バーチャコール3 フェアリーテール/F&C

1997年7月25日発売
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 『バーチャコール2』が結構楽しめ、そのノリで『VC3』も買おうかと思ったものの、『VC2』のオペレータ・ウィンディが悲惨な目にあうという話を目にしました。これで警戒して手を出していなかったのですが、いろいろと目にする美麗なグラフィックにも負け、とうとう買ってしまったのが実情。さて、その結果や、いかに?

シナリオ

 主人公・浅見洋一(姓名とも任意に変更可能)は、彼女もおらず寒々とした夏休みを迎えようとしていた。そんなある日、光海と称する女の子と偶然出会い、彼女から「バーチャコール」という、テレビ電話を用いたツーショット回線にアクセスできるカートリッジをもらう。これさえあれば天下無敵、今日も明日もと口説きに専念する主人公。さて、どんなコと親密な関係になれるのだろうか?

 

 前作と、基本的にはまったく同じスタイルです。「VCを紹介し、そこにアクセスできるメディアをくれるコがメインヒロイン」であり、電話回線で女の子を口説き落としてHし、最終段階で誰か一人を選ぶ、というもの。前作をプレイしていれば、その頑固なばかりのスタイルに対し、ふっ、と笑みがこぼれることでありましょう。

 しかし、このゲームでは、苦言を呈さざるを得ない点が、い・く・ら・も、あります。

 

 女の子の数はかなり増えたため、バリエーション的な楽しみが増えるのだろうと一見思え、そしてまたイベントの量が多くなって口説き落とすまでに時間がかかるようになるなど、ボリュームがアップしたように見えます。しかし、これは必ずしもプラス方向に働いてはおらず、各キャラクターごとの印象を薄める結果になってしまっています。私は、このゲームをすでに3回プレイしましたが、顔と名前が一致するキャラは、プリシア・ウィンディ・光海を除けば、いまだにわずか3人だけ、しかもそのうち1人は「うげぇ…」という、恐ろしいまでにネガティブな印象をもって刻み込まれているので、「キャラクターの魅力」というパワーについていえば、前作に比べて、著しくパワーダウンしている、としかいいようがありません。

 思えば、『VC2』においては、登場するキャラクターが、それぞれ魅力を存分に発揮していたため、プレイヤーの印象によく残ったものです。これは、外伝『VC2.2』で、小夜子や綾香といったキャラがそのまま登場し、また鈴音というキャラも、本編と外伝とのキャラクターギャップを活かせている(つまり、本編でのイメージを使って外伝で効果を出す)という「事実」から、明らかです。

 唯一、王道的なキャラクターイメージをまとっているメインヒロインの光海がなんとか頑張っている、という印象ですが、彼女とて、前作でこの役割に対応するエミリの前には、ビジュアル的な「かわいさ」以上のものをあまり感じなかったのが実のところです。

 シナリオを読ませるタイプのゲームではなく(前作よりもボリュームダウンしています)、ゲーム性では楽勝ですし(前作が結構難しかった反動か?)、エロ度は低いし(回を重ねるごとに下がっているような気が…)、となると、キャラクターの魅力を出さないとイケないゲームと思うのですが、何をどう勘違いしたのやら。

 

 さらに、前作のオペレータであったウィンディが、今回もオペレータとして登場します。そして、ウィンディが主人公に夢中になってしまうシーンが出てくるのですが、主人公は心ない態度をとります。ここで、どう考えても意味のないような選択肢が出てきます。 「ふざけるな! ……デートなんてできるか!」前作で、ウィンディを落とそうと、数ヶ月にわたって悪戦苦闘した私に対し、この選択肢を選べというのは、酷以外の何物でもありません。この直前のセーブデータを3回ロードしましたが、結果は同じ。泣く泣く、それでも一番ましと思われるものを選びましたが、彼女の悲惨な姿を見せつけられる羽目に。それも、宿命としてそうなったのではなく、単に、主人公の不誠実な対応によってそうなったのですから、釈然としないものが、ゲームのエンディングまで残ってしまいました。「記憶は残してある」というプリシアの言葉に一縷の望みを託し、『To Heart』のマルチ的な復活があるのか、という期待も空しく、最後に登場したのは、感情という要素を失ったウィンディ…。あとはもはや、惰性的にプレイを続けるしかありませんでした。散々女の子をそれまでも泣かせていて今更、ということはできましょう。しかし、目の前に感情を持った一個の存在を認識しながら、それをあくまでも冷たく足蹴にする人間を主人公に据えたこのゲームに対し、どうしても「楽しみ」という言葉を重ね合わせることができませんでした。

