恋のフローティング・マイン アクティブ

1998年6月18日
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 アクティブの恋愛ゲームといえば、『くすり指の教科書』という、非常に萌えを強く喚起するタイプのゲームが頭に浮かびます。風上旬さんの原画担当となると、どうしてもその面影を強く引きずってしまうのは、致し方のないところなのでしょうか。

シナリオ

 幼い日に住んでいた街に再び帰ってきた主人公・朝比奈良太郎(姓名とも変更可能)は高校3年生。転入先に待っていたのは、幼なじみで学園のアイドルでもあった2人の女の子。彼女たちが好意を抱いた彼に対し、学園中の注目が集まったのは自然の成り行きであった。主人公は卒業までに、側にいてくれる女の子をつかまえることができるのだろうか。

 

 シナリオ展開のノリとしては、確かに『くすり指』シリーズの色合いがかなり出ていますが、主人公の行動パターンの自由度が高くなる反面、各キャラクターとのセリフに、重みが感じられません。その場その場での会話が、ストーリー上どのような意味を持つのかがあまり明確に示されず、単純にヒロイン側の「シナリオ上での位置づけ」を説明する素材としてのみ生きている、という印象です。言葉を換えれば、「らぶらぶ」な「恥ずかしさ」を演出するようなセリフではなく、あくまでも「キャラクターを据え付けるための素材」になっているわけです。主人公と母親&渚先生とのドツキ漫才も、このセンで把握可能です。

 

 そうなると、キャラクター設定としてはどうなのか、という話になるわけですが、「相互に深い関係のある2人のヒロインの組み合わせ」という設定を見れば、狙いが「微妙なトライアングル」にあることは明白です。さらに、それぞれのヒロインが、みな大なり小なりさまざまな悩みや葛藤、コンプレックスといったものを抱えており、ストーリー展開の上で、そういった心理状況が出されていきます。

 こういう手法は、『くすり指の教科書2』でも取られていました。しかし、『くすり2』では、「三角関係」がデリケートに扱われ、さらに、主人公を巻き込みながらも、主人公以外の男性キャラも含んだ関係が描かれていました。さらに、心的な葛藤というものが、ストーリーの中で出されるのみならず、それが主人公の行動やエンディングにダイレクトな形で伝わっていたので、単に「ベタベタな恥ずかしさ」だけではない「関係」に対し、きちんとした「切り込み」を見せていました。

 ところが、この『恋フロ』では、ヒロイン側の「三角関係」に対する意識は、その発言の中で出てはくるものの、それが具体的な行動を伴うものではなく、またもう一方のキャラクターに関する描写を伴っていないため、「上っ面の三角関係」という印象を受けます。三角関係というものを描く場合、修羅場を用意して場が暗くなるのを避けた、といえばそれまででしょうが、対応するキャラクターに共通するイベントも多いことを考えれば、もう一方が単なる「当て馬」に他ならない、というのは、非常にもったいないことと思います。また、悩みや葛藤、コンプレックスというものが、おおむね「三角関係の一翼」の対比として扱われており、それが「自信のなさ」につながっているわけですが、そこからキャラクターが成長していく過程と、主人公とのラブラブ過程との関連が全然ないため、『くすり2』がもっていたような、シナリオそのもののインパクトが、ほとんど感じられません。

 

 さらに、ヒロインたちが、主人公に対する「想い」を、どう捉えているか。この描写が、致命的に欠落しています。

 恋に時間は必要なし、話を重ねりゃ思いは強まる、そういったXゲームゆえのお約束を前提とするのは一向に構わないのですが、ヒロイン自身の主人公に対する認識が、どうにも中途半端というのが痛いところです。キャラクターの行動などに一貫性が保たれているため、プレイ中にはさほど気にかからないものの、エンディングになってもオチがまとまらないのは、まさにこの「想い」の描写不足の結果でしょう。対象キャラクターは、1名を除けば全員高校生なのですから、恋愛の過程での不器用さを出すのはごく自然なこととして、その「出し方」が、「恋愛」と絡まっていないのが残念です。

 

 上の方で、セリフが「恥ずかしさを演出していない」と書きましたが、ベタベタな展開を拒むかのような思い切りの良さを見せているのが、特別なイベントが発生しない場合のデートシーンでしょう。黒い画面に「……」のメッセージ、しばらくして「今日は楽しかった」のセリフ。プレイヤーは全然楽しくないのですが、これ自体が、恋愛ゲームとしての甘ったるさという退路を自ら断っているようです。さらに、日常会話も、親密度を測定するバロメータ以上になってはおらず、基本的には「使い回し」になっていることも、同様の意味合いを帯びていると感じます。

 しかし、肝心の「キャラクター設定」がそもそも生かし切れていないので、「かぎりなく味気ない」というイメージだけが残ってしまいます。グラフィックやテキストの量がさほど多かったとは思えないのですが、キャラクターの数が増えて裁ききれなくなったのでしょうか?

