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壮大な夢の果てに
豊川工陸上部の体罰問題を考える


(7)見ざる、聞かざる、言わざる 学校の“隠蔽体質”が背景に

 県教委は先月下旬、教諭(50)の体罰が原因で、12月に女子部員1人が退部していたことを公表。豊川工の竹本禎久校長は、退学の理由を「10月に他の部員の前で数回の平手打ちを受けたのが原因」と説明した。
 だが「それは違う」と東三河の長距離関係者は指摘する。この男性によると、女子部員は少なくとも5月、9月、10月の3回にわたって激しく殴られた。
 9月には平手でさんざん殴られた後、げんこつでも殴られ、口の中が血まみれになったという。
 10月には体育教官室で殴られた。そこに別の教師が入ってきたが、教師は見て見ぬふり。何事もないかのようにふるまった。
 「女子部員は、この一件で学校に行けなくなった」と関係者。「この学校は自分を救ってくれない。彼女は、その瞬間に全身で感じてしまった」と憤る。
 女子部員は怖くて登校できなくなった。しきりに「死にたい」と訴えるようになったという。
 学校側は明らかに計算ずくで事実を矮小化して発表した。なぜか。
 長年にわたって築かれた隠蔽(いんぺい)体質が原因だと指摘する人もある。かつて、この教諭が関係した大きな体罰事件があったとき、学校ぐるみで隠し通した。
 工業高校の人事は限定される。その時、隠蔽に係わった人物が何年かして再び、同校に赴任する。またしても体罰。だが、一度、隠してしまった身で、勇気をふるって制止はできない。
 もし県教委に実態を洗いざらい報告すれば、全国高校駅伝に出られないかもしれない。教諭は「学校の宝」「地域の宝」だ。見ないふり、聞かないふり、そして絶対に口外しないことが幹部を含め教諭らの暗黙の了解となる。
 冒頭の発表に戻る。各紙に載った「数回の平手打ちで退学した」の表現に、市民の中からは「なんだこれしき」「我慢が足りない」と女子部員の忍耐力のなさを指摘する声すら聞かれた。
 教諭の体罰は、隠蔽体質の中で繰り返され、人権を奪うところまで行ってしまった。このことを忘れてはいけない。

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豊川工陸上部の体罰問題を考える メニューへ 2013年2月10日紙面より抜粋



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