flowers 〜ココロノハナ〜 CRAFTWORK side.b

1998年12月11日発売
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 独特の広告で、なんとなく気になっていたゲームが、この『flowers』でした。それまで、ビジュアルアーツ系のゲームはまったくプレイしたことがなく、それがどのような中身であるのかという先入観ナシで購入という暴挙(^^;)を敢えてやってのけたわけですが…。

シナリオ・ゲームデザイン

 主人公・広瀬隆成(変更可能)は、高校2年生。彼の通う学校は、つい最近共学になったばかりで、もとは女子校。現在も、男子生徒は圧倒的に少なく、その数、わずか3人。そして、主人公の周りにいる、個性ある魅力的な女の子。4月からの1か月あまりの間に、彼はどの娘と仲良くなるのか…。

 

 基本的に、学校での「昼休み」と「放課後」との行き先の選択、および、出会ったキャラとの会話の選択とで、話が進んでいきます。ただ、移動画面でのマップ表示が、少々鬱陶しいですね。話がテンポよく進まないとおもしろくない、というセッカチな人には向かないかも。

 好感度が上がってくると、キャラクターの立ちCGがだんだん大きくなってきます。バロメータにはなりますが、私には巨大化してかえって不気味に見えます(^^;)

 ビジュアルノベルという形式をとっていますが、テキストはコミカルな表現を多用している上、テキスト表示のタイミングや、TPOに応じたフレーズの使い分けが細やかになされているわけではないので、あまり意味がなさそう。文章を読ませるというタイプのシナリオではないと思えるだけに、素直にメッセージウィンドウ方式にしてくれた方が良かったと思います。

 

 一読しておわかりの通り、『To Heart』と、シナリオ・システム両面において非常によく似ています、否、模倣しています。

 ただ、単なる「パクリ」では売り物にならないわけで、どこで差異化を図っているかというと、キャラクター設定のようですね。

 『To Heart』では、実際にはあり得ないような疑似恋愛体験を「現実感を伴う形で」味わわせているのに対し、この『flowers』では、シナリオのボリュームを圧縮する一方で、各キャラクターのパターンをずらしています。ストーリーそのものが平板であるのは、確信犯的に考えられたものであり、むしろ「会話」というものを利用してキャラクターを引き立てることを狙ったのでしょう。これは、『To Heart』が、各シナリオに重みを持たせるよりも「萌え」を引き出すような設定にしていたことを考えれば、「キャラ重視」の方法としてごく自然な発想だと思えます。

 しかし、出ているキャラクターの「差別化」それ自体も、「ありふれている」という印象しか受けません。『To Heart』をプレイしたときには新鮮に感じた私自身が「慣れ」てしまった、という面もあるでしょうが、それだけではなく、「恋愛」に対して中途半端にこだわった結果、ヒロインの描写と主人公の描写とがどっちつかずになってしまっているように感じられます。

 シナリオを見ても、そこにある「ドラマ性」に、リアリティを感じません。もちろん、ゲームの中で紡がれる「仮想現実」に現実感などあるはずないのですが、プレイヤーが没入するに十分な「装置」が出されているようには見えません。ゲーム内での珍しい設定(男がほとんどいない、とか)がほとんどいきていないことも、ゲームにはまれなかった要因と思えます。

 さらに、会話のセンスがヘンですね。モノローグでも、主人公が高校生という設定から考えて、ボキャブラリーがあまりにも少なすぎなのが残念ですし、行動パターンも格好悪いことこのうえありません。この「格好悪さ」が、例えば『ルーキーズ』や『WHITE ALBUM』の主人公のように「弱い」ことに起因しているのなら、それはそれで納得がいきます。しかし、主人公の主体的な判断が差し挟まれることのないままで、状況が先に流れていく、すなわち「流されている」という感触だに与えぬ暇がもたらす空虚な感触は、私的には耐え難いものでした。

 

 それから、キャラクターの姓に、地名や駅名を用いるというパターンはしばしば見受けますが、このゲームでは、『七人の侍』が元ネタのようですね(^^;)

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に不具合などは発生していません。

操作性など

 インストール先ディレクトリは任意に変更可能で、フルインストールするとCD-ROMなしでプレイ可能です。アンインストールの際には、セーブデータおよびフォルダはそのまま残ります。

 使用可能な入力デバイスはマウスのみで、キーボードは受け付けません。ビジュアルアーツのゲームには、「操作はマウスのみ、メニューは右クリックから」というパターンが多いのですが、個人的には、単純なアクションを繰り返すゲームではキーボード使用可能という仕様は必須だと思いますし、メニューもプルダウンメニュークリックの方がわかりやすいと思うのですけれど。

 画面は、640×480と、フルスクリーンとの切り替えが可能。全画面に文章が表示される、ビジュアルノベルスタイルとなっています…が、全画面表示に適合するようなテキストではないと思いますが(^^;)

 セーブ&ロードは、任意の位置で、16個所まで可能。プレイ中の実日時・時刻と、ゲーム中の日付とが記録されるのは便利ですね。

 右クリックメニューから、「文字速度」を選択することで、メッセージ速度表示の調整が可能です。スキップ機能は、既読テキストにかぎり、右クリックメニューから呼び出すことで可能となっています。

 CGモードは、誰かとのハッピーエンドを迎えると現れます。各キャラごとにサムネイル表示されます。また、Hシーンの回想モードあり。テキスト&音声付きで、これも各キャラごとに分かれています。また、BGMモードもあります。

 なお、ゲームをクリアすると、上記の「CGモード」「BGMモード」「Hシーン」の他に、「スタッフルーム」も現れます。中には、謎の「おまけシナリオ」もありますが…楽しめるかどうかはその方しだいでしょう(^^;)

サウンド

 BGMは、PCM(DirectSound)で演奏されます。まぁ、標準的な水準にはなっているでしょう。しかし、あんまり印象に残っていません。善し悪し以前に、インパクトがなさ過ぎ。

 あと、ボーカル曲もありますけど……好みじゃないス、こーゆー声(^^;)

 音声は、主人公をデフォルト名にした場合にかぎり、女性がすべてのシーンで話します。特に上手というほどではないにせよ、合わせづらそうな台詞によくついていっており、まずは及第点かと。

グラフィック

 長岡建蔵氏の原画。眼のぱっちりした女の子の表情はいいのですが、表情のバリエーションにもう一工夫がほしかったように思えます。

 それにしても、Hシーンの濃さといったら、なかなかのものですね。突然、それまでの脳天気であっぱらぱぁな雰囲気を一気に変じさせるがごときダークな感じがなんとも(^^;)

 背景が、単純な写真取り込みというのは残念。『とらいあんぐるハート』などに比べればまだずっとマシですが(^^;)、写真取り込み、なおかつ色を多く用いているため、人物CGが浮いてしまっているケースが多々ありました。

お気に入り

 特にありません。最初にコンプしたときにはちなみちゃんかな、と思っていましたが、もともとこのゲームに対する興味もあまり長続きしなかったぐらいなので(^^;)

 強いていえば、演劇部の部長さんヾ(^^;

関連リンク先

 USGさんのサイト(閉鎖)、いっせいさんのサイトにレビューがアップされています。

総評

 『To Heart』に比べ、差異化を図っているのはわかりますが、その差異そのものにオリジナリティがまったく感じられないうえ、『To Heart』が実現した要素を十全に消化していないように見える(テキスト描写のレベル格差は歴然としています)ため、「亜流」という印象しか抱けませんでした。

 この路線で独自色を出すのは難しいというのはわかりますし、ジャンル的にも成熟している分野と見るべきなのでしょう。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
1999年11月15日
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