ゲームデザイン

 女の子との三択で話が進められていく、というのは前作と全く同じです。しかし、選択肢は前作と違ってそうシビアなものではなく、相手の好感度が上がる選択肢を選べば「ピロローン」という音が、下がる選択肢を選べば「ピッ」という音が鳴るので、正解・不正解は容易に見当がつきます。

 

 パーティラインでは、3人の女の子と同時に会話をし、その時に出される選択肢の結果として、最も好感度の高い女の子とツーショットが出来ます。これは前作とまったく同じですが、いろいろと凝っている面もあります。まず、パーティラインでも表情が変化する点。それから、メンバーチェンジができる点。つまり、パーティラインの3人が気に入らない場合は、別の3人の組み合わせを選ぶことが出来ます。さらに、「ロックオンシステム」というのがあって、要するに、ターゲットにしたい特定の女の子の好感度を高くするモノです。これを使えば、よほどのことがない限り意中のコとツーショットに持ち込むことが出来るので、まずこの段階で、前作よりもはるかに簡単になっています。さらに、それ以降の選択肢も、前作の鬼のような難易度に比べたらチョロイものなので、一回目のプレイを様子見とすれば、二回目のプレイでは、一人を除く全員を同時攻略できてしまいました。その一人も、とりあえず「エンディングを見るだけ」なら大丈夫だったので、好感度の条件はすでにクリアできていたのでしょう。要するに、かなり簡単になっており、やや物足りなさを感じたくらいでした。まぁ、「その一人」を、Hシーンも含めて完全攻略しようとすると、やたらと難しくなるのですけれど。

 

 そして、ツーショットから、場合によってはデートへと移るわけですが、デートをこなせばHシーンへ、ということはありません。前作では「一人一殺」でOKでしたが、今回は何度かデートを重ねる必要があります。この結果、いろいろな女の子を、まさに「計画的に複数同時攻略」していくことが必要となり、「今だけはホンキ」という、たわけたマネは許されません。ナンパゲームの主人公の本性というものを、よりリアルに出してしまうわけで、私は何度かプレイを重ねるうちに鼻についてきました。これは、お気楽なノリでノーテンキに進められた前作とは微妙に異なり、後ろめたいことをズルズルと引きずりながらのゲームプレイを招いたためです。まぁ、ウィンディの一件が、一番大きかったのは確かですけれど。

 

 ラストで、誰を選ぶのかを決めることになりますが、前作では、その直前、唐突に「セーブしますか」というダイアログが出てきたのに、今回は出てきません。うっかりその前のセーブをやり忘れていると、また延々と別キャラのエンディングを見るためだけに、長時間プレイを余儀なくされます。これはいただけません。

 

 また、しばしば指摘されることですが、攻略できないキャラクターがパーティラインに登場することは、やはり問題でしょう。私は、マニュアル冒頭のイベントCG群を見て「全然CGのないキャラがいるなぁ」と思い、きゃつらを無視してプレイ、クリア後のCGモードで「なるほど」と納得しましたが、これは偶然気がついたラッキーの結果に過ぎません。意表をつくキャラ配置といえますし、また、前作の有数の問題点であった「同一キャラが何食わぬ顔で何度もパーティラインに登場する」という不自然さを解消する方法の一つとして考え出されたのだ、という見方も可能でしょう。しかし、そういった点を「メリット」と呼んだにしても、プレイヤーに余計な負担を強いている事実に変わりはありません。つまらん小細工に走るのはやめてほしいものです。

不具合・修正プログラム

 F&Cのホームページに、ADMの最新バージョンが用意されていますので、これを当てておくのがよいでしょう。具体的な不具合などはありませんが、ADMをバージョンアップさせることで、描画速度が格段に速くなりました。

