お嬢様を狙え! -Get Lady- ScooP

1997年3月28日発売
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 Xゲームにおいて「お嬢様」という記号が寓意するところといえば、清楚、天然、おしとやか、といったイメージがあります。実際私も、このゲームタイトルを目にしたとき、真っ先に思い浮かべたのが、そういった「典型的なお嬢様」像でした。ところが、このゲームは、相手が「お嬢様」ゆえのガードの高さというのではなく、「お嬢様」を取り巻く外的環境の方が問題なのです。ヒロインのパターンとしては、「お嬢様」という感じではないですね(^^;) このあたり、狙ってタイトルをつけたのかどうかはわかりませんが。

シナリオ

 主人公・山村賢治(名前は固定)は、スポーツには自信のある高校3年生。終業式の直後、お嬢様として有名なヒロインに告白をするも、あっさり玉砕。ショックを受けた賢治だが、諦めきれないというので、夏休みの間に彼女のハートを再び捉えるべく、奮闘を重ねる。

 

 ゲームの冒頭で、このヒロイン「美津姫」の位置づけがバレバレです(^^;) おかげでエンディングのまとまり方があっさり判ってしまったのが、なんとも。「お嬢様」という看板とは異なる裏設定をせっかく設けた以上、もっと小出しにしてくれた方が楽しめると思うのですけれどねぇ。倒叙という方法ゆえの安心感というメリットもありますが、緊迫感が今ひとつになってしまったのは残念。

 序盤から中盤にかけての主人公の行動パターンといえば、まさにストーカー的行動ともいえ、相手の気の持ち方いかんではかえって嫌われるのがオチだと思いますが(^^;) 主人公の下半身の節操なさもなかなかのものですが、そこはそれ、こういうゲームだから、ということなんでしょう。

 しかし、エンディングの作り方はなかなかのものと思います。シナリオ自体に込められたコードを解読するといった手続は一切不要なのですが、程良い緊張を終盤で演出し、それを一気に解放させ、ハッピーなエンディングで締める。このシンプルではあってもメリハリの利いたラストは、中身は決して十全のモノとは言い難い本作品に対し、悪いイメージを植え付けるいとまを与えませんでした。

 まぁ、悪く言えば、ティピカルなパターンをそのまま利用した、いわばテンプレートを元としたワープロ文のような面もあります。したがって、「オンリーヒロインゆえの中身の濃さ」を求めると、外します。さらに、前半と後半とで、異なる「テンプレート」を元にしているため、シナリオの流れから置いていかれがちになるのは、いただけません。木に竹を接ぐような力技的設定変更のメリットは、少なくとも私には感じられませんでした。

 

 あと、美津姫やもろもろの娘っ子たちは置いといて(^^;)、某保険医の活躍といったら見物でした。しかし、逆にいえば、おいしいところを1人のキャラクターに担わせている、ともいうべきで、メインヒロインがヒロインとしての存在感を示しているのは、ラスト付近のHシーンだけといっていい、というのは、どうもなぁ。終盤のクライマックス、美津姫救出のシーンでさえ、頑張っていたのがこの保険医でしたから、彼女こそ「物語の真の立役者」と見てよいでしょう。

 アニメするし(核爆)

ゲームデザイン

 選択肢を選びながら進んでいくアドベンチャーゲーム。基本的には一本道のシナリオで、選択肢によってはすぐにゲームオーバーとなります。

 単純明快な形を取っているのがいいところ…といえましょうか。ゲームのプレイにかかる時間は5時間ぐらいだったかと思いますが、ゲームオーバーとなる分岐に結構CGが隠されているので、実際にはもっと時間がかかりました。

操作性など

 CD-ROMをドライブにセットすると、「Now Loading…」という画面が出ます。どうやら、CD-ROM内の主要ファイルをテンポラリファイルとしてHDにコピーするようです。このため、かなり画面切り替えなどは高速で、ストレスはほとんど感じませんでした。もっとも、音声ファイルはCD-ROMから読みとるようなので、ここはCD-ROMドライブのパフォーマンスに依存する様子。

 メッセージ速度の調整も可能ですが、セーヴ(←この表記にこだわりを感じますね)&ロードは8個所まで可能ですが、セーヴが可能なのは指定された「セーヴポイント」のみです。ロードは任意の場所で可能。

 また、CGモード(キャラ別、さらにCG1枚ずつにファイル名をつけているのですぐわかります)、BGMモードがあります。

サウンド

 BGMはMIDIですが、全然印象にありません(^^;)

 音声は割と頑張っているな、という印象。ただ、途中からは音声オフにしてプレイしたという事実があります(^^;)

グラフィック

 白米玄氏の原画。女の子はそれなりにかわいいのですが、なんか眠たそうな印象になるのは気のせいでしょうか。

 しかし、グラフィックを見ると、どうもキャラの筋肉モリモリぶりを強調しすぎている感があり、何となくなじめませんでした。

お気に入り

 並木悦子さん。このゲームの中で、一番(唯一?)「生き生きと」していたのが良かった。

総評

 タイトル通りに、恋愛ものとかナンパものとか、そういうのを期待しないように。「タイトルに偽りあり」とまではいいませんが、ゲームを「楽しむ」ために買った人の中には、イメージとのギャップに、かなり不満を持った人もかなり多いと推測されるだけに、もうちょっと真面目にタイトルをつけてほしいものです。

 安心できる展開に身を任せ、時折混じるスケベなシーンに口端をゆがめながら、脳天気に進めるべきゲームなのでしょう。ヒロインが1人となると、ほかには徹底的に冷たくあたったり、あるいはいろいろと考えさせられたりというケースが多いのですが、このゲームでは考える必要は特にありません。

 逆にいえば、シナリオ面で“何か”を見せてくれる、ということを期待してはいけません。「狙え」という以上、「彼女のハートをこっちに向ける」ことを第一に…と思うのが自然な発想だと思いますが、このゲームではそういう発想は拒絶され(^^;)、あくまでも「行動第一」となります。

 そのあたりのことを考えた上であれば、それなりに楽しむことはできるでしょう。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
1999年9月3日
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