白川総裁“前倒し辞任”決断の裏 副総裁の「日銀枠」死守か

2013.02.13


白川総裁の辞職は5年後をにらんだ動きとの見方も【拡大】

 日銀の白川方明総裁が4月8日の任期満了を待たず、3月19日に辞職する。同日に山口広秀、西村清彦両副総裁の任期が終わるのに合わせ、正副総裁3人が同時に交代する。日銀総裁が任期中に辞職するのは1998年の松下康雄氏以来となる。

 白川氏は5日夜、日銀本店で記者会見し、辞職は「あくまで自分の判断」としたうえで、「正副総裁の任期は同時にスタートすることが最も自然。日本経済に貢献していくうえで望ましい」と語った。

 突然の辞職表明をどう受け止めるべきか。ある中央官庁の幹部が興味深い見方を披露した。

 「白川氏は自身が任期前に辞職し、正副総裁の交代時期をそろえることで、副総裁の日銀枠を守ろうとしたのではないだろうか」

 現在の日銀の総裁、副総裁には、日銀プロパーが2人座っている。白川総裁と山口副総裁の2人だ。しかし、日銀の金融政策に強い影響力を及ぼしている安倍晋三首相のブレーンの面々の言動を勘案すると、山口、西村両副総裁の後任は、日銀の外から任用される可能性がある。日銀は長年定席と目されてきた副総裁の日銀枠を失うことも覚悟しなければならない。

 そして、4月8日に白川氏が任期満了となり、後任人事として巷間取り沙汰されている総裁候補には日銀プロパーは見当たらない。結局、総裁、副総裁のいずれにも日銀プロパーは就かない事態も皆無ではない。

 しかし、総裁、副総裁の退任時期が同時となれば状況は一変する。3人が同時に交代する場合、「さすがに1人は日銀プロパーを残していなければならないとの判断が働く」(先の中央官庁幹部)というわけだ。白川氏は次の5年後の総裁交代に向けて、日銀プロパーが再び総裁ポストに就けるよう布石を打ったという見立てだ。その本命は、現在、国際部門を総括している中曽宏理事というのが関係者の共通した理解だ。

 白川氏は前倒し辞職を表明したことで、内心吹っ切れた思いだろう。安倍政権から2%のインフレターゲットの導入と無期限の金融緩和という劇薬を飲まされ、日銀法の改正までちらつかされるなど、踏みにじられた感は否めない。なかでも経済財政諮問会議は「お白州」に座らされたようなもの。四半期ごとに同会議では2%のインフレ目標の達成状況について日銀の取り組みを検証するという。諮問会議とは名ばかりで「査問会議」というのが実態だ。

 白川氏は北九州市小倉育ちで、名門の小倉高校を卒業し、東大に進学した。小倉の名物は祇園太鼓と小説『無法松の一生』。主人公の人力車夫・富島松五郎は、気性は荒いが男気があり、底抜けに優しい。自分の本音は決して明かさないが、こうと決めたらどこまでも一途だ。その小倉っ子の気質はいまも昔も変わらない。

 そして白川氏にも北九州小倉の血が流れている。辞職は自らを棄てても守りたいものがあっての決断であろう。

 ■森岡英樹(もりおか・ひでき) 1957年、福岡県出身。早大卒。経済紙記者、埼玉県芸術文化振興財団常務理事などを経て2004年4月、金融ジャーナリストとして独立。

 

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