無罪判決:覚醒剤事件で 捜査を非難「被告拘束は違法」−−東京地裁

毎日新聞 2013年02月07日 東京朝刊

 覚せい剤取締法違反(使用)や逮捕状を引き裂いて口にくわえ込んだとして公用文書毀棄(きき)罪に問われた建築業の男(43)の判決が6日、東京地裁であった。検察側は懲役4年を求刑したが大西直樹裁判長は覚醒剤使用を「無令状の違法な身柄拘束があり、採尿の鑑定書には証拠能力はない」と無罪とした。公用文書毀棄罪については「引き裂いた行為までは認められない」として懲役3月を言い渡した。

 男は▽11年5月、東京都内で覚醒剤を使用した▽11年6月、警視庁葛西署の取調室で千住署員が示した覚せい剤取締法違反容疑の逮捕状を引き裂いた上、丸めて口の中にくわえ込んだ−−として起訴された。

 大西裁判長は判決言い渡し後、捜査を非難する異例の言及を行った。「覚醒剤使用に対する捜査の違法性は重大だが、毀棄罪の捜査も深刻な問題がある」と前置きし「逮捕状の形状から引き裂いた事実がないのは明らかなのに引き裂く場面を再現した様子を写真撮影した調書などが作られているのはどういう理由と経緯か」と指摘した。

 起訴内容が「引き裂いた上で丸めて口にくわえ込んだ」としていることにも触れ「引き裂いたという行為の有無は公用文書毀棄罪で起訴すべきかどうかの判断で最も重要な事項。被告は捜査段階でくわえ込んだことは認めながら、引き裂いたことは言及しておらず、取り調べで確認された形跡もない」と疑問を投げかけた。

 その上で捜査当局に「関係者から事情聴取し事実経過と原因を調べ、しかるべき措置をとり、再発防止策を検討してほしい」と注文を付けた。【和田武士】

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