V.R.デート五月倶楽部(メイクラブ)2 デザイアー

1997年6月13日発売
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 何だかよくわからないけれど、ふらふらと好奇心の赴くまま手に取ったゲーム、というものってありますね。そういう場合の結果というのは、推して知るべし、となる場合が多いものですが…(-_-;)

 なお、私は、このゲームをプレイした時点では、前作にあたる『V.R.デート五月倶楽部』はプレイしていませんでした。したがって以下のレビューでも、「総評」部を除き、前作に比較しての「印象」という要素はほとんど入っていません。

シナリオ

 主人公・五月圭介(変更不可)は、卒業を間近に控えた高校生。しかし、仮想アミューズメント空間「五月倶楽部(メイクラブ)」を経営する父親の命で、卒業後の留学と引き替えに、自分の妻となるべき相手を決める羽目になった。残り必要な出席日数を計算しながら、五月倶楽部という仮想空間で、出会いを試みる。主人公が選んだ相手は誰か。

 

 仮想空間における出会い、というパターンとしては悪くないでしょう。実際、「現実世界でないがゆえに可能であった」というシナリオがきちんと出せているのは評価できます。また、舞台が仮想世界に限定されておらず、現実世界でも自由に行動できるようになっているため、シナリオに広がりが出ているのもマル。しかし、こういった利点を活かしているシナリオは全体の中では決して多くなく、単に「ナンパの舞台が仮想世界」である、というシナリオが目立ったのが、残念なところ。

 さらに、キャラクターの数=シナリオの数こそ多く用意されているものの、各キャラクターの描写がかなり甘く、これも2、3を除けば、惰性で会っているうちに惰性で結ばれているという感じのエンディングが多かったと感じます。イベントの量自体はそれなりに用意されているのですが、そこにおける主人公とキャラクターとのやり取りで「惹かれる」描写に乏しく、結果として、展開があまりに急であるという感触になります。

ゲームデザイン

 現実世界と仮想世界とを移動することでイベントを発生させるタイプのアドベンチャーゲームです。期間は1か月半あり、この間、規定の日数以上授業に出席する必要がありますが、いつ出席するかは任意です。仮想世界にいける回数自体は無制限です。

 現実世界、仮想世界とも、行動先を選択し、それぞれ移動することで人と会い、イベントを起こして話を進めます。イベントの発生は、場所と日時(日付は若干の変動あり)によって決まるようです。会うのに手こずるキャラがいたり、会おうとすると別のキャラとバッティングしたりと、ゲームとしてのひねりは効いています。

不具合・修正プログラム

 詳細は後述しますが、動作が非常に重い上、音が割れてバランスも崩れていました。修正ファイルなどは用意されていないようですので、これが仕様のようです。

操作性など

 マウス操作が基本ですが、キーボード操作も可能です。CGやBGMは、CD-ROMから直接読み込んでいるようで、起動自体もCD-ROMがないと不可能です。したがって高速なCD-ROMドライブであっても、初動が遅いものは、逆にもたつきを感じます。また、ゲームの動作自体もかなり重いという印象があります。

 画面は640×480で、強制フルスクリーンとなります。DirectX3を使用していることもあって、クリップボード経由で画像をキャプチャしようとすると、盛大に色化けを起こします。また、背景が極端に小さく、さらに大きなフォントがメッセージエリアを食いつぶして画面を圧迫しているという感じで、ビジュアル的に窮屈です。

 セーブ&ロードは、選択肢が出ている位置で、4個所まで可能です。

 テキスト表示の速度調整は可能です。また、メッセージスキップ機能もあります。これがなければ、最後までプレイする気にはなれなかったと思う(^^;)

 CGモードは、キャラクター別に表示されますが、達成率を見ようとすると、1枚ずつご丁寧にカウントしてくれるようで、何十秒もの時間が掛かります(^^;)

サウンド

 BGMは、PCM(DirectSound)で演奏されますが、音の途切れ、あるいは音割れがかなりの頻度で発生しました。曲自体も、妙にポップなノリから重いものまで、どうにもバランスが崩れているという感じで、好みではありません。

 音声は一部のみで、音声と音楽(BGMでしょう)とのバランス機能(ご丁寧にチェック可能)まであるのですが、両方が聞こえるようなボリューム調整をすると、やはり音割れで聴くに耐えません。うるさいので、演技以前の問題として、音声オフでプレイしました。

グラフィック

 キャラクターの人数が多いこともあって、複数の原画担当者が描き分けているようですが、バラツキがかなりあるという印象を受けます。

 減色のしかたが甘いのか、特に背景など、かなりにじみがみられます。

 また、表情変化にもあまり工夫がなく、セリフとの関連づけがあまりできていないという印象です。

お気に入り

 特にありません。シナリオ的には、恭子が一番好印象でした。本来なら、遥のシナリオが一番重たいはずなのでしょうが、エンディングでの違和感が大きすぎます。

関連リンク先

 特に見当たらないようです。

総評

 シナリオ面で見れば、前作のようなおもしろさを感じることはまったくなかったとはいえ、それなりのまとめ方はしていましたし、「仮想空間」という舞台をきちんと扱っていた点を考えれば、まずは及第点でしょう。仮想空間だけでなく現実空間をも入れたため、中途半端な結果になってしまったという感じはしますが、これ自体はさしたる問題ではありません。

 何よりも失点といえるのが、演出面でのショボさ。前作では、ころころ変わる表情変化とそれにシンクロしたセリフ、各キャラクターの描写、透明感があって元気の出そうなBGMなど、古さを感じさせない演出がみごとだったのですが、このゲームではこれらすべてがきれいさっぱり消え失せています。さらに、重いプログラム、工夫のない画面配置、ムラの目立つグラフィックなど、みごとにゲームへの意欲を削ぐ材料が揃っています。

 シナリオを見れば「凡作」であって「駄作」ではないため、個人的には「辛うじて“地雷”認定を回避できるかどうか」という水準と感じています。

 

 余談ですが、私はこのゲームをプレイ後、NIFTYの会議室で前作を勧められたのですが、勧めてくれたのが何度もレスをつけあってきた人だったから迷わなかったものの、よく知らない人が勧めてくれてもおそらく買うことはなかったでしょう。前作はなかなかの佳作だと思っているだけに、「コレの前作など誰が買うかっ」とお思いの方が他にもいるかと考えると、非常に残念です。

個人評価 ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆
1999年10月3日
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