Graffiti ぷち/アセンブラージュ

1997年7月4日発売
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 そこはかとなく妖しい不気味さを感じさせるゲームって、ありますよね? 中身はごく穏やかなものなのに、パッケージデザインが結構すごい、というゲーム。この『Graffiti』が、まさにそのパターンでした(^^;) 同じソフトハウスから別ブランドで出された『はぷにんぐJOURNEY』が気に入ったので、その前(直前ではありません)の作品であるコレを買おうとショップに行ったのですが、買おうかどうしようか、かなりマジに悩んだ記憶があります(^^;) 何人もの女の子の「顔」がいっぱいあるのに、みな服を着ている気配もなし、妖しげな学園内ハーレム的ゲームか、などと…

シナリオ

 主人公・高杉弘樹(姓名とも変更不可)は、腹違いの妹・美咲と共に暮らしている高校二年生。再婚することにした母親は、転居を渋る弘樹に対し、その理由を勝手に推測し、「彼女を紹介すればそこにいていい」という。かくして、1月からの2個月間に、彼女さがしに奔走する弘樹であった…。そして、彼女達と、どんな“Graffiti”を残すことができるのだろうか…。

 

 無茶苦茶な前提で始まるゲームですが、このわけのわからん母親は、ゲーム中にしゃしゃり出てくるわけではないのが救いでしょうか。まぁ、このあたりのことは、深く考えない方がいいのでしょう。もともと、キャラとのやりとりを楽しむタイプのゲームなのでしょうから。

 個別のイベントのもつ破壊力は、さほど大きいものではありません。

 また、個々のキャラの性格づけや設定はそれなりにできてはいますが、どうも「印象の薄い娘さん」が大量生産されてしまったようなイメージがあります。恵理子と裕子など、性格的にも重なる部分が多すぎるので、統合した方がよかったのでは? キャラクターが11人もいれば、それぞれに対してボリュームのあるシナリオを用意するのも大変なのは確かですが、「薄く広く」という感じになってしまったことは否めません。イベント自体も「薄く広く」的なものが大半であるため、「シナリオが進んでいる」という実感があまりわかないのも減点材料でしょう。

 

 こうなると、ふだんの会話という要素も大事になってくるわけですが、文語調のテキストが会話の中で使われるという「不自然さ」が、やはり気になります。モノローグではなく、対話の中で、それも、比較的軽いやり取りの中で、妙に重たい漢語がありゃはりゃと登場し、それが、「音声つきで」再生されるのは、なんとも間抜けなものがあります。この傾向は、『はぷにんぐJOURNEY』などでも結構見られました(その後にリリースされた『My Friends』では、ほぼ解決されています)。

 これだけではなく、会話に芸がなさすぎるのが、なんとも。放課後、恵理子に部室で会うと、「次の授業は居眠りしないでね」…もう授業ないやん(^^;)

 なお、デートで遊園地に行くことがありますが、この遊園地の名前、「ベルスクエア」です。『メモリーズリフレイン』で出てきた遊園地と同じですね(『Memories』は未プレイ)。さらに、この遊園地は、これ以降の、ぷち、あるいはEuphony Productionブランドのゲームに、必ず登場するようになっています(^^;)

 

 あと、シナリオの流れとは直接関係ないのですが、エンディングで、「できちゃった結婚」が多いのが楽しい(^^) この主人公にはこういう結果、という感じで。

 なお“graffiti”とは、「落書き」という意味です。ただし、手元の英和辞典や仏和辞典には「イタリア語起源」と書いてありますが、イタリアから外に出て定着した意味というのが真情のようで、原義は「壁や洞窟に描かれた掻き文字」という意味です。

ゲームデザイン

 基本的に、学校内を移動し、女の子たちと出あい、会話し、イベントをクリアしてフラグ立てをしていきながら、最終日に告白する、というタイプの、マップ移動式アドベンチャーゲームです。移動先のパターンが非常に多く、イベントを発生させるには、マメなセーブ&ロードが必要となります。

 注意すべきは、大半のキャラクターは、別の、密接に関係するキャラクターのイベントをも発生させなくては行けない、ということ。単独攻略が可能なのは1人だけで、あとは、意中の娘がいても、他の女の子も追っかける必要があります。この点に気付かないと、マニュアルに書いてあるタイムテーブル通りに行動しても、いつまでたっても攻略できません(^^;)

