四十七話 ナガミミ達の長い一日 10
side カワズ
「……この雰囲気で本当に太郎さんを一人で行かせてよかったのかな? 昨日の観光の時だって監視が三人はついていただろう?」
「ん? あいつが心配かの?」
部屋に戻って心配そうにそう言ったのは異世界の少女だった。
わしが問うと、セーラー戦士は腕を組んだまま、眉を少しだけ不愉快そうに寄せていた。
「そういうカワズさんは心配じゃないとでも? ずいぶんあっさり行かせていたけど?」
ふむ、確かにその通りだが、心配しているかと問われたら否である。
「まぁ……必ず何かしかけては来るじゃろうな。あの様子じゃと命くらい狙いに来るとは思うぞ」
そして、近所に怖い犬がいるくらいの気安さでそう言った。
町中でも常に視線を感じていたし、この宿の周囲にも兵らしき奴らが何人もうろちょろしている。
この状況でのこのこ一人で出ていったら、狙ってくれと言っているようなものだろう。
「……それってまずくないかな? 何か考えがあったんじゃ?」
どうやら、セーラー戦士は何か深読みしているようだったが、そりゃ見当違いというものだった。
「いやいや、特にない。いいじゃろ? 気の済むようにやらせりゃ」
「なんでそんな……!」
いよいよ声を荒げるセーラー戦士はずいぶんと焦っているように見える。
彼女もここにきてから危機感を募らせていたのだろう。
それは普通の人間には至極まっとうで、当然の心配と言える。
ここに来て、あいかわらずへらへらしているあの小僧がおかしいのだ。
いや、ひょっとして脅威を感じておらんのか?
鈍感というのならまだいいが、しかし本能的に怖くないと判断しているとしたら、背筋が寒くなるばかりである。
現に今の状況も、危機的状況と言えなくもない。……普通ならばだが。
「ふむ、まぁエルフというのはな、妖精の中でも特別気位が高い種族なんじゃよ。
とりわけ魔法の技術では誰にも負けないという自負も持っておるじゃろうし。
素直に負けも認められんじゃろうよ。
いや……ひょっとしたら負けとも思っておらんのかもしれんな。
自分達の知恵と魔法を使えば、ただ魔力が大きいだけの人間など造作もなく捻れると思っておっても何ら不思議はない」
そういう感情は人間にも言えることだろう。
何かを極めようとすれば、自分こそが比類なき優れた者であるという、自尊心みたいなものがどこかに存在するものだ。
最もアレと比べるのは少々酷というものだが。
「それじゃあ、なおさら助けに行かないとまずいじゃないか!」
だがこの解説でセーラー戦士はついに我慢できなくなったらしい。
とたんに、装備を引っ掴んで飛び出して行ってしまったセーラー戦士のその行動力は、なんだか眩ささえ感じてしまう。
「……せっかちな娘じゃのう」
開け放たれた扉を眺めながら、わしはやれやれとため息を吐いた。
若さとは考えないことだと見つけたり。
この口で言えない感覚をどう表現して伝えたらいいものやら、困ってしまう。
確かに魔力云々がわからなければ、タローはただの便利な素人じゃからのぅ。
知らないというのは時にうらやましい事もあると、なんだか老け込んだ気分になった。
「行っちゃったけど、よかったの?」
トンボが頭の上でそんなことを尋ねてきたが、しかし止めに行く必要も感じない。
……ここだけの話、むしろ助かるかもしれない。
「よくはないのぅ。だがあれも若さじゃ。なに、タローが作ったペンダントがあれば、そう簡単に負けはせんじゃろう。あ奴がピンチになる前には、タローも決着をつけて出てくるわい」
「……それってエルフの人達がかわいそうじゃない?」
「そこまでは知らん。仕掛けてきた方が悪い」
「うわぁ……」
まぁ彼女がどれほど派手に暴れようが、後ろめたいことを先に実行したのは向こうだ。
それによって何かしてくることもあるまい。
というか、してくる度胸があるのなら褒めてやりたいくらいである。
「おぬしはわしから離れるなよ? タローの弱点になりうるとしたら、こちらで出来た知り合いくらいじゃろうからな。もっとも、あやつはわし位なら見捨てそうじゃが」
だがまぁ、アレとの関係を思うと自虐的に笑えてくるが、何故か頭をなでられている気がして、わしはふと上を向く。
「だいじょうぶだよ。タロはカワズさんも助けてくれるよ」
わしの頭をなでながら、相変わらず気楽に言ってくるトンボの台詞にまた別の意味で苦笑いが浮かんだ。
なるほど。そうかもしれないが、それもまたよしである。
「ほっほっほ、ならええんじゃが。しかし、あ奴に助けられるというのも……面白くはないの」
「当然じゃん」
胸を張るトンボも、そしてこうやって笑っているわし自身も、いやいやまだまだ若いなと感じつつ。
わしは楽しげな外の喧騒に耳を傾けていた。
side 太郎
パキーン。
身構えていたら妙な音がして、恐々目を開ける。
するといつの間にか視界が開けて、ずいぶんと静かになっていた。
「……?」
「なん……だと……?」
どよどよと、なんだか驚いている五人組の姿が見える。
そこでようやく何かが終わったらしいことが分かった。
結局俺は直立不動のまま、特に何をしたわけでもなかったのだが、ガラスにひびが入ったような、そんな変な音が聞こえた気はした。
ひょっとしてそれだろうか?
