ルーキーズ 

1997年1月24日発売(PC-98・PC/AT両対応)
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 私がPCをまともに使い始めたのは1997年春(消費税アップの直前)、Windows95プリインストール機が一号機(かつ現役)ですから、DOSなんてものはまったくわかりません。プレイしたくなったDOSベースののゲームって、PC-98やTOWNSのものが多かったため、いまだかつてプレイしたことがなかったDOSゲーム初体験でしたが、この『ルーキーズ』は、インストーラー「だけ」はWindowsに対応していた(笑)上、「Windows上での動作保証」がパッケージに明記されています。こんなこともあって、トラブルもなく、スムーズにプレイできました。

 いろいろな意味で「古さ」を感じさせるゲームではありますが、このまま過去帳入りとさせるには惜しいだけのものをもっていると思いますので、この場で感想をアップさせていただきたいと思います。

シナリオ

 主人公・草壁みちひこ(下の名前のみ変更可能)は、全然仕事がない私立探偵。長年の付き合いである恋人・里見は、すでに30歳にもなる彼に対し、展望のない現状から探偵業をやめるよう進言するが、降って湧いたように依頼が。それは、女子校を舞台とした、麻薬疑惑。主人公は、その女子校に用務員として就任し、捜査に乗り出す。彼にいろいろとちょっかいを出してくる女の子たち。彼は、事件をどう解決していくのか。

 

 謎解きを中心にストーリーが展開されるのかと思いきや、そういった側面よりも、主人公の行動や心理描写の方が克明に描かれています。主人公の視点で見た私小説、とでもいえばいいでしょうか。パッケージ裏に書かれた「大捜査劇」というコピーは、ちょっと広げすぎですね。少なくとも、探偵小説的な面白さは期待しない方がよろしいでしょう。

 シナリオは基本的に一本道で、ゲームオーバー以外のエンディングは一つしかありません。シナリオの展開は非常にテンポがよく、ダレを感じさせることはほとんどありませんでした。主人公の視点や心情、姿勢や行動に対して嫌悪感をもたれる方も決して少なくはないと思いますが、そうでなければ、ぐいぐいと引き込まれていく力を備えています。イベントとシナリオとの連関もよく、浮いたシーンが非常に少なかったのもいいですね。

 逆に、もうちょっと遊びが欲しかったぐらいでしょう。主人公以外のキャラクター(男女を問わず)が個性的かつ魅力的であるだけに、もっと見せ場があれば……と思いましたが、シナリオ全体のバランスを考え、ばっさりと切ったのかもしれせん。

 

 シナリオを忠実にトレースしていくと、主人公の心理変化や状況パターンにはかなりの無理を感じるのも確かなのですが、人間誰しも、過去の経験において"挫折"を味わっていると思います(味わっていない稀な方もいらっしゃる……かなあ?)。そして、その"挫折"というものについて、悩み、落ち込むというのは、私自身を振り返ってみても、決して他人事ではありません。

 "挫折"感。これのもととなる「失敗」は、決して「恥ずかしい」ことではありません。でも、「失敗」を「恥じる」神経は、やはり重要なんですよね。これこそが、"挫折"をバネとする、ということなんですから。

 いくつの歳になっても、壁にぶつかり、そこで自己嫌悪に陥るといったことを繰り返す。こういう「人間」を見て、弱い奴、そう思われる方もいらっしゃるでしょう。

 でも、私が見た主人公は、決して「弱い」の一言だけで済ませられる存在になってはいないと思います。そこにあるのは、「弱さ」を直視する強さ。あるいは、その強さを与えてくれる周囲の力強いフォロー。こういったものではないでしょうか。それを、単に「若い」の一言で片づけてしまっていいものとは、私には思えません。

 

 キャラクターのバランスを考えた場合、悪役の「位置づけ」にかなり無理がある、と感じたのは確かです。主人公にとって「乗り越えがたい壁」ともいうべき「ライバル」が、その「性格の悪さ」を露呈するかのごとき行動をしているわけですが、これの説得力がないのは問題。努力などでは克服不可能な境遇の運命的落差を呈示するのであれば、むしろエリートとしての立場を確とした形で描いておく方が良かったと感じます。

ゲームデザイン

 シナリオは一本道ですので、途中までは、「選択失敗→ゲームオーバーor回収可能CGの分岐」だけだろう、と思っておりましたし、実際、大半の箇所ではそうだったのですが、実は、非常にいやらしいスタイルだったのです。

