蒼天紳士チャンピオン作品別感想
ハーベストマーチ
第1話 〜
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第1話 〜 (2012 51号〜)
第1話 受胎 〜こんにちは、ちいさな村のクゥ〜
(2012年 51号)
1年と少しの間を経て、フクイタクミ先生が帰ってきた!!
巻頭カラー巨弾62Pで始まる新連載。激闘開始!!
誰しも奥底に影を抱え、それでも健気に息をする。
ひとつの不思議。少年にもし、それが起きたなら?これは、そんなお話だ。
少年とともに試練の旅を始めよう。
アオリからして気合充分な本作。期待が高まっていきますな。
変わりたいと思ったことはないか?今の自分を変えることができたなら、その先にあるのはなんだと思う?
お前の中に醜く禍々しい本性が潜んでいたとして、それをお前自身が忌み恥じていたとしても――
そいつはきっと、お前自身を裏切らない。
物語の舞台はと或る時代の、と或る国。小さな谷間の村でございます。
いつものように朝を迎えた村では朝の支度に出歩く人々の姿が見える。
水汲みに出かけていたのは見事な巨乳の持ち主であるノイエさん。
胸に合わせた体格があるゆえか、力持ちであるのは間違いない様子。村の誰よりも働き者であると評判だ。
ノイエさんもいい年齢のようですし、そろそろ結婚の話も出てきそうな感じ。
だが、それは無理だろうなというのが村人の反応。
ノイエさんには手のかかる弟がいる。いつまでたっても弟のお守さ、とのこと。
つまり、姉ではなくすっかり母親になってしまっているって話ですね。若い身空で。
ノイエさんの両親は6年前に病で亡くなった。
ノイエさんが11歳。その弟が4歳のころの話である。
あの日からすっかり弟のために強くなった。だから何せ――あの弟がいたんじゃあ、ノイエもおちおちよそへ嫁には行けんだろ。
ああ・・・かわいそうなノイエ。
可哀想がられているノイエさん。
さて、その手の掛かる弟とはどんな子であるのだろうか。
布団に包まっているのは小さな小さな男の子。
立派な体格の姉とはずいぶん違いますな。足とか見ていると不安になるぐらいにか細い。
しかし、水を飛ばされて慌てている姿が可愛い。
さあ・・・顔をキレイにしたら、お姉さんに見せてごらんなさい。
『クゥ』・・・クゥバンテ・レンドルフ。
私の誇り。私の大切な自慢の弟・・・
ふむ。本当にお母さんのようですな。母性本能が全開に溢れている様子。
そんな姉の抱擁から離れ、仕事に向かうクゥ。
小さな村ですし、10歳でも仕事をしていないといけないんですな。時代だなぁ。
畑の仕事の手伝いに向かうクゥ。
しかし非力なクゥに畑仕事は向かない様子。基本力仕事になりそうですものね。
頑張ろうとする意志はある。が、やはり体がついていかないようだ。うーむ。
というわけで、畑仕事からは放り出されるクゥ。
他の仕事をもらえないものかと村の中を彷徨うがどこも芳しい返事は得られない。
力仕事だけでなく、他もダメっぽい感じですな。女性の針仕事っぽい所でも断られている。
姉さんはがんばっているんだろうな。それに比べて僕は・・・ダメだな。
ごめんね・・・姉さん。
ポロポロと涙を零しながら村のはずれで一人昼食のパンを食べるクゥ。哀しい。
そんなクゥの側に通りかかるのは立派な体格の少年。名はシイド。
右の頬から目の上にかけて大きな傷跡があるのが特徴である。
シイドはものすごくケンカが強く、村の男の子たちの誰より強いリーダー。
たまに村ですれ違ったりすると、クゥのことをじっとにらんだりするらしい。ほう。
・・・僕だけはシイドのグループに入れてもらってないし。僕・・・もしかして嫌われてるのかな?
不安に思うクゥに声をかけてくるシイド。
シイド「・・・それうまいか?ひとくち寄こせ」
クゥ「・・・食べさしだよ?」
シイド「見りゃわかる。寄こせ」
何だか意味深な会話ですね。食べさしであっても問題ない。むしろそれがいいと感じれなくもない。
実際、クゥが口をつけていた部分から齧りつくシイド。
ひとくちで半分なくなってしまいました。口でけえよ。
コレうまいか?こんなもんうまいか?
『こんなもん』・・・グラーニンさんのおばさんがくれたお昼なんだ・・・ひどいこと言わないで。
・・・でも、おいしくはないや・・・僕・・・何も仕事ができなかったんだ。
・・・もっと、うめぇメシ食いてえか?
健気な様子を見せるクゥの両腕を掴み、迫るシイド。
変わりたいと思ったことはないか?今の自分を変えることができたなら、その先にあるのはなんだと思う?
今の自分を変える。変わる。それはどういうことなのか。
クゥにしてみれば、今のように弱虫やグズじゃなくなるということなのかと思える。
もっと強くなって、みんなにもバカにされなくなったらどうなるか。
クゥ。明日の朝、仕事の始まる時間に村はずれの森の入口へ来な。
変わりたいなら俺について来い。
そう告げるシイド。何故クゥにそんな風に声をかけてきたのだろうか?グループにも加えていないのに。
訝しむ間もなく、村長さんが通りがかる。用件は伝え終わったので去ろうとするシイド。
そのシイドに村長さん、いつまでも子供じゃないんだ。村のガキ大将もいいかげんにしておけよと声をかける。
ああ、下らねえしやめてやらあ・・・じゃあーな。クゥ。
意味深な笑みを浮かべて去っていくシイド。
そして村長さんは残ったクゥに仕事がうまくできなかったからって逃げたり腐ったりするなよと釘を刺す。
シイドに連れられて道を踏み外すことを心配しているんですかね?
村の一人前になりたかったら、姉に恥をかかせるようではイカンぞ、とのこと。
僕のせいで・・・姉さんが恥をかく・・・
それが何より辛いといった感じのクゥであります。
まあ、弟好きのノイエさんにしてみればそこを気にした様子はないみたいですがね。
実際、今日のノイエさんはご機嫌。クゥが頑張って色んな仕事をしたのが嬉しい様子。
結果としては何ひとつできていないのだが、頑張ったこと自体が嬉しいのでしょう。ううむ、これが母性か!
僕・・・もっと強くなるから。
決心した様子のクゥ。
そう、覚悟を決めないといけない。明日の朝、目を覚ました時――『姉さんに嘘をつく』その覚悟。
どうやらクゥ。シイドの言葉に従い仕事に行くと見せて指定の場所に向かうつもりの様子。
姉さんは『私の誇り』『ノイエの大切な自慢の弟』いつも僕にそう言ってくれる・・・
姉さん・・・僕は本当にそうなりたい。
僕はダメな自分を変えてみたい。今の僕は姉さんのことを困らせてしまうから。
どんなことで僕が変わるのかわからないけど。
きっと今日――いつもの毎日では得られないものが得られると。そんな気がする。
指定の場所にやってきたクゥ。そこに居たのはシイドを含めた8人の少年少女。
どうやら2人だけではなかったようだ。シイドに寄り添っている幼女が気になりますな。
シイドは少年たちを連れて向かう。村の外へと。
村の大人たちに入ってはいけないと言われている『禁じの森』のずっと奥――歩いてずっとその奥へと。
一方のノイエさん。仕事をしながらも何だかボンヤリとした様子。
そのノイエさんに声をかけるのはテレシアお嬢様。
どうやらこのテレシアちゃん、村長の娘さんらしい。ははぁ、それでお嬢様ね。
しかし、本人はお嬢様と呼ばれるのが恥ずかしい様子。可愛いことですな。
この村は本当に小さい。知らない顔はないし、知られていないこともない。
このままクゥがこの村での行き方しか教わらずに生きてゆくのが可哀想に思えるノイエさん。
そんなことを漏らすと、この村が嫌い?と淋しそうな様子を見せるテレシアちゃん。可愛いことですな。
心配してくれてありがとうといえば真っ赤になるし、本当可愛いことでございますよ。お嬢様可愛いよ。
てな風に和気藹々としている場合ではありません。
村長さんが村の大人たちを連れて血相を変えている。
なんでも村の子供たちがいなくなったらしい。まさか村の外へ?と青くなるノイエさんでありました。
その心配の通り、村の外へと歩いているクゥたち。
禁じの森にはちゃんとした山道はなく、小川や段差を乗り越えての行軍となる。こりゃちょっとした探検だな。
そんな中、何度も転ぶクゥだが、泣くこともなく立ち上がり歩き続ける。あらなんだかいい感じ。
というか、基本的にこの子たち裸足なんだな。
荒れた森の中を裸足で移動するとは・・・鍛えられてるな!!
ここで少年たちの会話によりあることが判明する。
どうやらクゥ以外の子らは宝探しをしに来たと教えられている様子。
宝か。金銀財宝に鉱脈。大儲けすれば城が建つ。
腹一杯うまいもんを食べ、こんなボロ着ともオサラバ。ノイエみたいなメイドを雇える。
てな会話がでるように、ノイエさんはやはり村でも人気なんですな。ふむ。
お前ら今の内に幸せな未来を想像しておけよ。
あの貧しい村で一生働いたって得られないもの。全てを手に入れる。そのための『力』を貰いに行くんだ。
『力』それは一体何なのか。
シイドによれば、禁じの森の奥には人間に『力』を与えるものがあるそうな。そこに向かっているとのこと。
全てを変える――自分を変えるもの。それが存在する場所に向かっているのだ。
お宝と幸せな未来のためにシイドに従う少年たち。
今頃村は大騒ぎだろうなとイタズラっぽく笑ったり、帰ったらオフクロにおしおきされちゃうと心配したり。
なかなかに少年っぽい様子を見せる子供たち。それにしても、幸せな未来か・・・
僕は・・・姉さんと静かに暮らせているだけで幸せだと思うけど。姉さんの幸せって何かな・・・
・・・とにかくもっとしっかりして姉さんを困らせないようにしなきゃ・・・
今日の探検だけでも、なんだか少し強くなれた気がするけど・・・
そんな風に思えるクゥ。だが、ノンビリとした探検はここまででした。
森の木々が開いた場所。そこで見えたのは様々な動物の死体の原。
新しいのも古いのもある。どうやら何かの動物のエサ場のようだ。
って熊まで食われているじゃないですか。どういう動物がいるってんだよ?
やっぱりまだいたな。奴め。
シイドはその動物に心当たりがある様子。クゥを側に引き寄せ、俺のそばを離れるなよと言う。何でクゥだけ?
と疑問を呈している間に、その動物がやってくる。
現れたのは巨大なイノシシ。四足歩行なのに高さが人間の倍以上あるという。で・・・でかすぎ。
そのイノシシの登場時に食われてしまったのは太目の少年、ジュリオ。
さらにマルクとミロンという少年たちも食べられてしまう。
それらを尻目にクゥを抱えて走り出すシイド。他の少年たちも慌てて追いかける。
お前、あの化物のこと知っていて俺たちを連れて来たのかよ!?
俺の親父も10年前奴に食われた。だからここを通り抜けるためには何人か必要だと思ったんだよ。
それはハッキリと少年たちを囮の生贄にしたと言っていますな。
これを聞いてそばかすの少年ハインツ激昂。そりゃ怒るわな。クゥも泣き出している。
が、シイドに言わせればクゥは囮ではない。そりゃ囮を抱えて逃げる意味はないものね。
奴らは俺とお前の囮だ、とのこと。うーむ、そう言われるのも微妙な気分だ。
ハインツは他の少年少女に向かって叫ぶ。こいつらと一緒にいたら殺されちまうぞ!!
「俺はシイドについて行く。死ぬ奴がマヌケだ」
「ねぇ。クゥばっかズルいよ。私も抱っこ!!シイドに抱っこしてほしい!!」
「うう・・・わ、うわああん。ママあ、ごめんよォ!嘘付いてごめんよ。大好きだよおお!!」
三者三様の返答。って返答してるの最初の前髪長い子だけじゃねーか。
最後の母親に謝っている子はわからんでもない。切ない。
しかし、真ん中の幼女は・・・人が食い殺されている状況で何を言っているのだろうか!?
いや、緊急事態だからこそ欲望を全開させているということなのかもしれない。これが本能か!?
駄目だコイツら・・・やってられっかバカ野郎!!