 さらに、イベントの発生とは別に、女の子たちには「機嫌が良い」「普通」「ご機嫌斜め」と、気分がかなり分かれます。「機嫌が良い」状態にするには、方法は1つ、イベントが起こらなくても頻繁にあっておくこと。しばらくほっておくと、機嫌が悪くなります。機嫌の良し悪しによってセリフも結構変わってくるのですが、キャラによっては明らかに元気がなくなるようなコもいるので、ついついかまってしまう、というケースもあります。ただ、機嫌の良し悪しで、表情に変化を付けてほしかったところです。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に不具合のようなものは見当たりませんでした。なお、アセンブラージュのWebサイトに、修正プログラムがアップされています。不具合が出る方は、このパッチを当てましょう。

操作性など

 可もなく不可もなく、でしょうか。マウス操作が中心ですが、キーボードも補助的に使えます。マップ移動、および、メインメニューが出ている場面はマウスオンリー、それ以外は、どちらでも使用可能になっています。

 CapsLockオンでメッセージノーウェイト表示、テンキーのピリオド押下またはマウス両ボタン同時クリックで早送り可能です。このあたりの仕様は、当時のアセンブラージュがリリースしたゲームに標準の操作方法で、プログラムの軽さもあって、実にスムーズです。

 CGモードは、各女の子ごとに表示されるようになっています。なお、達成率も出ますが、全体での達成率だけなので、なかなか「誰のが足りないのか」がわかりにくいのが難点でしょうか。まぁ、約1名を除けば、素直に攻略すれば全CGをゲットできますけれど。なお、BGMモードはありません。

サウンド

 BGMはMIDIです。BGMそれ自体はあまり印象にありませんが、唱うヒロイン(裕子・みらの)とのエンディングとなった場合、彼女たちのヴォーカルが入ったエンディングテーマが流れます。また、このゲームの初回限定版には、この「Memories」という曲を収録したシングルCDがついてきます(もっとも、通常版って、見たことないんですが(^^;))。非常に唱いにくい歌なので、ボーカルの方は四苦八苦しておられたようですが、曲としては大好きだったりします。

 あと、音声付き(主人公以外。男性も含む)ですが、この演技は軒並み高水準にある、といってよろしいでしょう。美咲の「ハロッ、お兄ちゃん☆」は反則です(*^^*) あと、男性のチョイ役ですが、真一の声、渋すぎっ。あれで高校生か?

グラフィック

 人物原画は、あらなが輝さんが担当。『メモリーズリフレイン』と、基本的に図柄は同じです。等身が低いこともあって、美咲の立ちCGを見ても、高校生にはとうてい見えません(^^;)

 かなりHシーンは濃いめでおます。それにしても、真弓の髪型といい、大半のキャラの私服姿といい、ファッションセンスがなかなかすごい…(^^;)

 背景原画は、写真を取り込んだもの。前作とは違ってカラーになっています。

お気に入り

 やっぱり、高杉美咲、彼女しかいません。私は基本的に、慕ってくる妹キャラというものは苦手なのですが、彼女の場合、素直な面もある一方で感情で走る場合もある、普段はおとなしいが場合によっては歯止めが利かなくなる、など、「弱い面」もあること。そして、何だかんだいっても、「自分」を見ていること。ただただ「お兄ちゃんだ〜い好き」とベタベタ近寄ってくるわけではありません。やはり、「年齢相応のしたたかさと弱さ」の両面を持っているのが魅力です。

関連リンク先

 SHEOさんのサイトにレビューがあります。私よりはやや甘めの評価。

総評

 恋愛ゲームに求められる、いわば「ほのぼの」とした温かい雰囲気を楽しみたい、というのであれば、かなり問題のある出来のように思います。キャラが多すぎてイベントの中身が今ひとつになっている上、ゲーム攻略にかかる手間がハンパでないので、かなり「かったるい」という印象を持たざるを得ません。

 関係するキャラ同士の攻略という、かなり面倒なシステムも、ゲームとして取り組みにはおもしろいやり方でしょう。しかし、シナリオの根本から見ても、そういう面を狙った購買層が買うとはとうてい思えません。

 そうはいっても、キャラクターの中に、キラリと光るものをもつキャラクターがいれば、それだけでゲームとして何とか楽しむこともできるのですから、プレイヤーというのはお気楽なもんです……って、お気楽なのはオレだけかも(^^;)

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
1999年8月22日
(8月25日、加筆・修正)
(9月26日、加筆・修正)
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