 それは、「致命的な選択失敗」をやると、しばらくの間は選択の失敗にまったく気付かないままプレイが続き、ラスト付近で、唐突にゲームオーバーとなること。

 早送りがさっさとできるため、リプレイはさほど苦にはなりませんでしたが、それにしても、ほとんどすべての選択肢をチェックし直す必要があり、大変に面倒でした。

 選択肢をチェックするだけで、分岐そのものは大したことないので、シナリオの理解には支障ありませんでしたが、不親切ですね。難易度、という表現を使うのであれば、低いと答えるしかないのですが、正解を見つけるのに要する手間は結構なものがあります。これは、非常に大きなマイナス要因。これだけでプレイ意欲を削ぎかねません。

不具合・修正プログラム

 AT互換機上のDOS(Windows95下)にてプレイしましたが、特に不具合などは発生していません。

操作性など

 ゲームのインストールは、Windows上で可能です。インストール後、MS-DOSモードで再起動し、コマンドプロンプトから入力すれば起動できます。

 基本的に、キーボードだけで進められますし、「Ctrl」キーを押せば思い切りスキップできますので、サクサクと気楽にプレイできました。また、メッセージ表示速度は3段階あり、任意に変更可能です。

 なお、マウスの使用には、「マイクロソフト使用のMOUSE.COMが必要」とありますが、この「MOUSE.COM」の正体がわからず、Windowsをインストールしてあるハードディスク、あるいはWindows95(OSR2.1)のCD-ROMの中を検索してみたのですが、やはり見当たりませんでした。マウスがなくても全く困らないのですが、ちょっと不気味です。ひょっとして、IntelliMouseを使っているのが原因かな? なお、Windows95上で、「MS-DOSプロンプト」から起動させると、マウスが操作可能ですが、「MS-DOSプロンプト」上からのプレイは動作保証外だそうです。メモリの消費量もだいぶ違うと思いますから、やはりWindowsは終了させる方が良いでしょう。

 セーブ&ロードは、任意の場所で4個所まで可能です。シナリオは一本道なので、この程度の数で十分でしょう。

 CGモード・BGMモードあり。CGモードでは、各キャラクターごとのCGが出ます。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されます。というより、DOSでもCD-DAの再生って可能なんですね、初めて知りました(無知……)。

 まずまず、バランスの取れた曲が並んでいますね。血湧き肉踊る、とまではいいませんが、もう少し、「燃え上がる」ようなアレンジが欲しかった気はします。個人的には「nerve」が結構好みです。

グラフィック

 たくま朋正氏の原画。アニメ的なグラフィックですね。

 背景画のショボさは、DOSゲームの限界なのでしょうか? どうにもドットの粗さが目につきます。

 あと、キャラについても、特に理沙など、姿勢によって同一人物とは思えないぐらい変わってしまうのは、ちょっと興ざめ。表情の変化を持たせるのは楽しい、というのは確かなのですが、狙いすぎでしょう。

 一枚絵CGは、なかなかのものですね。Hシーンのグラフィックなど、なかなかのものがありますが、「実用」的な目的のゲームではないと思われるだけに、ここばかりに気合いを入れられてもねぇ(^^;)

お気に入り

 内田紗希嬢でしょう。高校生に似合う形容詞ではないはずですが、豪放磊落という表現が適切に感じます。

 この他、望月教諭、幡村警部補の両名も、実にいい味を出しています。主人公という半人前の存在に対して光を当てる役割を果たしている渋さがいいですね。

総評

 女子校に潜伏、グフフ、という、はなはだヨコシマな動機で手にしたゲームでした(DOSゲームってどんなのだろ、という好奇心もありました)が、こういった形でインスパイアされるとは思いも寄りませんでした。

 もちろん、こういったシナリオに唸ってしまうこと自体、精神年齢の低さ、自分の中に潜む甘えの大きさを露呈してしまうことを認めているようなものですが、今さらこの場で嘘を吐いても仕方がないでしょう。

 とにかく、意外や意外、大当たり、という印象です。古くさいという印象は拭えませんが、今から買っても損はしない出来だと思います。ただ、「お勧め」とは、口が裂けても言えないタイプのゲームでもありますね。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
1999年5月16日
(8月19日、加筆・修正)
(11月16日、加筆・修正)
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