ハインツがそう言いたくなる気持ちはわからないでもない。主に幼女のせいで。
だが、もう戻る必要はない。なぜなら目的地に辿り着いたからだ。
そこにあったのは不気味なオブジェ。その名は『天使の胎』である。
天使の内臓らしい。
天から人間を見守っていた天使がその愚かさ惨さに泣き腐れ果て、地上にまき散り堕ちた腐肉。臓モツ・・・残骸――
人間たちはこれを天使の胎と呼び、語ることも近づくことも禁じた。
天使の胎は人間に――過ぎた力を与えてしまう。
そういいながら天使の胎に触れるシイド。
すると、組んでいた複数の手が開き、内蔵の入口から無数の触手が飛び出してくる。ガバ。
迫り来る触手。怯えるクゥ。だがシイドはクゥに怖くても逃げるなと言う。コイツがお前を変えてくれるんだ。
・・・みじめなボロキレに包まれて地べたで死ぬ奴と、天蓋付きのあたたかなベッドの上で安らかに死ぬ奴の違いってなんだ?
それは『力』だ。ある種の『権力』その『力』の差が地べたとベッドを分ける。俺はそう思う。だから力が欲しい。
ベッドで死にたいからじゃなく、ボロキレの中で死ぬのがイヤだからだ!!
俺は行くと決めている。来いクゥバンテ。
意志を既に固めているシイドに誘われるクゥ。
クゥがそんなシイドを信じたのは、シイドがいつも自信に満ちていてうらやましかったから。ちょっぴり憧れていたから・・・
でも、足を前に進めたのは・・・姉さんのために強くなりたい気持ちが、ほんの少しのちっぽけな勇気を生んだからだった。
姉さんのための――・・・一歩。
触手に捕まり胎の中へと収められる少年たち。
おちる・・・おちる・・・あたたかい・・・
胎児のように丸まったクゥ。そこに語りかける存在があった。
これは・・・天使?やたらと立派な胸をしている天使の登場だ!!
坊や・・・かわいい坊や・・・私のお腹に宿った坊や・・・私の坊やに生まれ変わるの・・・
かわいいかわいい私の坊や。私に名前を教えて頂戴・・・
『クゥ?』まあ。いい名前。
それではクゥ。『力』を与えましょう。あなたにふさわしい『力』――
なにかがお腹に流れ込んでくる。体が熱い。体中に巡る・・・
溶けて少しずつ僕が――変わってゆく。
この手は。この体は――この『剣』は。
さあ、クゥバンテ。あなたは今から私の坊や。私の『騎士』
目覚めるクゥ。だが、天使の言葉に反目を示す。
違う――僕はクゥバンテ。『姉さんの誇り』『自慢の弟』クゥバンテ。帰らなきゃ。姉さんの所へ帰らなきゃ。
強い想いで胎から出て行こうとするクゥ。
しかし天使は呼びかける。あなたはもう人間ではないのですと。そしてまだ早い!とも。
ああ・・・そんな・・・手が届かない・・・でもどうか忘れないでクゥ。
その力、その力は・・・!!
人間を殺し蹂躙するためのものです・・・どうか存分に皆殺すのですよ!!
存分に『力』を奮い・・・殺しなさい・・・元気でね・・・かわいい私の・・・クゥ・・・
切ない泣き顔をしながらさらりととんでもないことを口走る天使。
いやまあ、天使の胎の説明からしてそういう意識なんだなというのは分かってましたけどね。
にしてもそんな表情で言われても困る。困る困る。
さて、胎から飛び出たクゥ。
天使との会話についてはうまく思い出せない様子。
だが、さすがに胎に飲み込まれたことは覚えているようだ。
シイドを初め他の少年少女は未だに飲み込まれたままである。心配し、泣き出すクゥ。
だがそんな場合ではない。
例の巨大なイノシシが近くまでやってきていたのだ。
襲い来る巨大イノシシ。だが――
クゥバンテ。私はいつでもきっと見ています。さぁ――あなたの力を――見せて。
天使の声に合わせてか、クゥの背中から無数の触手のようなものが飛び出してくる。
そのうちのひとつは先が刃となっている。
地面につきたったそれは、大地を削りながら伸び、イノシシの顔面を切り裂く。
そして残った触手はイノシシの鼻や歯を掴み・・・力任せに二つに引き裂いてしまう!!
これがクゥの得た力。人を喰らう巨大なイノシシをもものともしない『力』・・・
シイド・・・僕は・・・僕は・・・いったい・・・何を得て・・・何に――変わったの?
私の坊や・・・私の――『騎士』
というわけで、始まりましたハーベストマーチ。
直訳すると収穫行進曲?何を収穫するのでしょうかね。
ともかく、1話目からえらいことになっています。
えらいことだよ。えろいことじゃないよ・・・あながち間違いでもないな。
特にこの号は表紙の予告絵からしてえろかった。
でも、この感じ。ああ、フクイ先生が帰ってきたんだなぁという感じになれてなんだか幸せだ。
今回は1話で様々なキャラが登場しました。
可愛い少年に勇ましい少年。
優しく巨乳の姉にツンデレお嬢様にどこかズレた感じの幼女。そして巨乳の天使。
ハインツや他のシイドに従った少年たちの存在も気になる。
果たして彼らはどんな『力』を身につけたのか――
にしても、シイドの行動は色々と気になりますね。何でクゥを特別に扱ったのか?
親を亡くした境遇が似ているからか?それとも別に理由があるからなのか?
天使の胎の知識はどこから得ていたのだろうか?亡くなった父親が研究していたのか?
前にも訪れたことがあるって感じだが、その時に天使がかわいい少年好きだと知ったのだろうか?
あれだけかわいい坊や連発されたら、そういうのが好きと思われても仕方がない。
であるならば、シイドがクゥを連れて行ったのは天使に丁度いい供物だからなのか!?
つじつまは合うような気はしないでもない。
でも単純に、クゥを特別な目で見ているという可能性も捨てきれない。困ったね!
この後、姉のノイエと共に旅立つことになるクゥ。
となればこの後、村で悲劇が待っているとしか思えない。
テレシアちゃんの安否が何よりも気がかりとなります。どんな役回りとなりますか・・・不安でありつつ期待したい。
第2話 帰来 〜「ただいま」の代わりに〜
(2012年 52号)
新連載第2話のセンターカラー。
禁じの森に踏み入った9人の少年少女。
ある者は巨大猪に食い殺され、ある者は天使の胎に飲み込まれた。
せっかくカラーもらったけど、も3分の1は死んでるんだよな・・・
子供たちを捜している村人たち。
やはり森の中にいるのではないかと考える。
だが普通、大人たちですら森の中のごく浅い部分にしか足を踏み入れない。ましてそこは・・・
『王定不可侵危険領域』――『禁じの森』
禁じの森に踏み入ることはなく、引き返す大人たち。
いなくなった子供の1人、ロバートの母親は息子を溺愛していました。
その愛情の深さは村人も知るところだった様子。気の毒にと心配されております。
その心配は的中。戻らない息子を思い、かなり参っている様子を見せるエンデル夫人ことヘザーさん。
でも、夫にシチューを投げつけるのはいかながものかと。冷めてるからまだよかったものの。
ロバートが・・・今朝・・・私に聞いたの。
涙を流しながら今朝のことを語るヘザー夫人。
ロバートは母に、お金持ちになったら何が欲しい?と尋ねている。
そして、母の頬にキスをして旅立つロバート。まさか禁じの森に踏み込もうとしているなんて夫人は知る由もなく・・・
もし・・・今、ロバートが私のためにまだ帰らないのだとしたら・・・
何も・・・いらない・・・だからロバート。帰ってきて・・・
号泣するヘザー夫人。これにはシチューぶつけられた夫も宥めるより他にありませんわなぁ。
立派なおっぱいと、見せびらかすような格好をしているのに、悲しい顔ばかりで勿体無い。
森の奥以外の場所をしらみつぶしに探す大人たち。しかし見つからない。
クゥの姉、ノイエさんも声が枯れるほどに叫んで探しているが見つからない。
テレシアお嬢様はそんなノイエさんのことが心配になってしまっています。
夜も遅くなった頃合に、村長は大人たちを一所に集める。何の話でございましょうか?
子供たちの捜索をいったん打ち切ろう。これ以上、この夜の闇で森へ入るのは危険すぎる。
何より・・・子供たちが『禁じの森』へ入ったというならもはや手だてがない。
苦渋の決断を下す村長。
村長としてみれば、子供たちはもちろん大事だが、それで探しに行った大人たちまで被害を広げるわけにはいけない。
二次遭難を危惧するのは責任ある立場としては当然のことでありますな。
だが、自身の子供が行方不明になっている親としては納得行くはずもない。
村長としても、自分の娘が行方不明になったとしたら同じことが言えたかどうか・・・
ともかく、これから領主様にこのことを伝えに行くと村長はいう。しかし――
ムダだね・・・子供たちが禁じの森へ入った?だったらとっくに生きちゃいないさ。領主はそれに、何もしない。
お前らも知ってるだろ。200人以上の兵隊が生きて戻れなかった禁じの森だ!
あの柵がなぜ、なんのためにあるのか・・・知ってるだろ!!
禁じの森と設定されている場所には木の柵が設けられている。
村の裏手の森の奥には古くからテリトリーを侵すあらゆる生き物を殺し喰らう化物が棲むとされていた。
今から30年程前・・・実際に村人や旅人が化物に襲われていると知った当時の領主。
小さな村の事件アドは見向きもされぬと思いつつ、助けを求める手紙を国王へ宛てて出した。
するとほんの数日の後、王は200人の兵を従えた調査隊を『森』へ派遣した!!
そして、強者揃いの近衛兵200人と調査役の役人・学者、さらに領主の私兵50人。総勢250人以上が森へ入る。
たかが地方の小村のために大軍を送り込んだ王の真意はわからない。
事態を深刻にとらえたのか、大軍でなければならぬ相手と知っていたのか。だが、ともかく・・・
化物を仕留めること叶わず、兵は全滅。
かろうじて生きて帰った学者の証言により、化物の存在と化物のテリトリーの向こう側に『天使の胎』の存在が明らかになった。
『天使の胎』それは決して触れてはならぬ、形を持った天罰。
そう、これは天罰。そこを示すため、王の命により設けられたのが――『王定不可侵領域』それが禁じの森。
禁じられた森の血生臭い話はもう30年も前の話である。
大人たちはともかく、子供たちは知らなくても不思議はない話であるか。
だが、その話を知っている大人はさすがに禁じの森に立ち入ることに恐怖を抱いている様子。そう、危険なのだ。
だから私だけで禁じの森へ探しに行くわ。みんなを見つけて連れ帰ってくる!!
クゥ・・・待っていて。お姉ちゃんが行くわよ・・・!!
決心した様子を見せるノイエさんだが、慌てて止めるテレシアちゃん。
しかし、決心を見せたのはノイエさんだけではない。
同じように家族が行方不明になっている者たちがいる。その親は大切な子供たちを諦めきれない。
大切な息子。命より大事な娘を探すために禁じの森に踏み込むことを決意する。
が、そのタイミングで森から子供が出てくるのが見えました。おぉ・・・
松明を持って村の入口に集う村人たち。
そこに裸で、虚ろな様子の目で彷徨い出てきたのは・・・クゥだ。
喜び飛び出し、クゥを抱き締めるノイエさん。よかったよかった。
クゥも姉と再会できたことで、元の表情に戻り、泣き出している。
姉弟の感動の再会。だが、片方は裸だったりする。盛大に顔をしかめるテレシアちゃんでありました。オエーッ!!
いやまあ、クゥの裸なら可愛いものだし、いいじゃないですか。ねぇ?
クゥが戻ってきたことに元気付けられた村人たち。
ヘザー夫人を先頭に、森の奥に向かって子供たちの名前を呼ぶ。
ここで前回までに出てきていない名前、オデットという名前が出てきました。
これは、あの幼女の名前でありますかな?オデットちゃんでありますか。
他の子供たちがどうなったか尋ねられたクゥ。躊躇いがちに答える。みんな化物に喰われた、と。
その表現は正しいが、それを言うなら自身も喰われていますからねぇ。
確実に助かっていない3人以外にもその表現を使うのはいかがなものかと。
おかげでその話を聞いたヘザー夫人、大いに取り乱す。
うわああああああ!イヤだァ―――!!
私が・・・ロバート迎え・・・ッ!行かなきゃダメ・・・ッ!!うああ離せ・・・離せぇ!やだぁやだァアッ!!
泣き叫ぶヘザー夫人。村人たちも静かに涙を流す。
そして、その悲しみと怒りの矛先はただ一人の生存者であるクゥへと向けられる。
・・・どうして、どうしてクゥだけが帰ってきたんだ。くそッたれ・・・
八つ当たりでしかないが、言わざるを得ない気持ちのハインツの父、エルスターさん。
しかし、それを聞かされたノイエさんはえらく衝撃を受けた表情になっている。あら怖い。
大切なひとり息子を失って戸惑うのはわかるが、哀しむ親もいない奴がのこのこ帰って来るんだ?とか言われても困る。
哀しむのは親だけに限った話ではないんですからね。
クゥだって私の大切な家族よ!!どこの誰と比べたって侮辱なんて許さない!!