とにかく終わったことに気が付かなかった位に、秘奥wは拍子抜けだった。
「あれ? これで終わり? なんだかやたらと派手だった割に手ごたえがなさ過ぎてびっくりしたんだけど……本当に? これだけ?」
「あ……うむ、これだけ……だが」
エルフの人はものすごく気まずそうに答えてくれたので、それならば間違いないのだろう。
そうか、これで終わりなのか……。
ならばこちらの番である。
「オッホン!……それでは! フハハハハ! どのような魔法かは知らないが! 私の二十二層の魔法障壁には手も足も出なかったようだな!」
正直数は適当です!
実際にはもっとあるかもだけど、数えてないからわかりません!
俺は前もって用意していた台詞を舞台劇のように大仰な動作で言い放って、高笑いしてみた。
気を使ってかっこよく言って見たものの、誰も反応してくれなくてややさびしい。
虚しさ? それはすでに卒業したさ。
「そういうのはいらないのだが……」
「……そうですか。それじゃあ今後ともよろしく。もっともあんまり顔を合わせることもないでしょうが」
すべてを無かったことにして。
さっそく撤収の準備に取り掛かった俺を呼び止めたのは、やっぱり真ん中のエルフの人である。
「う、うむ。ってそれだけか! 私達は君を殺そうとしたのだぞ?」
「え? いつ? 命の危険は感じなかったけど?」
「……!」
エルフのナイスミドルさんはもう言葉も無いらしい。
しかし本当にこの程度なら、いつかかませさんが吠えかかって来た時の方がよっぽどビビったのは間違いあるまい。
それに引き替え、今日は変な部屋に連れてこられて光っただけ。
ちょっとしたイリュージョンを見られて、満足したくらいである。
すると、とたんに慌てだした彼らは、今度は一転して必死に言ってきた。
「ならば少し待ってくれないか! お詫びの印に何かさせてもらえぬだろうか!」
「はい?……まぁもらえるものなら何でももらいますが……」
さっきまで殺す気満々だったくせに、お詫びって……。
どれだけテンパっているのだろうか?
それだけ必死ということなのだろうが、少し気の毒になってくるぐらいの取り乱し具合である。
「そうか! ならばどうだろう! エルフから一人従者を与えるというのは!」
「……は?」
「エルフの中でも実力のあるものを従者として与えよう! きっとそなたの手足となり優秀な働きをするだろう!」
うむむ、想像以上にゲスいなこの人達。
それって派遣業? いや、ニュアンスとしては人身売買に近い気がする。
これには俺も眉間にしわがよるというものだった。
「……ふむ。率直に言いましょう。そういう真似はあまり好きじゃない」
「!……ならば、望むものは何かないか!?」
望む物と言われても。
しつこく食い下がってくる彼には悪いが、考えても全く出てこない。
「とくには」
あっさりと即答する俺に、さすがに言葉を詰まらせたが、それでもまだあきらめない精神は立派である。
「な、何かあるだろう? そうだ! 宝石などはどうだろうか! エルフの秘宝のいくつかを提供しよう」
「うーん。残念だけど、俺の欲しいものをあなた達は持っていないみたいだし。
自慢じゃないけど、贈り物で俺を納得させるほど、難しいことってないと思う。割と何でも出来るし」
「そ、それでは、君の欲しいものとはなんだったのだね?」
懇願するように声を荒げる彼に俺は言った。
「そこそこの信頼関係……かな? そっちはあんまりそういうのはないみたいだけど」
「……!」
偉そうなエルフの人は絶句していたけど、それはそうだろう。
今までの行動は信頼とは真逆である。
これで話は終わったかなと俺が今度こそ本当に帰ろうとすると、その時、突然声が聞こえてきて、足を止めざるを得なかった。
「あっはっは! これは一本取られたね!」
いきなり、何とも気まずくなりつつあった室内の空気をぶち壊す、楽しげな笑い声が部屋中に響き渡ったたのだ。
いったい次は何が始まるのかと、俺はきょろきょろ辺りを見回すと、不意にひらひらと手元に青いものが落ちてきた。
「花びら?」
それは青い花の花弁だった。
なぜか天井から、青い薔薇の花びらが紙ふぶきのように降って来たのである。
「???」
あまりにも意味不明な事態に、頭の中が空っぽになる。
しかしエルフの皆様方は、今起こっている事態を把握しているらしい。
