デュアルソウル アイル

1995年4月14日発売(DOS版)
1998年1月23日発売(Windows95版)
ご意見などは掲示板へどうぞ

 記憶を遡れば、私がPCを購入したころ、あちこちに『瑠璃色の雪』のポスターが並んでおり、Xゲームの世界など知らない私も、その絵には何となく惹かれるものがあったものです。PC購入後、このゲームが「PC-98 DOSのみ」ということでガックリきていたものです。

 その後、リメイクされて登場した『デュアルソウル』を購入したのは、発売してから数ヶ月を経た後のことでした。プレイ直後の印象は「まぁ悪くない」だったのですが、リプレイして、見るべき点、そしてまた問題点があることを改めて認識できました。

 しかし、NIFTYでも指摘されていましたが、パッケージが地味過ぎるような印象。

シナリオ

 主人公・ガッシュ(変更不可)は、教会の依頼を受けて遺跡の探索を行う、ダンジョン・スイーパー。恋人や幼なじみたちを含む4人のパーティーだったが、ガッシュは罠に引っかかってしまう。目が覚めてみると、彼の身体は町の酒場の主人のものになっていた。この身体で脳天気に過ごすガッシュだったが、さまざまな思惑や陰謀が、彼やその仲間たちを引き込んでいくことになる。そして、彼の辿り着く運命は、どのように描かれているのか。

 

 大雑把にいって、前半がギャグ、後半がシリアスな調子で書かれています。しかし、この2つの要素が、有機的に関係づけられているようには見えません。

 

 ギャグパートでは、主人公を含むキャラクターのおバカな行動だけでなく、ゲーム世界にある諸々の細かい小道具の大半がギャグになっているといっても過言ではありません。真剣さが一見感じられそうな借金取りイベントなども、結局はただのギャグと化しています。しかし、こう繋がっているギャグに対し、素直に「おもしろいもの」として楽しめなかったのが正直なところです。センスの問題といえばそれまででしょうが、どうもベタに過ぎて、ついていけなかった、と。

 後半の展開が、シリアスというだけでなく非常に重苦しい展開になっていくだけに、作者は、「日常の楽しさ」を演出しようと考えたのでしょうが、「楽しさ」というよりも、「何も考えない刹那的な時間」を描いているようにしか見えません。ギャグが楽しめたかどうかは、プレイヤーサイドの環境にかなりの部分を依存すると思われるので、この点は措くとして、「前半が後半にどう繋がるか」という視点で見た場合、このギャグは、シリアスパートの「深刻さ」を際立たせる以上の役割は果たしていないように見えます。ギャグパートの中で展開されたシナリオ自体、イベントがバラバラになっており、そこに登場しているキャラクターが「使い捨て」になっていたのも悲しいところです。

 

 また、シリアスパートでも、かなりの不満があります。

 主人公に「自分という存在とは何か」を徹底的に考えさせる、という点で見れば、かなりの程度成功させているとは思えます。しかし、周囲の人間の取り扱い方に関しては、「自分」というものをどう捉えるか、それを伝えていないまま、エンディングへと向かってしまいます。エンディングに泰然としたものを求めるのであれば、そこに至る「表情」を見せてほしかったのですが、主人公その人を除けば、この「事態」に対する「受け止め方」の書き込みがほとんどありません。これは、主人公から離れた点に踏み込んだ場合、シナリオのポイントがボケる、という可能性もありますから、一概にいい方法と断じることはできませんが、キャラクターの魅力を生かし切れていないわけで、非常に残念です。この部分の書き込みがていねいになされていれば、悲劇という事象を「解決」するのでなく「解釈」するという、より意味のある形でテーマを昇華できたと感じるのですが。

 

 さらに、それ以上の不満、否、このゲームにおける最大の不満でもあるのですが、シリアスパートに入った直後に出てくる、「里」の扱いが、あんまりです。主人公がそこから脱すると同時に、煙のごとくシナリオから姿を消し去ってしまいます。しかし、この部分の描写を見るかぎり、さまざまな記号がその中に散りばめられているのは明白です。異端、差別、迫害、偏見、「ひゅうまにずむ」。さらに、その「記号」を語らせているキャラクターを、主人公の仲間のみならず、別にもう1人をわざわざ用意している点からも、この部分にかなり力が入っていることがうかがえます。

 しかし、シナリオが進むと、これはあくまでも1つの通過点的イベントに過ぎず、主人公の口からでさえ、一言も語られることはなく、ましてやラストの展開には何ら反映されていないのです。主人公が「里」で交わした「指切り」の結果は、無惨にも黒く塗りつぶされたままなのです。この点だけでも、非常に後味の悪さを感じます。