見事な啖呵を切るノイエさんでありました。頼もしい。
しかし、諦めきれないエルスターさん。クゥに森の奥まで案内させようとする。
無理に引っぱってでも連れ出そうとするのでノイエさんが止める。が、そのノイエさんが突き飛ばされる。
と、その瞬間。
エルスターさんの体が空を飛び、小屋の側の藁に叩きつけられる。
俺は今クゥの奴にふっ飛ばされたのか?と呆然とした様子のエルスターさん。
そんなはずはないと誰もが思うだろうが、実のところはそうなんでしょうな・・・
クゥの額から血が滲み出している。
これは触手が飛び出て引っ込んだことを示しているのだろうか・・・?はてさて。
泣き叫び疲れ、呆然とした様子になっているヘザー夫人。
その夫人が愛する息子の声を聞き、フラフラと歩き出す。
聞こえる・・・聞こえるわ!!すぐそこよ。森の入口まで・・・来てる!!
ロバートここよ、ママはこっちよ!!
ロバートは生きてたのよ。クゥったら勘違いしてるんだわ。困った子ね。
まるで幻聴でも聞こえているかのようなヘザー夫人の様子に戸惑う夫。
だが、それは幻聴ではなかった様子。これが母の愛なのか、確かに森の奥には子供がいた。
クゥと同じように裸で、ロバートとハインツの2人がフラフラと彷徨い出てきました。
同じく裸だったので顔をしかめるテレシアちゃん。オエ〜!!
一晩で3人も男の子の裸を見せられることになるとは、大変ですな。色々と。
助かったのは僕だけじゃなかったんだ。良かった・・・
嬉しそうな様子のクゥであります。それは嬉しかろうて。
喜んでいるのはクゥだけではない。他の子供も無事かもしれないと村人たちは希望を持つ。
息子が帰ってきたエルスターさんやヘザー夫人は大喜び。
優しく息子のロバートを抱き締めるヘザー夫人でありました。
ママがいけなかったのね。家が貧しいからこんなことをしてしまったんでしょ?
あなたを失う不幸に比べたらどんなことも幸せよ。
そしてこうしてあなたと抱き合えることが、私の何よりの幸せなの・・・
背景にハートを飛ばしながら溺愛する息子を抱き締めるヘザー夫人。
お腹が空いたと言っている愛息に、好きなシチューも用意してあると告げる。が――
ガパッ。ブツッ。
母の豊かな胸にかぶりつくロバート。
いや、かぶりつくどころか、齧り取ってしまった。うわぁ。
突然変貌した息子に襲われるヘザー夫人。
やっぱりママが悪いの・・・?私が・・・悪い・・・?
とことん息子を愛していたんですねぇ。ヘザー夫人は。
突然のことで何が起きたかわからないという部分もあろうが、それでも自身を責めて息子を責めようとはしない。
立派な母親であったが、完全に化物へと変じつつあるロバートにとどめをさされる。ああ・・・
ハインツを連れて逃げ出そうとするエルスターさん。あれはロバートじゃない、化物だ!!
化物ォ・・・?無礼だぞ親父・・・口を慎みな。
俺たちは生まれ変わったんだよ・・・『騎士』に。な。
ロバートに続き、ハインツもまた化物に返事、親を殺す。
クゥは悟った。『力』を手に入れたのは僕だけではなかったと。
そう、シイドの約束した通り・・・僕らは『力』を手に入れた。全てを変える力を――
惨劇が始まりそうな予感であります。
クゥと違って途中で抜け出さなかった2人はすっかり心も化物になっている様子。
だが、どこまで染まっているのだろうか?完全に人間を滅ぼすつもりでいるということなのか?
愛していた様子の母親を喰らったロバートはどんな気持ちでいるのだろうか?
ハインツは普通に何の感慨もなく殺しているように見えるが・・・
それにしても、ついにフクイ先生の作品で生身の女性が殺されてしまいましたね。
過去話の回想とかにはあったが、現存のキャラで死亡するとは・・・しかも、胸の齧りとりとか。
今回は容赦のない攻めを見せてきそうな作品となりそうである。
こちらも覚悟を決めて読み進めねばなりませんな。
果たしてクゥとノイエさん、そしてテレシアお嬢様の運命は!?
この3人はしばらくは大丈夫なはず。たぶん。きっと。
第3話 勇気 〜ノイエの決意〜
(2012年 53号)
『騎士』それは守るべき者のため、猛き剣になり――勇む盾となる者。
私は私の子供に人を越えた力と持つべき能力を与え、地上に産み落とす。
冒頭からハートを大量に撒き散らしてハシャぐ天使さま。ハシャぎすぎっしょ!!
それでいて悲しい表情で泣いてみせたりと表情豊かだったりもする天使さま。
色々と面白厄介な方っぽいですなぁ。しかし、額のそれからも涙が零れているように見えるが、目なのかそれ?
どうか私の子供たち。私のために戦って私を守って・・・
人間が私を憎んで人間が群れを成して人間が私を、いつか私を殺しに来る。
私の子供――私の騎士たち。人間を殺して喰らい、また殺し。
そしていつか私たちの平穏なる世界を迎えましょう。人間の、滅びた世界。
相変わらず表情の割に殺伐としたことを語る天使さまでございます。怖いわぁ。
その願いに答えるべく、騎士たちは暴虐の限りをつくしだす。
小さな小さな村で今、殺戮の宴が開始されようとしていた。
大きな納屋らしきところに立て篭もるクゥたち。
村長は扉に閂をかける。固く閉ざされた扉であるが、化物相手にどこまで有効であることか・・・
納屋の片隅でノイエさんを中心にし、左右からクゥとテレシアちゃんが寄りすがっている姿が見える。
どうにか隠れてやりすごしているうちに脅威がさってくれないかと願っているみたいですね。
禁じの森の大イノシシが相手ならばその選択も間違いではなかったんでしょうが・・・
3人だけではなく、村の老人や女性などは納屋に入っている。
どうやら若い男など腕に自信があるものは化物を退治してやると武器を手に外で闘っている様子。
その意気は良いが、相手は素手で人間を引き裂く化物ですよ?判断が甘すぎましたな。
それを示すかのごとく、村の大人が振うマサカリなどはハインツの肉体を傷つけることができない。
逆に叩きつけた獲物がへし折れてしまうぐらいである。ううむ。
化物・・・そうだ・・・ハインツとロバートも僕と一緒に天使の胎に飲み込まれて。
そして・・・僕と同じだ・・・『騎士』に。人間じゃないモノに生まれ変わったんだ・・・!!
胎から出てきたときはその辺りの言葉は漠然とした様子だったクゥ。
しかし時間を経たためか、『騎士』という言葉も思い出せるようになってきている様子。
自身が人間じゃないモノに生まれ変わったということも・・・
・・・いや違う。僕は人間だ。あんなことはしない。あいつらとは違う!!
煩悶するクゥに、姉さんが必ず守ってあげるわと優しく微笑みかけるノイエさん。
ふむ。まあ、ノイエさんが無事ならばクゥも人間でいられるんじゃないですかねぇ。きっと。
さて、ハインツとロバートの手により歯向かって来た村人は皆殺しにされる。
そこでようやく納屋に立て篭もった村長は間違いに気付く。完全に追い詰められてしまったことに。
人間って・・・あわれだなァ。とっとと村の外へ逃げてりゃいいのに。
いざって時に考えもせずに安心できる場所へ閉じ込もっちまう。そこが・・・安全とは限らねぇのにな。アホ共が。
追い詰められて冷静さを失うと、そういった行動を取ることは往々にしてあると思われる。
映画などでも怪人に負われて高いところに逃げ出すという光景はよく見られる。
自分で逃げ場を失くしているみたいなものだが、やはり人間にはそういう習性もあったりするんでしょうな。
そして追い詰められてから騒ぎ立てるのもまた人間のサガである。
もうおしまいなのか!?と村長に対策案を尋ねる。
奴らの目的がハッキリせん・・・無差別に殺し、喰らっているなら。
皆でいっせいに飛び出してそれぞれに逃げるしか・・・
割かしノープラン。だが、それ以外に有効な手立てはないようにも思える。
確実な方法がないのなら、少しでも助かる方法を考える村長の判断としては大きく間違ってはいないですわな。
動物でも飼っている小屋であればそれらを囮にって手もあったかもしれんが・・・
悩む村人たち。しかし、その迷いを断ち切るがのごとく固く閉ざされた扉がノックされる。
ノックしているのはハインツ。どうやら村人と交渉するつもりの様子。
俺たちはよっぽど・・・腹が空いてるわけじゃない。今しがたずいぶん喰ったからな。
だからあと2人。俺とロバートでひとりずつ喰ったら・・・終いにしてやる。
テレシアとノイエを寄こして出せ。それで俺たちは満足してこの村を去る。
この村で喰ってうまそうなのは、もうあの2人しか残ってないしな・・・俺たちにいい思いをさせておけば他に手出しはしねぇよ・・・
え?クゥも美味しそうじゃございません?
いやまあ、食べがいはないかもしれないが、そういう意味ではテレシアちゃんも同じだしなぁ。
やはりあれなのか?クゥは同じ騎士という認識でいたりするのだろうか?
その辺りはわからないが、ともかく村人はこの提案にすがる気満々の様子。
ノイエさんに取り縋るクゥを殴り倒し、2人をささげようとする。
村長は娘のテレシアちゃんがささげられようとしていることもあり、村人を止めようとする。しかし、止まらない。
被害は最小にし、自分たちの安全は確実になる。充分正気の判断だとすら言ってきます。
村長、あんたは子供の捜索だって途中で打ち切ろうとしていたし、
ついさっきは自分も『誰か』を犠牲にして逃げのびる提案をしていたじゃないか!
自分の娘は例外とでも言うのか?今度はあんたが諦める番だよ!
これは厳しいお言葉ですな。
村長としては最大限被害を出さないよう頑張っていたと思えるのですが・・・
でも、指名されたのがテレシアちゃんじゃなければ村長が率先して言い出した可能性はありますな。
というわけで、じりじりと2人の側ににじりよる村人たち。
さあ・・・かわいそうだが・・・ノイエ・・・テレシア・・・俺たちみんなを助けるためだ・・・喰われてくれ。
むう。なにこれえろい。
特にテレシアちゃんがいい感じの表情になっていて困る。ってそれどころではない。
ノイエ・・・お前は優しくていい子だもんな。わかってくれるよな?
1話の冒頭で楽しく朝のご挨拶をしていたはずのおじさんからそのような風に言われる。これはショックが大きい。
わかってくれるよな?と言われても、そんな風に迫られたらわかりたくもなくなるってもんである。
が、ノイエさんには何に変えても守りたい存在はあったりします。
クゥ・・・そうだわ・・・クゥは助かる・・・ハインツの言葉を信じるならクゥは助かる。
そして・・・えぇ、外へ出たらテレシアを逃がすのよ。
そうよ。私大きいもの。私だけできっと充分・・・そう言ってお願いして・・・そうしよう。
クゥとテレシアは私が守る!!
覚悟を決めて、私が外へ出ますと宣言するノイエさん。むう、なんという悲壮な決意。
テレシアちゃんもしっかり守ろうと考えている辺りがスゴイ。
その覚悟を讃える村人たち。
「おお、そうか。わかってくれてありがとうよ」
「ありがとうありがとう。よく言った」
「すまないなァ。本当にすまないと思っているよ」
感心しているというより安堵している様子にしか聞こえないのがなぁ。
特に最後のセリフにその辺りが現れていて・・・なんというか、切ない気分に拍車がかかる。
それら村人とは違い、姉が行ってしまうのを当然のごとく嫌がるクゥ。行っちゃイヤだよ・・・
クゥ・・・ごめんね。
あなたを――ひとりにしたくないけど。あなたは、大切な私の誇り。私の自慢よ。
かけがえのない大好きなクゥバンテ。いつだってあなたのためにがんばれていた。今だって勇気が出たもの。
涙ながらの別れの言葉。とても切ない。
のだが、そんな扉越しの空気は感じられないハインツ。さっさとしろとせかし出す。
扉をぶっ壊すのは面倒だが、出来なくはねえんだぞ、とのこと。面倒なのか。
ハインツの脅しを受けて、村人たちはノイエさんに急ぐように詰め寄る。
早くしないと俺たちだってやばくなるんだよ、とのことだ。うーむ。
さらに、ノイエさんが了承すると、もはや感謝の念すらも吹き飛び、安堵の色を全面に出すようになる。
ああよかったこれで助かる。みんな助かるぞ。
みんなと来ましたよ。人質を捧げようかというこのタイミングで。
もう2人はみんなという分類には含まれないようになってしまっているんですな・・・
非常事態とはいえ、あまりに身勝手な物言い。これにはさすがにクゥも絶望と怒りに捕われてしまう。
や・・・やめろ!!バカ野郎共――!!