なぜ花が降ってきて、何が起こっているかわかるのだろう? それがそもそも疑問である。
「ま、まさか! なぜあの方が!」
「え? なに?」
彼らはものすごく、なんといえばいいか苦々しい表情をしている。
そんな彼らと、今一状況のわかっていない俺に迎えられ、その男はひらひらと大量の薔薇と共に舞い降りてきたのだ。
「なんじゃありゃ……」
俺の顔はここに来て一番の驚愕を浮かべていた事だろう。
どこからか聞こえてくる勇壮なバイオリンの調べに乗って、ゆっくりと落ちてくる金髪男性。
そのままカーニバルにでも出られそうなひらひらの服は、胸元が大きく開いている。
はっきり言って、これを着てくれと言われたら、俺なら即お断りさせていただきたい。
しかしそれを着ている金髪の人物は見事に整った容姿でそれすら着こなしているのだから、絢爛豪華という言葉がここまで似合う奴も珍しい。
そんな空飛ぶ金髪カーニバルは俺の前に優雅に舞い降りると、一本の青い薔薇を差し出しながら、黄金の笑顔を向けてきた。
「やぁ! 面白い客人が来たと聞いて、いてもたってもいられなくてね! つい顔を出してしまったよ!」
「お、大爺様! なぜここに!」
驚愕を露わにするエルフの人達を、金色の人は素早く制す。
「ノン! その呼び方は好きじゃないなぁ。月夜に咲く一輪の薔薇、ムーンライトセレナーデと呼んでもらおうか!」
月夜に咲く一輪の薔薇ムーンライトセレナーデ様はあらゆる意味で俺の度肝を抜いて、降臨したのである。
side 隊長
「「「「「ぬおおおおおおお!!!!!」」」」」
エルフの戦士達が木の葉のように空を舞う。
嵐のような猛攻になすすべもなく、彼らは吹き飛ばされたのだ。
「……なんという!!」
私は思わずひとりごちる。
彼らとて、あらゆる訓練に耐え、鍛え上げられた屈強な戦士達だ。
それがまるでゴミのように容易く蹂躙されている様はまるで悪夢の様だった。
しかし悪夢はそれだけでは終わらない。
この非常識な状況を作り出しているのは、目の前にいるたった一人の少女だというのだから頭の中のあらゆる常識がその事実を拒否しようとするのである。
彼女は並み居る兵をなぎ倒し、議会塔内部まで殴り込んできたのだ。
「くそぉ!!」
私は弓に矢を番え、引き絞る。
この雷神の弓は、矢に雷の力を纏わせる、我が家の家宝だ。
その一撃はまさに雷光の如し!
射られたと思った時には、もうすでに刹那の閃光に貫かれていることだろう。
雷の一閃は標的を沈黙させるはずだった。
耳元で小さな雷鳴が轟き、矢は真一文字に飛んでゆく。
「ふっ!!」
しかし雷光はあまりにもあっけなく叩き折られてしまった。
非常識な光景に己の目を疑うが、それは紛れもなく現実だった。
「この矢……私の剣を折ってくれたくれた人だよね? あの剣、気に入っていたんだよ?」
「……ひぃ!!」
そう語りかけてきた少女に、気が付いたら喉から悲鳴が漏れだす。
それを聞いた少女は興ざめしたのか、ため息をついて私から視線を逸らすとすでに戦意をなくしたようだった。
「……まぁいいや、今は君に構っている暇はないんだ」
剣が自分の前から引かれ、事なきを得た。
ほっとしたと同時に、腹の底から湧きあがる敗北感に、これまでにないほど顔が歪んだのがはっきりと自覚出来た。
走り去ったであろう少女の背中を追おうとするが、しかし彼女の背中はそう遠くない位置で止まっていて、私も動きを止める。
何事かと目を凝らすと、見覚えのある甲冑が少女の行く手を遮っているらしかった。
「……やっぱり来たね、ナイトさん」
「ええ……私にはここでやらなければいけないことがありますから」
フルプレートの鎧と、両手に剣。
しかし片方が半ばから折られている。
だがそんなことはどうでもいい。
あの少女を止められるかもしれないという、その可能性のある者が現れたのだ。
私は感情に任せて口を開いていた。
「遅いぞ! さっさとその小娘を排除しろ! ダークエルフ!」
いつも通りの完全な命令口調。
しかしその瞬間、何かが私の眼前に突き立っていた。
それが剣だと気が付くと、あまりのことに気が遠くなる。
「うるさい……次は眉間をぶち抜くよ?」
そして殺気の籠った少女の視線を最後に、私の記憶は途切れたのだった。
side 太郎
「……また濃いのが出てきたなぁ」
どうしようこの人?
