING」「ARE YOU READY?」なんかがいいですね。なお、オリジナルの98DOS版では、FM音源とCD-DAとを選択できたそうです。

グラフィック

 原画担当は「ちょも山」氏。目の大きさが体型と合っていない気もしますが、デフォルメ絵(へろへろほのか、おねむのまくらなど)が楽しいのが良し。ただ、『闘神都市2』でもばらまかれていた「謎の写真」は、今回は蛇足だったようにも思えるのですが、もはや「定番」になっているのでしょうかね。イベントCGはやや少な目ですが、「海水浴」なんかが好きです。あと、エンディングの絵もいいのですが、1つだけ気にくわん点。まろは消すでおじゃるっっっ!

お気に入り

 やっぱり異様なキャラクターたちの中でもとりわけ異彩を放っていた、ハイパー執事こと小林でしょう(^_^; 他にも、食いしん坊万歳な神田とか、究極の自爆王こと爆破とか、濃いキャラがいっぱいおります。

 え、女性陣? ………考えてみると、小夜子以外のキャラは名前をろくに覚えていないんですよね。ということで、唯一覚えている「まくら」に一票。「ぐー」の文字がよろしおます。いえ、ゲームオーバーを経験したからでは決してなくてえっとそのぉあぅあぅ(^^;

関連リンク先

 SHEOさんのサイトに旧版のインプレがあります。「アリスCD」収録ゲームとして、プレイされた方の数はけっこういると思うのですが、コッテリ味の展開が人を選んだのか、Web上ではまとまった感想は少ないようですね。

総評

 キャラをうまく使い、特に独特の主人公が破天荒な世界にいるさまをきちんと出しており、なかなかに楽しめる作品にはなっています。ストーリーバランスのまずさは否定できませんが、それを差し引いても充分に良質といえるシナリオになっています。

 その反面、戦闘システムのまずさは、このゲームにおける致命的な欠点と言っても支障ないでしょう。後半になれば逃げるだけでも進む、というのは、単なる「RPGのお約束」に背を向けた新しい取り組みなのかも知れませんが、しかし各キャラを「部隊」として「使う」楽しみを半減させているというマイナス面はいかんともしがたいものです。要所要所だけに戦闘パートを配置し、基本的にはアドベンチャーゲームとして設計していれば、この作品は完成度を上げ得たと思うのは、私だけでしょうか。

 「れぃーーてぇーーーんっっ!!」(爆)とはいいませんが、「ごぉーーかぁーーーく!!」(更爆)とも言いがたいところですね。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2001年8月27日
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