怒りのままに、身につけた力を解放するクゥ。
背中から飛び出した触手は村人を掴み、残りの触手で固く閉ざされたはずの扉を破壊する。驚きのハインツ。なんだァ!?
ここで天使さまの述懐が挟まれます。
そうなのクゥ・・・私のクゥバンテ。
私はあなたを騎士にしたけど、あなたは私の騎士にはならなかった。
それなら・・・あなたは持ってしまったその力の使い道を選択する権利がある。
従属せざる者の権利・・・!!
俺は、姉ちゃんのための騎士になる。姉ちゃんを傷つける奴は許さねえ・・・どいつもこいつもぶッ殺す。
覚醒したクゥ。その髪は黒く染まり、額には何かが浮き出している。
手足は触手同様に硬く硬質化されているように見える。
というか、一番の変化は口調が変わったという部分でありましょう。
『俺』に『姉ちゃん』に『ぶッ殺す』と来ました。おぉう。
さすがに気弱なクゥバンテのままでは戦いには不向きでしたでしょうしねぇ。
覚醒することで闘志が全面に押し出される姿となったと考えるとわかりやすいし、期待しやすい。
さて、その荒ぶるクゥはハインツ&ロバートをどう処するのだろうか?
それ以上に、ノイエさんを捧げようとした村人たちをどうするのか気になる。
まあ、暴れそうになってもノイエさんが止めてくれるだろうし、それほど問題にはならないかな。
しかし、天使さま。意外と寛容なんですな。
従属せざる者が他の誰かの騎士になることも権利として許容しているのか。
まあ、それはそれとして排除にかかるんですけどね、とか言い出すかもしれないですけども。
次回は本格的なバトルが始まりそうな気配。
激しい戦いをするにしては、腰布1枚のクゥは危なっかしい。主に紙面的な意味で。
その辺りをどう防ぎながら戦うのか、気になるところですな!
第4話 異形 〜3つの影〜
(2013年 1号)
それは姉さんのために得た『力』。
怒りがカラダを駆け巡り、クゥバンテ異形と化す!!
額にはジワ・・・と血が滲んだあと、目のような無機物が飛び出してくる。
背中には四本の触手が勢い良く飛び出し、そして下布の下からその4本とは違う長いものが飛び出してくる。
位置からしてこれは尻尾なのだろうか?
背中の四本の触手は硬質の輝きを帯び、先が丸くなっている。
尻尾のようなものは先がブレード状となっているのが特徴で、これが大イノシシの鼻を切り裂いたのですな。
手足も触手のように硬質化し、そして髪が真っ黒に染まる。
これが覚醒したクゥバンテの姿だ!!
人間の見た目を多分に残しているのでロバートたちよりは怖くない。
とはいえ、触手につかまれ高く持ち上げられている村人からしてみれば似たような存在に映るでしょうな。
何が起きたの・・・?クゥに何が・・・?私のクゥ・・・!!
愕然とした様子のノイエさん。まあ、その反応は当然でしょうな。
それとは逆に、ハインツはクゥが変化したことは不思議には思っていない。まあ当然ですな。
どうやら前回クゥのことに言及しなかったのは居ることに気付いていなかったからだったらしい。そんなオチか。
ハインツたちを睨みつけるクゥ。
それを見てずいぶん変わったなと考えるハインツ。
姿形はさておき、精神性という部分では誰よりも変わっているのかもしれませんわな。
いや、多分ロバートが一番変わってるか。だって人間らしい思考が完全に見えなくなってますもの!!
クゥの触手に捕われた村人が助けて助けてと騒ぎ立てる。
せっかく助かると思ったのに・・・あんまりだ!とも。
こんなことを言い出されるので、舌打ちしながら村人たちをハインツたちに向けて投げつけるクゥ。
ハインツたちは回避し、村人たちは痛そうに地面に叩きつけられました。まあ、生きてはいるようですが。
俺たちにぶつけようとしやがったな!どういうつもりだクゥ!!
どうやらハインツ。クゥも同じ騎士だから仲間なんだろうという意識があったらしい。
が、クゥの方は完全にやる気満々。
触手の一本を勢い良く横薙ぎに振う。
ハインツはどうにかこの一撃を両腕でガードするが、ロバートはまともに顔面にもらってしまう。
その結果頭部を破壊されたロバートは吹き飛んで死亡。え!?死んだの!?もう!?
結局ロバートは騎士になってから一言も喋りませんでしたね。
どのような気持ちでヘザーさんを食したりしたのか知りたいような知りたくないような。
そういう意味ではこの扱いでもよかったのかもしれない。
クゥがロバートを倒したことを知り、納屋にいた村人が喝采の声をあげる。
調子のいいヤツラだ。やっちまえじゃありませんよ。
勝手に頼ってんじゃねえ!てめえらなんぞ知るか!勝手に死ね!!
むしろこっちが終わったら覚悟しとけよ・・・
お姉ちゃんを見殺しにしようとしていた奴ら全員顔は覚えてる・・・ぶち殺してやるからな・・・
ザワザワと触手をざわつかせてそのように述べるクゥに怯える村人。
テレシアちゃんも、あれ本当にクゥなの?と呆然とした様子であります。まあ、変わりすぎですわな。性格的に。
なんてことを言うの。クゥバンテ!!
姉の一喝を受けて気弱な感じの表情になるクゥ。あ、やっぱりクゥだった。
などと言っている場合ではない。まだハインツが残っている。
ハインツはクゥを敵と認識し殴りかかってきました。まあ、クゥは完全にやる気だしそうなるわな。
「こっちが終わったら」?なめてんじゃねーぞ。クゥごときが。ロバートをふい討ちしやがって・・・
騎士でありながら俺たちの味方でなく、そのクセ人間をぶち殺す気でいやがる・・・お前は・・・なんなんだ?
ハインツのこの問いに対し、クゥはハッキリとした口調でこう答える。
産まれてから今までもずっと俺はクゥバンテだ。俺がクゥであることは変わらねぇ。騎士になろうが変わらねぇ。
どうかしてるくらい心の底から、この世界でただお姉ちゃんだけを愛しているクゥバンテだ!!
クゥ・・・!!
この告白に、ノイエさん。キュウン・・・となってしまっています。
うむ、どうやらどうかしてるのは弟だけではなく姉の方もそうだったみたいですね。
本当、どうしようもない姉弟だよ!!
クゥの方が積極的になると完全に歯止めが効かなくなりそうだな。危うい危うい。
そんな姉弟劇場はさておき。
村人はこの場面でどう動くかを相談し出す。
ハインツはノイエとテレシアを喰えれば満足だと言っていた。ならばハインツに加勢しようかとか考え出す。
クゥを倒すのに手を貸してもいいぞ!と。うーむ、とんでもないなぁこいつら。
なんだアレ。俺に恩でも売ろうってのか?バカじゃねーの・・・俺がテレシアとノイエを喰えば自分たちは安全だと信じてやがる。
やはりハインツは他の村人を見逃すつもりはなかったみたいですね。
騎士の目的は人間絶滅である。その思想に染まっているハインツが村人を見逃すはずも無い。
絶滅ついでにおちょくったのよ。いつもえらそうな大人たちをよォ。ケッサクだったろ、大人共の情けねぇ姿は。
ハインツは色々と屈折して育っていたようですな。
まあ、一般的な子供の考えといえなくはないですけども。子供が過剰な力を危険思想と共に持つとこうなるという例か。
てめえはそんな下らねえ遊びでお姉ちゃんを泣かしやがったのか!!
遊びでお姉ちゃんに死の覚悟をさせたのか!!
ハインツの発言はクゥの怒りに油を注いだようなものでしたな。
背中の4本の触手を一斉に高く掲げ上げるクゥ。
そしてその4本の触手の先端が割れ、それぞれに鋭い刃が飛び出してくる。抜剣!!
闘剣。『四ツ裂キ(コルテライズ)』。
鋭い刃は防御しようとしたハインツの腕を切捨て頭に、胴体に突き刺さる。
たった1話で2人の騎士を葬ってしまうとは・・・なんという力の差か!!
なるほど。それがクゥの『力』か。
この惨劇の光景を高所から見下ろす存在がいた。3名の男女。
中央に立つのは間違いなくシイドでありましょうな。
それぞれ騎士の力を手に入れたのは間違いないでしょうが、果たしてどのような動きを見せるのか?
ハインツ&ロバートのように単純な力を得ただけとは思えないし、自我はどうなっているのか?
天使の意志に従い人間絶滅を考えるようになっているのか?
それはそれとして好きな様に振る舞おうと考えているのか?
色々と先の展開が楽しみな状態であります。
とりあえず、他の3人とは違って途中で布を手に入れるだけの理性はあるみたいなのは分かった。
それはそれで安心したような残念なような気持ちではありますが・・・とにかく、続きが楽しみなんだぜい!!
第5話 再会 〜月の下で〜
(2013年 2+3号)
クゥの刃がハインツに突き刺さり、異形同士の戦いは決着。
と思いきやハインツ、まだ言いたいことがある様子。
クゥバンテ・レンドルフ・・・!!
大した『力』だ・・・だがな、ノイエのために騎士になっただと・・・?クゥバンテであることに変わりはないだと?
お前も、俺たちも、もう人間ではない・・・って所は同じなんだゼ・・・?
ここにはもう、てめぇの居場所はないんだよ!!
場所に、未練なんかない・・・!!
ハインツの言葉にそういい切るクゥ。まあそうなんでしょうね。
あえていうなら、ノイエさんの側が居場所だってことでしょうか。
そう告げて、突き刺した刃を操作するクゥ。
ハインツは胴や顔面を切り裂かれ、ようやく死亡するのでありました。ロバートに比べてしぶとかったな。
村を襲った異形たちは退治された。
しかし、村人は今度は新たに現れたクゥという異形に恐れを抱いている。クゥの奴、俺たちを本当に殺す気なのか・・・?
テレシア「ノイエ見て。クゥってば尻尾まで生やしてる・・・男の子って元々生えているんだっけ?」
ノイエ「・・・生えていないわ」
お嬢様は一体何を言っているのでしょうか。
生えているかいないか、その辺りはよく観察していただかないといけませんよね。
目隠しするふりでよく見ているテレシアちゃん可愛いよ。
そんなテレシアちゃんの反応はさておき。
戦いを終えたクゥ。触手の先の刃が砕けて粉になる。力が抜けていくのを感じる。
戦いが終わったからか・・・?俺の戦闘の意思。やる気が失せたから・・・だから・・・騎士の力が・・・崩れる・・・
戦闘形態が解除され、髪の色も元通りとなるクゥ。
力が抜けて前のめりに倒れそうになるところを、駆けつけたノイエさんが支えてくれます。
そんなノイエさんに、消え去る前の残った触手を動かし、ささやくクゥ。
姉さん・・・姉さん・・・まだ、こんなことになった僕を――まだ・・・抱きしめてくれるの・・・?
私・・・困惑しているし、何が起きているかもさっぱりだけどね・・・
今はクゥのことを、まず抱きしめたいって思ったわ・・・
クゥは村を救った。私はそう信じてそれを誇りに思う。
私だってあなたを愛しているわ。自慢の弟。私のクゥ・・・
抱き合う姉弟。その効果によってか戦闘の意思は失せ、クゥの触手は完全に消え去るのでありました。おお・・・
だが、そうなると村人たち。悪い考えをめぐらすようになる。
今の弱々しいクゥならやれそうだ。やられる前にやるんだとか考え出す。むう、予想通りの展開だ。
このままではクゥやノイエさんと村人たちとの対立が明らかになって・・・テテテテテレシア〜ッ。なんだこの怪音は?
〜〜ッ!いいかげんに・・・しろッ!!
テテテテテレシア〜は怪音である。テレシアお嬢様の感情が高ぶったとき、怪音が村に響き渡るのだ。
そして、その蹴りはクゥを襲おうとした村人の股間に叩き込まれる。ズドッ。
村人A「ひいい、ツマ先で!!」
村人B「うわーツマ先が!!」
村長「テレシア・・・なんというツマ先を!!」
なんだこのノリ。ツマ先連呼しすぎ!!そりゃ強烈に見えただろうけどさ、ツマ先。
崩れ落ちる村人にジリジリと近づくテレシアちゃん。なんだ、完全なトドメでもさすつもりなのか!?なんというツマ先!!
私のツマ先を受けたい男はそこに並びなさい!!
そうでない者はまだ生きている人やケガをしている人を助けるの!!恐怖心でなく心で考えて行動して!!
見事な啖呵でございますね。これが一応はまとめ役である村長の娘としてのカリスマか。
しかし、ツマ先による恐怖心を与えておいて恐怖心ではなく心で考えてとはどういうことか。
まあ、恐怖心より幼女のツマ先という好奇心や好意心の方が先立つとかそういう話なのかもしれませんが。
いや、そっちが先立つと村人を救うより、テレシアちゃんの前に並ぶ連中が多くなってしまう!!