キャラ的に圧倒的な濃さが滲み出ているんですけど。
張り合おうとするのがそもそもの間違いである。
目の前の人物は俺など、どうやっても太刀打ち出来そうにない存在感だった。
セレナーデと名乗ったエルフは、ニコニコと笑いながら人の事を舐めまわすように見回すと、実にフレンドリーに話しかけてきたのである。
「いっゃあ! 君かい? 人間のすごい魔力持ちというのは。すまないねぇわざわざ挨拶に来てもらって。本当ならこちらから出向きたかった所なのだがね? このおちびちゃん達が絶対にやめてくれと行かせてくれないのさ。
僕がいなくなるとさびしいのはわかるんだけど、もうそろそろ親離れしてくれないと困るよねぇ?」
「えっと……」
「こんな出会いは滅多にない。君は私の友人になれるかもしれない男なのだから! しかし、悪かったね! 閉鎖的にしすぎたせいか、他所様への対応がまるでなってない。困ったものだよ本当に」
一方的にしゃべり続けるセレナーデ様に、俺はようやく割り込むことに成功した。
「えっと……あなたはどなた様で? って言うか本名ですか? そのムーンライトセレナーデって奴?」
「ノン! 妖精郷の女王から話は聞いているよ? 君はあだ名をつけるらしいじゃないか! 面白そうなのでね、わざわざ自分用のニックネームを考えてきたというわけさ! 通じなかったらどうしようかと心配していたが、どうやら大丈夫の様だ。
どうだい? 僕にふさわしい、美しい名だろう? ちなみ異世界の薔薇からとったのさ!」
通りですんなりと聞こえるはずである。ひょっとしたらさっきの所だけ日本語だったのか?
それが事実だとするとものすごく頭のいい人のように思えるが、しかし、あだ名も含めて何かと煌めいている人だった。
「はぁ、それであなたは?」
「僕かい? 僕はすべてのエルフを総べるもの。ハイエルフの長とでもいえばわかりやすいかもしれないね? ついでに言うなら彼らのお爺さんにあたる存在とも言う」
胸を張って、それなりに偉いと思われる五人組を指差す。
彼の言葉にウソがないことは、周りの皆様が証明してくれていた。
つまり、本当にこのキラキラした人がエルフで一番偉い人で、偉そうな五人よりも年上の人だということだ。
どう見ても二十代前半くらいにしか見えないけども。
「……ずいぶんと若々しくていらっしゃる」
俺が何とか言葉を絞り出すと、セレナーデ様は何を言っているのかと肩をすくめていた。
「知らないのかい? 魔力の多いものは寿命も長い! エルフは特に長寿の種族だからね! それに見た目など、どうにでもなるだろう? 違うかい?」
「……そうかもですね」
確かに、その気になればどうにでも出来そうな気はしたが。
ということは何か魔法を使って若い状態を保っているか、もしくは変身している可能性もあるということか。
残っている所には色々と残っているものだなと感心してしまうが、この人の存在自体がそう言う問題じゃない気もした。
色々と規格外らしい存在に困惑している俺にはお構いなしに、セレナーデ様は俺の顔を覗き込んでくる。
その表情は本当に興味深そうだった。
「だからこそ、僕らは友人たりえる。これから長い時間、同じ時を生きるかもしれないのだからね」
「……そういえば考えたことなかったけど、その可能性もあるんですね」
カワズさんでさえ、五百年は生きたと言っていたし。
飛び抜けて魔力が高いのなら、長生き出来るのかもしれない。
なら俺はどれだけ生きるんだろうか?
ちゃんと考えると、それはそれでちょっとぞっとする話ではあった。
「しかし君は面白いよ。人間なのだろうけど、私でも底が見えない。魔法も多彩だね」
「ええ、まぁ……知人に教えてもらったもので」
「ほぅ、そんな方がいるのかい? それは人間かな?」
「あー、はい、一応? 人間……かな?」
今は両生類だけど。
それは言わなくてもいいだろう。
嘘もついていないし。
だがセレナーデ様は痛く感心されたご様子である。
「いやはや、人間も侮れないなぁ。そうは思わないかい?」
そして不意打ち気味に、さっきまで偉そうにしていたエルフの真ん中の人に振ったのである。
とっさに反応出来ずに、彼は気の抜けた返事を返していた。
「はぁ……」
「はぁじゃない。君達、僕は今回ずっと見ていたのだからね? 君達にこの里を任せる様になってからどのくらいたったかな? ……だいたい六百年くらいだったような気がするけど、久々に来てみたらどうだい! まったく君達のやり方には美しさが足りない! エルフは常に優雅たれと昔から教えているだろう?」
とは今度は少しお怒り気味のセレナーデ様だ。
しかし、これにはちゃんとした理由があるんだと男は立ち上がった。
「しかしですね! この者は我らにとって危険すぎます!」
「ノンノンノン! 失・格! 危険なものならそこら中に転がっているさ。それといかに付き合っていくかが重要だろう? とりあえず……お仕置きが必要だね今回は」
「ヒィ! それは!」
そしてセレナーデ様は最終的な判決を下したようである。
青くなるエルフさん達一同。
どうやらそのお仕置きとやらはエルフ達にとって、とても恐ろしいものらしい。
よく知らないけど。