 

 主人公は写真部に所属、ということなのですが、写真絡みでの話に詰めが甘い、と感じます。「オリンスパのMO-1というカメラ」(←元ネタは「オリンパスのOM-1」。メカニカルシャッターのロングセラー一眼レフ)が出てきたかと思えば、「手持ちで30分露光」などという滅茶苦茶な叙述も(^^;)

ゲームデザイン

 ゲーム期間は半年間で、毎週土曜日に行動(行き先)を選択することができ、行き先でキャラクターと出会えば会話することができ、デートに誘うことも可能です。キャラクターごとに、行き先はおおむね決まっていますが、『To Heart』のように日付ごとに登場場所が明確に決まっているわけではなく、ランダムで入れ替わるようです。デートの際には場所を指定可能ですが、イベントの発生率は非常に低くなっています。これは、イベント遭遇が困難というのではなく、ゲーム期間が長い割にイベントが少ないということで、シナリオ面でも触れたデートシーンの素っ気なさと相まって、これほど「楽しくない」デートもないだろう、という気になります。デートを重ねればHになだれこむことが可能ですが、Hシーンのバリエーションは回を重ねるごとに増えていきます。これはなかなかおもしろいところ。

 攻略の際には、オンリープレイでもハッピーエンド可能ですが、三角関係のもう片方の好感度も上げておかないとイベントが発生しないケースもあります。しかし、両方とHした場合…バレることはないようですが、どうなるかは言わぬが華でしょう(^^;)

 逆にいえば、最終的に攻略できるのは1人なのですが、そのために、オンリープレイに徹して毎週会ってデートしてHして、を繰り返すと、非常に単調かつ退屈な作業を続ける羽目になります。キャラクターによっては、親密度が上がるとイベントが発生することもありますが、その回数が少ないため、ストーリーにメリハリをつける役割を演じ切れていません。

 

 『くすり指』シリーズのような単純分岐型AVGではなく自由度が上がっているにも関わらず、プレイヤーが感情移入するタイプのゲームになり切れておらず、シナリオ的には、主人公の「意味」がかぎりなく薄くなっているだけに、操作性の良さに救われている、という感じです。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に不具合などは発生していません。

操作性など

 アクティブのゲームだけあって、操作は非常に快適です。

 インストールの際には、最小・標準・最大の3とおりが選べます。最大インストールをすれば、CD-ROMなしでゲームを起動することが可能となります。

 操作には、マウス、キーボード、ジョイパッドを切り替えることができます。

 画面は、640×480とフルスクリーンから切り替え可能です。メッセージ速度表示の調整はなく、すべてノーウェイト表示。

 セーブ&ロードは、任意の位置で10個所まで可能です。また、選択肢を選んだ直後の時点でオートセーブが行われます(が、使ったことはほとんどありません)。セーブは「F2」キー、ロードは「F3」キー一発で可能というのも嬉しいところ。また、オープニング画面に戻ることもできます。

 CGモードは、キャラクターごとにサムネイル表示されます。回想モードはなし。また、BGMモードもあります。

サウンド

 サウンドは、『くすり2』や『Silver Moon』と同様、アーティスティックコンセプツの担当。

 BGMは、PCM(DirectSound)とMIDIから選択できます。音源にもよるのかもしれませんが、MIDIの方がクリアないい感じを受けました。元気なタイプの曲(嘉穂のテーマなど)よりはむしろ、落ち着いた感じのピアノ曲(綾香のテーマなど)がいい味を出しています。もっとも、『Silver Moon』プレイ後、「アーティスティックコンセプツのピアノ曲」というイメージがインプットされているのは否定できないので、ある程度差し引いて考えて下さい(^^;) 純粋に「好み」でいえば、「踊る紙風船」が一番かな。

 音声は、「全て有り・主人公以外は有り・女性のみ有り・無し」から選択できます。『くすり2』と同じ声優さんが演じておられるようで、しっかりした演技は安心できます。しかし、やはりセリフそのもののインパクトが弱いのが痛く、破壊力に欠けるのは否めません。ただ、主人公の姓名がデフォルトの場合、その姓名を入れた音声となるのは嬉しいですね。

グラフィック

 風上旬さんがキャラクター原画を担当されています。『くすり指』シリーズに比べて角がとれてきて、だんだんキャラクターの「肉付き」を感じることができるようになってきましたが、デッサンやアングルに不自然さが目立つのはやはり否定できません。特に、洋子が泳ぐシーンは、どう見ても無理ありすぎ(^^;)

 塗りは、非常にキレイになってきました。『くすり2』では、ザラつきが非常に目立ったのですが、特に肌触りが非常に質感豊かになっているのが好感を持てます。ただ、背景が非常にぼやけているのが残念。

 それにしても、イベントがあってもCGがないシーンというのが、あまりにも多いのは、どうしたことなのでしょうか。クリスマスイブで綾香とマフラーを巻き合うイベントなど、真っ黒な画面で盛り上がれといわれても困ります。

お気に入り

 どのキャラクターも、予期したパターン通りの行動を取ってくれることもあって、どうにも印象が薄く、特に気に入ったキャラというのはありませんでした。NIFTYで「98ベストキャラ投票」を主催したときも、綾香と愛美の区別がつかなかったぐらいですから(^^;)

関連リンク先

 USGさんのサイト(閉鎖)、SHEOさんのサイトにレビューがアップされています。

総評

 恋愛シミュレーションとしてみた場合、「恋愛」を描き切れていないこと、単なるナンパゲームにもなっていないことを考えた場合、ゲームとしてもシナリオ面でも物足りなさを大いに感じます。また、初代『くすり指の教科書』のような「強烈なシーン」がなく、キャラクターの魅力を出せているわけでもないのが痛いところでしょう。

 ただ、シナリオ欄で書いたように、「悩みや葛藤、コンプレックス」というものを、『くすり指の教科書2』よりもさらにハッキリした形で出しているだけに、これを「恋愛」とキチンとリンクさせれば、相応のものに仕上がったと思います。もっとも、そうすると、やたらと「痛い」ゲームになってしまうかも知れませんが…。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
1999年10月25日
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