操作性など

 セーブ&ロードに関しては、一見、前作の涙が出そうな操作性に比べ、改良されたように見えます。

 まず、セーブ可能なのが8ヶ所までと、倍増。これは、素直に進歩といえます。しかし、セーブが自室のみというのは変わらず、しかも、「自室に帰ると電話が鳴って別イベントが強制的に連続発生する」というケースが、前作に比べてはるかに多くなり、一時間以上の長時間プレイをノーセーブで余儀なくされるケースがありました。

 また、ロードに関しては、ゲーム中に可能となったのはいいのですが、先述の通り、選択肢が非常に優しくなっているので、途中で逃げられるというケースはほとんどありません。したがって、セーブ&ロードの必要性は高くなく、この機能はあまり役に立ちません。

 結局、セーブしにくいというデメリットの方が問題となってしまい、何度かプレイして慣れてきた場合、ゲームプレイでたまるストレスの度合いは前作を上まわってしまいました。

 このほか、画面描画のウェイトオン・オフ、音声(WAVE)・BGM(MIDI)のオン・オフが可能です。

 なお、CGモードは、各ヒロインごとにサムネイル表示され、そのCGを選択するとテキストで解説が入ります。未見のCGは、セピア色で表示されます。それにしても、光海を選ぶと「あ、洋一さん、また会えて嬉しい」…『同窓会』を思い出してしまったのは私だけではないと思います。

 BGMモードは、相も変わらず曲名なしです。それなりにいい曲が多い以上、これは悲しい。

サウンド

 BGMはMIDI(GM、SC-55、SC-88、FMなど)で、「XG以外の」メジャーな規格に対応しています。また、ゲームのエンディングソングが、ヴォーカル付きで収められています(CD-DA)。この「僕のひまわり」は、曲単体で「素晴らしい」というわけではなく、歌唱力のまぁ悪くないアイドル歌手が歌う曲、という感じなのですが、なかなか涼やかで解放感溢れる印象を喚起する、いい曲です。

 そのBGMの内容ですが、割といい曲が多いですね。最初にプレイしたときは、BGMオフにしてプレイしていたのですが、後に音源搭載ボードを購入してBGMありでプレイしたところ、その場の雰囲気に結構あった曲が多いな、と感じました。ただ、『VC2』の時とは異なり、落ち着いた雰囲気の曲の方が、よりいい味を出していたように思えます。個人的には、「V3_010B.MID」がお気に入りです。

 音声は、F&Cのゲームを担当されているおなじみの方々ですので、演技に関してはひとまず安心できます。

 音質は、8ビットモノラルの割には、そう悪いという印象は受けませんでした(『Pia2』がひどすぎたのかも)。ただ、WAVEファイルをCD-ROMの中に生で収録しているんですけれど、パックすれば容量をかなり減らせたのでは、と思います。それでなくても、「ここは容量不足で削ったのでは?」と思わせる箇所がままあるだけに。

グラフィック

 原画担当者の人数が増えすぎて、バラエティが豊富というよりもバラつきが目立ってしまい、逆効果だったという印象があります。さすがに、塗りの美しさ、特に光線の使い方は見事ですね。しかし、これも直後に出された『Pia2』と比較すると、ワンランク下がるという印象は否めません。個々のイベントにおける印象がその程度だった、という点もありましょうけれど。あと、背景CGが相変わらず小さいというのは、前作のあまりよろしくない点を踏襲しています。

お気に入り

 特になし。相対的に、というのであれば、有栖川光海。

総評

 シナリオ、そしてゲームデザインの所で長々と触れたとおり、このゲームに対し、私は非常にネガティブな印象を持っています。直裁にいえば、F&Cのゲームの中で、これほどまでに不愉快にしてくれたものは、後にも先にもこれただ一つです。これだけの人数がいれば萌えられそうなキャラが何人か出てもおかしくはないのに、まったくそんな気にもなれません。「後味の悪くないナンパゲームの佳作」というのが前作に対する私の評価でしたが、この作品の場合、「後味の思い切り悪いナンパゲームの失敗作」というのが、現時点での評価です。「失敗作」の根拠は、今まで挙げたものがその主なところですが、それだけでなく、ウィンディの取り扱いが、私には、何よりも決定的でした。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
1999年8月25日
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