そして判決を伝え終えたセレナーデ様は、俺に向き直ると相変わらずの笑顔で平謝りである。
「いやいや、これは見苦しいところを見せてしまったね。しかし彼らの言葉ではないけれど、お詫びはしておきたいなぁ。本当に何もないのかい?」
そして軽く言われたのだが、完全に不意打ちだった。
その申し出は改めて聞かれても正直困ってしまう。
他の種族とどうにも壁があるらしいこの人達にパソコンを渡しても意味がなさそうだと、そう思っていたのだが、この人は女王様とも面識がある様である。
なら渡してもいいかとも考えたが、その前に、少し気になることがあったのを思い出した。
「あーええっと、あるかも?」
「ほう? なんだい? 口にしたからには善処させてもらうよ?」
そう何とも快くお許しもいただいたことだし、せっかくなので俺はそのお願いを言ってみることにした。
「じゃぁ、観光案内してくれたダークエルフの人なんですけど。なんだか辛そうだったんでそれを何とかしてあげてくれませんかね? 主に首輪とか足枷とか」
「ん? ダークエルフかい? ふむふむ……」
すると何が面白いのか楽しげに何かを考えているらしいセレナーデ様に俺は付け加えた。
「観光の時に迷惑かけたんで、その代金みたいなもんです」
「はっはっは、そうかい! ああ! 知っているよ。昨日、君達の案内をしていた子達だね。
しかし、ただ解放するのは容易いが、彼女達がそれを望むかどうか……」
意味ありげにほほ笑むセレナーデ様だったが、そんなに難しい話でもないと思うのだが。
「なんでです?」
あまりにもったいぶるのでこちらから尋ねてみると、セレナーデ様は実に楽しそうに、意地悪っぽい顔をしていた。
「おや? 気になるかい? なら話してもいいけれど、それなりに覚悟はして聞いてもらうよ? 他人のプライバシーに踏み込むのだから」
ふむ、確かに。しかし事情が分からなければどうしようもない。
俺はそれに頷いた。
side セーラー戦士
激しい戦闘を繰り広げ、私達は議会塔の中を完全に戦場としていた。
ふと気が付くと、いつの間にかそこは黒い大理石の部屋で、私とナイトさんは瞬きをすることも忘れて睨み合う。
森で対峙した事のある彼女は、しかしあの時以上の気迫を感じた。
「……そこをどいてはくれないかな? 貴女だって太郎さんに別に恨みがあるわけじゃないんだろ?」
そう私は言葉を投げると、彼女はかすかにピクリと震えていた。
「……もちろん。しかし私は里の意志を忠実に遂行する義務があります。貴女こそ命を懸けるほど、彼に肩入れする理由があるのですか?」
逆に問い返されたが、それは愚問である。
「もちろん。太郎は私が帰るために唯一見つけた糸口なんだ。簡単に見殺しには出来ない。
それに、知人が死にそうだというのは、それだけで命を懸けるのに十分な理由だよ」
私の言葉をどう受け取ったかはわからない。
しかしナイトさんは大きく深呼吸してから、自分の剣をしっかりと構えなおす。
どうやら、話し合いは決裂してしまったようである。
「そうですか。……そうですね。ならばこれ以上何か言うのも無粋です」
「そうだね、押し通らせてもらうよ! フィールドオブソード!!」
「受けて立たせていただく!!」
言葉と同時に剣達が一斉に手元に戻ってくる。
ナイトさんも兜のフェイスを降ろして身構えた。
一対一で戦うには、魔法をばらまく魔剣は都合が悪い。
私は二本の剣を抜いて構えると、今まさに始まろうとしている戦闘に備える。
剣の力は加速と剛力。
太郎さんが呼び出されてから、かなり時間がたっていた。
そう時間はかけられないだろう。
私は、身体強化の出力を限界まで上げた。
side太郎
「彼女達はね、罪人の子なんだよ」
「それはダークエルフ的なことで?」
俺は不満を隠さず口に出す。
それはすでに知っている。
しかしセレナーデ様は少しだけ難しい顔をしていた。
「そうだよ。エルフの里では他種族と交わることを固く禁じていてね。
エルフは妖精でありながらとても人の形に近いだろう? だからというわけではないのかもしれないが、とても血が混ざりやすい。しかし妖精は存在が儚いのか、他種族との血が混ざると数世代後には他の種族に完全に溶けて消えてしまうのさ。
だから、この掟はエルフという種を残す上でとても大事なものなんだよ。
しかし……時として恋と言うやつは禁じているからこそ燃え上がる場合があるらしくてね、たまに禁を破って子を成す者達がいる。その結果が彼女達ダークエルフというわけだ。
彼女はその母の罪を清算するために隷属の道を選んだのさ。
罪人のままでは里に墓も建てられないからね」
「……はぁ、なるほど」
ちゃんと理由があるからと言って気分のいいものではないが、つまりそのレッテルが問題だということか。
セレナーデ様はさらに続ける。
「健気な話さ。彼女が悪いわけでもないのにね。それでも冷遇される事を知りつつ、彼女はここに居続けている。クマの子もそうだね、まぁ彼女達の類稀なる才能あってこそ、その提案も受け入れられたというのもあるけれど。強いだろ? 彼女達?」
セレナーデ様の言うように、ナイトさん達の強さは飛び抜けたものがあるのだろう。
俺は、深く唸ってどうしたものかと頭を抱えた。
