きゃんきゃんバニーリミテッド5 1/2 カクテル・ソフト/F&C

1997年1月31日発売(Windows3.1/95版)
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 カクテル・ソフトのゲーム、『きゃんきゃんバニープルミエール2』をプレイすると、ちょっと小生意気な見習い女神、サワディが登場します。そのサワディが、本当の「女神見習い」として、主人公に張りつくというゲームがあるというので、とりあえずプレイしてみました。安かったし(^^;)

 天衣無縫という言葉がそのままあてはまるような彼女の行動パターンは、Xゲームという世界に毒されている人間には、なかなかに新鮮な涼風を吹き込んでくれました。

 なお、私がプレイしたのはWindows版ですが、DOS版では、「カクテルソフトSOUND BOX with きゃんきゃんバニーリミテッド5 1/2」というパッケージだそうな。タイトルから見るに、音楽CDの「おまけ」ということですな(^^;)

シナリオ

 主人公・よしのり(名前変更可能)は、パッとしない大学生。そんなある日、天井を突き破り空から落っこちてきた、妙なガキ。彼女は良縁を取り持つ女神見習いを称する。そんな彼女を「サワディ」(←彼女が示した写真の女神「スワティ」を、主人公が呼び間違えた)と呼んだことから、主人公は「信者第1号」として、サワディにつきまとわ…もとい、手助けを受けることになる。サワディのお節介…否、サポートによって、「彼女探し」にいそしむ主人公。果たしてサワディの「助け」は実を結ぶのだろうか?

 

 基本的には、ひたすらナンパしまくるものの、結局は誰ともうまくいかずに振られ続けることになる、というシナリオで、主人公とサワディとの少しずれた話を楽しむ、といったものです。何せ、サワディ(主人公以外の人間には見えない)は主人公にべったりくっついてきますので、「ナンパを楽しむ」という感じはしません(^^;) どちらかというと、ナンパしたり街中を歩いたりするときに入るサワディとの言葉のやり取りの方が、ずっと楽しいですね。

 

 ゲームをクリアした後で振り返ってみると、ナンパの対象となった女の子はほとんど印象に残っていません。サワディの存在感が大きいということもさることながら、このゲームにおいては、主人公は「女の子と幸せになれない」ことを宿命づけられているからのように見えます。

 サワディとともに、街中で女の子を捜してはナンパするものの、さんざんサワディに振り回されたあげく、結局は悲惨な結果になってばかりという主人公には、まったく同情を禁じ得ません。ナンパもののへろへろ主人公君に対して、このように同情したくなるのも珍しいですが、ここまでいじめられる可哀相な主人公というのは、珍しいのではないでしょうか。もっとも、主人公がなんらかの形でハッピーになってしまうと、今度はサワディの意味が薄くなってしまうのですが。結局、サワディ以外のイベントを印象に残さないような形で作られているシナリオ、ともいえましょう。何せ、途中で出てくるHシーンのたびに、「ああうざってぇ早く先に進みたい」という状態でしたから。Hの対象となる女性(だけではないけど…)は何人か出てきますが、はっきり言ってどうでもよかったです(^^;)

 

 サワディの視点で見ると、かなり自分の好奇心のままに動いているとはいえ、それなりに面白い世界が見えてきます。そしてまた、このゲームでのサワディは、「人間に対する女神」というよりはむしろ、「子どもとしてのサワディ」という面で、なお輝きを増しているような気もします。子どもにのみ許された特権といえる、純粋さ、正直さ、誠実さ、こういったものはもちろんですが、「自分が人のために役立つことの実感と、それによる快感」を、思う存分味わっている、サワディの「子どもらしさ」が、非常にいきいきと伝わってきました。現実の「子ども」に対し、こういう感覚を抱くことはそう多くないだけに、サワディのような存在が、「大人にとっても理想化された子ども」とならないことを祈りたいものです。

 もちろん、ここで「子ども」というカテゴリーを設けて彼女をそういう形で説明すれば、ほかならぬサワディ自身からの苦情が来そうですが(^^;)、その行動パターンの結果として残った様々な失敗を、今度は成長するための足掛かりにしていく過程を見ると、やはり「子ども」ですね。

 