まあ、読者はさておき、村人はまともな人が多いのでケガ人や他の場所に避難してるものを探そうと動き出す。読者はさておき。
そこで気づく。崖の上に人影があることを。
そう、そこに立っているものたちこそ、行方不明になった残りの3人の子供たち。その先頭に立つ男が口を開く。
クゥバンテ。お前の中に醜く凶々しい本性が潜んでいたとして、
それをお前自身が忌み恥じていたとしても、それはきっとお前自身を裏切らない・・・
いい『力』を身に付けたじゃないか。面白かったぜ。
そのようなことを口にするシイド。
異形の力を身に付けての初の対面でございます。クゥの表情は驚き。喜びの面もあったりするのかな・・・?
迎えに来たぞ・・・クゥ。俺と行こう――・・・
いきなりそう告げるシイド。これには困惑の色を見せるクゥ。ノイエさんや村人もざわつきだす。
ここでようやく他の2人の名前も確定。幼女の名前がオデットというのは前にも少し出ていた。
残りの男の名前がエクトルというのは今回が初登場。
ようやく天使の胎に取り込まれた6人全員の名前が判明したわけです。既に2人死んでるけど。
それはさておき、シイドはクゥへの語りを続ける。
――そのためにお前を天使の胎へ連れて行ったんだ。クゥなら必ず強力な騎士になると俺は確信していた。
村の連中には感謝してやるか。ずっとクゥに力の源を与えてくれていたんだからな。
シイドのいうクゥの力の源とは、劣等感。そして無力感。
クゥはこの村でバカにされ邪魔者にされて、その悔しさを誰にも言わずに心の中に溜め込んできた。
ドス黒い闇を心の奥に培っていたんだ・・・
俺はそれを知っていたから・・・いつかきっとクゥを天使の胎へ連れて行こうと思っていた。
天使の胎は人間の持つ『心』を『力』として授けるモノ。騎士のその姿は心の姿。
俺の予想通り、クゥの心の闇は強力な『力』になったようだ・・・
俺はだから、特別にお前が欲しかった。俺の野望にはきっとお前が必要になる。
そのように述べるシイド。
クゥはそんなシイドの言葉に話が違うじゃないかと叫ぶ。
僕もみんなも幸せになるためだって付いて行ったんだ・・・と。
クゥ・・・他の連中にはどうか知らんが、俺は1度もお前に嘘を言ってはいない。
それは本気でお前を仲間にしたかったからだぞ。
やめろっそんなこと言うな!!僕だってシイドとは友達になれるかもって思ってたんだぞ!!
涙を流しそう叫ぶクゥ。
激昂が、憤りが戦闘の意思となり、再びクゥの体を戦闘形態へと変化させる。
もう無理か?と問うシイドにクゥは答える。
これが答えだ!!お前がしたことは許せない!!
そうか残念だ・・・ならここで、お別れだ。
怪しく黒く染まった右腕を出し、凶悪な笑みを浮かべるシイド。
その力は一体いかなるものなのか・・・
騎士の姿は心の姿だという。醜く変じてしまうのはそういう風に心が寄ってしまっているからなんですかね?
では触手とか尻尾が生えるのはどういう心の現われなのだろうか。
無力感を振り払うために力が欲しいのはわかるが、なぜ触手・・・
姿はなるべく変わらずに力だけ欲しいと思ったらこうなったということなのだろうか。それなら仕方ないですな。
しかし、シイドはクゥがそういう気持ちを溜め込んでいたことを知っていたわけだ。
知っていて自分たちのグループに加えることもせずに放置することでその増大を図ったわけだ。
それじゃあ今更一緒に来いと言われたって拒絶されてしまいますわなぁ。
もっと要所要所で優しくして気を引いてあげておくべきでしたね。
てな風に考察をしてみるものの、今回は前半の印象が強すぎて後半のシイドの語りが弱くなってしまった感じで困る。
シイドが悪いわけではない。お嬢様のツマ先がいけないのだ。
テテテテテレシア〜とツマ先。このインパクトが先にこられてはもう仕方がない。
前回までの陰鬱な雰囲気がいきなり吹っ飛んでしまいましたからねぇ。恐るべし・・・恐るべしツマ先・・・
今後のテレシアちゃんの活躍が楽しみでありますなぁ。
第6話 霹靂 〜長い夜の終わりに〜
(2013年 4+5号)
参事を見下す元凶のシイドに怒りを爆発させるクゥ。
再度の戦闘形態への変化を果たし、触手を用いて崖の上へと登る。
そしてその勢いのままに背中から飛び出した四本の職種の先に剣を生やす。いきなりの『四ツ裂キ(コルテライズ)』だ!!
しかし、いきなりの必殺技がボスキャラに通じないのはお約束。
シイドの黒く変色した腕にクゥの刃は防がれてしまう。
天使が騎士の精錬に失敗するとは思わなかった・・・よく、騎士の使命を刷り込まれる前に胎から脱出できたな。
・・・だが、未熟な騎士の代償はでかいらしい。その姿に変身する度、お前は大量に出血し血を失っている。
変身する時は気をつけろ。自分の命を縮めるぞ。
確かに触手が飛び出すたびに背中から出血しておりますものね。
ひょっとしたら触手の生成にも血液が用いられているのかもしれない。
しかし、シイドよ。あの天使様ならば精錬に失敗したとしても不思議ではないとか思ったりしなかったかね?
意外とハシャギすぎてミスとかしまくりそうな雰囲気のある方でしたよ。イメージ的に。
というか、そういうシイドは使命の刷り込みはされているのでしょうか?
刃を止めたシイドの腕を見て、やはりシイドも『騎士』になったのだと確信するクゥ。
化物になりたかったのなら、てめえひとりでなってりゃよかったじゃねえか!!
そう叫び、再度の攻撃をしかける。が、これは側に控えていたエクトルとオデットの2人が止める。
もちろん2人とも騎士となっている。だから鋭いクゥの攻撃も片手の指先で止めてしまえたりするという。
ううーむ。油断していたとはいえ、触手の一薙ぎで死亡したロバートの立場が本当にないな。まあ、欲望が足りなかったんでしょう。
それはさておき、エクトルはクゥに語り掛ける。
クゥ。こんな力を貰っておいて、それでも臆病で弱かった元の自分がいいか?
今までのお前じゃきっとどうにもならなかった脅威を、今日は何度も自分自身のこの力で制してきたじゃないか。何が気に入らない?
確かにシイドの言う通り『力』を得ることはできた。
だが、シイドはそれ以外のことも知っていて黙っていた。
もしクゥが天使の言いなりになっていたら、ロバートやハインツと同じようになっていたかもしれない。
そう、自分の身内を傷つけ殺すような存在になっていたかもしれないのだ。
俺が、お姉ちゃんを傷付けていたかもしれないのに、そのことを黙っていたんだ!それが許せるか!!
当然のごとく、クゥにとってはノイエさんが何よりも大事な存在である。
『お姉ちゃん』『お姉ちゃん』・・・『ノイエ』『ノイエ』か。
・・・わかった。クゥ、お前が騎士の力を気に入らないことも、俺を許せんということもわかった・・・
だが俺にはこの『力』でするべきことがある。
俺はこの『力』で全てを破壊する。秩序を破壊する。権力者を皆殺しにする。
欲しいモノを奪い、喰いたいモノを喰らい、誰にも従わず誰にも屈さず許しを請わず、
生まれた時から人を見下すことしか知らない奴らに俺の足の裏を拝ませて踏み潰してやる。
どいつもこいつも地ベタに転がしてやる。
そのように語るシイド。少年時代の様子がプレイバックされています。
なるほど。これを見る限り、シイドも幼少期は可愛かったんですな。いや、そこがポイントではない。たぶん。
権力者に迫害されて両親を、少なくとも母親を失ったのだなというのがわかる。
そして特徴的な右頬の傷は父を失ったころについたものであるというのがわかる。
これ、どのようにしたらこんな大きな傷跡がつくんでしょうかねぇ。それはわからないが、現在の大きくなったシイドは宣言する。
そのための力は手に入った!!
『闘剣』『黒帝ノ鋒(バル・アルトラ)』
背中に突き出された巨大な4つの角。こめかみからも二本の角が伸びている。
背中の4本に限れば奇しくもクゥと同じ個所から飛び出しているように見える。これは偶然か、必然か。
騎士としての姿を見せて歩み寄るシイド。誰にも俺の邪魔はさせない、とのことだ。
俺にいちいちビクつくなと言ったのはお前だぞ!!
恐れを振り払い攻撃をしかけるクゥ。
だが、急接近してきたシイドの迫力に気圧される。
そして、その右拳が、クゥの左頬に強く強く叩き込まれた!!
だが、シイドの力はここからが本番である。背中の角に光が灯り、バチバチと音を立てる。
いちいちビクつくんじゃねえよ。
そしてシイドに雷が落ちた。落雷のエネルギーを破壊力としているのだろうか?
これは強烈な一撃である。クゥの意識が吹き飛び、一瞬にして戦闘形態が解除されるほどの一撃だ。
どうでもいいが、闘剣とか名乗っておきながら殴るのかよ。不意をつかれたわ!!
そういえばクゥ・・・お前を殴ったことは今まで1度もなかったっけ・・・
殴ったら壊れちまいそうに見えてな。
・・・だけど、今のは思い切りだったぜ。
決して忘れられぬよう、俺をお前に深く深く刻み込むため・・・
崖下に落下していくクゥを見守り、変身を解除するシイド。とどめをさすつもりはない様子。
騎士の力を持ったまま人間の世界で生きられるわけがない。
あいつはいずれこっち側へ来る・・・俺の元へな。
自信満々にそう述べるシイド。うーむ、本当にクゥにご執心なんでございますなぁ。
人間の世界にいられなかったとしても、シイドのところに身を寄せるとは限りますまいに。
あとオデットちゃん。シイドがクゥのこと構ってばかりで寂しいのかもしれないが、指しゃぶりすぎです。
俺たちは先へ行こう。力を震い――世界を壊す。
全て壊し全て奪う。皆殺しの旅を始めよう。長い旅を始めよう。
『収穫の進軍(ハーベストマーチ)』を開始しよう。
こ・・・ここでタイトルコールが入りました!!
そうか、これはシイドたちの視点による言葉だったんですね。
騎士の力を身につけ、世界の秩序を破壊しようと考えるシイドたち。まさしく収穫の進軍ということか。
収穫を奪う権力者たちに対しての意趣返しという面もあるのかもしれませんな。
シイドたちは去って行った。
一方、クゥは変身が解けた無防備な状態のまま崖から落下する。
が、落下点にノイエさんが走りこんでキャッチしたことで事なきを得ます。
あの高さから落ちてきた人間を抱き留めてよく無事だなノイエさん・・・やはりただの力持ちではないということか!!
その日は村にとってもクゥバンテとノイエにとっても大事件の1日でした。
ノイエは傷ついた弟をいつもよりずっと強く抱きしめて、そうして体温を分けてやり、
クゥバンテは姉の胸の中、声も上がらぬ体と意識で誰にも見えない涙を流した。
やがて村に朝日が射す頃。
目を覚ましたクゥバンテは色々なことを思い出し、今度は大声で泣いた。
確かにこの1日で何もかもが変わってしまったように思える。
だが、クゥの愛するノイエさんは変わっていない。
変わってしまったクゥが変わらずにいるノイエに抱きしめられ泣く。なんとも作品を象徴するような場面でありますなぁ。
というわけで、今回で丁度単行本1巻分の長さになると思われます。
騎士への変化と村での騒動をまとめ、タイトルコールまで入った。なかなかよい構成ではないでしょうか。
さて、次回からは放浪の旅が始まりそうな様子ですが、どのような旅立ちとなるのでしょうか?
一番の注目はテレシアちゃんがどうするかということだ。
生贄にされそうになったときは共に旅を、とも思ったが自身のカリスマというなのツマ先で治めてしまったからなぁ・・・
ついてきてほしいところではあるが、難しいかもしれない。
ならば独自に旅に出ていずれ合流するという方向も・・・なんとかしてついてきてほしいものでありますなぁ。
第7話 出発 〜それは闇ではなく〜
(2013年 6号)
シイドたちが村を去ってから3日後。
厄災が去ってひとまずの落ち着きを取り戻した村では徐々に復興が始まっていた。
その村を1人で歩くクゥ。ってなんだかやけに可愛い格好してるな。
どうやらクゥの格好は旅支度とわかるようなものらしい。ほう。
スカートを履いているように見えるが、この世界では普通の旅衣装だったりするのかね?