事情は分かった。ならば二人の望みは『公に二人の両親の罪が撤回される事』という所だろう。
だがそれも目の前の彼らの協力があればそんなに難しいとも思えないのだ。
「ふぅん、じゃぁお願いは罪の清算ですかね。あんた達が許すと言えば、解決でしょ?」
確かに禁じられてはいるのかもしれないが、それは確かに過去の事なんだし。
恩赦という言葉もある。
母親自体はただのエルフのはずだ。
それならばエルフ達も民主主義というわけでもないようだし、水に流す事などこのお偉い方々のさじ加減一つのような気がする。
それは当たっていたらしく、セレナーデ様も普通に肯定していた。
「まぁそうだね。でも、それでいいのかい?」
「なにがです?」
意味ありげに問い返したセレナーデ様は、意地の悪い笑みを浮かべて、俺に顔を近づけてきた。
「彼女達も今の立場で守られている所があるという話さ。
奴隷的立場ではあるものの、この里にいることを許されているのは、その立場のおかげでもあるという事だよ。
許された時点で彼らも普通のダークエルフと変わらない。そうなれば里にはいられないよ?」
「その辺りはどうにも出来ないと?」
俺もセレナーデ様の目を覗き込みながら言った。
彼女達が最も望む形で平穏に暮らせるのが一番いいに決まっている。
住む場所をコロコロ変えられるのも確かに不都合が多いだろう。
エルフの里に仲間として迎えてもらったりは出来ないものだろうか?
しかし彼は首を振る。
「それはどうだろうね。僕が認めたとしても、里の人間は快く受け入れはしないだろうし。
ダークエルフだけの里がどこかにあると聞いたこともあるが、エルフの里に仕えていた彼女達を受け入れてくれるかはわからない」
セレナーデ様は悲しそうに顔を伏せる。
言っている事もわからないでもないが、しかし何も好きであんな輪っかをはめているわけではないだろうし。
その理由で解放をためらうのもどうかと思う。
「むしろそのくらいは保証してこそ、俺へ詫びと言えるものだと思うんだけど?」
思いつくままにそう言うと、今度こそセレナーデ様の瞳が怪しく輝き、彼の目の中に映る俺の顔もぐにゃりと歪んだ気がした。
そして何を思ったのか、彼はとんでもない事を言い出したのだ。
「なかなか欲ばりだなぁ君も……。それならいっそ君がこのエルフの里を治めてしまうっていうのはどうだい?」
「は?」
一瞬何を言われたのか分からなかったが、セレナーデ様は薄い笑みを浮かべて続ける。
「君が望むのなら、そうしてもかまわないよ?
どうせなら、ダークエルフを受け入れられる様に仕組みもすべて変えてしまえばいい。
いや……君ほどの力があれば、この世界ごと君の思う通りに出来るはずだよ?
どうだろう? もし君が世界を欲しいというのなら、僕達は協力を惜しまないけど?
そうするに足りる投資だと、僕は思っているけどね」
これには俺も驚いたが、聞いていたすべてのエルフ達も息を飲む。
じっと俺の瞳を覗き込み続けるセレナーデ様に、だが俺はあっさり言った。
「……なんですか? その面倒な話は?」
まったく考える余地すらない話である。
しかし、まんざら冗談という気もないらしく、セレナーデ様は相変わらず怪しい笑みを浮かべたままだった。
「そうかい?」
「もう面倒くさすぎて、話にもならない……かな? 俺、政治家なんてなりたいと思ったことないし? それより、そんなのどうでもいいんで、あの二人が普通に暮らせるようにしてくれりゃいいんですよ。
出来るの? 出来ないの?」
そんな事より、そこの所が問題だ。
出来ないなら、もう頼みとかどうでもいいので。
これ以上下らないことを言うと、話は終わりだと意志を籠めて語気を強める。
すると少しの沈黙の後、セレナーデ様はものすごく愉快そうに笑い始めた。
「はっはっはっはっは! 断れないとわかっていて言っているなら君もずいぶん意地が悪いよ! もちろん出来るさ! 君の注文通りに計らうとしよう! 君達もそれでいいね?」
それだけでさっきまでの怪しい雰囲気は一瞬で霧散してしまった。
そしてセレナーデ様の言葉は質問形式ではあるが、明らかに反論を許さない感じである。
五人のハイエルフはしぶしぶ頷き、話は決まったようだった。
「ならいいんですけどね」
俺も満足のいく取引で、内心すごくほっとしていた。
まぁこれで、昨日懸けた迷惑分は清算出来たと思いたいものである。
だがセレナーデ様は満足げに頷く俺に向かって、苦笑していた。
「ふむ、それが君の力の使い方のようだね。悪くはないが……もう少し自分の力が周りに及ぼす影響を考えた方がよさそうだ」
「……それ、よく言われます。俺なりに考えてはいるんだけどなぁ……」
これだけよく言われるのだから実際足りていないのだろう。まったく考えるというのも存外難しいものである。
そして話が終わると、セレナーデ様はパンと一度手を打って、俺の肩をなれなれしく掴んだ。
「さて!堅苦しいお話はここで終わりとしよう! せっかくだ、この後僕がエルフの里を案内しようじゃないか! まだ里のすべてを見て回ったというわけではないのだろう?」
「ええと……そりゃそうですが」
尋問の後、すぐさまこの態度というのはどうなのだろう?