 「女神と人間との関係」についても、サワディは、そのエンディングで、自分なりに必死に悩み、考え、その末に、自分の姿勢なり考えなりを、自分が尊敬してやまないスワティに対してストレートにぶつけています。その真っ正直な言動は、見ていて心を打たれるものがありました。「結ばれぬ運命」というものを、安易に衝動的な行動から既成事実を作り、それだけで打破可能、として扱うパターンが多いゲームシナリオの中で、このエンディングはなかなかのものだったと感じます。

 個人的には、名作と評されることの多い『きゃんきゃんバニー・エクストラ』でのスワティのエンディングよりも、『リミテッド』のエンディングの方が印象的でした。

 

 なお、このゲームの終了後、「To be continued CanCanBunny Premier」と出ます。時間的に、『プルミエール』の前、という設定なのでしょう。

ゲームデザイン

 コマンド総当たり式、ひたすら一本道のアドベンチャーゲームです。ゲームオーバーの存在は確認していません。エンディングもただ1つだけなので、まず迷うことなどないでしょう。

不具合・修正プログラム

 Windows95(OSR2.1)環境下でプレイすると、Windowsを道連れにハングアップしたことが3回ありました(T_T) これ、サワディが呪文を唱えたシーンだったので、彼女の手腕によってうまくいかない場合もあるものかとヾ(^^; F&CのWebサイトにアップされているADMの最新バージョンを当てておきましょう。

操作性など

 対応OSはWindows3.1/95ですが、Windows98でも動作します。WindowsXPでは動作しません。

 インストールの際には、ディレクトリを任意選択できるものの、フォルダが強制的に作られ、そこにファイルがコピーされる仕組みとなっています。必要HD容量は、わずか6MBと、昨今の肥大化傾向にあるゲームに見習わせたいスリムさです。

 入力デバイスとしては、マウス、キーボードの双方が使用可能。移動画面なども、すべて選択肢を選ぶというスタイルで行われるので、すべてキーボード操作で済ませることも可能です。

 セーブ&ロードは、駅前での移動画面などの指定個所で可能で、ロードも同様です。セーブ可能なのは8個所ですが、全部使い切ることはまずないでしょう。セーブ時の場所や時刻も表示されないのは残念。

 メッセージ速度調整やスキップ機能はありません。コマンド選択が多いこともあって、ちょっとプレイするのにかったるさを感じるのは確か。

 一度クリアすると、CGモード・BGMモードに入れます。BGMモードで出てくる曲名なんですが、ほかのゲームで使われた曲を使い回しているみたいですね(^^;)

サウンド

 BGMは、MIDIで演奏されます。CD-ROMなのですが、「音声なし」で「MIDI」って……(^^;) 容量的には余りまくっているのですから、CD-DAにしてほしかったところですが。DOSからの移植とはいえ、例えば『バーチャコール2』『Piaキャロットへようこそ!』などは、CD-DAでBGMを演奏していますし。

 悪い曲ではないのですが、どうもパッとしない感じは残りますね。アレンジ不足という印象が強くあります。

グラフィック

 キャラクター原画は、豊島ちはやさんの原画。どうもヒロインの顔立ちが強ばっている感じがありますが、サワディが可愛いので万事問題なしヾ(^^; ちなみに、サワディのHシーンはありませんが、脱ぎます(核爆)

 また、ところどころで画面が真っ白になったりするエフェクトが用いられています。

お気に入り

 サワディとしかいいようがないでしょう(^^;) ほかのキャラクターは、ほとんど名前を覚えていませんし(^^;;;)

関連リンク先

 私のサイトからのリンク先では、ほとんど扱われていません。地味ですし、致し方のないところでしょうか。

総評

 サワディと楽しいひとときを過ごしたい、そう思えれば、それだけで非常に楽しいゲームであると思います。ゲームのスタイルは非常に古めかしいものですし、特にHシーンのうざったいことといったらなかったのですが、それでも、「ドジでお茶目」というキャラクターが、単純に「憎めない」という以上の印象を与えてくれる一例として、良いゲームであると思っています。

 サワディは、「子ども」と「非−人間」という、2つの要素を兼ね備え、その双方の要素を惜しみなく発揮してくれています。こういったキャラクターは、ほかのゲームでは決して見ることができません。ゲームとしてはとても評価できるものではありませんが、凡百の萌え系ヒロインに飽きた眼には、不思議な魅力を感じさせる展開とエンディングとを見せてくれるゲームである、といえましょう。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
1999年8月27日
(2000年1月3日、加筆・修正)
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