 主人公の仲間が、この「里」でたどる運命なども、そのシチュエーションとしては(個人的な好みから外れるパターンですが)納得のいくものであるにもかかわらず、「ハイ次ねー」とばかりに流れていってしまいます。これが、その後の「暗さ」を増幅しているのは確かですが、これは「内容の深刻さ」とは直接関わりないところで働いています。

 

 総じて、「見せよう」という「狙い」が先にきて、各パートの意味づけがうまくいっていないという印象を受けます。これは、ギャグパートで「バラバラ」と評したのとは違い、シナリオイメージに対して致命的なマイナスに直結します。深刻ぶった展開だけを見せつけられても、そこに漂ってくるのは偽善的な「受け狙い」ではないか、そう取られてしまうのでは、せっかく呈示した設定が台無しです。設定第一に走ることなく、「展開」を、もっと地に足のついた形で描いてほしいものです。

ゲームデザイン

 基本的に一本道の、コマンド選択式アドベンチャーゲーム。発生するイベントなどの小分岐があるので、1回のプレイですべてのシーンを見ることはできません。また、ゲームオーバーとなるトラップもかなりありますが、警告機能(後述)がついているので、気楽に進めることができます。ダミーの選択肢が多く、コマンド総当たり的な作業が必要ではありますが、ストレスは感じさせない作りになっています。

不具合・修正プログラム

 私の環境(初回プレイはWindows95)では特に不具合はありませんでしたが、修正プログラムがアイルのWebサイトにアップされています。特に、Windows98環境での不具合が解消されているようです。

操作性など

 インストールには3段階のオプションが用意されていますが、最大(350MB以上のHDD容量が必要)だとCD-ROMが不要です(起動の際にも不要)。また、アンインストール時にはセーブデータを待避可能です。

 また、セーブ&ロードは50個所で可能(セーブは選択肢が出た位置でのみ可能)なうえ、セーブ個所がビューア表示され、簡潔な状況説明もされるため、非常に使いやすくなっています。

 マウス・キーボードの双方で操作可能です。マウスポインタ制御、メッセージ速度制御などは当然のように装備されているほか、右クリックを自由にカスタマイズ可能なのはありがたい仕様でしょう。強いていえば、キーボードのカーソルキーで選択肢を選ぼうとすると通り過ぎてしまうという現象がありました。また、メッセージスキップは、右クリックで設定するか、キーボードの「Ctrl」キー押下で行われます。

 CGモード・おまけモード(Hシーン回想)・BGMモードあり。おまけモードでのシーンタイトルには大笑いしました。また、BGMモードではコメント付きです。

サウンド

 BGMは、MIDI(GM基本・GM拡張・GSから選択)で演奏されます。ソフトウェアMIDIでプレイしても、極端に重くなることはありませんでした。かなりいい感じの曲が多く、またバリエーションの多さが散漫さに繋がっていないのも評価に値すると感じます。ただ、個人的に好みの曲に限って、ゲーム内での使用頻度が少ない気も(^^;)

 また、女性はフルボイスです。かなり演技力はあると感じましたが、やはり男性キャラの声がなかったのは寂しいですね。リューリュは声あり、ハリーは声なしというのは、かなり違和感を覚えました。

グラフィック

 リバ原あきさんの原画。独特の味のある目が非常にきれいで、女性キャラクターの輝きをうまく導いていると感じました。

 塗りは、これまたきれいなのですが、どうも、赤・黄・青が妙に目立ちます。服装や髪型のパターンがかなり限定されているのがその要因に思われますが、如何?

お気に入り

 リーファ。その存在、言動が、主人公を「決意」させる直接のきっかけになったのは間違いありません。それとともに、その無邪気な言葉の中に詰められた、重たい、そのあまりにも重たい「宿命」の、なんと悲しいことか。彼女の存在は、その後は2度と出てくることはありませんが、彼女が望んだ「遊び」が、いつしか可能となるような世界へと転じるという動きが、ゲームのエンディングの影に必ずや潜んでいるに違いない、そう思いたいものです。

 そういえば、NIFTYで開催した「98ベストキャラ投票」の中で、リーファに9位投票したのも、今となっては懐かしい話です。

総評

 意気込みが空回りしたという印象は否定できません。何よりも、重たいテーマを用いたシナリオが軸となっているのに、設定に依存してストーリー展開に甘さが多々見られます。設定が浮き、後味の悪い結末になっているのは、残念このうえないことです。

 かなりの魅力を感じる作品ではあるのですが、このゲームをそのまま受け入れるにはあまりにも後味が悪すぎる、そういう印象を抱いています。その後の作品では、こういったシリアス調のシナリオが採用されていないので、今後に期待できないのも、いっそう悲しくなってしまうところです。

個人評価 ★★★★★ ★★★☆☆
1999年9月23日
Mail to:Ken
[攻略ページへ] [レビューリストへ] [トップページへ]