しかし別に断る理由もないのだが。
「あのパソコンだっけ? 女王に聞いていてね。とても興味があったんだよ! せっかくだから話が聞きたいな! それに、僕についてくると面白い特典があるよ? なんと! この里で買い物をすると半額で売ってくれるんだよ! 偉くなっておくものだね!」
あー、なるほど、半額にね。
やっぱり偉くなるとちがうなーって……!
「お前か!!」
思わずツッコむと、セレナーデ様は不思議そうな顔をしていた。
「え? なにか、面白いことでもあったかい?」
わかっていなさそうなセレナーデ様に、俺はひどい横暴を見た。
しかし里の大半に偉い人と認識されている所を見ると、案外この人も人気があるのかもしれなかった。
だがセレナーデ様と滝の入り口から出て行くと、そこは悲惨なことになっていた。
「な、なにこれ?」
「……これは、観光は中止かな?」
入る前は傷一つなかったはずのその場所は、傷がない場所がない。
壁や柱にも無残に亀裂が走って、もはやあの美しかった面影は影も形もないと言ってもいいだろう。
その原因はすぐにわかった。
なにせ見目麗しい女戦士が二人、目の前で死闘を繰り広げていたんだから。
そしてセーラー戦士がナイトさんを組み伏せて、今まさに死闘のフィナーレを飾ろうとしている。
だが剣を喉元に突き付けていて、このままだとなんだかやばい形で決着が付きそうだった。
「……はぁ……はぁ。私の勝ちみたいだね、迷いのある剣じゃ私は倒せないよ」
「はぁ……はぁ……殺しなさい」
「はぁ……そんなのごめんだよ。勝った方に従って欲しいんだけど、それじゃダメかな?」
なんというかこれは……声をかけてもいいのだろうか?
こういう場合、会話を静観しておいたら、何か心の交流が生まれたりするのか?
だけど実際放っておくわけにはいくまい。
俺は鬼気迫るその空間に、おずおずと声をかけた。
「あのぅ……お取込み中申し訳ないんですけど、これはいったいどういう?」
そこでようやく二人とも俺達の存在に気が付いたらしい。
ビクッとして、露骨な驚き方をされてしまった。
「太郎さん! 大丈夫……みたいだね」
セーラー戦士、なんでそこでものすごくへこむのだろうか?
「……なぜ? それにあなたは****様?!」
もちろん後ろには、とってもえらいセレナーデ様もいるわけだ。
盛大に面喰っているナイトさんは、怪我も忘れてパニックだった。
「ヤッホー。なんかずいぶんがんばっちゃたみたいだねー。話し合いは終わったから、これから町にでも繰り出そうかと思ったんだけど……彼の方に少しやってもらいたいことが出来ちゃったよ」
「え? 何それ聞いてない」
思わぬ振りに俺はセレナーデ様に視線を向けると、彼はにっこり笑っていた。
「だって、ここ僕の家だし。このままじゃねぇ? 君なら簡単に直せるだろう?」
「直せるかもしれないけど! なんで俺が!」
突然そんな事を言われても、魔力だって使えば疲れるのだ。
するとセレナーデ様はきょとんとした顔で言った。
「彼女……君が連れてきた剣士だよね? それに君の心配をして来てくれたんでしょ? 後始末くらいやってあげても罰は当たらないと思うけどなぁ」
「……それはそうかもしれないけど!」
そういう言い方はずるいんじゃないかな?
そしてお前も手伝えと!
言いかけた俺の言葉を絶妙なタイミングで遮ったのはセレナーデ様である。
「でもそうなると……この場に留まるのは彼の魔法の邪魔かもしれないね! それじゃあ君達も一緒に行こうか! 宿に帰って普段着に着替えてくるといい! 連れの人達も一緒にね!」
「え、その、私は彼を助けに……」
セーラー戦士は見知らぬ強引なエルフに目を白黒させていたが、肝心の本人には取り合うつもりはないらしい。
「はっはっは、気にせずともいいのだよ! 話はついているのだからね! 彼も快くこちらの誠意を受け取ってくれてね! 今までのことを水に流してくれるそうだよ!」
そんなことをさらっと言うセレナーデ様。
そういえば、詫びの印を受け取るということはそういうことになってしまうのか?
