自民党の腰の重さは目にあまる。昨年の衆院解散にあたって民主、公明両党と合意した、衆院の選挙制度改革をめぐる消極姿勢のことである。「定数削減については、選挙制度の抜本的な[記事全文]
この事件をきっかけに、警察にはサイバー捜査の能力を高めてもらいたい。コンピューターウイルスで遠隔操作されたパソコン(PC)から犯罪予告が書き込まれた事件の容疑者が逮捕さ[記事全文]
自民党の腰の重さは目にあまる。昨年の衆院解散にあたって民主、公明両党と合意した、衆院の選挙制度改革をめぐる消極姿勢のことである。
「定数削減については、選挙制度の抜本的な見直しについて検討し、通常国会終了までに結論を得た上で法改正を行う」
解散のまさにその日、自公民3党が交わした合意である。
国民に消費増税を求める前提として、国会議員みずからも「身を切る」覚悟を示すとした定数削減。民意を的確に反映する選挙制度への改革。
このふたつは、公党間の約束であると同時に、国民への公約でもあったはずだ。
それなのに、議論を引っ張るべき政権党が逃げ腰とはあきれるほかはない。
党幹部からは「限られた時間でできるかと言えば極めて困難」(石破幹事長)といった消極論が相次いでいる。
そんな言い訳は通らない。
3党合意からすでに3カ月。時間がない、のではない。時間はあるのにやりたくない。そういうことではないのか。
一因は、各党の主張が食い違うことだ。大政党は小選挙区を重視し、中小政党は比例代表を大事にする。自分が有利な制度は変えたくない。そんな議員心理が歩み寄りを妨げている。
09年総選挙を違憲状態とした最高裁判決からまもなく2年。
この間、与野党が実現したのは、解散まぎわに成立した「0増5減」法だけだ。かろうじて一票の格差を2倍未満におさえるための、最低限の緊急避難的な手直しにすぎない。
このまま政党間の話し合いに任せても、時間を空費するばかりだ。今国会中はおろか、いつまでたっても結論が出るとは思えない。
だとすれば、国会議員以外の第三者に議論をゆだねるほかにない。
安倍首相に求める。首相の諮問機関である選挙制度審議会をただちに立ち上げるべきだ。
参院の一票の格差もやはり最高裁に違憲状態と指摘されている。見方を変えれば、衆参の役割分担をふまえ、両院の選挙制度のあり方を同時に見直すチャンスである。
一方、定数削減はむしろ慎重に扱うべきだ。いたずらに議員を減らすだけでは、民意をくむ力を弱めかねないからだ。
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」する――。
憲法前文の精神が軽んじられる異常事態を、これ以上、放置してはならない。
この事件をきっかけに、警察にはサイバー捜査の能力を高めてもらいたい。
コンピューターウイルスで遠隔操作されたパソコン(PC)から犯罪予告が書き込まれた事件の容疑者が逮捕された。
捜査のハードルは低くない。猫に首輪をつけたのが容疑者本人で、首輪についていたメモリーカードからこのウイルスの設計図が見つかったとしても、それだけで書き込みをした犯人だという証明にはならない。
そのうえ、4都府県警が4人を誤認逮捕したいきさつもある。うち2件では、初めは否認していた人に容疑を認める偽りの供述をさせてしまった。
今回逮捕された容疑者は全面否認しているし、仮に今後なにか供述を得られたとしても、真実かどうかを慎重に吟味する必要がある。
そのため、容疑者のパソコンや遠隔操作に悪用されたパソコンを解析して何らかの足跡を見つけるなど、客観的な証拠を積み上げなくてはならない。
捜査が進展したのは、サイバー犯罪の捜査能力が発揮された結果とは言いがたい。容疑者が猫に首輪をつけにいかなかったら、あるいは防犯カメラに姿が映っていなければ、警察は彼にたどり着けただろうか。
仮想空間から現実世界に舞台が移ったために従来の捜査手法が使えたにすぎない。匿名化ソフトによる壁といったサイバー捜査の課題は残されたままだ。
供述に寄りかからない捜査を行うためにも、客観証拠を集める捜査力を磨く必要がある。
警察庁は昨秋、サイバー犯罪に対応するため、不正プログラム解析センターを設けた。全国から技術を持つ捜査員約20人を集め、ウイルス情報の分析やデータベース化を進める。
県や国の境が意味をもたない犯罪だけに、都道府県警の垣根を越えた情報と人材の集約をさらに進めてほしい。
ウイルス対策の関連企業などから中途採用した捜査員は全国で約80人にとどまる。即戦力の採用も強化すべきだ。
世界で1日10万種以上というウイルスの増殖には、警察だけでは追いつけない。知識と人材の蓄積は民間に一日の長があろう。捜査情報の守秘義務をしっかり取り決めたうえで民間の企業や技術者との協力を深め、情報の交換や解析の委託を進めていくのが現実的だ。
捜査機関が書き込みの監視と解析を強化することは、プライバシーの面からは微妙な問題をはらむ。乱用に歯止めをかけるルールの議論も要る。