クゥは似合ってるからいいが。いや似合いすぎているのがいかんというかアカンというか。
遠巻きにクゥを見て話をする村人。さすがに恐れているみたいですな。そりゃしょうがない。
村長は『騎士と名乗る者に村が襲われた』とは領主に伝える気らしい。妥当と言えば妥当なところですかな。
クゥは花を持って歩いている。どこに持っていくのかと思えば、やってきたのは共同墓地のようなところ。
旅立つ前に両親に別れを告げに来た様子。いや、それだけではない。この花はみんなのために捧げようと思っている。
3日前、僕と森へ行ったジュリオたち・・・
僕が森から帰ってきて・・・その後殺されたロバートのお母さんたち・・・
それに僕が殺した、ロバートとハインツ・・・・・・みんな。
変身した直後は相当な興奮状態ではあったが、今のクゥはロバートたちを殺したことについても色々と思うところがあるようだ。
ノイエに諭されずに村人を殺していたらもっと悲しいことになっていたでしょうなぁ・・・
側にやってきた村長は、今度の件はシイドが発端であり仕組んだこと。お前が悪いわけではないんだぞと言ってくれる。
それ自体はそうかもしれないが、村人が死んだのは事実だし、自分が関わったのも事実である。だからクゥは涙を流す。
そんなクゥを優しい目で見つめる村長。というか、なんだかつぶらな瞳になっていて可愛く思えるのだが・・・そ、村長!?
お前は・・・優しい子だったんだな・・・
村長こそ、可愛い人だったんですね。
というのはさておき。多少は関わっていた村長ですらクゥのことはよくわかっていなかった。
村でのクゥの孤独感がわかろうというものですな。
さて、クゥと同様に旅支度を行っている人がいた。もちろん姉のノイエである。
逆に旅支度をしていないのはテレシアお嬢様。うーむ、テレシアちゃんは旅立たないのか・・・なんとも残念。
テレシアちゃんはノイエさんに問う。行くアテはあるのか?と。
その答えは、『騎士』について知ってるかもしれない人を探しに行くというもの。
10年ほど前に村を訪れた学者様よ。
どうもその学者様は禁じの森へ入って行かれてクゥたちと同じ場所へ行っていたらしいの・・・
その時、森の中を案内していたのがシイドのお父さんだったんですって。
ほほう。10年前ねぇ。
シイドはそこで天使の胎について知ったのか。父を失い、顔に傷を負ったのもその頃の話らしい。
学者様は無事に天使の胎に辿り着いたということなのか・・・?
村長が言うには、その学者は村から村へ渡り歩いているとのこと。
私たち、彼の足跡を追って会いに行ってみる。
そして『騎士』について知ってたなら教えてもらうわ。クゥを人間に戻す方法。
・・・え?戻れるもんなの?
読者が抱きそうな疑問を口にしてくれるテレシアちゃん。まあ、戻れるかどうかは分からないが、それも含めて聞こうという話だ。
ちなみに学者の話を聞いて会いたいと言い出したのはクゥの方である。
夜中におしっこで目が覚めると、怖いから一緒に来てって私を起こしに来るあのクゥがね、
『ひとりで行く』って言ったわ。村の外へ・・・知らない場所へ。
ほう。あのクゥが一人で旅に出ると言い出したのか。それはちょっと驚きでありますな。
やはりあの一日の出来事で精神的にも逞しくなっている感じはあるか。
それならなおさらノイエが一緒に行く理由がないというテレシアちゃん。
いやあ、理由はありありでしょう。姉として弟が心配――でもその理由は半分。
クゥの世話をしているっていうことが私の存在価値のような気がするから・・・ね。
クゥがいなくなったらそこで私もいなくなる。
それが怖くてクゥにどうしてもってお願いして、一緒に行くことになったのよ。
私がクゥに甘えてるのよ・・・ダメなお姉さん。
ふうむ。相互依存という奴ですかね。まあ、早くに両親を亡くした姉弟だし、そうなるのも不思議ではない。
依存とかそういうレベルの話じゃないんじゃない?という疑問がないわけではないが。
クゥに取りすがるノイエさんが可愛らしい。
・・・良い旅になさいノイエ・・・きっと沢山新しい価値も見つかるわ。
後ろからギュッと抱きしめてそう述べるテレシアお嬢様。顔赤いですよ。
最初は気丈に見送ろうとも思っていたようですが、ここからお嬢様がたまらなくなりだす。
そうだ。このナイフを持って行きなさい。旅は危ないわ。クゥはやっぱり頼りないからこのナイフがノイエを助けるわよ。
私が・・・こうやって(チュチュチュチュ)いっぱいお祈りのキスを・・・(チュチュチュチュ)してるからとても頼もしいわ。
ハイ、持って行って。
キスのしすぎで唾液がぬたりと音を立てているナイフを差し出すテレシアちゃん。
それを躊躇うことなく、笑顔で。たのもしいといって受け取るノイエさん。うーむ、これは凄い。これは一層たまらなくなる。
ノイエ!!もっと、もっとよ!
もっとお釣りが出ちゃうくらいに強く抱きしめてくれなくちゃ私、あなたの行く手を阻んじゃいそう!!
興奮しながら抱き付いてくるテレシアお嬢様でありました。
家の前まで来ていた村長がちょっと引くほどの嬌声が外にまで漏れておりますわ。きゃーの。
村長はクゥに旅費を渡している。
クゥとしては受け取るのは申し訳ないと思える。使い方もよくわかりませんし。
そうか、村だとお金を使うことはなかったんですな。
外の世界では何をするにも必要になるものだし、持って行った方がいいですよ。でないと旅先で路銀を稼ぐ羽目になる。
村長の私がお前たちを村の中で助けてやれなかった。
せめて外での助けをさせてくれ。このままでは私はかっこ悪すぎるだろ。
と言っても大した額ではないからかっこはつかんのだがな。街にでも行けばわかるがぜいたくはできないぞ。
いい村長でございますねぇ。ここでさらに、その株のあがるようなことをクゥに述べだす村長。
シイドはお前の心の中に闇を見てその闇を自覚させようとしたが、私にはしっかりとお前の心の光が見えているよ。
弔いの花や涙。ノイエに対する強い愛。それはお前の心の中の誇るべき光だ。
クゥ。常に光のある方へ顔を向けろよ。お前を本物の化物にさせなかった光。その光へ向かう行動をするんだ。
あらやだ、村長ってば素敵。
こんなこと言って・・・クゥが今後闇に落ちそうな時にこの言葉を思い出したらどうするんですか!
言葉と共に村長のご尊顔がオーバーラップしたりすることになるんですよ!他のヒロインとか差し置いて!!
まあ、それはそれで面白いからアリか。
頭を撫でられているクゥがまた可愛いですなぁ。
クゥと村長の声は家の中にもかすかに届いていた。
上着をはだけて汗だくになっていたテレシアお嬢様の動きもようやく止まる。たまらなくなりすぎですよお嬢様!!
それじゃ、そろそろ行かなきゃ。
ノイエさんのその言葉で姉弟の旅立ちが始まることとなる。
村のはずれまで見送りに来る村長とテレシアちゃん。
ノイエ、手紙を出せる時はぜひちょうだいね。クゥはおしっこくらいひとりでしなさい。
そこに触れますかテレシアちゃん。まあ、いいですけども。
村長は用が済んだら帰って来いよと言ってくれる。村もすぐに建て直すさ、と。
違うわよ。直すってのは元の状態に戻すってことでしょう。直したりするもんですか。良くするのよ!!
クゥも戻るんでなく、本当になりたかった自分になってくるといいわ。
そしたらノイエの弟としてふさわしい男と認めたげる。
今までは弟としても認められていなかったというのか!?
さすがはテレシアちゃん。ハードルが高い。弟としてではなく、男と認められるにはどこまで成長すればよいのだ・・・
レンドルフ姉弟の出発を遠巻きに見送る村人。
2人とも不憫だと涙する村人もいれば、化物に住まれちゃ迷惑だ、いなくなってせいせいするよと言い出す者もいる。
だが、その者は他の村人に窘められる。おや、この2人は変身したクゥに投げ捨てられた2人ではないですか。
痛い目に合わせられたこの2人が率先してクゥを庇うとは。
だからこれ以上、かっこ悪い奴になりたくないんだ。
ふむ。いいことを言ってらっしゃる。
まあ、あの時は異常な状況だったからねぇ。普段の倫理観が完全に破壊されていた状況である。
落ち着いた今ならばあの時のことを反省し、こういう態度を取ることもできるようになるという話だ。
ただ、同じことが起きた場合、またかっこ悪い奴になったりはしないか。それはなってみないとわからない話ですな・・・
まあ、もしそうなってもテレシアお嬢様のツマ先があればどうとでもなるさね。
悪態をついている男もあのツマ先が忘れられず、あわよくばもう一度もらおうとしているのであろう。わかってるねんで!!
ノイエ。クゥ。きっとまた会うんだからね。きっとだからね。
テレシアちゃんのその声に送られ、姉弟は村を出る。
幼い頃の自分たち3人の姿を思い出し、別れを盛大に哀しむテレシアちゃんでありました。うわあああん。
クゥ「・・・姉さん。テレシアを泣かしちゃったね」
ノイエ「そうね・・・だから本当にまた笑顔で会わなきゃね・・・」
クゥ「うん・・・姉さん。えっと・・・これからよろしくね」
ノイエ「クゥ・・・こちらこそ・・・どうぞよろしくお願いします」
頬を染めてそう語る2人。って姉弟の出発というより、新婚旅行に出る夫婦のような会話なんだが・・・
長い旅になるかもしれないけど、2人の行く先に希望があると信じて。
そのようなナレーションが出ていますが、2人の様子だけ見ていると新たな門出という感じにしか見えない。
先の見えない放浪の旅時のはずなのに、楽しい新婚旅行に行ってきますという体に見えてしまうのは一体何故!?
まあ、仲がいいのは良いことである。節度さえ守られていれば問題はない。守られるかな・・・
ともかく、当初から言われている姉弟の放浪ファンタジーが次回から始まります。
もっと酷い状態で村から出ることになるんじゃないかと危惧していたので、この流れはなんだかいいですなぁ。
帰る場所があっての放浪というのもまたいいものです。
まあ、村が今後も無事だという保証はないのですが。
領主経由で国王に『騎士』の話が伝われば、村がどうにかなる可能性もあったりするわけですからねぇ・・・
それならそれで、テレシアちゃんが旅立つ話につながりそうな気はするが・・・村長が死にそうで怖いなぁ。
なかなか悩ましい所だが、とりあえず今は2人の旅立ちを祝福することにしましょう。どんな展開が待っているのか。期待だ!!
第8話 夜天 〜2人は寄り添って〜
(2013年 7号)
3話のときと同様に、冒頭で天使様があらすじを語ってくれます。
『地図』それは人が住む地を示し、人の居場所を示し、人に行き先を示すもの。
人間たちが拵えた小賢しき知恵。小賢しき慢心。
世界があたかも我が物であるが如く名を付け、線を引かれたバチ当たり。許しがたい!!
文章だけ読んでいると、人間嫌いな天使らしく厳格なことを言っているように見える。
しかし、実際はふくれっ面で怒っているだけなのでいまいち怖さが足りない。困ったことだ。
それでも――人の世界を歩くには、地図がなくては不安というもの・・・
私が授けた『力』で人間を滅す存在『騎士』となったクゥバンテ・・・
今度は『力』を捨てて人間に戻る旅を始めたわ。(グスングスン悲しい・・・)
大丈夫かしらクゥバンテ。変な所へ行かなきゃいいけど・・・
クゥの旅立ちの様子を見守っている天使様。ほう。そのような力もあるんですな。
ともあれ・・・私はちゃあんと見守ってるわよ。
かわいい私の坊やクゥバンテ。『人間に戻るための旅』の大失敗をお祈りしつつ・・・ボン・ボヤージュ。
ボン・ボヤージュとは旅立つ者に対して述べる挨拶。よい旅を!という意味である
。
別にハートを大量に飛ばして言わなければいけない言葉というわけではない。
ほ、本当この天使様はハシャギまくりですなぁ・・・
というか、なんでクゥだけそんなに見守っているのでしょうか?
不完全な騎士だというのに。逆に完全に洗脳もできていたハインツたちを殺した存在だと言うのに・・・
これはやはり、出来の悪い子ほど可愛いという心理が働いているのだろうか。
シイド達はしっかり者っぽいから放っておいても大丈夫と思われているのかもしれない。
まあ、単にクゥが可愛いから贔屓しているだけなのかもしれないが・・・
さて、村を出て広い世界へと旅立つ2人。
まずは隣の村である『森の村』(ヴァルドン)まで歩いていくこととする。
移動には丸2日かかり、中間地点は森林に挟まれた道となっている。
『学者』はその村を通ったらしいので、足跡を追うためにはまずその森の村に向かわないといけないわけだ。
森林の道の中で野宿の準備を始めるノイエさん。
夜の森というのは不気味なものである。怖そうにするクゥ。だが、テレシアちゃんの激を思い出し、強がって見せる。いい感じだ。
でも実際に夜になるとやはり怖い。ノイエさんも怖がっております。
家では平気なフクロウの声も不気味に感じる。もし、あの正体がフクロウじゃなかったらと思うと余計怖いわね!!