だけどこの強制労働は話が違うだろう!
「いやあの! ちょっと! それはいくらなんでもひどいんじゃない!」
俺はその場を後にしようとするセレナーデ様になんとか食い下がろうとしたが、セレナーデ様は肩越しに振り返ってにやりと笑うと指を立てて言った。
「パソコン……君って受け取る代わりに頼みごとを聞いてくれるんだって? 竜の長老がうれしそうに酒の池のことを話してくれたよ?」
「……ぐぅ!」
そしてあっさりと止めを刺してくれる。
これでは断れない。
廃墟のようになった議会塔を見て、俺はさらにげんなりする。
あれだけ暴れたのなら、兵士の人も相当やられたんだろうなぁ……。
とりあえず全員治して……修復するのにどれくらいかかるだろう?
「はぁ……やるか」
ほっとくわけにもいかない俺は、さっそく人命救助から取り掛かることにした。
ちなみに人命救助だけはさすがにちゃんと手伝ってくれました。
エルフの里は実に面白い街並みをした美しい里だった。
食べ物も豊富で、甘いものが好きな方も、辛いものが好みの方も十分にその独特な味わいを楽しむこと が出来るだろう。
ただし、少しばかり閉鎖的なのでご用心。
親しくなるまでは注意が必要だ。
出来ることならばエルフの友人が出来た時に行って見ることをすすめよう。
実際エルフの友人が案内してくれた際には、とても好意的で優しい町へと姿を変えていた。
おかげでお土産を買いすぎて、結果的に迷惑をかけてしまったかもしれないが。
自分の旅日記を書きながらため息を吐く。
「しんどかった……色々濃い人達だったよ本当に」
そして、実際しんどかった感想を呟いてみた。
しかしふと見知らぬメールが届いている事に気が付いて、俺は嫌な予感がしつつメールを開く。
そしてその差出人にさっそくげんなりさせられた。
しかし青い薔薇よりと添えられたそのメールの中身は、やはり本人同様掴み所がないものだったのだ。
「なになに?『君の頼み通り、万事うまくいくように手配しておいたから、後は頼んだよ?』」
後は頼んだよ?
俺は何を頼まれたのだろう?
意味深な文面は俺に水面に泥を落としたような嫌な濁りを残してくれる。
俺はメールを閉じると、あまり深く考えないようにしておいたのだが……。
だが数日後、このメールの事を嫌でも思い出すことになった。
妖精郷に大きな毛玉と、フルプレートの騎士が荷物を抱えてやってきたからだ。
「このたび、あなた様に仕えることになりました*****と申します。タロー様、その許可をいただきたく参上いたしました!」
「がう!」
「えっと……なんでここにいるの?」
「いえあの、そういう選択肢もあると聞いたものですから、志願したのですけれど……やはりご迷惑でしょうか?」
「いや、そんな事はないのだけれど……」
不安そうな上目遣いは反則である。
正直上下関係など真っ平御免こうむりたいのだけれども、どうしてこうなったのだろう?
俺はなんとなく二人の呪いの装備を確認すると、彼女の首にも、クマ衛門の脚にもすでに首輪も足環もなかった。
どうやら約束は守ってくれたようである。
しかし確か、普通に里に暮らせるようにしてくれるんじゃなかっただろうか?
そして何がどうなって、俺に仕えるとか言い出しているんだろうかこの人は?
「はっ! 話を伺いまして! なんとしてもタロー様のご恩情に報いたいと、馳せ参じた次第です!」
「がう!」
あーだいたいわかった。
あの野郎、けしかけやがったな?
しかし、ナイトさんもクマ衛門も問題はある。
解放されてすぐにまた、わざわざ誰かの下につくこともあるまいに。
少しは自由を満喫すればいいと思うのだけれども、どうにもそう言うわけにもいかないらしかった。
「君も厄介な性格してるね、せっかく自由になったのに」
「……申し訳ありません」
だがまぁ里にいるのもしんどそうだというのはわからなくはない。
妖精の女王様さえ許可を出せば、どこに住もうと彼女らの勝手である。
でもそうすると……ナイトさんも一つ屋根の下に住んじゃったりするのだろうか?
おいおい、セーラー戦士は元の世界に帰る手掛かり探しに、間借りのような形式をとるようだけど。
彼女、仕えるとか言っちゃってるよ? どうするのよ?
それって同棲?
なんかちょっとドキドキしてきた。
「それで……えっと、君達はどこに住むつもりなのかな? やっぱり俺の家かな?」
どぎまぎしながら聞いてみた。
「いえ、森の方に家を建てようかと。公私は分ける方なので」
「……ですよねー」
俺のちょっとした夢ははかなく散ったのだった。
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