同棲 Tactics

1997年5月23日発売
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 『MOON.』『ONE』をリリースして一躍名を馳せた、タクティクスブランドの第1作。全然知らなかったのは、この作品が『To Heart』(Leaf)と同日発売だったこともあるのでしょうか(^^;) 『MOON.』以降の作品では「心に届くAVG」というコピーが前面に出ていましたが、この『同棲』は、完全なSLG。まぁ、違った意味で「心に残る」ゲームではありました(^^;)

 なお、このたび「メモリアル・コレクション」の一環として、この『同棲』もリリースされています。今から改めて見直してみると、やはり古さが目につきますね(^^;)

シナリオ

 高校時代からつきあっていた恋人・まなみ(姓名の変更可能)と同棲生活を送ることになった主人公(姓名は変更可能)。ラブラブな毎日を、昼は生活費稼ぎのためのバイト、夜はベッドでお楽しみ、と過ごす。場合によっては浮気もアリ。さて、2人の同棲生活の行く末はどうなるのか。

 

 シミュレーションゲームですので、シナリオというものは特に考えなくてもよいでしょう。『同棲』という設定が、最終的にどういった形で「実を結ぶ」ことになるのか、ということに着目すれば、必然的に「ある程度のシナリオ」が求められることにはなりますが、このゲームの場合、単純に「パラメータの結果として」最終的なエンディングが決定するだけ、と割り切り、それまでのプロセスとして「あ〜んなことやこ〜んなこと」を楽しむ、というのが、望ましい姿勢と感じます。

 ただねぇ、主人公の名前が変更可能だからといって、「あなた」の連発はどうかと思うぞ(^^;) これにかぎらず、テキストがあまりにも練られておらず、読んでいて非常に鬱陶しく、苦痛でさえあったのが実情です。また、発生するイベントもそれぞれ単発のものにとどまっており、締まりがないのが残念。「今度はどんなことが起きるかな」という「期待」をさせるような「タイミング」がほしかったものです。

ゲームデザイン

 パラメータの上下によって展開が変わり、さらに、最終的なエンディングが決定されます。パラメータは、主人公:体力・精神力、ヒロイン:愛情度・淫乱度、さらにお金と分かれています。

 パラメータ変動のもととなる行動は1週間単位の予定となっており、昼間にどんなバイトをするか、その帰りに寄り道などをするかどうか、帰宅後話すかHするか、さらにその場合どんなHをしてみるか、こういった行動によって変わってきます。

 そして、「働いて、Hして、働いて、Hして、働いて、Hして、働いて、Hして…」を、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、繰り返すだけです(^^;) たまには休息をとらないといけませんし、お金がなくなると破産して即ゲームオーバーですので、これだけは注意が必要。

 

 ときどきイベントが起きるものの、あまりの単調さに、何度途中で投げ出したくなったことか。それでも、ラストに何らかのエンディングが待っているだろう、と信じて、とにかくラストまで進めると、ラスト付近でちょっとしたイベントがありました。そして、出産するエンディングへと、めでたく(?)到達しました。

 しかし、プレイ期間が長すぎて、どうにも…。ダレますね。「まだ続くんかいっ」と思いながらのプレイは、ちょっと。

不具合・修正プログラム

 不具合は特に発生していません。ただ、256色環境でないと、異様に動作が遅くなります。

操作性など

 悪いです……。とにかく、重い、の一言につきます。キーボードが利かない上に、マウスカーソル自体の動きも鈍いようです。

 ゲーム画面は、640×480のクライアント領域以外、すべて「Tactics」ロゴの入った壁紙に強制的に切り替えられます。即ち、切り替え可能なウィンドウ表示にはならず、またフルスクリーンも(デスクトップ表示自体を640×480にしない限り)不可という設定。マルチウィンドウ方式ならともかく、さほど複雑なデザインではないのですから、これは困りものです。

 セーブが週末にしかできないのは良しとしても、セーブ可能なのは4個所だけというのは少なすぎます。ゲーム期間の長さやエンディングの数を考えた場合、10個所でも足りないでしょう。この点は、『MOON.』以降で、劇的に改善されましたが。

サウンド

 BGMは、WAVE・MIDIから切り替え可能です。しかし、どうにも印象が薄いですね。バイト中、せかせかと動くちびアニメ(でもPiaキャロみたいにかわいくはない(^^;)流れる曲が割といいでしょう。あと、オープニングのクリアな感触もなかなか。

 CD-ROM内に、サウンドに何らかの形で関わったと思われる方のチャットのログが収録されています。興味のある方はどうぞ。

 音声はなし。こういうゲームにこそ、音声があったほうがいいと思うのですが。

グラフィック

 やはり『ONE』などの原画を担当された、樋上いたるさんの原画。目が非常に大きく、かなり荒削り(^^;)

 背景原画は、写真を加工しただけで、どうにも素っ気ない印象が拭えません。

 なお、CGはCD-ROMの中にBMPファイルとして収録されているので、そのまま直に見ることができます。Hシーンのバリエーションはなかなか豊富なうえ、樋上さんのややロリっぽいキャラデザがお好みの方は、ゲームはさておき見てみる、という目的で買ってもいいかも。

 そういえば、CD-ROMの中には、いろいろと妖しげなファイルがごろごろ転がっているので、これを見ている方がゲームするより面白いかも(^^;)

お気に入り

 なし。オンリーヒロインですし、メインヒロインであるまなみに対しても、特にこれという印象はなかったので。

総評

 話には起伏がほとんどありません。しかも、長い。これでは、ダレて当然でしょう。

 私は、1回は最後まで終える気になりましたが、もはやそれ以上は気力が続きませんでした。

 メリハリが大してなく、しかも長い育成型ゲームというのは、どうやら私には向かないようです(^^;)

 Hシーンのバリエーションは、確かにいろいろと凝っています。しかし、その「見せ方」をあまり深く考えなかったのが、このゲームの失敗だったのでは、と考えます。

 結論として、「SLGとして」見た場合、イベント発生条件やメリハリの付け方などでかなり問題を多く残しているため、未完成の作品という印象を強く持っています。CG集と割り切ればいいのでしょうが、背景がチープこの上ないことに加え、まだまだ樋上さんの絵もアクが非常に強いので、お勧めできるポイントはあまりない、という感じです。

 断定的に言い切ってしまっていいことといえば、『MOON.』や『ONE』(あるいは『Kanon』)のイメージ(グラフィックを除く)を、このゲームに投影することだけは避けなくてはいけない、この点でしょう。

個人評価 ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆
1999年8月22日
(12月10日、加筆・修正)
(2000年10月19日、加筆・修正)
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