そんな風に述べるノイエさんにクゥ。こんな怖い思いをさせる旅につきあわせてごめんねと謝る。
が、この旅にはノイエさんがお願いしてついてきたわけですし、謝ってもらう必要などはない。
怖いことは怖いが、こうしてクゥと一緒に新しい場所にいるというだけで楽しくなるノイエさん。もう怖くなくなってるみたいですな。
食料は旅用に保存の利く固いパンと干したイモに干した魚。
4日・・・節約して1週間もつかという所。ノイエさんは体格的に結構食べそうな気がするが、大丈夫なんですかねぇ。
火を焚き、テントを建てる。おや、これは立派なテントですな。
と思いきや、結構簡易的な作りでありました。寒さが厳しくないならまあこの建て方でも問題ないのかな。
実はクゥだけではなく、ノイエさんも旅に出るのは初めてだったりする。
村人の中でも外を知っている人間はそうはいない。大半は村の中でずっと過ごすこととなっているからだ。
そんな未知の世界への旅立ち。最初は不安と緊張でカチコチしていた2人。
だが、すぐに楽しい気分になった様子。
騎士のことやシイドのことを忘れたくなる程。
そんな風に楽しんでいい旅じゃないとはわかってるけど、でもとても楽しいんだ。知らない場所も姉さんと一緒なら・・・
ノイエ「お姉さんもクゥのことが大好きよ!!」
クゥ「そんな話してなかったよ!」
まあ、しているみたいなものですよね。ノイエさんは一足飛び過ぎる気がしないでもないけど。
だから正直に聞かせて欲しい。あの姿の黒いクゥは・・・あなた自身なの?
ノイエさんのその問いに、クゥは正直に答える。
あの姿は何かが取り憑いたとか、何かに操られているとかそういうものではない。
まぎれもなくクゥ自身。本当の自分が湧き上がった姿である。
騎士の力を使う時は自分の心を抑えられなくなって、やっつけたい相手に向かってしまう。
それに、言いたいことも包み隠さず言ってしまう。
だから・・・力を使ったあとに怖くなったよ。これが・・・本当の僕なんだ・・・って。
そう・・・そうなのね。わかったわ。つまり。
クゥは私を本当に好きでいてくれて、しかもいつもは『姉さん』と呼んでいる私のことを『お姉ちゃん』と呼びたいのね!!
そのことには触れないで欲しかったよ!!
どうやらノイエさんが一番聞きたかったのはその点だったらしい。正直だなこの姉はよう!!
まあ、長い旅になるのだろうし、陰気でいられるよりずっといいですわな。淫靡なことになるとアレですけど。
2人で1枚の毛布にくるまり、向かい合って眠る姉弟。
そんな姿を森の木の上から眺めている男がいた。なんだこのヘビの被り物は。
旅人か・・・?森の向こう側から来たようだな・・・
姉弟・・・美しい。美しいぜ。なんて素敵で仲睦まじい姉弟なんだ・・・
ここの道は・・・俺たちの村まで1本道・・・となれば、この姉弟は明日にでも必ず村へ訪れるな。
楽しみだなぁ・・・早く迎え入れてあげたいなあ・・・
どうやらこの先の村の住人らしい男。
側にいたフクロウを手でわしづかみにし、そのまま頭からかぶりつく。
まさしくヘビのようにグイグイと丸呑みにしてしまう男。おぉ不気味不気味。
旅の最初からなんだか厄介ごとに巻き込まれそうな気配がしてきましたな。
翌朝。
起きて着替えをすませたクゥとは違い、まだ眠いわと毛布に包まっているノイエさん。
おや、これでは村に居た時とあべこべじゃないですか。
まあ、ノイエさん的には眠いというより、もう少しクゥと一緒に寝ていたいという気持ちが強いのでしょうけども。
甘やかしてくれるクゥにハートマークを飛ばして嬉しそうにするノイエさん。
天使といいノイエさんといい、気持ちがよく背景に現れますなぁ。
さて、訪れる予定の村ではヘビ男の報告により旅人の歓迎の準備が進められようとしている。
『森の村』(ヴァルドン)から『蛇の村』(シュランガ)へと変わった俺たち式のやり方でな。
そう、高い所に設えられた玉座のような所に座る男が語る。
男の名はカイリ。包帯で顔と右腕を覆った不気味な男である。
昨日のヘビ男はインチ。蛇の村を冠する住人らしい生もの食いの男である。カイリは生もの食いは好きじゃないみたいですが。
そして、カイリにも身内がいる。妹のマイラさんだ。
ゴーグルのようなものをつけ、立派な胸と立派な腹筋をした女性である。
あたし楽しみだ!!ど、どんな子たちかな?ち、ちいさい子だといいな。楽しみだわーい。
水玉やら星やらをまき散らすマイラさん。これは、本当に楽しんでいる!間違いないぜ!!
というわけで、いきなり旅の最初からヤバそうな雰囲気の場所に足を踏み入れることとなりそうなクゥたち。
果たしてどのような歓待を受けることとなるのでしょうか。
意外と普通に手厚くもてなされるだけだったり!?美しい姉弟に悪いことなんてできないよね!!
まあ、カイリがどのような考えを持っているか、ですな。
村の発展を考えるなら、美しい姉弟には村に居て欲しいと考えるだろう。引き留めて住人にするために工作することも考えられる。
となれば、食事や音楽などで歓待ムードになるという展開は必定!!
下手すればお色気で籠絡という話にも繋がるかもしれません。楽しみだわーい。
ここまで言っておいて、ノイエさんの2度寝が長引いて本日中に村までたどり着けないとかいう話になったらどうしよう。
歓待ムードが一転して待ちぼうけさせられた恨みのムードへと変貌するかもしれない!!
まあ、どういう展開になるにせよ楽しみですなぁ。
第9話 往訪 〜壁の中の村〜
(2013年 8号)
姉弟の放浪ファンタジー。
人の身を取り戻す術を探すために天使の胎のことを知る学者の足跡を追う2人。
初めて見る村の外は未知の世界。その先には様々な困難が待ち受けていることが想像できる。
でも今の2人がやっているのはくすぐりっこです。
お互いがキャーッと悲鳴をあげるまでくすぐりを行い、ハァハァと息を荒げて座り込んでしまうという。
な、何をやっているのだこの子たちは・・・!?
長い道中だし息抜きも必要だよねってことかもしれないが、むしろ体力使ってるじゃないですか!!
まあ、精神的な息抜きは必要ということか。まだ村出てから2日も経ってないけど。
森の中のそれなりに整備された道を行く2人。
クゥはサンダルのようなものを履いている。禁じの森に入った時は裸足だったのに。
これも村長から支給されたのだろうか。気の利くお人である。
旅の途中で夕日が山の向こうに落ちていくのを見る2人。
その美しさに見惚れているかのようなクゥ。
夕日が美しいのか、それに照らされた姉の姿が美しいのか。ノイエさんとしては気になるところじゃありませんかね。
それはさておき、ようやく森を抜けた先の村『森の村』へとたどり着きました。
二度寝&くすぐりのおかげで遅くなったけど、なんとか夜になる前にたどり着けたようでよかった。
村は高い壁で覆われている。この防備の固さは村という感じがしませんな。
なんとなく閉鎖的な雰囲気だし、自分たちの村とは全然様子が違う。よその人間が入れてもらえるのだろうか?
そう心配する2人をよそに、門が開いていく。
開いた先には多数の村人たちが笑顔で待ち受けていた。その中から1人の少女が歩み出て来る。
ようこそ旅の人たち。どうぞ私たちの村へお入りください。
少女のその声を初めとし、後ろに控えていた子供たちが一斉にようこそ!ようこそ!と唱和しだす。
まるで来るのを知っていて待っていたみたいな歓迎に戸惑いを見せる2人。そりゃそうでしょうな。
でもとりあえず自己紹介はします。丁寧なことだ。
笑顔で2人の挨拶を受ける子供たち。しかし、大人たちはどうも様子が違う。
子供と女の旅人か・・・俺たちの味方にはなりそうにないな。
何やら気落ちした様子を見せる大人たち。反対に子供たちの方が嬉しそうな笑顔を浮かべている。
この対照っぷりはどうしたことか。さすがにクゥも変じゃないかと思えている様子。
そこに先ほどの歓迎をしてきた少女が声をかけてくる。そろそろ村中そろっての食事の時間なのでお2人もどうぞ、と。
この村はそろって食事をとるのか・・・?まあ、そういう慣習のところもなくはないか。
しかし、旅人である自分たちも混ぜてもらっていいのかしらと問うノイエさん。
当然です。『村を訪れた者は皆仲間であり家族である』というのが、私たちの長の教えですので。
ふむ。面白い話でありますな。
逆に考えると、村を訪れた者は皆家族になってもらうとかそういう考えといえなくもないですが。
家族にするってどういう意味での発言!?いや、そこは深く考えないことにしよう。考えてもいいけど。
荷物を預かりましょうという少女の言葉を受け、大人の1人がクゥに近づく。
そして荷物を受け取るときに、震えながらクゥに告げる。
今すぐ村から逃げるんだ。ここはもう『森の村』じゃない・・・
とにかく大勢に・・・誰でもいいからこの村の異変を伝えてくれ。頼む・・・助けを呼んでくれ。
そう述べたのは先ほどの少女の父親。ふむ、これは一体どういう意味であろうか。
というか、父親に声をかける少女の笑顔が凄く怖い。この怯えた父親の姿が村の異変を如実に語っておりますな・・・
門が閉ざされようとしている。
それを見、少女の父親の表情を見、この村は何かおかしいと確信するクゥ。ノイエさんを連れて出ようとする。
が、そこに飛来したのはゴーグルの女性。マイラさんである。
飛び込んだと同時、クゥを抱え上げる。やったー!!かわいいかわいい!!ちっちゃーい。
予想通りクゥはマイラさんに気に入られた様子。それはそうでしょうな。
マイラさんの登場と同じくして、村の長であるカイリも登場。
クゥバンテ君にノイエさん・・・歓迎しようようこそ我が村・・・『蛇の村』へ。
さぁ。それではすぐに――食事にしようか。
堅く閉ざされた『蛇の村』での食事。それは一体どのようなものとなるのか。
子供と大人の対比といい、この村には色々とありそうですなぁ。単純に恐怖で操っているだけではなさそうだが・・・
マイラさんが小さい子好きなので小さい子は優遇されているというのは分かるが・・・
そうなるとノイエさんはどういう扱いになるのだろうか。
年齢的にも微妙なところだが、どう見てもノイエさんは小さくはないからなぁ。色んな部位の意味で。
村の食事が楽しみであります。色んな意味で。
第10話 晩餐 〜命の糧〜
(2013年 9号)
さあ、それではすぐに――食事にしようか。
その言葉の通り、晩餐の用意はすぐに整えられる。
レンガ造りのしっかりとした建物に村中の人間が集められる。
パッと見ではあるが数十人はいそうな感じで、そこそこの大きさの村であるのが伺えますな。
主賓であるクゥとノイエさんは村の長であるカイリとその妹マイラと同じ席に横並びに座る。
その前に出されたのは1杯のシチュー。
立派な建物での食事ではあるが、割かし質素な感じでありますな。
まあ、村中で同じものを食べるとなったらこれが一番簡単だし仕方がないか。大鍋で煮込んで皆同じものを食べましょうって話だ。
我らが民、蛇の村の民。我が家族、我が同胞たち。
今日も等しく働き等しく生きた。なれば等しく命の糧をいただこう。
結束の同盃。召し上がれ。
長であるカイリの言葉を受けて食事にむしゃぶりつく大人たち。
子供たちは大人とは対照的に落ち着いた様子で朗らかにいただこうとしている。ふむ。
そして、なぜか配膳されていない大人が3人ほどいたりします。おやおや?
どうでもいいが、召し上がれと言っている当人のカイリはどうやって食べるつもりなのだろうか?包帯越しに食う術があるのか!?
村人の様子はさておき、クゥは警戒心が薄れないままでいる。
出された食事は普通の物に見える。しかしあのおじさんが言ったようにこの村の様子はおかしいように思える。
この食事は果たして食べていいものなのだろうか・・・
マイラさんはやたらと可愛い顔して食べているけど。モグモグ。
手をつけようとしないクゥのために、私が食べさせてやろうと組み付いてくるマイラさん。
やたらと激しい組み付き方でありますな。そりゃノイエさんも慌てて割って入ってきますわな。うん。
それはさておき、遠慮せずにどうぞと食事を促すカイリ。しかし――
いいえ。遠慮をしているのではなく、失礼ですけど口にしても良いか悪いか疑っているんです。
立ち上がり、ハッキリとそう述べるノイエさん。おっと、先週から打って変わって挑戦的になっていますな。
やはり目の前でクゥが抱きかかえられたことで疑いを持つようになったりしたんでしょうか?
