ぱすてるチャイム アリスソフト

1998年11月26日発売
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 『かえるにょ・ぱにょ〜ん』の中途半端な作りが不評だったアリスソフトのRPGですが、さて名誉挽回なるか。そんな期待を込めて買ったのが、この『ぱすてるチャイム』でした。

 なお、このゲームはCD-ROM2枚組となっており、ゲームCD-ROMの他に、「アリスCD」というCD-ROMが入っています。この中には、DOSゲーム『学園KING』の移植やミニゲームなどが収録されています。

シナリオ・ゲームデザイン

 冒険者養成学校に通う主人公は、自分の実力不足を痛感し、ダンジョン実習でパートナーとともに戦闘力を上げる毎日。1年後、彼は無事に卒業できるのだろうか。

 

 恐ろしく素っ気ないシナリオ紹介ですが、これで済んでしまいます。パートナーとなるヒロインは、幼なじみに初恋のコ、いじめられっこにボーイッシュ娘と、定番どころを揃えてはいるのですが、いかんせんイベントが少なすぎます。サブタイトルの「恋のスキルアップ」に関しては、「どこがじゃい?」というツッコミを入れたくなりました。

 キャラクターの設定からは、いろいろなシナリオの組み方が可能なはずです。実際、最初から登場する2人のヒロインだけをとっても、シナリオを展開させるだけの「記号」は充分に備えているのですが、その大半は使われることなく、ずっと眠ったままになっています。イベント皆無だった『かえるにょ』よりは「相対的に」マシになってはいますけれど、時間が掛かる割に話が進まない上、イベントが起こってもCGがまるでなかったりします。休日のデートシーンでは『恋のフローティングマイン』を連想してしまいました。「楽しくないデート」を何回入れたところで、おもしろみなど出るはずもありません。

 

 RPGとしては、ひたすら、授業を受けてパラメータを増やし、ダンジョンで経験値と金を稼ぐ、これを繰り返していき、最終的にラスボスを倒す、というものです。職業選択、あるいはパラメータのバランスを考えるのはなかなか手間がかかり、最初のプレイでうまくいく可能性はほとんどないでしょう。なにせ、「戦士・魔法使い・スカウト・神術使い」という職業がありますが、後ろ2つはどんな「職業」なのかさっぱりわかりません(^^;) マニュアルには説明などなく、その職業になってみてとにもかくにもプレイをしてみないとわからないのですが、そのときに重要となるパラメータが何なのかも見当がつきません。『かえるにょ』では、パラメータを絞り込んで直感的にわかりやすくなっていた(ただし職業選択がシビアすぎましたが)のに、むしろ「不親切さ」は増大しています。

 さらに、敵のパターンが決まりきっており、戦闘の際にあまり緊張感がなかったのも問題。緊張するとすれば、それは戦闘そのものよりも「どのフロアまで降りられるか」「残り時間はどのくらいか」ということだったりします。敵のバリエーションを豊富に用意してくれたアリスの戦闘ゲームとしては寂しいものです。「ハニー」に代表される、アリス恒例の定番モンスターも出てこないし(^^;)

 RPGに慣れていないヌルゲーマーゆえの感覚かもしれませんが、この段階での敷居がかなり高く、ネット上でいろいろと公開されている改造ツールに手を出したくなったことも何度かありました。コツを掴めれば、育成についていろいろと考える余地があり、手応えのあるゲームと言えるのですが。

 

 さらに、プレイにかかる時間が長すぎます。『かえるにょ』なども、戦闘をえんえんと繰り返させられるという仕様でしたが、この作品では、戦闘それ自体での刺激があまりない上、プレイを続ける上での「刺激」がほとんどありません。ダンジョン内で発生するイベントはほとんどないのも悲しいところで、楽しみといえばアイテム収集だけ、という具合になってしまいました。せめて、一緒に潜っているパートナーとの会話ぐらいはほしかったところです。

操作性など

 基本となっているプログラムは「SYSTEM3.6」で、それまでよりバージョンアップしています。起動すると、ハニーやアリスが踊るオープニングが出ますが、これがなかなか楽しいです(^^)

 戦闘シーンでは、キャラを選択→移動→攻撃などのアクション、これを繰り返します。基本的にマウスのみでの操作となりますが、カーソル自動制御がかなりうざったく感じたのも事実です。

 セーブ&ロードは、移動画面で可能ですが、非常にわかりにくいのは問題です。最初、「セーブポイントが出現するのか?」と思いながらのプレイでした。

 CGモード・BGMモードは、一度クリアしてから入ることができます。CGモードはサムネイル表示されますが、なぜかいきなり全部のCGを見たことになっていました(爆笑)。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されますが、「ハイスピードモード」を設定するとダンジョンでの冒険部分のみMIDIになります。曲そのものは割といいのですが、オープニングの曲で、やや「気が抜ける」ような印象を持ちました。トラック7が比較的いい感じです。

 音声はありません。

グラフィック

 『かえるにょ』と同じ、かれん氏が原画担当。非常にきれいなのはいいのですが、枚数の少なさがいかんともしがたいですね。ダンジョン内で拾える怪しいアイテムよりも、キャラごとのグラフィックがもっとほしかったな、とも思いました。この点、ボーナスCGを奮発していたという点では『かえるにょ』の方が良かったのかも。

お気に入り

 コレットで決まり。行動にかなりお子様が入っていますが、「気付いてないのはアンタだけ」というシチュエーションがけっこう好きなので。でも、エンディングで「おーい」と声を挙げてしまったのも確か(^^;)

関連リンク先

 SHEOさんのサイトにレビューがアップされています。

総評

 キャラクターの作り方から見て、戦闘ゲームの軸に「萌え」をミックスさせようとした、という意図がうかがえます。しかし、キャラクターが絡んでくるイベントシーンが少なすぎるうえ、シナリオを「作る」部品になり切れていません。ヒロイン候補を絞ったのはいいにしても、戦闘と成長を通じて彼女たちとのストーリーを作り出していくという戦略は、失敗しているとみてよいでしょう。

 RPGとして見れば、取っつきにくさが非常に気にかかりますが、慣れてくればそれなりにハマれる要素はあります。ただ、一プレイに要する時間が長い上、とにかく単調極まりないので、工夫が欲しいところです。現時点では、「作業」感をひたすら濃くするだけで、繰り返しプレイに耐えるつくりになっていませんから。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
1999年9月27日
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