Missing 〜いつかきっと〜 ピンパイ

1998年11月27日発売
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 夏に冬のゲームが、冬に夏のゲームが発売されるのが日常茶飯事。延期に延期を重ねたあげく、夏のゲームが年を越してやっぱり夏に発売された、などというケースもあります。「定刻通りに列車が到着したと驚いたら、実は24時間遅れていた」という外国のジョークがありますが、果たして期日を守って拙速に甘んじるのと、季節感ぶちこわしでも「くおりてぃ」なるものを守るのと、どちらがいいのでしょうか?

 そんなことを考えながら手にしたゲームが、この『Missing』でした。オープニングのムービーでは、登場する女の子がてこてこと走り回り、実に楽しいものです。320×240の原寸を拡大しているため、画質的にやや無理があるのは致し方ないところでしょうか。もっとも、ゲーム本体よりも、このムービーの方が出来がよい、という説もあるんですが(^^;)

シナリオ

 高校3年の3学期。受験とは無縁、あとは出席日数を稼ぐだけの主人公・結城雅弘(姓名とも変更可能)。バレンタインデー、その日から、主人公の周りには多くの女の子たちが現れる。彼と彼女たちとの織りなす、2週間の恋物語。それは、プレイヤーの選択しだいで決まる……。

 

 ヒロインごとに、それぞれのストーリーが完全に独立するスタイルとなっていますが、各ヒロインごとに用意されているシナリオには、あまり深みがありません。扱っている素材や着眼点は悪くないのですが、それをいかしきらない、あるいは手を着けないまま、とにかく「簡便に処理」されている、という印象を受けます。

 扱われているネタが、『WHITE ALBUM』(Leaf)や『ONE』(Tactics)と重なってしまった、という点も指摘できましょうし、この2つのような水準のシナリオを求めるのは酷でしょう(失礼(^^;)が、それ以前の問題として、シリアスな展開を期待させる設定を出していながら、実際に見せられる展開での中途描写があまりにも希薄で、エンディングが唐突に訪れるのです。

 CD-ROM同梱のテキストファイルを見ると、時間の都合で、イベントを大幅にカットしたとのことですが、見切り発車以外の何物でもありません。確かに、扱うテーマがテーマであり、1998年を代表したと言える上記2作品に対して正面切ってぶつかるには、相当のシナリオ&演出が必要でしょう。しかし、あまりにもイベントが少なすぎて、盛り上がらないうちに主人公とヒロインとが勝手に結ばれてしまうエンディングが多く、興を削がれます。しかし、また別系統のシナリオでは、イベント自体は少ないながらも、登場人物の心境の変化が、一見あっさりと、しかし実際はかなりイメージを沸き立たせられる形で描写されています。これだけのものを作れる以上、もう少し時間をかけ、密度の高いシナリオを作ることを要求しても、プレイヤー側の無茶な因縁ヅケではないと考えます。見切り発車で中途半端なことをした結果、シナリオの「間引き」が目立ってしまっているのです。「お茶にごし」ではなく。もったいない…。

 ヒロインの扱い方は、基本的に「ペア」となる2人組ごとの関係、という形になっています。この設定も、瑠璃&魅悠以外では、あまり上手にいかせていたとも見えないのが残念です。

ゲームデザイン

 オープニングがかなり長く、ゆっくりプレイした私は45分を要しました。この間に、主要な登場人物が全員出揃います。これ以降は、放課後の行動パターンによってイベントが発生し、最終日を迎えるまで続く…はい、あのパターンです(^^;) また、あるシナリオに入るためには、別のあるエンディングを迎えている必要があるなど、ビジュアルノベルとして典型的なパターンを、このゲームも踏襲しています。

不具合・修正プログラム

 私の環境では特に不具合はありませんでしたが、ハードウェアの要求水準はかなり高いようデス。

操作性など

 ゲームにはDirectX5が必要です。入力デバイスはマウスのみで、キーボードは受け付けません。作業が単純なだけに、マウス連打は疲れるんですけど(^^;)

 テキスト表示は、ビジュアルノベル方式と、メッセージウィンドウ別個方式とを選択可能です。雰囲気はかなり違いますが、実際のプレイ感覚で見ると、メッセージウィンドウ方式の方がマッチしているという印象です。フォントは明朝体のみ。

 セーブ&ロードは、任意の位置で、10個所までセーブ可能。セーブすると、プレイ時の実日時・プレイ時の名前が記録されるほか、コメント(128文字まで)も保存可能なので、シチュエーションやシナリオをメモしておけるのは便利。また、一度読んだ文章にかぎり、メッセージスキップ可能です。

 CGモードは、各ヒロインごとに、サムネイル表示されます。Hシーンオンリーということはなく、全てのCGが表示されます。テキスト付きの回想モードはなし。BGMモードでは、表示される曲名をクリックすると、CDが演奏されます。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されます。かなり控えめな雰囲気の曲が多いですね。曲が切り替わるたびに面食らうような印象が強く、シチュエーションと曲とのバランスがやや崩れているという印象です。

 最終トラックには、ボーカル曲が収録されています。オープニングムービーに使われている曲のフルバージョンで、歌唱力はもう少しといったところですが、割といい曲だと感じます。

グラフィック

 女の子のCG、特に立ちグラが、けっこうかわいいですね。もっとも、一枚絵になってもあまり印象が変わらないのはなぜでしょうか。

 背景は……見なかったことにしましょう(^^;)

お気に入り

 水無月深雪。懸命の頑張りがなんとも。

関連リンク先

 SHEOさんのサイトで、私よりはやや好意的な(^^;)レビューがアップされています。

総評

 どんな切り口で見ても、中身が濃い作品ではありません。したがって、シナリオをじっくりと味わいたいとか、ベタベタな恋愛ものにハマりたい、という向きにはおすすめできないでしょうね。しかし、かなりシリアスな設定があちらこちらにばらまかれていますから、「軽くHなノリ」を期待してもお門違いというものです。う〜ん、帯に短したすきに長し、困ったもんです。

 キャラゲーの宿命として、イベントをつなぎ合わせる、というスタイルで作られたゲーム(パッチワークの結果こんなんできましたけど、とでもいった感じがハッキリ出ています)というのが、素人目にもミエミエなのは問題でしょう。各イベントが「はいこれがN番目のイベントです」という感じに「存在」している、というのではなく、相互のイベントがもっと関連を増し、振り返ったときに印象に残るような形に結実させてほしいものです。徹頭徹尾「日常」に徹するのなら別ですが、かなり突飛とも見えるキャラクターを用いている以上、イベントシーンでの盛り上げは必須要件でしょう。

個人評価 ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
1999年9月8日
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