いやまあ、村の長と名前が最近変わったばかりのところに強引に連れ込まれたら警戒するに決まってますけどもさ。
なぜここが蛇の村に変わったのか。それについて説明を開始するカイリ。
その途中、食事が配膳されていない村人が口を挟むがそれは完全に無視されてしまう。おやおや。
1か月程前に私たちが来るまで確かにここは『森の村』でした。ここに住むものは『森の村の民』だった。
――ノイエさん。国の始まりってどんなだったと思います?まずね、点だと思うんですよ。
始め、何もない地に『王』という点が立ち、その王の周囲にまた小さな点。『民』が集まる。
点と点が結ぶ輪をきっとそこで『国土』と呼ぶ。そこが王の土地、『王国』です。
やがて王は民を増やして点と点と点と点とがさらに結ばれ輪は広がる。何年も何十年も。
国土を拡大するため他の国を奪ったり、欲しい土地に原住民が居たのなら――滅ぼしたりしながらね。
そして何百年を経て、強大で強力な王国が出来るんです。
私は最初の点となるべくここへ来た。この地から私の国が始まるのです。
ふうむ。立国の志か。なかなかの野心家でありますな。
長々と語ってくれましたが、つまり『森の村』は我々が乗っ取ったっていう話なんですよね?
・・・ひと言で言ってしまうとその通り。
なるほど。ひと言では済ませたくなかったので遠まわしに解説を加えたわけか。野心家らしい話だ。
そんな相手にざっくりと話を纏めてしまうノイエさん。ハハハ。
ノイエさんはクゥをうながし村を去ろうとする。
もちろん食事に手をつけるつもりはない。今の話を聞いたらますます食べていいとは思えませんわな。
勝手なことは許さんぞ。喰え。俺がこの村の長だ・・・民は主である俺に逆らうな・・・
気が早いなカイリ。まだ2人はこの村の民になったわけじゃないですよ。
というか、早くも丁寧な言葉遣いが崩れてきてしまっているじゃないですか。
脅しをかけるカイリに対し、一歩も譲るつもりのないノイエさん。一触即発の空気が漂う。
そのタイミングで、2人に出されていた料理を奪い取ろうとするものたちがいた。
食事が配膳されていなかった男女の3人である。そんなにお腹を空かせていたの?
しかし、手にした食事はカイリの手、いや足で床にぶちまけられてしまう。
見苦しいマネはよせ・・・『メシが配られていない』だと?お前たちの分は無いと聞かなかったか。お前ら『メシ抜き』だ。
そのように告げるカイリ。
どうやら反逆を企んでいたらしいのでその罰という扱いになるらしい。
ああ、クゥたちが来た時に味方にはなってくれそうもないかなとか言ってた人たちでありますか。
でもそれを呟いたのは一人だけだったと思うのだが・・・まあ、別の所で企てていた可能性はありますけども。
ともかく、その罰により『メシ抜き』となりました。
子供のような罰であるが、この村に置いてはまさしく命にかかわる罰だったりします。
ドロッ。
音を立てて右目が溶け出す村人。
他の2人もジュワジュワと音を立てて体の中が熱く溶け出している様子。うわぁ。
誰か・・・助けて・・・ッ。メシを・・・解毒食をくれ!!
解毒食!!なんともそれは分かりやすいネーミングでありますな。状況が一発で理解できる。
なるほど。これはメシ抜きは死に直結しますわ。
大人たちが出された食事をむさぼっていたのは解毒食を食べないとという恐怖があったからなんですな。
ん?そうなると子供たちの冷静さは一体なんなんだろうか・・・?
死にたくないと抵抗する村人。3人のうちの1人、妙齢の女性は床にぶちまけられた食事に舌を這わせたりしている。
ふむ。生きるために必死とはいえ、この光景は・・・ふむ。ふむ。
というか、クゥとノイエさんの分の2つ余ってるはずなのだが、残り1つはどこにいったのだろうか?マイラさん食べちゃった?
となると、残るはカイリの盃だけである。
挑みかかって奪おうとするが、毒は既に取り返しのつかないところまで回り、体の中をどろどろにして絶命する。
他の村人はこんな死に方はいやだとのたうち回るが、それを見る子供たちの目は冷たいものである。
カイリ様を怒らせたのだから仕方がないわ。
うーむ。冷酷。
結局メシ抜きとされた3人は全員死亡するのでありました。あーあ。
これはやはりカイリの仕業なのでありましょうか?その疑問は直後の行動で肯定される。
ギプスのように膨らんだ右腕の包帯から棘のようなものをクゥとノイエさんに撃ちだすカイリ。
1日毎に解毒食を喰わねば溶けて死ぬ・・・お前らもその身に受けろ!!
『秘毒・時限蛇精』!!
目覚めた時にはすっかり毒が全身に回ってお前らも我が民だ・・・これで2度と逆らえない。
文字通り、毒牙の餌食となった2人。
騎士にもしっかり効くのか、クゥも気絶してしまっています。
うーむ。最初の村からいきなりハードな展開になってきましたなぁ。
というか、カイリは一体何者なのであろうか?
騎士なのか?それともそういった毒を有しているだけの人間なのか。はたまた騎士ともまた違う怪物なのか。
怪物といえば蛇の着ぐるみを纏った男、インチの姿が見えませんな。
1か月前に現れたカイリ&マイラとは一緒にいなかったみたいだが、あの人も何者なのだろうか・・・
色々と謎な部分が多い。次回でどこまで明らかにされるであろうか。
子供たちがやたらと冷酷なのも理由があると信じたいところであるが・・・
単に冷めた子が多い村なだけでした。ということはない・・・はずだ。きっと。
第11話 毒牙 〜離れ離れの目覚め〜
(2013年 10号)
カイリの毒針を受けて気絶したクゥ。
目を覚ませば一人ベッドの上。毒針を受けた手は治療が施されている。
傍らにいるのは姉ではなく、村に来た時に挨拶をしてくれた少女であった。
気絶する前のことを思い出して取り乱すクゥ。僕の姉さんはどこ!?
そんなクゥを落ち着ける少女。大人のひとはこことは別の所で治療を受けているんですよ。
ふむ、やはりノイエさんは大人枠に入ってますか。見た目からしてもしょうがないですな。
ここは私のお家だよ。クゥ。
そう言いながら入ってきたのはマイラさん。
いやマイラさんだけではない。ぞろぞろと村の少年少女が中に入ってくる。お、多いな・・・
そんなこ、怖い顔をしちゃあダメだよ。『姉さん』なんて忘れて、わ、私と仲良くしよう。
私の眼を見るんだ・・・そ・・・そうすれば私のことを大好きになって、よ・・・良い子になれるよ・・・『蛇魅』!!
ゴーグル越しに目が光る。蛇の魅了でございますか。受けるとヘビに睨まれたカエルみたいになっちゃうのかな?
しかし、ようするにそれは見なければ済む話だったりもする。
シーツを浴びせかけて逃れるクゥ。あれ。あれーッ?なんだか呑気な反応だなマイラさん。
まあ、部屋から逃げられたりはしないという余裕があるからなんでしょうが。
子供たちに命じてクゥを捕えさせるマイラさん。子供たちは笑顔でその命令に従う。
みんないい子だろ?私のお願いをな・・・なんでも聞くよ。
クゥを抑え込んだだけではなく、刃物を取り出し突き付けてクゥの動きを封じる少女たち。
ふーむ。笑顔で刃物を突き付ける少女たちに怯える美少年の姿か・・・ふーむ。
少女たちよりクゥの方が色っぽい感じになっているのはどういうことなのか。いやまあ、そういうことなのだろう。うん。
いや、勝手に納得している場合ではない。ピンチに陥っているクゥ。
マイラさんによると、この子供たちはマイラさんの命令に従って喜んで刺したりしてくるらしい。
沢山人殺しの術を覚えさせてスゴイ暗殺部隊にするんだ、とのこと。ほう少年少女暗殺部隊でありますか。華やかですなぁ。ハハハ。
さぁクゥ今度こそ・・・『蛇魅』!!
蛇の魅了を受けるクゥ。果たして騎士と化した身に通じるほどの魅了なのであろうか?
まあ、天使の誘いを断るほど、どうかしてるぐらいにお姉ちゃん大好きなクゥですし、簡単にはどうにかはならんでしょ。たぶん。
さて、大人ということでクゥとは別扱いになったノイエさん。
こちらは村の大人たちに治療を受けています。
しかし、治療をしてくれた村人に警戒心丸出しなノイエさん。側にクゥもいないし不安なんでしょうな。
クゥを探しに行こうとするノイエさんだが、村人は夜間は外出禁止だ、カイリに殺されるぞと警告を出す。
それは飛び出したノイエさんだけではない。見過ごした村人たちも殺される結果を意味する。
カイリとマイラが村へ来てから1か月になるが・・・もう何人も殺されている。
反逆の疑いだとか奴らの決めたルールを破ったとか・・・ただ機嫌を損ねたとかそんなことでも殺される。
生き残りたかったら奴らに逆らってはいけないんだ。そして、一日一食の解毒食を食べること・・・
そう・・・君たち姉弟もすでにあの毒に侵されている。
カイリの右腕には毒を放出させる何かが仕込まれている様子。
それは姉弟に放った毒針だけではない。村に来たカイリは村の井戸に毒を混入した。
飲み水に毒。そんなことをすれば簡単に村の人間が全て毒に侵されることとなる。うーむ、外道。
まあ、一人一人毒針を打ち込むとか面倒ですものね。国民が増えるたびに打ち込むのかと無駄に心配したぜ。
この毒が体の中から消えることはないとカイリは言っていた・・・
時限蛇精の毒は潜む毒・・・
1度侵されが最後、毎日同じ時間に解毒し、活性を抑えねば体内の毒があっという間に暴れ出して体は溶け崩れる。
解毒食はこの世でひとり、カイリにしか作れないという。
『蛇精』を受けた村人の命はカイリが完全に掌握したという話ですな。
ん?そうなると村人の夕食を作るのはカイリの役目ということですか?王様になろうとしているのにご苦労なことですな。
カイリは大人たちに『民』として『王』である俺にただ尽くせという。
お前たちはそれだけでいい。国を大きくするための戦の準備は、俺たちで行う。
なるほど。大人はただの『民』。子供たちは魅了して実戦部隊として活動という役割分担であるか。
どうでもいいが、このシーンの子供たちはなんで下着姿なんでしょうか?
下着姿だよねコレ?なんでそんな姿にしているんですかマイラさん?ゆうべはお楽しみでしたねとかそういう話なの?どうなの?
それはさておき。
自分たちが置かれた状況を理解したノイエさん。
外に助けを呼びに行った人も何人かいるが、毒の活性化が始まる前に辿り着ける村はないと聞かされる。
助けを呼ぶ前に溶けて崩れてしまうわけですな。
だから、毒を受ける前のクゥに助けを呼んでほしいと頼んだのだが・・・という話である。
情けないよ・・・カイリに命を握られマイラに娘を取られ。
私が勇気を出してできたのは、小さな男の子に頼むことだけだった・・・
誰か・・・カイリとマイラたちをやっつけてくれる、そんな強い・・・誰かが・・・来てくれたら・・・誰か。
村人のそんな言葉に、変身したクゥを思い浮かべるノイエさん。
確かに真っ先に浮かぶのはその姿でありましょうな。
しかし自分たちの旅はあの力を捨てるための旅である。あの力は使わせてはいけないと考えるノイエさんでありました。
うーむ気持ちはわかるが・・・これはどうしようもないんじゃないですかね?
使わずに切り抜けられるような事態とは思えない。
当のクゥも魅了されそうになっててピンチなわけですし。
クゥ・・・怖くないよ。兄ちゃんはいつも私に言ってたんだ。俺は必ず『王』になるって・・・民を守る王になるって。
民を守る王。それは一体どういう意味の言葉だったのだろうか?
少なくとも命を握る恐怖で縛るのは守る王とは言えない気がするのだが・・・
戦で負ければもっと死ぬし、最小の犠牲で強い国にするために仕方ないとかいう話なのだろうか?うーむ。
過去の回想の時点ですでに顔と右腕は包帯まみれになっているカイリ。
何かがあったのは確かなようですが、果たして何が起きたのか。そしてその毒はどこで手に入れたものなのか。
ついでに回想の時点でいるらしきインチさんは何者なのか。
兄妹に取り憑いた蛇の妖精みたいな存在だったりして。村人は全然インチさんについて言及しないし、謎な人である。
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